表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒衣を纏いし紫髪の天使  作者: 閻婆
92/135

第33節 《基地に潜む竜人の女性 同じ竜の血を引く少女との再会》 2/5

今回も粗暴な態度が特徴的な竜人の女であるマチルダとの戦闘です。奴は零体を武器に戦いますが、リディアとルージュは勝利を掴めるのでしょうか? ただ、前回の時点で2人ともそれなりにピンチに陥ってましたが……。








             竜人の女性マチルダ


             単に言動が粗暴なだけではない


             緑を帯びた霊体を手足のように扱う事が可能


             戦っていたリディアとルージュ


             しかし、今は霊体達によって束縛されており……








(こんな……もんで負ける……かよ!!)


 両腕と両脚を押さえ付けられ、そして背後から口元を腕で押さえ付けられていたルージュであったが、自分を手と腕で縛り上げている緑の霊体達の思うようにさせ続ける訳にはいかないと感じたルージュは、無理矢理に自分の手の上に炎を生成させ、そして自身の周囲を燃やし始める。


 高熱には耐えられなかったのか、炎で炙られた霊体達はそのままルージュの身体から消滅していった。ルージュ自身は衣服含めて一切燃えてはおらず、ようやく身体が解放された事で一呼吸を整えようとしたのか、身体と頭と、そして炎という属性や性格を表しているかのような赤い髪を揺らしながら再びマチルダと目を合わせた。




「さてと、殺さない程度に弱らせるとか、お前今言ってたか? そんなデブみたいな格好して何すんだよ?」


 先程言い放った言葉をルージュは聞き取っていたのと同時に、そして覚えてもいたのだろう。


 見て分かるような太さを両腕と両脚に身に着けたマチルダに、見た目から伝わる個人的な印象をルージュは伝えてやった。指を差す動きも見せていたが、それは霊体が巻き付いた腕や脚に対してのものだろう。


「今言った通りの事するだけだ?」


 それはマチルダの嘘の無い言葉だったのだろう。緑の霊体によって腕自体は包まれているが、その先にある手は包まれてはおらず、その手を握ったり開いたりというまるで何かの予兆を思わせるような雰囲気を漂わせていたが、マチルダは実際に行動に出したのだ。




――その場で殴る動作を始めたが……――




「飛べぇ!!」


 殴る動作自体はルージュにまるで届いてはいなかった。しかし、届かなかったのは意図的なものだという事は、ルージュにとってもすぐに理解出来た事だろう。




――霊体がルージュ目掛けて発射される――




「おっと! そんな事しか出来ないのか!?」


 ルージュは目の前から飛んできた1体の霊体を身を屈める事で軽々と回避してしまう。


 視界に入っている真正面から投げつけられた所で、それをルージュの反射神経で回避出来ないはずが無かったのだろうか。


「まだ出来るぞおい! なめんなよおい!!」


 両腕に霊体が巻き付いている限り、腕を振りかぶればいくらでも霊体を飛ばす事が出来る様子である。


 2発目、3発目と、相手に一息吐かせる間も与えないかのようにルージュを狙いしつこく腕を振りかぶる。これと同時に霊体がまるで機械のように発射される。




――しかしルージュも黙っている訳が無い――




 まず思いついたのが横に向かって走り出す事であった。ルージュのいた場所を霊体が虚しく通り過ぎていく様子を背後で感じながら、徐々に接近する方向で進める事にしたようである。


「命中甘いぞ! デブってまともに狙えないのか!?」


 横に逃げるように走りながらルージュはマチルダの本来であれば強化されたはずの肉体の事をただの侮辱の(まと)としか考える事をしなかったようだ。しかし、立ち止まっては確実に命中してしまうのと、命中した時にどれだけの痛みが身体に走るのかを確かめる訳にもいかない為、まずはふと目の前に見えたテーブルの上に走りながら跳躍で飛び乗った。


「お前こそ逃げてるだけだろ!? そこにいて何がある!?」


 テーブルに乗ってほんの一瞬だが、ルージュの走る動きが止まった為、マチルダは自分に攻撃をしてこないルージュに向かって今相手がやっている事を口に出すと同時に再び拳を突き出した。今度は両腕を一緒に、である。




