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黒衣を纏いし紫髪の天使  作者: 閻婆
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第33節 《基地に潜む竜人の女性 同じ竜の血を引く少女との再会》 5/5

今回はシドラオと呼ばれる怪物との戦いになります。リディアの方に仲間が終結して4人で戦う事になります。








           リディアは実験室へと連れ去られてしまった


           しかし、それは過去の話に過ぎないのかもしれない


           連れ去った生物は既にリディアに返り討ちに遭っていた


           実験室に待ち構えていたのは、また異なる実験生物なのだろうか


           しかし、それは簡単には倒れる様子を見せなかった








「お前達がここに来る事は分かってたぞ。敢えて説明してやろう。ビスタル様からご命令を授かってる」


 柱の上から飛び降りた、横に対して異様な広さを持った口が特徴の人型の怪物はリディアとマルーザを見据えながら、リディアとマルーザに向かってゆっくりと歩いたが、適当な距離の所で立ち止まった。




「私達の行動予測でもしてたの? それとビスタル……ってあんたの上官か何か?」


 黒の戦闘服で身を包んでいる少女リディアは今の怪物の言い方から受け取ったものがあったのだろう。まるで自分達が初めからこの実験室にやってくる事を予測していたかのような言われ方をした為、まずは初めて聞いた名前の者の正体を期待せずに問い質す。


「勘がいい女だなぁ。その通りだ。俺はビスタル様のご命令で逆らってくる連中を返り討ちにして戦闘要員に改造する使命を請け負ってるのだ。特にお前、最近は俺達の組織に歯向かってるようだな。噂になってるぞ」


 否定も言い逃れも一切行わず、口の広い緑の体皮の怪物はこの施設内で確かに改造を行なっているのだと説明を施した。しかし改造に使われる側も大人しく行為をされる訳も無いようであり、どうやら何かしらの戦闘は始まっていたようであった。


 しかし、怪物の口ぶりからするといずれもここにやってきた者は敗北した上で怪物の思うがままにされてしまったという事なのだろうか。




「へぇ~、なんか別の奴からも聞いたような聞かなかったような気がしないでも無いけど、それはおめでたい事だね」


 リディアは自分の存在が敵対する相手から広く知れ渡っている事を改めて思い知らされたようだ。しかし、自分が狙われている事には変わりは無い為、気分自体は決して良くは無いはずだが、負けさえしなければ問題は無いはずだ。


「リディアって意外と有名人だったとはねぇ。まあわたしがいるから少なくとも悲劇には遭わせないから安心してね」


 マルーザも意外とリディアの顔が広くなっている事に驚きを隠せなかったようであり、狙われる確率が高くなったとしても、同行している間は自分も力になる関係でそう簡単には終わりにはさせないと仲間だからこその助言を与えていた。




「……ありがとうございます。頼る時は頼らせて頂きますね!」


 自分を有名人と評価し、尚且つ自分の事を何があったとしても守ると告げてくれた事に一瞬戸惑ったらしいリディアだが、言わないといけない気持ちはしっかりと伝える決意をしたようだ。


 自分だけで戦い続けるのでは無く、力を借りても良い時は遠慮をしないともここで伝えていた。


「そんな仲間の絆を確かめ合うのも今日で終わりだ。今までどれだけの奴らを実験材料に利用したかお前は分かるまい」


 まるで良い雰囲気を荒らすかのように、緑の怪物はもう今後は頼る事も頼られる事も出来なくなるような結末が来る事を思い知らせるかのような言い方を浴びせる。怪物には実績があるようであり、予定ではリディア達も実績の中に含めてしまう事になっていたようである。




「強さ自慢は勝手だけど、それって多分相手が偶然弱かったから、それで自分が強いと勘違いしてるだけのようにも見えるけどね?」


 マルーザは目の前にいる口が横に伸びた怪物の実力に恐れてやろうという気持ちすら持たなかったのだろうか。実力の無い相手と戦い続けていれば自分自身の実力がどれだけのものかの判断が出来なくなる事も多い為、マルーザはそれを疑っていたのだろうか。


 元々人間では無い事もそうだが、深紅の双眸もまるで相手の態度の奥を覗き見るかのように僅かに細くなっていた。


「一応ですけど無理矢理連れて来られた人もいるみたいなので絶対に実力がある人が今まで挑んでたっていう訳でも無さそうですし。私は無理矢理連れて来られましたし」


 リディア自身は自分の意思と無関係に連れてこられた事と、そして実力の方を審査された訳でも無かった為、この基地にいる者達は相手の強さを意識した上で選別をしている訳でも無いし、そして一方的に連れてきた上で強制的に戦わせる行為も働いていたのは確かだったようだ。


 意図的にこの基地の存亡を左右させてしまうような力を持つ者を避けた上で連れ込んでいる可能性も否定は出来なかったはずだ。




「正義を(かざ)す為に俺に挑んできた奴も沢山いたぜ? 勿論お前、リディアだったか? お前の時みたいに人間のおっちゃん達が選んで連れてきた奴とも戦った事はあったが、どいつもこいつも俺の相手じゃなかったぜ? お前らはどうだ?」


