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黒衣を纏いし紫髪の天使  作者: 閻婆
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第34節 《地下の実験施設 材料と化すか、施設を潰すか》 4/5

今回もシドラオ達との戦いですが、今回はちょっと触手という要素が出ますが、年齢制限に関わるようなシーンにはならないかと思います。服装の方のガードが強い関係でそこまでには至らないかと思います。









      地下にある研究室で、リディアは突如危機に襲われる


      シドラオとの戦闘中に、いや、一時的に優位に立った時だったのだろうか


      異なる相手との戦いも済ませたルージュ達とまた隣り合うその時に


      触手が地面から伸び、それがリディアを襲うという惨劇……






「!!!」


 黒の戦闘服で身を守っている少女であるリディアだったが、サティアに叫ばれた通り、背後を振り向くとそこには無数の桃色の触手達が地面から突き出しており、それらは全て、確実にリディアを狙っていたのだ。


 何も声を出す事が出来なかったが、真っ先に触手に掴まれてしまったのは四肢であった。




――まだ離れていた仲間の1人も焦りの表情を見せる――




「不味いな……。リディアに触手なんか来たか」


 赤黒い影のような体色を持つ特殊な姿が特徴的なマルーザは深紅の双眸(そうぼう)で、地面から現れた触手に捕まったリディアを見つめていた。


「なんで冷静なのよ!? リディア! すぐ助け――」


 マルーザの焦りのまるで見えない様子がサティアからするととても信じられなかった。赤いフレームの眼鏡の裏にある水色の瞳は、リディアの両腕と両脚を押さえつけている触手をしっかりと捉えており、それはとても穏やかな光景とは言えないのである。


 マルーザの態度を一旦見捨てた上で自分だけでもすぐに突撃したかったようだが、リディアへの場所へ進む事を妨害するのはやはりシドラオであった。




「待てやおい!! 折角の実験の成果邪魔するつもりかよ!?」


 横から地面を擦るようにサティア達の目の前に立ちはだかったのはシドラオであり、背後で出現している触手は自分の成果から生まれたものである事を分かっているからか、誰にも邪魔をさせたくなかったようだ。殴ろうとでも考えているのか、両腕を構えたような体勢を作っている。


「なんだよ成果って? 相変わらず気持ち悪い事ばっかする奴だよなお前!」


 ルージュは赤い前髪の下で橙色の瞳を威圧的に細めながらシドラオの考えを否定するような態度を見せる。しかしルージュも確実にシドラオなんか放置した上でリディアを助け出したいと思っているはずだ。




「さっき捕まえた女を改造した成果だぜ? 一応教えてやるよ。あの触手出してるのって改造した女なんだぜ?」


 ルージュの表情を見たシドラオは自分が出した成果の価値を理解していないと感じたのだろうか。


 地面から触手を出現させているのは、それは地中に隠れた魔物等の(たぐい)でも無く、元々は普通の人間であった改造した少女だったようだ。自慢でもするかのような悪意に満ちた笑みをシドラオは見せていた。


「何言ってんだよこいつ……」


 一応ルージュは触手の正体を聞く事が出来ていたのかもしれないが、それを自慢げに喋るシドラオの感情を普通な気持ちで受け取る事が出来なかったのだろう。


 触手を気持ちの良いものとして直視する事なんて通常の精神ではまず無理な話であるはずだ。




「ルージュは知らないだろうけど、あいつ別の女捕えて改造してたんだよ。わたしは丁度される時にリディアと一緒に来たんだけど、所でリディアはどうする?」


 マルーザはシドラオが口に出した改造した女という存在の事情をルージュに説明して見せた。尤も、頼まれた訳では無かったが、シドラオの言う改造した女性という存在と、今地中から伸びている触手の関連性を伝えた方が良いかと考えたのか、説明する事を決めていたようだ。


「いやどうするって……助けるに決まってんだろ!」


 未だに気楽そうな口調を聞かせてくるマルーザであったが、ルージュの気持ちが揺らぐ事は無かった。そして触手の正体が分かったからと言って、それがリディアを助けたいという気持ちを弱める理由にもならないはずだ。




「諦めろよ。あいつはもうあのままがっつり犯されて苗床にでもしてやるからよ? お前らは俺と遊ぶんだよ。命の奪い合いっていうやつだ」


 シドラオは自分が徹底的に妨害する前提なのか、それとも仮に皆が触手の場所に辿り着いたとしても触手を止める手段は無いと自信を持って言えるからなのか、救助の気持ちすら奪うかのような言葉を3人にぶつける。そしてシドラオ自身は言葉の通り互いの命を懸けた戦いを始めたがっていた様子だ。