――霊体が勿論のように発射され……――




 ルージュはただ何となくテーブルに飛び乗った訳では無かったようだ。マチルダが行なった発射と同じタイミングでルージュは壁に向かって跳躍を開始していた。


 テーブルは粉砕、という程では無かったが霊体の衝突で激しくずらされ、少し離れていた壁に激突していたが、ルージュは壁に飛び移っており、それで霊体による攻撃を回避していたと見て良さそうだ。


 そして壁を踏み台にするように蹴り、そのままマチルダへと跳び掛かる。両手を握り締め、その両方を激しく燃やしながら。


「こうすんだよ!!」


 燃え上がらせた拳でマチルダに飛び掛かるように殴りつけるつもりだったのだろうか。


 壁を蹴り、そこから離れている最中に拳の炎がリーチを伸ばしており、剣、というよりは棍棒とでも言うべきなのか、太い炎柱となったそれが両手に宿る形でルージュに攻撃手段として託しているようであった。


 棍棒の形状となった炎で上から殴り掛かろうとしていたルージュに対し、マチルダは黙っていなかったはずだ。




「お前ら! やれ!!」




――合図とほぼ同時に、ルージュの動きを止められる――




 本来であればマチルダの至近距離にまで到達出来たはずだったルージュだが、背後から引っ張られるように前進を止められてしまった。原因は何者かが足首を掴んだからだ。


「!? なんだ……うわぁ!!」


 ルージュは空中で背後から足そのものを実際に引っ張られる感触を感じたが、それは動きを止める為では無く、ルージュの進行方向とは逆の方向に行かせる為だったようだ。


 その場で横に向かって円を描くように振り回され、そしてマチルダから離されるように投げ飛ばされてしまう。ジャイアントスイングのような要領で投げ飛ばしたのは、ルージュの背後から突如出現した霊体の仕業であった。


「おいおいあたしを殴れると思うなよボケ!!」


 床に派手に転がるルージュを眺めながら、自分への攻撃が叶わなかった事を責めるかのように余計な罵倒を放つ。しかし、ルージュは転がりながらもその中で体勢を整え、すんなりと立ち上がってしまう。




「偶然今だけ失敗しただけだって! ってかリディア……ってリディア!!」


 腕や胴体に受けてしまったそれなりの痛みを誤魔化す為なのか、ルージュは上体をほろいながら、あくまでも今の瞬間だけ思い通りにならなかっただけだと言い返す。


 しかし、ふとリディアを取り囲んでいた霊体の塊が気になり、そして未だにそこからリディアが脱出しない事に不安を感じ始め、叫んでしまう。


「今頃お友達の心配か? でもなぁ、お前は今あたしと遊んでんだろぉがぁ!!」


 自分から目を逸らすルージュに向かって、マチルダは自分の場所に来いよとでも言っているかのように親指を自分に向けて差した。すると、ルージュの両側に緑の霊体が出現する。




「!! また変な……幽霊か!!」


 濃い紫のジャケット超しに両腕を2体の霊体に掴まれたルージュは、強引にマチルダの目の前へと押されるように移動させられる。両足で踏ん張りながら抵抗をするが、妙に力が強かったせいで霊体には逆らう事が出来ず、半ば諦めるように力を抜き、マチルダとやり合う前提で考える事に決めたようだ。


「来いよ!! 殴り合いの再開だぞおい!!」


 霊体が巻き付いた両腕を振り回しながら、マチルダは拳と拳の戦いを求める。自分に相当の自信があったからなのか、少しだけ不安な表情を浮かべていたルージュとは対照的に、気味の悪いにやけ顔を浮かべ続けていた。




「リディア!! お前無事なんだろうなぁ!? 黙ってたら分かんなっ、うっ!!」


 ルージュはマチルダの元へと押し出されていたが、やはりリディアの事が心配でしょうがなかったのか、リディアがいるであろう霊体の山に向かって叫びながら名前を呼ぶが、距離が縮まっていた所にマチルダも自分から歩み寄り、そしてルージュに一撃拳を飛ばす。