 緑の怪物は決して嘘は言っていなかったと言えば正しいと捉えるべきなのだろうか。


 自分からこの基地に突撃し、怪物に挑んできた勇敢な戦士達も確かに存在したのかもしれない。しかし、今ここで怪物が大型の口を開きながら自慢話のように散らしているという事は、もう挑んだ者達が無事に帰る事を出来ていなかったという証明にもなるのだろうか。




「どうだ、って? じゃあ敢えて言うけど、今日があんたの最期だと思った方がいいかもね。悪いけど私は、いや、私達って言った方がいいか。私達今まであんたみたいな怪物達とそれなりに戦ってるけど、負けた事は無いからね? あんたも今までの奴らと同じ終わり方すると思った方がいいよ?」


 リディアも今までどちらか負けた方は必ずその場で絶命、或いは相手の思うがままにされる凄惨な未来が約束されてしまうような戦いをしていたが、いずれも勝利、或いは状況を判断した上で脱出も計っていた為、少なくとも自分自身は人生を終わりにはさせていないのだ。


 しかし相手から直接宣言をされたのでは、弱々しく振舞う訳にもいかなかったのか、自分が勝利を決めた相手と一緒の運命を辿ると思うべきだと宣言して見せた。


「敢えてわたしもリディアに合わせる事にするか。ただね、あんたもかなり重要な立場にいるから風格のある態度でい続けないといけないのは分からなくは無いけど、もうそんな事考えなくても言わなくてもいいようにしてやるからね?」


 リディアの勇敢な心意気に関心したのだろうか、マルーザもリディアに並ぶように言葉を並べて聞かせた。相手の怪物がこの実験室を任されている事は見れば分かる話であり、尚且つ他所への提供や、更に上司に該当するであろうマチルダという女性からの指示を受けた上で任務に務める等、他の戦闘員とは立場も背負うものの重さも異なるのは既に把握している話であったからこそ、一応は目の前にいる怪物へ評価だけは渡してやっていたのかもしれない。


 しかし、マルーザも自分の未来の為にも、そして相手は確実に自分達の未来を潰すと同時に実験材料として利用してくるとしか考えられない為、ここで生きて立ち去る事を宣言するしか無かったはずだ。




「随分と勇ましい事だ。だけど気持ちが強い奴も立派な実験材料になる。そして、お前達がさっき助けようとしたあの女はもう諦めろ」


 怪物の方もリディアとマルーザには一定の評価を下していた様子であるが、心の強さもまた良質な材料になる要素になると、リディア達が敗北する前提であるかのように話をし始める。


 唐突だったのかもしれないが、先程リディアが助け出そうとしていた、人間を格納する設備の中に収容されていた少女に関する事実を告げられた。




「諦めろって、どういう意味?」

(ヤバっ、ちょっと忘れかけてた……。でも黙っとこ)


 怪物の、特に口のやたらと広い所が特徴的過ぎたのか、リディアはそれが原因で本来助けようとしていた少女の事を忘れそうになっていたようだが、怪物に言われて再び改めて思い出し、あの設備の内部が触手に支配された事も同時に思い出した。


「そういえばいたねあの子。中で触手が大量に伸びてたけど、あれが実験の準備段階かい?」


 マルーザも忘れていたのかどうかは分からないが、設備の内部の事はしっかりと視覚に焼き付けていたようであり、あの触手が実験に繋がるものなのかと、とりあえずは尋ねるしか無かったようだ。




「その通りだ。あいつは連れられてきた魔導士だったんだが、ここから出せって要求してきたから俺に勝てたらいいぞと答えてやった訳だ。勿論俺はこの通り、勝利した。だから交換条件として俺はあいつを実験体として使わせてもらった。あいつは今は触手によってグレイシアペタルの毒成分をとことん身体に注入されてる所だぞ」


 躊躇いも無しに怪物は答え始める。どうやらリディアの時のように無理矢理に連れられてきたようだが、結果は今の通りであったようだ。


 勿論、実験体として利用しても良いと少女の方から答えたとはとても考えられないが、今少女に注ぎ込まれているのは、少し前にリディアが戦った怪奇植物の成分だったようであり、内容自体はとても直視出来たものでは無いだろう。少女を収容していた機械は現在は上部が完全に閉じられており、外からはもう直接内部の様子を見る事が出来ないのだ。




「あぁなんか国家財産か何かって言われてたあの変な植物って実際はそんな事の為に利用してるだけだったんだぁ?」


 今の話を聞いた事で、リディアは国家機関の兵士と名乗っていた者達も当然偽物で、そして尚且つグレイシアペタルと名の付いていた怪奇植物も国家で守られている財産でも何でも無いという事を把握してしまう。