「それを遊びって言っちゃうんだぁ……。所でマルーザなんでそんなに冷静なのよ?」


 サティアはシドラオが本当にまた自分達に襲い掛かってくる事を常に警戒していたからか、水の短剣を決して手放さなかったが、それよりもやはりマルーザの事であった。リディアの件で不安や心配を感じなかったのだろうか。




「リディアが触手程度でくたばると本気で思ってるのか?」


 マルーザは横目でサティアを見ながら、短くてもリディアの対処する力の凄さを証明するかのような言い分を聞かせてやった。リディアを分かっているからこその発言だったのだろうか。


「……それこそ本気で言ってるの?」


 サティアはリディアの触手に対する対抗力を直接見た事が無かったから疑っているのかもしれないが、逆に嘘を言う性格にも思えなかったからか、もう今はマルーザを信じた方が気持ちとしても楽なのかと思い始めていたかもしれない。




「くっちゃべってねぇで来いよ? 遊んでやるよ!!」


 いつまでも向かってこない3人に対し、シドラオは待ちきれなくなったのか、腕を武器のような形状に変形させる事も無く突然走り出す。


 場所は勿論3人の所だ。




――リディアはと言うと、触手の主と対面をしており……――




「これ……どうしよ……」


 リディアは両手首と、そして両足首を触手に巻き付かれいたせいで身動きを取る事が出来なくなっていた。身体は寝かされた形にはなっていなかったが、力を込めた所で触手の力には逆らう事が出来なかった。


 他のリディアを狙っていない触手の束の中からかき分けるように人間が1人現れた。それはあの時、人間を1人収容していた装置の中で意識を失っていた淡い茶髪の少女だったのだ。妙に派手なラメをあしらった緑のワンピースのような服の下から数本の触手が垂れていた。


「!! 誰!?」


 腕も脚も押さえつけられ、まるで動きが取れない状態であってもリディアはしっかりと触手の間から現れた人物を青い瞳で捉えていた。




「誰って、あんたをこれから仲間にしてあげようとしてる人、って言った方がいい?」


 リディアは現在触手に捕まっている関係で少女より高い視線の場所に位置していたが、見上げながら喋ってくる触手を操る少女の表情は何だか感情が死んだようなそれを見せていた。


「……そういえば貴方ってさっき変な機械で眠ってた人じゃなかったっけ? なんでこんな事するの?」


 相手の顔に見覚えがあった為、リディアは多少恐ろしさを携えながらもまだ戦意を失っていない声を振り絞りながら、表情が崩れた少女に問う。




「捕まって分かったんだよ。案外正義のヒーロー面してる奴らを叩きのめした方が最高だって。あんたもこれから凌辱されんのよ」


 恐らくはこの茶髪の少女も、連れ去られている時は絶望で感情が支配されていたはずであるが、今はもう思考そのものをこの施設の者達の思惑通りに改造されているかのような言い分をリディアに放っていた。


 まるで自分がされた事を他者にもやってやろうという魂胆が見えているかのような表情を見せていた。


「それ絶対洗脳されてるだけでしょ? それに……凌辱……?」


 リディアとしては少女が本気で思っている事だとは信用出来なかったのだろう。触手に捕まっていながらも、少女の本来の精神を信じようとしたのかもしれないが、身体を触るという意味を含めたそれを思い浮かべるなり、リディアの表情が少しだけ凍り付く。




「そこに突っ込むんだぁ? やっぱり怖い? あんたの表情はちっとも怖がってるように見えないけど」


 触手を操る少女自身は言葉の意味や深さ、そして恐ろしさも理解しているのだろうか。しかし、少女から見てリディアが怖がっているように捉える事が出来なかったようであるが、触手に何かを加えるつもりでもあったのだろうか。


「いや怖くは無いけどね。だって……」


 リディアはまだ触手程度に負けてたまるかという精神でも保っているのだろうか、触手を操る少女にただそれだけを言い返す。言い方自体はまるでまだ続きがあるかのような終わり方ではあったが。




――リディアは両手から氷の刃を生成させ……――




「自力で抜ける前提だからねぇ!!」


 触手なんかの思い通りにさせる訳にはいかないという精神もリディアには存在したのかもしれない。まるで触手なんかで勝った気でいさせるつもりなんか無いかのようにリディアは気合のある声を張り上げながら、両手からメインの武器として間違いは無いであろう氷の刃を出現させる。