 すぐに両腕を、霊体から引き剥がすように動かし、顔面を防ぐが相手の一撃は重たかった為、数歩仰け反ってしまう。


「だからなぁ自分の心配しとけよ!!」


 よろけた体勢を正そうとしているルージュに対し、マチルダは自分の両手を握り合わせ、飛び上がりながらルージュの頭部を上から狙うように両手合わせの拳を叩き落す。




――僅かにリディアを包んでいた霊体の塊が膨らんだ……――




「リディアだったか!? あいつはもうあのまま失神して終わりなんだよ! 実験材料にすんならああやっちまうのが一番なんだよ!」


 マチルダは自分が叩き落した握り合わせた両手の拳の下で、両腕で防御体勢を取って耐えたルージュに向かって、実際の視線の高さの意味でも、そして気持ちとしての意味でも見下すような罵声を無駄に力を込めながら飛ばす。どうやら霊体で包み込むあの手段には意味も目的もあったようであり、内部でのリディアの様子を思い浮かべたのか、目元が奇妙に吊り上がる。


「けっ! どう……だろうなぁ、あんなしょぼいやり方でやられるとは思ってやろうとも……思わないけどなぁ!!」


 マチルダの非常に重たい上からの拳を受け止めているルージュは、マチルダの言った通りの結末を迎えていない事を心の奥で祈りながら、そして当然のようにマチルダにはそんな気持ちを読ませないかのようにわざとあの密封した作戦がリディアを追い詰める事なんて出来ないと言い放ちながら、両手に炎の力を溜め始める。


 その場で炎を伸ばし、マチルダの顔面に直撃させてやろうと炎の力を込める。




「おい危ねぇなお前! 火なんか使いやがって!」


 危機を察知したマチルダは上体を後方に反らし、それに伴い両手もルージュから離してしまう。火で炙られるのは平気では無いからか、炎を出現させたルージュからは距離を取る事を第一に考えたらしい。


「お前だって変な幽霊みたいなの使ってんだろ!? 互い様だ!」


 ルージュはあくまでも自分の能力を駆使しているだけであった為、自分の事を言うのであれば、相手の扱う霊体に対しても似たような言い分をぶつけたいと本能で思ったのだろう。


 両者共に能力を駆使して戦うという点で共通点があると気付いたらしいルージュだが、それがこの世界の為なのか、自分達の違法な実験を達成させる為なのか、その違いは分かっていたはずだ。


 それでもリディアの状況を明確には把握しておらず、異変には気付いていなかった。




――突如、リディアを包んでいた霊体の塊が四散する――




 霊体達は塊の中心からそれぞれ吹き飛ばされ、衝撃が強かったのか、それとも塊にするという役目を果たす事が出来なくなり、存在意義が無くなったからなのか、壁や天井に接触すると同時に姿を消滅させていく。


 それら霊体はルージュやマチルダには接触せずに済んでいたが、霊体達を吹き飛ばした張本人であるリディアが中心部だった場所に立っていた。両腕を広げ、自分のそれなりに女子として膨らんでいる胸部を敢えて見せつけるかのような姿勢を少しだけ継続させていたが、溜まっていた疲労に負けたのか、両腕をぶら下げるように落とし、やや前のめりになって深い呼吸を始める。


「はぁ……はぁ……悪いけど、私あんな小細工でやられるつもり、無いからね?」


 リディアとしては呼吸を阻害されていたというよりは、身体を締め付けられていた事による苦痛の方が大きかったのかもしれない。しかし、意識はしっかりと残す余裕はあったからなのか、内部で衝撃波を放つ為に力を込めていたようである。


 痛みも締め付けも、そして束縛も無くなったリディアはマスクの下で口元をにやつかせながらマチルダへと言い放ってやった。肩超しに後ろに向けて差されていた右の人差し指は、吹き飛ばされた緑の霊体のどれかを示していたのだろうか。




「リディア! ま、まあやっぱり無事だったのか!? お前らしくてナイスだぞ!」


 塊を吹き飛ばした瞬間からルージュはリディアの様子を目視していたが、声をかけるタイミングをここで掴んだようである。平然と背筋を伸ばしたリディアを見て安心しきったのであろうルージュは本当はどのようにしてあの状況を耐え切ったのかを疑問に感じながらも、やはり窮地を自力で抜け出す根性に対しては素直に評価をしたくなったようだ。