 呆れたような態度をマスクの下で浮かべながら、今は言い返すだけではあったが、あの植物の成分を自分の体内に注がれた時の事は考えたくは無かっただろう。


「あの植物って一部の奴らからそうやって崇められてたのかい? わたしは初めて聞くから嘘として使われたのかい、あれは」


 マルーザはグレイシアペタルの見られ方を初めて知ったようであるが、しかし野盗達からどれだけの評価を受けたとしても植物からすればそれは喜ばしい事なのかどうか、疑問に感じる部分もあったのかもしれないが。




「もうお前らにはどうでもいい話だ。それと……もう1つビスタル様からの嬉しいご褒美話があってだ……」


 怪奇植物を利用する実際の目的や、世間からの見られ方の話を継続させる気は無かったようで、そして自分の成果によってビスタルから受け取る事の出来るものがあったようだが、リディア達の背後からだれかがやってくる様子を怪物は見逃さなかった。




――口の広い怪物はリディア達の背後を凝視し始めた――




「リディア! 無事だったのか! そして待たせたなぁ! そんでもう1つだ! 助っ人にも来てやったぞ!」


 リディアの背後から違う少女の声、それも強気や度胸が充分に出されたような雰囲気の声色が飛んでくる。まずは来るのに時間を使ってしまった事に対する言葉と、そしてこれから自分がリディアの為に助けとして活躍してやるという宣言も、走り寄りながら渡していた。


「ん? あ、ルージュさん!」


 突然背後から名前を呼ばれた為、リディアは声色1つでそれがルージュであったと分かっていたのかもしれないが、その上で実際に振り向くと、そこには力強く走り寄ってくる濃い紫の長袖のジャケットを着用した赤髪の少女がいたのだ。そして、赤い髪の持ち主であるルージュのすぐ後ろには、ツーサイドアップの青い髪を持った少女の姿もあった。




「一応だけどリディア、アタシの事も忘れないでね? さっきルージュと合流したのよ!」


 ルージュと比較すると随分と長い丈の緑のスカートを走って揺らしながら、青い髪の少女もリディアに声をかける。リディアの見えない場所でルージュと出会い、共に戦う事を決めたのである。


「サティアさんも合流出来たんですか!? 丁度いいタイミングでした!」


 リディアはルージュと共にやって来た青い髪と緑のノースリーブのブラウスを着用した少女の事を知っていたようで、名前を呼んだ後に来てくれた時が自分にとって都合の良いものであった事も伝えた。




「2人とも予想以上に早く来たみたいだね。所であの粗暴なカップルは始末してしまったのかい?」


 マルーザも遅れてやってきた2人の少女に反応し、どうやら考えていたよりも手早く現れてくれた為、少しだけ見かけたであろう地上のあの粗暴な野盗の男と、竜人の素質を受け継いでいた女性があっさりと敗れてしまったのかと、リディアの近くで走る足を止めた2人に問う。




「あぁそれ? まあ始末って言ったら微妙だけどサティアが動き封じてくれたんだよ」


 最初に答えたのはルージュであったが、マルーザの言い方が相手の命を奪ったのかどうかというニュアンスに感じたからか、生死の話で言うのであればルージュから見ればあれは死亡とはまず言えない状況であった為、それを基準にした場合の答えがこれであった。そして2人を無力化してくれたのが、隣にいる青い髪の少女だと、指を差した。


「まあそういう事ね。アタシの水の力で床に貼り付けてやったわよ」


 2人を相手にした戦闘の勝敗に関してはルージュが説明してくれた為か、サティアはあくまでもどのような手段で2人を封じ込めたかを説明するだけであった。


 今あの拘束された2人が何を思っているのかを考えてみたのだろうか、サティアは一瞬背後に対して、黄色のレンズの奥にある水色の瞳を向けていた。




「仕事速いんだねぇあんた達って。初対面ながらビックリだよ?」


 マルーザとしてはあの2人の男女に手間取ってしまい、下手をすると自分がルージュとサティアの援護の為にまた来た道を戻る事になると思っていたのかもしれない。


 しかし、現実はもう2人の少女は見事に相手に勝利を収めた上で次の戦いの場に足を踏み入れているのだ。




――怪物は何故かサティアを凝視しており……――




「ん? そこのお前……お前はまさか竜人か!? マチルダ様と同じか!?」


 口の広がった怪物からすれば、新しくやってきたサティアの事が妙に真新しく見えたようであり、そして凝視をしていると1つ気付くものがあったようだ。驚いた声を飛ばしたが、それはサティアに対して更に悪い印象を与える姿でしか無かったはずだ。


「え? アタシの事!? 何よ突然。それがどうかしたっていうの?」


 サティアは確かに外見こそはまだ未成年の少女なのかもしれないが、確かに竜の血も身に受けているのは事実だったようだ。外見だけでそれを見抜いたのは兎も角、それによって自分に対する扱いをどうしようとしていたのかも気になる所だったはずだ。