 手首が動く範囲でそのまま触手を斬り刻み始めるが。


「させるかぁ!! これでもくらえ!!」


 逃げられてしまえば自分の戦略が全て崩壊してしまう為、触手を操る洗脳された少女は何か念じるかのように表情に力を込め、その場で両手を握り締める。何か触手と感覚が繋がっているのか、リディアを立たせたような状態を維持させている触手は今度はリディアを仰向けに寝かせるように強引に力を込め始めた。




「!!」


 リディアは体勢を仰向けにさせられただけでは無く、口元も触手に巻き付かれるように押さえつけられてしまい、敵対者相手に言い返す行為そのものが出来なくなってしまう。そして力も更に強まっていた為か、両手の刃も自由に奮う事が出来なくなっていた。四肢だけでは無く腰にまで触手が巻き付いた為、余計に抵抗が出来なくなってしまったのだ。


 リディアの足の側に立っていた少女は更に触手で追い詰めてやろうと目を無理矢理に大きく開かせる。これからの行いを表情に出したのだろうか。


「思い通りにさせるかよ? とりあえず脚開いてやるよ! これで終了だ!」


 触手を操る少女は抵抗の1つも一切させないと恐怖を煽るかのような妙に静かな口調で最初は喋ったが、リディアの両足首を掴んでいる触手を左右に開かせるように力を込める時に声に力が入ったようだ。


 ニーソックスのような丈のある黒のブーツの上に見える白いスカートの中が脚を開かれた事で隠す事の出来ない露わな光景が少女の目の前に映ってしまうが。




――しかし、開いた脚を見て少女は唖然としてしまう――




「って何これ? あんたって短パンなんか穿いてんだぁ? 今時珍しいかも。でも関係無いからね」


 触手を操っていた少女は、リディアの開いた脚の間を見て余計に面白がる所か、逆に萎えたかのように口調を落とし始める。ミニスカートの中に見えたのは茶色の短パンで、通常時はスカートの丈に隠れて見えなかったが、今の無理矢理開いた状態にしたはいいが、見えたものは決して少女のテンションを増幅させるものでは無かったようだ。


 しかし、少女はあっさりと狙う事を難しくしているその場所に別の触手を伸ばさせた。


(やれるもんなら……やってみろっつの!)


 リディアは仰向けの状態で尚且つ身体も反らされているせいで相手の少女の姿を直接目視する事が出来なかったが、相手が自分と同じ性別の相手という事もあったからか、尚且つ対策を施しているミニスカートの中を見られている今の状況でも特別恥じらいを感じる事は無かったようだ。


 しかし、少女の方が用意した、リディアの身体に触れていない触手がリディアの脚の間に真っ直ぐ伸び、短パン越しに脚の間に捩じるように侵入しようとするが、それより奥に入る事は無かった。




「なんだよこれ挿入(はい)んないんだけど? 普通だったらこのまま中に入れてする事完了ってなるのに……」


 少女は今日初めて洗脳されたというのに、まるで今までは作業をそのまま完了させる事が出来ていたかのような口ぶりで触手を無抵抗なリディアの脚の間に捻じ込むが、短パンに阻まれていた為、無理だったようだ。


 そして短パンと太腿の隙間から入れてやろうと触手の先端をずらしたが、それでも無理であった。しかし、触手の先端から分泌されている淡い赤を帯びた粘液は何を意味しているのだろうか。


(いれるって……どういう……意味……体……勢……きつ……)


 目視は出来なくても少女の喋っている事は聞き取る事が出来ていたようだ。しかし、リディアは身体を仰向けにされて尚且つ反らされていた為、身体には負担がかかったままの体勢を維持させられていた。


 股間に嫌な感触を受けながらも、密かに力を込めていたが、触手を操る少女は気付いていないはずだ。




「こいつどんだけ完全装備してんのよ……。服剥がして……ってそれも無理か」


 触手を操る少女は折角リディアの脚を開かせているというのに、いくら触手を捻じ込んでも一向に奥へと入る様子を見せなかった。脚を開かれるというみっともないと思われる姿を晒されているリディアであったが、短パンであればそこまで心に追い詰められる圧迫を受ける事が無いのだろうか、そして襲っている少女も短パンを見ても特別追い詰めているような気分にはなり切れていなかったようだ。


 1つの場所に集中しても何も進まなかったからか、今度は胴体辺りに巻き付かせていた触手を左右に引っ張るようにして力を込めたが、それでも思い通りの結果にはならなかった。


(馬鹿なのこいつ? 私の服は破れないように出来てるんだって……!)