「けっ! 使えねぇ連中だ……」


 リディアにあっさりと負けてしまった霊体達に対して呟いたのだろうか。マチルダは舌打ちをしながら、しばらくリディアを凝視していた。




「使えない、じゃなくてまともに使えてない、じゃないの? あんたの命令で動いてるんでしょあの幽霊達って」


 マチルダの霊体を扱う技術力に疑問を持ち始めていたリディアは、ルージュの隣に歩き寄りながら、他者のせいにするものでは無いと、特に意味も無く自分の胸元の目の前で下から突き上げるように持ち上げた拳を握り、一瞬電撃を走らせた。


「お前に指摘される言われなんかねぇよ! それにお前バテてんだろ? 終わらせてやるよぉ!!」


 自分の戦い方の弱点を知られたような気分になったのか、最初こそは怒声を飛ばすマチルダであったが、やはり霊体に囲まれていた時のダメージが残っているとしか思えず、ルージュと2人並んでいる状態のリディアを目掛けて殴り掛かろうと突然走り出すが。




「いや、別に消耗はしてないけどね!!」


 リディアはただ立ち止まったままマチルダを待ち構えるのでは無く、寧ろ自分からマチルダへと向かい、ルージュをそのまま置いて行くようにして敵対者の竜人の女性へと突っ込んでいく。


 真正面から飛び込むように見られていたであろうリディアであったが、もう1つの行動を挟もうとしていた。




――マチルダの目の前から、リディアの姿が消滅し……――」




「消えやがったか!! どうせ後ろからやんだろ!!」


 マチルダは目の前で姿を消滅させたリディアに対し、瞬間移動で背後に周るとでも読み取ったのか、単純に背後を振り向き、そして殴り掛かる。


 しかし、そこにリディアは現れず、誰もいない空間を拳が空気を切っただけで終わってしまう。


 そして、リディアは再び姿を実体化させた。先程消えた場所と同じ場所に。背中を向けているマチルダに一瞬笑顔を向けた後にその場で跳び上がる。




――回し蹴りを頭部目掛けて放ち……――




 マチルダも気配を感じ、元々リディアがいた場所、消えた場所とでも言うべきか、その方向へと向き直すが、その時にはもうリディアの蹴りが顔面へと迫っていた時だ。


 すぐ身体を守る体勢を取ろうとしたようだが、遅かった。いや、リディアの方が速すぎたのだ。


「ぐぁう!!」


 顔面に力強い蹴りを真っ直ぐ受け、思わず倒れ込みそうになるが、敵対者の前ではそう簡単に弱い部分を見せるつもりは無かったのか、気合で立ったままを維持させていた。


 しかし、リディアにはもう1人の仲間がおり、怯んだマチルダに遠距離からの追撃を目論んでいたようであった。




――マチルダの両腕と両脚が突然炎に包まれる――




「お前悪いなぁ!! そろそろ本気でデカい事やらせてもらうからなぁ!!」


 ルージュはまるで炎を遠隔操作でもするかのように両腕を広げ、(てのひら)にも炎を灯らせ、そして指先も何かを打ち込むかのように細かく動かしていた。


 一方でマチルダは両腕と両脚を炎で包まれていたが、それは引き剥がす事が出来ず、そして外に向かって引っ張られる力に逆らう事が出来ずにいた。


「て、てめぇ!! 何すっつもりだおい!!」


 ルージュ自身の肉体的な力では無く、炎という能力による物理的な力とは言え、引き千切る等の抵抗が出来ず、力で勝てない事と自分を拘束してきた事が合わさり、罵声を放つ事しか考える事が出来なくなっていたようだ。マチルダは自分に巻き付けていた霊体が燃やされている事に気付くが、どちらにしても炎は自分からは離れてくれない。




「とっておきな事だよ! これもオマケだ!!」


 それだけを叫ぶように言ったルージュであったが、開いていた両手を強く握り締めたと同時に、マチルダは天井から伸びた炎によって引っ張られる事になる。ルージュは炎を手足のように操る事が出来るのだろうか。