 ただ驚いただけの言葉だったのかもしれないが、相手からすると答えてくれと言われているように感じたはずだ。




(この子って竜人だったのか……)


 初対面であったマルーザはサティアの正体が竜の血を引く少女である事を初めて知ったようである。マルーザでも外見だけではそこまでの区別が出来なかったようだが、リディアは何も驚いた様子を見せていない為、元々知っていたのだろうか。




「へへへへ……竜人だったら改造の材料として使えば人間の数倍以上の素晴らしい作品が作れるのだ。戦闘員としても優秀になる。人間以上にな」


 他の種族の血を引いた人間が見つかるのは滅多に無い事であったからか、そして純粋な人間と異なり、更に強大な結果を出す事も出来るようであり、素材としての価値をただ評価しているだけの話であった。


「あんたは馬鹿なの? 優秀かどうかはまあどうでもいいとして、アタシがあんたの材料になると思ってるの?」


 勿論価値がどうであれ、それはサティアにとっての朗報にはならない。ブラウスとスカートの間に空いた細い腰に直接右手を当て、そして顔を少しだけ傾けたような体勢で、思い通りになってやるつもりは無いと言い返す。無理矢理そうさせようとしたとしても、素直に従う気も一切無いようである。




「確かにお前は、ってお前がここの何なのかはまあ知らないが、兎に角馬鹿は馬鹿なんだろうなぁ。サティアの事が欲しいんだったらわたしに勝つ必要があるぞ?」


 ルージュにとってもサティアは相手に絶対に渡したくない存在である事に間違いは無いようであり、サティアを狙っているであろう怪物に対し、ただでサティアを捕える事なんて出来る訳が無いと豪語していた。ただ普通に貰おうとしているその思考もルージュからすれば罵倒の対象でしか無かったのだろうか。


「なんかあんたの女みたいな感じになってるけど? まあなんでアタシの事見て竜人だって分かったかがちょっと気になるけど別にどうでもいいわ」


 サティアはどのような見方で自分を竜人であると見抜いたのか、本当は理由を追求したかったようだが、怪物の特徴を知った所で自分にとっての利益になると考えられなかった為か、聞く事をやめる方向に行く事にしたようだ。




「興味があるならあると普通に言えばいいだろ? 俺は相手を見ただけで竜人かどうかの区別ぐらい簡単に出来る訳だ。いつもマチルダ様からのご褒美で身体を触らせて頂いてるからなぁ」


 緑の体皮の怪物は本当は自分が正体を見破った理由を求めようとしていた事にしつこく食いつこうとする。相手が聞いてもいない理由を自分から勝手に喋り始めるが、そこで唐突にマチルダの名前を出し始めた。そして、何故か怪物は表情を歪ませたのである。横に広い口である為、端が吊り上がると人間と比較した時以上に妙に目立ってしまうのだ。


「なんか判別出来る切っ掛けが凄い気持ち悪いんだけど? 何マチルダからの褒美って……」


 気味悪さを感じたのはほぼ全員が一緒だったのかもしれないが、実際に感想のようなものを言葉で出したのはリディアであった。


 褒美の内容は恐らくは今目の前にいる怪物が喋った通りだったのかもしれないが、回りくどさを疑わずに解釈するとなった場合、どうしてもリディアの中では生々しい行為が浮かんでしまったようだ。それが出来るから実験の任務を請け負っているとは、ある意味ではあの野盗の仲間に相応しい性質として見ても良いのかもしれない。




「リディア、多分言った事そのまんまの意味だと思うぞ? あんな奴のどこに触る価値があるかかなり疑問だけどな」


 リディアは決して褒美の中身を詳しく説明してほしかった訳では無かっただろう。だが、リディアの呟くような声を聞いていたルージュは、一応はリディアに理解させる為だったのか、説明を短く聞かせた。


 触るという意味を真っ直ぐに受け取ってしまっても解釈としては問題は無かったのかもしれない。尤も、それが事実であったとしてもルージュ達にとってはまるでメリットでは無いし、何かプラスに働いてくれる事も一切無いだろう。


「だけどあんな性格したあいつ……名前なんだったっけ? まいいや、でもよくあんな性格であんたみたいな気味悪い見た目した奴に触らせてやろうって思うわよね?」


 サティアもやはり怪物の言っていた褒美の内容を気持ち悪く捉えていたようであるが、ふと地上の部屋で見かけた竜人の女性こと、マチルダであったがサティアは名前をしっかりと把握はしていなかったようであり、ここで名前を出す事が出来ていなかった。怪物が出していた名前も記憶に留めようという気持ちは無かったのだろうか。


 それでも暴力的な口調を扱うあの名前を知らない竜人でそして荒れた色の銀髪の女性の性格を考えると、何故あの確実に相手を見た目等で選びそうな性格の女性が、今目の前にいる口が横に広く、そして奇妙な緑の皮膚を持った怪物に対して自分の肉体を好きなようにさせてしまうのかが理解出来なかった。勿論、あのマチルダの趣向なんかを探ろうという気持ちにもならないと思われるが。