 リディアは戦闘服の上から左右に引っ張られるように触手に乱暴に擦られているのを感じたが、リディアの戦闘服は純粋な力では引き裂かれない素材で作られているようであり、ただ自分の身体に圧力がかかるだけで終わっていた。圧力自体には耐える事が出来ていたようだが、上半身に纏っている服や、下半身のスカート等を引っ張られているのはとても気分が良い話では無い。




「あぁなんかムカついてきた。こんな苗床に出来ない奴とか珍しいわね。女の装備も変わったの?」


 触手を操る少女はリディアの戦闘服を引き裂こうと触手をリディアに巻き付かせていたが、どの部分も一向に破ける様子が見えず、恥ずかしい思いをさせる事すら出来なかった為、苛立ちが積もり出したようだ。


 それを紛らわせる為だったのか、女子達の装備の選択に変化が訪れるようになったのかと独り言をぼやく。


(よし……これでいいかな? そろそろ……)


 触手でリディアを拘束している少女の事なんて無視するかのように、リディアは密かにエナジーリングで力を蓄積させており、自分自身を包み込むように冷気を張り巡らせていた。身体に張り付く触手と、そして未だに短パンで保護をされているとは言え、スカートの中を触手の先端に刺され続けているのは耐えられない環境そのものだ。




――リディアの周囲が冷気の爆発に包まれる――




「!!」


 触手を操る少女は一瞬自害でもしたのかと、爆発に驚きながら後退をするが、リディアに巻き付いていた触手達は爆発の衝撃で動く力を失ったのか、リディアから滑るように離れていく。


 そして力を失った触手からリディアも落ちそうになるが、仰向けの不安定な体勢で落下してしまう前に両脚をすぐに引き、足から落ちるように自分で体勢を整え、そして触手の力が完全に無くなるその時に備えた。


 力を失った触手からそのままリディアは落下する。




「よっと! さてと、触手遊びはこれで終わりにしようね? 私に触手なんて無駄だよ?」


 上手に着地を決めたリディアは、触手に身体を巻き付かれていた先程の状態が嘘であるかのように余裕のある表情で敵対する少女に言葉を与えてやった。


 足元には機能を失った触手が転がっていたが、目の前のそれを右足で踏み付けながら、右手に持っていた氷の刃を少女に向ける。


「え? 何? あたしを殺すつもり? 殺すの?」


 触手を操っていた少女は、武器を向けられた途端に今までの好戦的な態度からは想像がしにくいような弱々しい声を漏らし始める。緑のワンピースを震わせながら、恐る恐るリディアに問う。




「何? 命乞いするの? さっきまで随分好戦的な態度だったのに?」


 リディアは疑い続けながら、右手に持つ氷の刃を下ろさなかった。表情も確かに怯えているのを目視で確かめてはいたが、先程まで触手で散々自分を締め上げていたのだから、油断する訳にはいかなかったはずだ。


「違う……あたし……改造されて……」


 武器を下ろさないリディアを悲しそうに見つめながら、触手を操っていた少女は両手を胸の前に引き寄せながら声も身体も震わせる。




「もしかしてまだ元の記憶、残ってるの? やっぱりやめた方がいい……のかな」


 相手の態度によってはそのまま斬りかかっていたのだろうか。


 リディアは相手の中に元の一般人だった頃の精神が残留していたのかと、どうしても右手の刃を動かす事が出来ずにいた。正気に戻る可能性のある相手をここで(あや)めてしまうのは、どうしても出来なかったのだろう。


 しかし、リディアの思想と、触手の少女の内心が分かり合うという事は無かったらしい。




――突然少女の表情が豹変する――




「やっぱ甘ぇなぁお前はぁ!!」


 見た目と中身は確実に少女ではあったが、口調は殆ど上の階にいるゼノや、怪人であるシドラオと同じだとしか思えないような怒声を放ちながら、突然左手を上に向かって持ち上げた。しかし左手には特別何かが握られているという訳では無かった。


「何す……!!」


 怒声そのものにはリディアは大して怯む事はしなかったと思われるが、持ち上げられた左手には警戒せずにはいられなかったはずだ。僅かに上体を後方に反らしながら何が来ても対処が出来るようにしていたつもりだったようだが、リディアの声は瞬時に塞がれる事になってしまう。