――マチルダの身体が天井付近にまで持ち上がり……――




「やめろ!! てめぇホントやめろ!!」


 抵抗も出来ずに天井にまで引っ張られ、上から見下ろすような状態となったマチルダだが、自分が思うように攻撃を仕掛ける事も、反撃をする事も出来ない姿勢のせいで自分が明らかに不利になっていると感じ、怒声を放つが、下にいたルージュの動きは止まらなかった。


「とぉっ!!」


 ルージュはどこかのヒーローのような掛け声と共に跳躍をし、そしてマチルダの目の前にまで到達する。マチルダの足元には、自分の足の踏み場としてなのか、ルージュ自ら炎で作った円形状の足場を設置し、そしてマチルダの前で立った状態となる。




「やめろやめろ、それしか言えないのか? でも無理……」


 まるでもう抵抗が出来ないマチルダに宣告でもするかのように右手をマチルダのそれなりに細く整っている首に伸ばし、そのまま強く握り絞める。


 ルージュの目的は右手だけで相手の首を絞め付ける事では無く、次の行動の為の準備の1つだったに過ぎない。




――マチルダの身体がルージュによって持ち上がる……――




「に決まってんだろぉ!!」


 ルージュは右手だけでマチルダの首を掴んでいたが、右腕全体を紫のジャケットの袖超しに炎に包み込み、腕力自体を強めようとしていたのだろうか。そのまま派手にルージュは自分の頭上を越えさせるように右腕だけで持ち上げ、そのまま床へと、斜めに向かって投げ飛ばす。


 床の大部分を覆う、という程の数は存在していなかったテーブルや椅子には直撃せず、綺麗に床に落下したマチルダは勢いと共にそのまま床を転がり、壁に激突してしまう。そして倒れたまま動かなくなる。




「よっと! さてと……今のはかなり響いたか? あいつにとって」


 ルージュはマチルダを投げ飛ばす為に炎の足場に乗っていた為、天井付近にいたが、華麗に飛び降りながら、壁の隅で倒れた姿を曝け出しているマチルダを見て自分の今の威力を思い浮かべる。


「ルージュさん派手でしたね。まあただ気絶でもしてるだけだと思いますけど、どうしますかこの後?」


 リディアも流石に今の天井付近から投げ飛ばされる攻撃にはマチルダでも耐える事が出来なかったのかと、多少哀れむ気持ちを混ぜながらも、本来の自分達の目的を思い出す。実験室は目の前である為、本来であれば突入した上で機能を潰す必要があるだろう。




「どうするって……確かあの部屋の先が実験室みたいな事言ってたからそこに突撃……は()めとく、か?」


 暴力的でいちいち重圧的な気迫を飛ばしていたマチルダを黙らせた事で気が抜けてしまったのか、ルージュはリディアの質問に迷うような対応を最初だけしてしまうが、マチルダが倒れている横に1つのドア、他の物とは異なり、鉄の物々しい装飾が施されたそれに対し、指を差す。


 しかし、内部へ進む事に対し、危機感を思い出した様子だ。


「いや、私は行く気ではあったんですけどね。自分で言うのもあれですけど、度胸はちゃんと、ありますよ?」


 まるで遠回しに行く事を拒んでいるかのような表情を向けていたルージュとは対照的に、リディアは次の目的に向けて気持ちを切り替えるのと同時に何が来ても動じないような強気な目付きを浮かべていたのであった。マスクで表情はほぼ目元しか確認出来ないが、青い瞳は確かにリディアの心を相手に伝えていたはずだ。




「お前また逞しくなったか? あ、そうだ、この際だから敢えて言うけどホントはわたしにもう1人大事な奴がここに来てくれる事になってんだよ」


 黄色の瞳でリディアを横目で見ながら、思わず揶揄(からか)うような笑みを浮かべるルージュだが、実験室と思われる部屋に即座に飛び込もうと考えなかったのは、戦力として自分達を助けてくれる存在がこの基地の外にいたからであったようだ。


「大事な人……ですか? 恋人さん?」


 ルージュの他の誰かが来る事は聞かされていなかったであろうリディアは、正体を自分で想像してみたが、大事という重たい言葉を使っている辺り、友達や仲間とはまた違う意味を持った相手なのかと、まるでルージュの返答を試すかのようにリディアは訊ねる。