「お前は疑り深い性格なのか? マチルダ様と同じ竜人なのにここまで性格が違うとはなぁ。あの(かた)は俺が最高の完成品を作り上げればご褒美として好きなだけ身体を舐めさせて下さるのだ。ビスタル様は完成品を受け取るだけだが、ビスタル様の代わりにご褒美を下さる大変尊いお方だぞマチルダ様は」


 怪物はサティアの言った、マチルダの人格を否定するような言い分を妙に冷静な態度で受け取った上で言い返す為のものを用意する。


 マチルダは自分の成果を見せる事でご褒美を提供してくれるようであり、恐らくその時の態度や振る舞いは今のサティアとは違い、否定的な漫言を放つ事もしないのだろう。改造した対象をただ受け取って去るであろうビスタルとは異なり、マチルダはしっかりと自分に対して格付けを行なってくれる為、自分を正しい目で見てくれるマチルダと比べた場合、サティアは少なくとも怪物の価値観で捉えれば評価に値しない存在になってしまうのだろう。


「はいはい長い説明ありがとね。だけど、あぁマチルダって言ってたっけあの女、あの女があんたの為にご褒美を渡すのは勝手だけど、アタシの事あんな女と一緒にしないでくれる?」


 とりあえず、とでも言うべきか、サティアは怪物のしていたご主人様でもあると思われるマチルダの話を聞いてやっていたが、どちらにしても同じ竜人であるのは事実であるにしても、マチルダと比較はされたくなかったようである。性格面の方ではサティアですら確実に仲良くなりたいとも思えない程の荒れた内面であったのだから、尚更である。




「ってか身体舐めるとかキモ過ぎだろ……。あいつどういう神経してんだよ……。お前もお前だけどなぁ!?」


 ルージュはもう怪物の言った褒美の内容を真っ直ぐ捉えていたのだが、やはり行為の方はとても平然と受け取れるものでは無かったようで、もう竜人のマチルダの思考も、そして怪物の褒美として把捉しているその言い分も殆ど短見としか考える事が出来ず、そして終わりを意味させる為だったのか、思い切り態度で見下したような強い言葉を無理矢理に放ってやった。


「じゃあ尚更負ける訳にはいかないって事ですよ? あいつの都合のいいように進ませないようにしないといけませんよ?」


 リディアはもう戦う事が確定してしまっていると感知しており、ルージュに直接喋りかける形で、自分達がこの空間での全ての相手の都合を破壊してしまう事を思い知らせてやるべきだと声をかけた。


 相手の実力をまだ実際に見た訳では無かったが、だからと言ってもう引き下がる事は出来ないし、リディアとしてはマルーザは勿論、ここで久々に再会を果たしたルージュとサティアを信じるしか無いはずだ。




「所でビスタル……か。あんたがここで引き渡してるって事は、あいつ意外と近くにいるって事かい?」


 その者に関して、一番敏感になっていたのはマルーザであったようだ。話を聞く限りでは目的の相手がこの基地の近くを常に活動エリアにしているのかと疑ったようであり、妙にビスタルと呼ばれた相手に興味を抱いている様子でもあった。


「なんだお前は。お前はそっちに興味があるのか? ビスタル様は……それが聞きたかったら俺に勝つ事だなぁ? お前も俺からご褒美が欲しいなら、まずは俺に勝ってからにしろ」


 マルーザは人間の姿をしている3人とは異なり、明らかに人間と異なる姿をしていた為、怪物の男から見ても異質な存在として見られていたのかもしれない。


 上半身しか存在しない独特の形状のその赤黒い肉体の相手に対し、怪物の男は続きを聞きたければ自分との戦いで勝利を収める事を条件とし始めたのだ。




「そういうのは褒美とは言わないと思うが?」


 マルーザからすれば、本当にその通りだったのかもしれない。尤も、広い定義で言えばビスタルとの関係に関する情報を、目の前の怪物に勝利する事で得る事が出来ると解釈すれば褒美とも言えなくも無いが、素直にそれを認めるという事はまずありえないはずだ。


「まあマルーザ、いいだろうその辺はどうでも。要するにお前の事ここでぶちのめせば全部終わるって事だろ? 余裕だって」


 ルージュはもうマルーザの事を決して目上として捉えるつもりは無く、上下関係の無い相手として考えていたのか、サティアが相手の時と殆ど同じ口調で褒美という言葉の捉え方はどのような形であっても構わないだろうと聞いた後に、今度は怪物の方に黄色の瞳を向け始める。


 最終的には単純な答えとなっていたのかもしれないが、ルージュの方は自分を含めて4人いるのだから、戦えば結果的には勝利を手に出来るだろうと考えていたはずだ。右手をあまり豊かとは言えない胸の前に持ち上げて強く握る。




「お前は分かる女だなぁ。俺をどう捉えようが無関係だ。お前らは1人除いて随分と可愛い連中ばっかだ。実験台にする前に身体の方を味見してからじっくり作業させてもらうからなぁ?」