――頭部からいきなり覆い被されてしまい……――




「かかったなぁ!! これで捕獲成功だ! シドラオ様! 獲物の確保が出来ました!」


 触手の少女が見ていたのは、何やらチューブとでも言うべきか、細長いピンク色の物体がリディアの頭部から胸部にかけてすっぽりと覆い尽くしていたのだ。触手とはまた異なる形状のそれは、リディアの視界と動きを封じるには充分であり、上腕辺りまで覆っていた為、もうリディアは前腕しか動かす事が出来ずにいた。


 物体自体もかなりリディアに密着していたからか、皮膚はそれなりに厚みを持っていたのかもしれないが、リディアの頭部と胸部の形を外にうっすらと見せつけていた。




 そんな極限の状態のリディアを一旦放置し、離れた場所で戦っていたシドラオを少女は呼んだ。




――シドラオは3人と戦っていたが……――




「あぁ? おぉよくやったなぁ! ホントはこの竜人の女を捕えたかったけどまあいいや、そいつでマジな完成品にしてやるぜ!」


 ルージュの放ったであろう炎の弾を殴る形で粉砕したシドラオは、触手を操る少女の声にすぐ反応し、振り向きながら呼ばれた理由を言わせるつもりだったのかもしれない。


 しかし、聞かなくてもどうして自分を呼んだのか、すぐに理解出来たようだ。目に入ったのは、天井から伸びたチューブ状の物体に上体を吸い込まれているリディアの後ろ姿だったのだ。どうやらこの後にシドラオが直接手を下す事で思い通りの存在として出来上がるようだ。


「何余所見してんだい? まだ戦いは終わってないはずだけどねぇ?」


 赤黒い影のような対比が特徴的であるマルーザの鋭い深紅の眼光が自分達から目を逸らすシドラオに向けられる。恐らくは天井から伸びたチューブ状の物体も目視はしていたはずだが、それに対しては何も言及をしなかった。




「いやちょっと待て。あいつ……ってリディア捕まってるぞ! 何する気だあいつ!」


 ルージュは天井から伸びる細い妙な物体が気になったようだが、それを上から下に視線でなぞると、最後に辿り着いた場所は物体に上半身を吸われたリディアであり、顔が見えなくても下半身の服装だけを見ればそれが一発でリディアだと分かるのは当然だ。


「それはわたしだって見てたよ? 確かマジな完成品とか言ってたよねあの野蛮男」


 マルーザは自分に説明をされたと感じたのだろうか、決して自分がリディアの状況を目にしていなかったという訳では無いと言い返すが、それよりもシドラオの次の目的の方が気にかかっていた様子だ。




「ってだからなんて貴方っていつも冷静なのよ?」


 青い髪の少女であるサティアもマルーザに近寄りながら、ルージュとは随分と正反対である冷静な様子であるマルーザに思わず言ってしまう。


 寧ろ冷静な様子そのものを恐れるかのように、声の音量もマルーザにだけは聞こえて、ルージュにとっては聞き取りにくいような大きさへと落とし込んでいた。


「リディアを信用してるから。ただそれだけだよ?」


 冷静なのは理由が存在したようであり、マルーザはあっさりと答えをサティアへと渡した。しかし、向かおうとしていたのは、リディアの場所であり、それは同時に距離を取り出したシドラオに再び接近する意味でもあった。




「……じゃあ信用しちゃうからね?」


 マルーザの方がリディアの事を理解していると信じた上で、サティアはもうこのまま今のやり取りを終わらせる事を決めた。


 横に並ぶようにマルーザに付いていく。場所はルージュと同じだ。




「っておいおいお前ら何するつもりだ? 俺の邪魔するったって無理だぜ? おいお前あれやれ!」


 シドラオは平然とルージュ達に背中を向けながら、触手の少女がいる場所へと向かっていたが、背後にいる敵対者の様子がおかしい事に気付き、向き直すとそこには自分を避けながら自分と同じ場所へ向かおうとしている3人の姿があり、当然シドラオはそれを妨害し始める。


 方法はその場で敵対者3人に身体を向け、そして両腕を外に向かって伸ばすと同時にその2本の腕の先端を更に変形させる形で長さを増幅させながら先端を尖らせるというものであった。


「はーい。じゃああたしの力、また発揮させてくれるって事だね! 触手ども、行けぇ!!」


 シドラオが3人の進行を妨害している間に、触手の少女はまるでシドラオに服従でも誓っているかのようなどこかテンションが上がったかのような態度で返事をすると、少しその場で屈み込みながら足元に力を込めた。