「あ、違うわ。あいつは最近連絡取れてないって、さっき言わなかったっけ? 大事っていうか、友達だ! サティアだよ!」


 何かを期待しているかのような目を見せていたリディアに対し、ルージュはリディアの期待に反する答えを出した。


 大事というのは、ルージュにとっては友達も大事な存在として見ているようであり、リディアとは大事という言葉の捉え方が異なっていたようだ。


「サティアさんですか? 今はなんか別の事してるんですか?」


 対面した事があったのか、リディアはなるほどと心で言っていそうな表情をマスクの裏で見せながら、どうしてルージュと同じ場所にいなかったのかを聞く。




「まあそうだな。あいつ今なんだっけ、野盗に襲われそうになってたエルフの事助けるって言ってちょっと離れてたんだわ。んで助けたらすぐこっちに来るってなんか言ってたな」


 ここにいないという事は、別行動をしているというのは確かな話になる為、ルージュは純粋にそれが正しいと答えた後に、今何をしているのかを説明する。事前にルージュに伝えた上で一度ルージュから離れていたのだろうか。しかし、向こうの事情もとてもあっさりと解決出来るような事柄とは思えないが、ルージュの余裕のある表情を見る限り、特に野盗を厄介者とは認識していないようにも感じられる。


「エルフ、ですか? そういえば私の方でもエルフの方がいたんですけどね……」


 狙われる機会が多いと改めて感じ出したリディアであったが、数時間程前に戦っていたあの巨大な怪奇植物も、ギルドの受付の場で出会ったエルフから紹介されたものであった。協力する形で戦った訳であったが、他にもエルフと関わり合いと、それに関連した戦いに巻き込まれている者が他にもいたのかと、エルフ達の辛さを思い知ったようでもあった。




「お前の方でもエルフの事助けてたのか? まあなんか野盗の連中は確か……言ってたんだよな。魔力があるから実験の為のいい燃料になるとか、随分な事言いやがってたんだよ」


 リディアの方でも誰かの為に戦っていた事に関心でも感じたのかもしれない。しかし、ルージュはエルフを狙う理由を野盗から直接聞いてしまっていたのだろうか、その時に相手が漏らしていたであろうエルフを狙う理由が当然のように納得出来る訳も無く、細い眉を歪ませていた。


「それって要するにあれですか? 実験の為の……まあ奴らが言う燃料の確保の為にエルフを捕らえてるって事、なんでしょうかね?」


 何となくリディアはエルフをほぼピンポイントに狙おうとする理由を分析してみたが、燃料という表現方法がイマイチ具体的な意味として思い浮かべる事が出来なかったのか、そのままの言葉を使いながらルージュに聞き直す事しか出来なかった。機械へと注入する液体成分と、エルフの肉体を同格として扱うにはリディアも抵抗があったと思われるが。




「ざっと言うとそんな感じだ。そんでエルフの身体自体は戦闘用に改造して自分らの言いなりにさせるって話だ。そんなもん止めないと無理な話だろ?」


 リディアの中で纏めた話はほぼ正解だったようであり、ルージュは付け足しとしてもう少しだけエルフに関する話を聞かせてみせた。エルフの内部に蓄積されているエネルギーだけでは無く、肉体そのものもまた利用するようであり、これもまたルージュにとっては無視出来たものでは無かったらしい。


「随分酷い話ですね。じゃあ、とりあえずあの部屋には思い切って突入した方がいいって事でしょうか? 私は行きますけど」


 エルフを狙う野盗達に対し、憎悪を蓄積させながらリディアはやや低めな声でルージュに答えるが、ここで一度話を戻し、鉄の装飾が施されているドアの向こうにある空間へと突撃するかどうかという話へ切り替える。リディアはもう度胸を固めていた様子だ。




「行くのか? いや、もし行くならサティアが来てからの方がいいと思うぞ? なんか明らか異常な雰囲気あるしあのドアの奥は」


 ルージュは最初こそは突撃を躊躇(ためら)っていたが、それは自身の弱さから来るものでは無かったようだ。もう1人の心強い仲間が来てから、安全面を尚更考慮した上で突撃しようと計画をしていたようであった。危険な目に遭うのはルージュだけでは無いのだから。