 怪物の方は自分が単独であるのにも関わらず、戦いで全てが決まる事を把握しているであろうルージュの今の言葉を聞いて関心したようだ。


 そして外見こそは口の異様な広さと、緑の体色の通り、人間とは異なる種族なのは明らかであるが、人間が持つ特有の外見に対しては一定の評価を下しているようであり、逆に言えば価値観の持ち方が人間とほぼ同じである関係上、性的な魅力云々に関して言えば、マルーザは対象外であったようだ。


 怪物の白だけで支配された目は、確実にマルーザに向けられていた。マルーザは人間と異なり、下半身が存在しないまるで一般的に連想されやすい幽霊のような身体構造をしているのだ。


「除いた1人って、勿論わたしの事だとは思うが、味見出来る程この()らは甘くないと思うけどね? 勿論実力っていう意味でね」


 マルーザは自分が女性として認知されない、或いは人間の女の子と同じような扱いをされないからと言って、それで気に病む事をしないようである。そもそもそれすらも意識をしていないかのように言い返すが、その内容は仮に自分以外の3人が味見をするに値する価値があったとしても、自分の思い通りに捻じ伏せる事が出来るかどうかは別の話なるというものだ。


 流石に怪物の方も実験をする立場である為、頭は悪くないはずであるが、味見という言葉のここでの意味を敢えて説明して聞かせていた。




「へっへっへっ……。それはお前らを殴れば分かる話だ。元気な状態のお前らを犯そうったって無理な話なのは分かってる。叩きのめして弱った所をゆっくり味わってやるからな? その後に改造手術を済ませて、ビスタル様に渡して、そしてマチルダ様からのご褒美も貰う。これが俺のゴールドプランだ。さあ……」


 怪物の男はわざとらしい笑いを溢した後に、相手に味があるかどうかは自分自身でその場で確かめると言い出したのだ。行為の順序等を妙に丁寧に説明し始めるが、それが本当に完璧に行くのかどうかは実際に戦えば分かる事なのだろう。


 怪物の男は周囲に違和感を感じさせるかのように故意に右手の指を曲げたり伸ばしたりを続け始める。




「何がゴールドプランなの? まあ来るなら、私達は負けないから覚悟決めて来てね?」


 リディアも右手から得意武器である氷の刃を出現させながら、もう迫るであろう戦う時に備え、ここで生き延びる為には目の前の怪物に勝利するしか無い事を再度実感した。


 まるで自分が最初に相手をするかのように皆よりも前に数歩出た。そもそもこの場所で戦う要因が出来上がってしまったのは、自分が不覚にも捕らえられてしまったからと、自分の失態を自分で償おうという意志だったのだろうか。尤も、ここに連れて来られなかったらルージュとの再会も叶わなかったと思われるが、そこは取り入れていなかったのだろうか。




――リディアは怪物の右手が細く伸びる様子を当然見逃さなかった――




「覚悟決めるのはお前らだ。冥途の土産だ。俺はシドラオだ! 改造された後は覚えとけよ!?」


 名乗った怪物ことシドラオは鞭のように細く、そして長く伸びた右手を目の前から近づいてきたリディア目掛けて上から振り落とす。


 挨拶の代わりのように落とされた鞭のような右腕であったが、リディアがそれをあっさりと受けてしまう訳が無く、氷の刃がそれを受け止めていた。


「……ふぅん、シドラオねぇ。名前は覚えといてあげるけど、改造はされる事は無いから、一応……」


 リディアは氷の刃でシドラオと名乗った怪物の鞭を受け止めた体勢のままで、名乗った事に関しては記憶に留める事を約束したが、まだ言いたい事があったらしい。


 相手の力強さは実感していたが、リディアもエナジーリングの力を使い、対抗出来るように身体能力を向上させており、そして空いている自身の右足を攻撃手段に使おうと計画する。




――相手の腹部を狙い、蹴りを放つ!――




 身体を左に素早く捩じり、横に向いた状態でリディアはシドラオの鞭を受け止めたまま、敵対者の腹部を狙った。


 それは見事にシドラオの緑の皮膚に刺さり、リディアは右足を通じて確かな歯応えを感じたが、引こうとしたのにも関わらず、それは通らなかったのだ。


「それが俺に通じると思ったかぁ!?」


 シドラオは腹部の皮膚でリディアの足を受け止めたまま、それを離さなかったのだ。


 腹部で足を掴んだまま、リディアを振り回すように自分の背後目掛けて投げ飛ばした。腹部の筋肉は器用に動くのか、放す時は完全に相手を自由にしてしまう事が出来たようだが、遠心力の働いていたリディアは無事では済まなかったはずだ。




――まだ仲間は残っているのだ――




「まだわたし達が残ってるからな!」

(でもあんな程度でリディアならくたばんないだろ?)


