第二章:Run a household 08
私は改めて綺麗になった
屋根裏部屋を見る。
学院寮では個室だけれど、
こんなに広い自室は初めてだ。
「でも、持て余しちゃうよね」
お小遣いも少ない私は元々、
自分の持ち物がほとんどなかったりする。
服も日用品も学院支給の物だし、
それか誰かのお古をもらったり。
真新しい本棚を見るとまだ一冊も本はない。
ここに色んな本を並べたいなぁと思う。
ナターシャみたいに本を
たくさん揃えるのが実は前からちょっと憧れだった。
クローゼットを開けると、
中にはちょっとお洒落なパジャマが一着あるだけ。
日々のお洒落に余念のないマリーに、
今度何かお勧めとか教えもらおうかな。
「ん……」
飾り気はないけれど
なんだか落ちついたデザインの化粧台。
鏡を覗くと幼い私の顔が映る。
化粧をすればもっと大人っぽくなるのかな?
今まで化粧とかしたことがないから、
カレンに今度何が必要か教えてもらおう。
なんだか細々としたモノが色々置いてあって、
クレリエッタさんが
用意してくれたんだろうけれど、
私には使い道がほとんどさっぱりだ。
「ちょっと私の顔、赤い……」
鏡に映る私の顔を見て呟く。
さっきの屋根でのやりとりの後だからかな?
一通り見まわして、
改めて私には勿体ないなぁと思う。
フレデがどう思ってここまでしてくれたか
正直に言うと私にはわからない。
ただの気まぐれなのか、
同情してくれたのか、
それとも、それ以外の意味なのか……
「……」
私は自分の体を見下ろす。
発育も良くないし、
特別に美人なわけでもない……
自分で思って悲しくなったけれど、
「女」としての魅力はないから、
フレデが私にそういう意味合いで
用意したのではないことだけは間違いない。
「考えても仕方ないよね」
実習先次第ではそこで寝泊まりする子も
学院には結構いるので珍しくはなかったりする。
朝にしかできない仕事もあるし、
夜が遅くなる仕事もあるから。
ここで寝泊まりもできるのは
私はもちろん嬉しい。
みんなも優しいのは言うまでもないし、
だって部屋は綺麗で、
お風呂もあって台所は充実している。
「だけど、甘えちゃっていいのかな……」
いつだって、不幸は突然に訪れるから。
寒くもないのに
私は自分の体をきゅっと抱きしめる。
また、全部失ってしまったらと思うと怖い。
私は頭を振り、考えないようにする。
なんだか少し、
思考がまとまらなくなってぼーとしてきた。
パジャマに着替えて、
今までよりも大きいベットにダイブする。
「わっ……ふかふか」
初めての感触に嬉しくなる。
ぱたぱたと布団の上で楽しむ。
けれどなんだか眠くなってきたので
いそいそとベットの中に潜り込む。
「……フレデ」
枕もとにあった灯りを消す。
部屋が真っ暗になると、
できるだけ意識しないようにしていた、
フレデことを目を閉じると考えてしまう。
まだ出会って間もないのに、
凄く気になってしまう。
街に出れば誰もが彼を避け、
顔見知り……
なんか元部下?みたいな感じの
魔族はたくさんいるけれど
誰もが一歩引いている感じ。
魔族の人たちが決して
嫌っているわけではないのはわかる。
でも畏怖している……それがしっくりする。
「……私は、何をしてあげれるのかな」
私たちは境遇も年齢も全く違ってる。
だけど、寂しそうなあの人を放ってはおけない。
彼はここに私の居場所を用意してくれた、
だから、私は彼が寂しくないようにしてあげたいんだ。
「……頑張る、から」
私はそこで眠りに落ちた。