「……まあルージュさんがそう言うなら……。所で、サティアさんと連絡って、取れますか?」


 リディアは遠回しに自分がこれから突入しようとしているのを止められているような気分になり、ルージュに言われたという部分をやや強調するように自分で言いながら、自分の今の行動を改める事に決めた。


 しかし、その話の流れであればサティアと言う人物がここに来なければ次の行動に入る事が出来ないという事になる為、ルージュに頼み込む事に決めた。




「ホントはそろそろ来てもいい頃だけど、一応してみるわ」


 予定としては丁度今ぐらいにサティアの方からこの基地へと飛んでくるはずだったようだが、現在、彼女が来る気配は一切無かった為、ルージュはリディアに言われた通りに腰のポケットから無線機を取り出し、通信を開始する。




「あぁサティアか? わたしだ、ルージュだ。お前今どうなの? 連中片付いたのか?」


 通信は繋がったようであり、ルージュは右手に無線機を持ち、それを耳に当てながら通信機の向こうにいるであろうサティアに話を持ち掛ける。やる事を終わらせたのかどうか、最初にそれを聞いていた。




「あぁマジ? だったらそろそろ来てくれるか基地の方に。こっちもボスみたいな変に女アピールしてくるウザい奴ぶちのめしたとこだから、後一息ってとこだからお前早く来いよ!」


 その口ぶりからすると、もうサティアの方は用件を済ませていたのだろうか。ルージュも自分達に向かってきていた脅威を撃退したと説明をした上で、やはり関係に上下の何かが無いからこそ言えるであろう態度で催促をしていた。


「そんな命令口調で言わなくても……」


 リディアはノリの良い雰囲気を見せながらも、言葉遣いがやはり荒いままのルージュを横から見ながら戸惑っていたが、実験室が存在するであろう鉄の装飾のドアから音がするのを確かに聞き取った。


 リディアの青い瞳は当然そちらへと向けられた。




――ドアの奥からゼノが現れる――




「マチルダぁ丁度今実験してる奴の結果……っておぉい!! マチルダ!!」


 ドアから出てきたのは先程リディア達と戦い、あっさりと敗れてしまったゼノであったが、知らぬ間に実験室へと入り込んでいたようだ。


 しかし、ドアを出てマチルダに呼びかけるなり、壁に密着するように横に倒れている大切な女性を確認すると、大声を出しながら走り寄った。




「あいつ、いないと思ったらあんなとこにいたんだぁ……」


 マチルダと戦っている最中にゼノがいつの間にかいなくなっている事には薄々気付いていたリディアであったが、実験室にいた事に今初めて気付いたようだ。考え方によっては実験室に避難していたと解釈出来てしまうかもしれないが。


「悪いサティア、また騒ぎになるから一旦切るぞ!」


 ルージュもゼノが実験室から現れた事を確認すると、もう通信機で話を交えている場合では無いと認識したからか、やや一方的な態度で通信を終わらせると話を閉じてしまう。そして通信機を腰のポケットにしまうなり、黄色の瞳をゼノへと集中させる。




「てめぇら!! マチルダに何しやがったんだぁ!? あぁ!?」


 マチルダはゼノに頭を向ける形で倒れていたが、しゃがんでいたゼノはマチルダの上体を支えるように持ち上げながら、リディアとルージュに怒声を浴びせる。そこには質問も含まれていたが、マチルダに痛い思いをさせた事が絶対に許す事が出来なかったようだ。




「いや、普通に戦っただけなんだけど?」


 リディアとしてはどうせゼノが自分達に殴り掛かって来た所であっさりと返り討ちに出来る事を分かっていたからか、怒鳴り立てるゼノに動じる事もせず、ただ平然とマチルダにした事を説明した。言葉の通り、戦闘を行い、結果としてマチルダを倒れさせたというだけだ。