 リディアに続いてシドラオに向かったのはルージュであった。奴の向こうでは倒れっ放し、では無く寧ろ上手に床を転がりながら体勢を整えていたリディアをうっすらと視界に入れながらも、両腕を炎で燃え上がらせながら飛び掛かるように殴打を加える策に入る。


「素晴らしい気合だ! 材料として優秀かどうかも確かめてやる!」


 飛び上がりながら拳を放つ気でいたルージュに対し、シドラオは威勢と根性を評価した上で先程リディアに武器として使った鞭と化した右腕を振った。宙にいたルージュを迎撃するつもりだったのだろうが、ルージュも相手を見ていなかったという事は無かった。




――両腕で顔面を守り……――




 まだ床に降りても、シドラオに辿り着いてもいない宙にいる間に鞭を受けたルージュであったが、両腕が盾となった為、大したダメージとしてルージュには届かなかったようだ。


 相手には見えていなかったであろう両腕の後ろで作った余裕のある表情のままで、そのまま自分の両腕だけでは無く、全身を包み込むように炎を肥大化させ、そしてその場から姿を消滅させてしまう。


「なかなか面白い奴だ。色んな奴が使う手段だぞ」


 シドラオは目の前で本当に燃え尽きるように消滅したルージュを目視したが、姿をその場で消滅させる戦法を過去にも見た事があったからなのか、驚く所か逆に戦闘意欲を更に燃え上がらせていたようでもあった。


 姿を消したルージュが再び現れる事を楽しみにするかのように、鞭状の右手を縮ませる。鞭での攻撃をやめる事にしたのだろうか。あくまでも鞭での攻撃をやめただけであり、今度は腕を木槌(きづち)のように先端を肥大化させたが、変化させたのは右手だけでは無く、両手であった。


 しかし、両腕を木槌のように肥大化させたその後に、突然シドラオの足元が燃え上がったのだ。包み込まれるように足元が燃え上がるが、シドラオは熱がる様子は見せていなかった。




「大技のつもりか? 俺には炎なんか通用しねぇぜ?」


 足元を炎で焼かれているシドラオであったが、平然とした様子で、恐らくこれはルージュに伝えているのだろうか。


 炎の中に隠れているのかと疑っているのか、炎の中から出ようとはしなかった。そこで予想の通りの場所から確かに敵対者は出現した。しかし、相手は声を発する事をしなかった。




――炎の中から人間が跳び出してきたのだ――




 燃え上がる床の中から、炎を発生させた張本人がシドラオの背後から、右の拳を燃やしながら水面から跳び上がる魚のように突撃を開始させたのだ。


 まだ背後に気付いていないシドラオの背中を目掛け、力任せに拳を放つ。全体重を乗せるかのようであった。


「とぅらぁあああああ!!!」


 気合の入った掛け声が仇となり、シドラオには振り向かれてしまったが、それを防ぐ為に両手を使うには時間が短すぎた。




――拳がシドラオの腰に突き刺さる――




「どぅおっ!?」


 身体に拳が減り込んだ事で緑の体皮を持つ怪物は初めての苦痛を周囲に知らしめるかのような声を絞り出していたが、見事に拳を突き刺して多少なりとも自分が優勢になったかと感じたであろうルージュであったが、視界が殆ど相手の腰辺りしか見えない状況で、後から見せた捩じり方が確実に自分の側へ振り向こうとしていたのを察知する。


(流石にまだ無理か……)


 本当は自身のパンチ1つで体勢を崩させてやるぐらいの意気込みを持っていたのかもしれないが、それは求め過ぎた欲に過ぎないと自覚し、それでもシドラオの反撃がこれから来る事も同時に掴んでいた為、一旦距離を取り、シドラオの木槌状の腕の振り落としを回避する。




「へっ、その程度かお前は!?」


 2度、木槌状の腕をルージュ目掛けて振り付けたが、それは両方とも回避されてしまう。横振りでルージュを叩きつけようとしたが、回避されてしまい、重量も増加していたであろう両腕の先端をすぐに身体の前に戻す事が出来なかったが、胴体ががら空きになったからと言ってそれで黙って反撃を許す事をシドラオはしない。


 無造作な前蹴りでルージュを突き飛ばす。


 距離を取ったはずのルージュであったが、シドラオの足が伸びた事で、それが無理矢理ルージュに届かせる事となり、跳び退いている最中であったルージュに命中させたのだ。


「!!」


 防御の体勢は作っていた為、蹴りそのものには大した損傷になるものは無かったのかもしれない。相手の足が物理的に伸びた事に対する驚きの方が強かったのかもしれない。




――シドラオの足元に冷気が立ち上がり……――




 床の炎上の規模は徐々に小さくなっていたが、炎の代わりとなっていたのか、氷がシドラオの足元から出現し、両足の動きを完全に封じてしまったのだ。


「ん? 足元……。これは誰の仕業だ!? 言ってみろ!」


 シドラオは前進も後退もする事が出来ず、勿論原因は自分の足元を見る事で理解をしたが、これを絶望の時間としては考えず、寧ろ連携を取る事が出来ている相手達への評価であるかのように、周囲に向かって言い放つ。答えを持っている張本人が4人の中に必ず混じっていると、シドラオは読んでいた。


