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黒のヴァージンロード  作者: テオ
第二章:Run a household
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第二章:Run a household 06

フレデさんに連れられた先は

なんだか豪華な建物だった。

落ちついた外装ではあるけれど、

それでいてなんていうか

大人の色気が出てるというか。

「夢想館」っていう看板が掲げられている。


「フレデさん……これって」


う、うーん……

私も実際に知識があるわけではないけれど、

その、これは……


「うん、娼館だね」


「っ!?」


もしかして、連れ込まれるの!?

マリーの妄想は現実になっちゃうの!?

真っ赤なった私の顔を見て、

フレデさんはやっと気づいたらしく、


「ああ、大丈夫だよ。

 ここの主に用があるだけだから」


そう言って裏口から入った。

裏口といっても

かなり豪華な扉だったのだけれど。


「お待ちしておりましたのです、フレデ様」


そう言って出迎えてくれたのは……


「フェアリー?」


ふよふよっと飛んでくるのは

まるで蝶のように綺麗な羽を持つ

手の平よりも少し大きい程度の女の子。

いや、女の子というにはかなり、

雰囲気が大人びてるなぁ……

こんなに小さいのに、

落ちついた物腰で表情が凄く上品だ。


「あら、初めましてなのですね。

 私はクレリエッタと申します。

 元々、フレデ様の部下だったのですが、

 今はこちらの施設を運営しておりますのです」


ちょっと変わった喋り方だけれど。

結構際どいドレスで

艶やかな黒髪が

まるでお人形さんみたいだった。


「クレリエッタ。

 早速だけど頼みたいことが」


「ええ、ガロから聞いて存じておりますのです。

 けれど、こういうことは今回だけにするのですよ。

 この子も本当の意味では喜べないのです」


「そういうものかな?」


「そういうものなのです、

 それが乙女心というものなのです」


私にはそのやりとりの

意味が全然わからなかった。

ふよふよとクレリエッタさんが飛んできて、


「それでは失礼しますのですよ」


そう言って、私の額にちょんと手を当ててきた。


「はい、目を閉じるのです。

 静かに深呼吸して~」


私はわからず指示通りにする。


「あなたの学生寮の部屋を思い浮かべるのです。

 うん、その調子なのです。

 ベットがあり、机があり、クローゼットがあり……」


言われるままに思い返していく。

いくつかそんなやりとりを繰り返す。


「はい、これで終わりなのですよ」


彼女が小さくパンパンっと手を叩くと、

どこからともなく

フェアリーたちが集まってくる。

その数は10人くらいかな?

みんなで手を繋いで輪を作り、目を閉じる。

どの子も華やかな衣装着て、

人形劇を見ているみたい。


「なんだか可愛いね」


「うん、アレはみんなで情報共有をしてるんだよ」


フレデさんの言葉に私は首を傾げる。

するとどこか困ったような、

それでいて照れたような感じで


「シェルマリクとガロとも話したんだけどね。

 まあそのなんだ、

 ミミは色々としてくれているから

 何かお返しをしようかと思ってね」


「え?

 そんなの私が勝手にやってるだけだからいらないよ?」


きょとんとする私に、フレデさんは笑う。


「ミミならそう言うと思ったからさ、

 ごめんね、勝手に用意させてもらうことしたんだ」


伝達が終わったらしく、

慌ただしくフェアリーたちが飛んでいく。

そんな中、クレリエッタさんが

ふよふよと戻ってきた。


「フレデ様は情けないことに、

 年頃の女の子の好みとかが

 まるでわからないとお嘆きだったので、

 今回だけは力を貸したのです」


「どういうこと?」


「私は人が考えていることを覗けるのですよ。

 なので、あなたの

 普段の私生活を見させてもらったのです」


さらっと恐ろしいことを言われた気がする。

何か変なことを

考えてしまったりはいなかったかな!?

そんな私にフェアリーは大丈夫と頷いた。


「私はここに癒しや刺激を求めてくる人たちの

 本当の望みなどを知り、

 そしてそれに見合う子を紹介するのですよ」


そういえばここは娼館だった。

さすがに彼女が男の人の

相手をするわけではないらしい。


「女の子も、どんなタイプの方に合うか……

 色々と得手不得手があるのですよ。

 男と女……どちらも幸せを得られる場所、

 それが夢想館ということなのです」


なんだか便利なようで、

少し怖いなって思ってしまった。

悪意をもってその力を利用したならば、

なんでも筒抜けにバレてしまう。

初めて、人間が魔族を怖がる理由もわかった気がする。


「モノはフレデ様の家に届けさせるのです。

 戻るころにはもう全部終わってるのです」


「ありがとう、助かるよ。

 代金はガロから後で受け取っておいてくれ」


フレデさんは

さあ戻ろうかと私の肩を押す。

今更だけどなんだか娼館の中にいるのが

凄く私には場違いな気がして、

恥ずかしくなってきた。

真っ赤な顔で館から出る私を

クレリエッタさんは

ひらひらと手を振って見送ってくれた。


「サボテンに話しかけるのはいいけれど

 水を毎日やってはいけないのですよ。

 一週間に一度くらいで良いのです」


物凄くプライベートをのぞき見されていた。

私がこっそりサボテン育ててることが

バレてしまってなんだか恥ずかしい。

名前もつけて頻繁に相談していたりする。

私は聞こえなかった振りをして外に出た。


「結局、何を買ってくれたの?」


外に出た私は尋ねる。

どんなものかわからないから、

私もなんとも言えない。

フレデさんは笑いながら


「日用品とか色々とね。

 俺はそういうのがよくわからないからさ」


身の回りのモノなんだろうか。

そこで私はクレリエッタさんの

言っていたことがわかった。


「ねね、フレデさん」


私は手を引き前に出る。


「お願いがあるの」


「なんだい?」


私は笑いながら、こう言った。


「今度はフレデさんが選んでほしいな」


私の好みを覗いて買えば

確かに間違いはないと思う。

けれど、それじゃ寂しい。

私のことをもっと知って、

それで「ああでもないこうでもない」って

悩みながらでも選んでほしかった。

結果として的外れなモノでもいいの。

だって、せっかくこうして一緒にいるのだから。

私たちは、きっとわかりあえるから。


「だからね、次は二人で買い物に行こうよ」


その私の言葉を聞いて、

フレデさんは

やっとわかってくれたらしい。

困ったように頬を掻きながら、


「そうだね、次は一緒に選ぼうか」


二人で話しながら、私たちは帰路へついた。


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