 すると突然少女のワンピースの下から伸びていた触手が更に激しく伸び、それがやがて少女の体内から伸びていると考えるとあまりにも量が膨大であるとしか思えないような無数の触手が一気に無限とも言えるような長さに伸び始めたのだ。


 それは少女自身は勿論、シドラオさえも包み込むように伸び始め、最終的にはドーム状に形を作ってしまう。ドーム状に姿を作り出した触手の外にいるのは、ルージュ達3人だけであった。




「うわぁあいつなんかしやがったぞ! リディア閉じ込められたぞ!」


 触手がドーム状になった様子を見て、ルージュは思わず声を張り上げた。実際には触手の少女と、そしてシドラオも同じく包まれたのだが、ルージュにとってはリディアの事が一番大切であるはずだ。リディアを拘束していたチューブ状の物体はドーム状の触手の天辺辺りから切断される形で切り離されたが、残った部分はひっそりと天井へと戻っていったようだ。


「ついでに言うならあの怪物も一緒に入ってったけど、何するつもりなのかねぇ?」


 マルーザは触手そのものに近づく事自体が危険である事を読んでいるかのようにその場から近づこうとせずに、シドラオも触手の内部へと入り込んでいった様子を思い出していたが、やはり気になるのは内部での話だろう。




「それは分かんないけど絶対悪い事するでしょ!? これ破った方がいいわよね?」


 サティアは触手そのものには近寄っても実害は無いと考えていたのか、マルーザよりも先にドーム状の触手に近寄り、壁の役割を負っていた触手を、握った右手で叩きながら仲間2人にこれから自分達がすべき事を確かめるように聞く。


「出来るのか? この太さで。流石にリディアでもそろそろ終わりか?」


 マルーザは触手の強度を気にしていたのか、サティアに続くように触手に直接手を伸ばすが、簡単には破る事は出来ないと読んでいた。まだ実際に触手に対して手を加えてはいなかったが、直視で把握出来る太さと、手触りの質感から感じられる硬度から、物理的に破壊する事が難しいと意識したのかもしれない。


 そしてリディアの惨劇の結末まで想像しようとしていたらしい。




「あんたのその謎の冷静さってどこから来んだよ? ってかこれ……メチャ硬いな!!」


 ルージュもやはりマルーザの焦りがまるで見えない様子を不思議に思うようになってきたようだが、試しに一度ルージュは拳に炎を灯した上で一撃殴り掛かったが、触手の壁はびくともしなかった。


「斬り落としたりするのが無理なら、じゃあわたしが内部に入る方が楽だったりしてね?」


 マルーザはまるでルージュを試しとして利用させてもらったかのように、ルージュの一撃をただ見ただけで破壊が不可能だと悟り、そして異なる手段で行く事を確定させてしまう。


 尤も、ルージュは切断を試みたのでは無く、打撃を行なったのだが。




「入るって、そんな事出来んのか?」


 初めてマルーザに出会ったルージュは、まだマルーザの特殊な能力を把握していなかった為に、唐突に触手のドームの内部へと突入すると言い出した事を上手く飲み込めずにいたようだ。実際に突入するとしても、方法をイメージする事も出来なかったはずだ。


「わたしの肉体構造甘く見たら駄目だよ?」


 人間のような柔軟な視覚的な感情表現が出来ないマルーザは、ただ深紅の双眸でルージュと目を合わせる事しか出来なかったが、持ち上げていた赤黒い右手の先からは妙な黒い気体が立ち上がっていた。


 気体が立ち上がっている右手を触手と触手の間に刺し込むように接触させた。黒い気体は触手の間へと吸い込まれるように入っていく。そして、マルーザ自身の身体にも変化が現れる。




――気体状になり、徐々に触手の隙間へと吸い込まれていった――




 マルーザの肉体は気体状となり、触手と触手の非常に僅かな隙間を狙うかのように入り込む。そしてマルーザ自身も徐々に身を削るように身体を消滅させていき、外側から徐々に消えていったその身体は最後には胸部辺りだけが辛うじて残ったが、最終的にはそこすらも完全に散らされ、肉体は遂に触手のドームの内部へと突入する事となった。






今回はリディアに触手が襲い掛かるというちょっと不味いシーンがあったんですが、やっぱりこういう時の為にスカートの中に短パンとかって大事なのかなって思いました。リディアにはあまり酷い目に遭ってほしくないのでいざって時のガードは大事なのかなって思いましたね。

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