「答えはわたしだよ? 随分余裕な事だねぇ?」


 足元の氷はマルーザの放ったものであり、既に最初にいた場所から移動していたマルーザは、炎に包まれたシドラオの横に移動しており、ルージュへの更なる追撃を妨害する目的で氷をヌンチャクから発生させ、それを足元へ向けて解き放っていたのだ。


 今でこそ足に力を込め、無理矢理に氷から足を引き剥がそうとしていたが、口調に焦りが一切見えなかった為、氷で足元の自由を奪う等をしてやっと目の前の怪物と互角に戦う事が出来ているか、それともまだそこまでに至っていないか、色々とマルーザの中では戦略的な思考が巡らされていたに違いない。




「アタシの事も忘れない事ね!」


 マルーザとは反対方向にいたサティアの歌手のように澄んだ声が響くが、緑の手袋で保護された両手の間に水の球体を生成させていたのだ。胸の前で作り上げたその人間の頭部程の大きさの球体を、自身の振る動作を使う形で投げつけた。決して太いとは表現出来ない腕で投げられた為、そこに魔力もいくらか上乗せをしていたのだろうか。


 水の球体は動きを封じられたシドラオに飛んでいくが、それをシドラオは見落としていなかった。


「忠告感謝だ!」


 もしかするとサティアの今の声がシドラオにとっては攻撃の知らせとして届いてしまっていたのだろうか。左を振り向くと水で生成された球体が自分目掛けて飛んできていたのだから、それを黙って直撃させるなんていう思考を走らせなかったのだ。


 木槌状に変化させていた左手で球体を打ち返す。




――鋭い音と共に球体は弾かれる――




「直撃すりゃ勝てただろうけど甘いぜ?」


 水で生成された球体は木槌に弾かれても破裂すらせず、実験の空間の遥か向こうでまるで鉄球が落下したかのように形を崩さずに転がり続け、そして数秒の経過で本来の水のように液体状に戻っていった。


「さてと……おらぁ!!!」


 再びシドラオは声を放ったが、それは足元に張り付いている氷に対する対処の為の気合の(たぐい)であったようであり、両手の木槌状の先端を足元へ向かって振り落としたのだ。




――足元の氷を乱暴に叩きつけたのだ――




 ただの形だけでは無く、強度も実際に増大していたであろう木槌状の両手は氷を見事に粉砕してしまい、そして炎も既に弱まり、そして無残にも粉々にされた氷の欠片の散らばるその場を一新させるかのように、シドラオは身体を捩じり始める。


「まだ続くぜ?」


 木槌状の両手の先端が遠心力でやや激しく振り回されたが、両手はまるで骨が腕の中に存在していないかのように奇妙な巻き付き方を見せていたのだ。ぴったりと胴体に巻き付いた両腕の先端は胴体に接触し、回転が止まるとほぼ同時に木槌の形状は解かれていた。代わりに何をイメージしたのか分かりにくいような単純に平たい形状へと変化させていた。


 発言の通り、次の行動をシドラオは発動させた。




――巻き付かせた両腕を再び振り回し……――




 身体から離れるように遠心力に頼るように腕がシドラオから離れていくが、平たくなった先端は風圧を発生させる構造であったのか、激しく身体の周囲で回転するように離れると同時に激しい風圧が発生したのだ。


 純粋に腕の激しい回転が風を発生させていたのは確かだが、それは散らばった氷を吹き飛ばし、僅かに残っていた地面の炎を吹き消してしまう。自分を陥れようとしたそれぞれ冷気と熱を伴った物質を片付けた後に、自分を囲んでいる4人に対し、シドラオは宣言した。




「お前らなかなか面白れぇなぁ? マチルダ様のご褒美もいいが、お前らの身体もきっと最高だろうなぁ? ぜってぇ仕留めてやるからなぁ?」


 この戦いに勝利し、4人を改造の為の材料にする事が出来た時はマチルダからの授かり物が待っているのだろう。そして、マチルダから受け取る事が出来るものの他にも、個人的に目の前の人間の姿をした3人を味わうという快楽の予定があった為、全てを自分の思い通りにしたかったのだろう。


 しかし、この緑の体皮を持ち、横に非常に広い口を持ったこのシドラオを囲んでいる4人の目付きは、この怪物の男の思い通りにさせないという反発の意志が強く表れたものだったのは言うまでも無い。

一応33節はこれで終わりです。ですがシドラオは4人の事を改造する為の材料だとしか思ってないのでここで4人は負ける訳にはいきません。負けてはいけない戦いに毎回出されてるのがリディア達で、こういう話だともし負けてしまったら敵達に好きなようにされてしまうから絶対負けられないんですよね。

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