「マチルダ、だったか? そいつ確かお前より強いんだよなぁ? そんなとこで怒鳴り散らした所でお前ただ弱い犬が吠えるっていうあれになってるだけだぞ?」


 ルージュはうろ覚えだったのか、竜人の女性の名前を本当にそれで正しいのかどうかを確かめるような言い方を聞かせた後に、ゼノよりも強いはずのマチルダが今目の前で倒れている事がどういう事なのかを思い知らせるかのような態度、表情を見せつけた。


 弱いはずなのに怒鳴り散らしている様子に思わず笑いそうになるのを堪えながら、弱い事を隠す為に敢えてわざと騒ぐ姿を見せているであろうゼノに今の自分の実力を理解させようとしていた。




「マチルダぁ! まだやる事あるだろ!? 夜の楽しみもまだ俺満足してないんだぞ!」


 ゼノはルージュから目を離し、上体を支えられながら意識を朦朧(もうろう)とさせているマチルダの名前を叫びながら、恐らくは人前ではまず見せられないであろう行為をここで再び叫びながら、マチルダの異常に短い緑のスカートに手を伸ばし、内部に手を這わせた。


「質問に見事にシカトしやがったあいつ。しかも残ってる事って、そっちの方かよ……」


 ルージュとしてはいくら相手が愛人であるからと言って、デリケートな部位に手を伸ばす事を黙っていてやろうとは思わなかったのかもしれないが、やはり自分の先程の問いに一切答えなかった事に対して、ゼノの精神力の弱さを思い知ったような気がした為、いちいち今のゼノの行動を止めようとは思わなかった。


 だが、いつどんな時でもマチルダの肉体を求めようとしているのは、なんだか野盗だから、というよりはそもそも人としてどうなのだろうか、という感情もルージュに生まれていたのかもしれないが。




「まああんな男だからそれが普通だと思いますよ?」


 リディアもルージュの隣にいるのは変わらないが、ゼノの今している行為にはただ呆れしか生まれなかったようであり、野盗以前にゼノの何か足りていないものを感じながら、マチルダの様子が変わる事を青い瞳が見逃さなかった。




――マチルダの目がゆっくりと開く――




「ゼノ……君……。あたしは大丈夫。ゼノ君の勇気の声なんか聞いたら痛みなんか吹き飛んじゃった!」


 マチルダはゼノによって倒れていた身体を、上体だけを立たされたような姿勢で支えられていたのだが、元々意識自体は完全には飛んでいなかったのだろうか。ゼノに呼びかけられるのは兎も角、身体を触られる事で意識がよりはっきりとしてきたのか、それとも折角恋人であるゼノが言葉をかけてくれていたからなのか、目を開くと同時にゼノにしか見せつけないような笑顔と優しい声色を見せた。


 ゼノの左手は思い切りマチルダの下半身に伸びていたが、寧ろそれを一切気にも留めずにゼノの顔と接触してしまうのでは無いかと思うくらい、マチルダも顔を近づけていた。


「俺はマチルダが無事でいてくれたら何もいらないぜ。痛い思いしたんだろうなぁ」


 無精髭で荒れているゼノの顔も、マチルダからすればそれすらも男の魅力にしか見えないのだろうか。そしてゼノは心配の声を至近距離で聞かせながら、右腕でマチルダを包むように抱き寄せた。




「あ、あぁんそこは……。大丈夫、あの最低な連中叩きのめしたらあたしのお尻ぐらいいくらでも撫で撫でさせてあげるから今は待ってね?」


 マチルダは愛しているゼノであれば、接触される事を喜んで受け入れる性格なのだろうか。しかし、今は敵対者がまだ基地の中にいるのだ。今は我慢して敵対者の排除を優先にさせなければいけない事をゼノに甘い声で伝える。


「無理だよぉ~。今じゃないと俺我慢出来なくて死んじゃう~」


 愛する女性から結局の所、触るのをやめるように頼まれているのにも関わらず、ゼノは無精髭の影響で実年齢以上に老けて見られているであろう容姿で、我儘でも言っているかのような態度を見せだした。言葉の通り、今ここで触る事をしなければ自分を抑える事が出来なくなるようだ。




「もぉゼノ君ったら、甘えんぼ~さ~ん」


 マチルダは本音では触られる事を拒否していなかったのか、自分の衣服で隠れていない腰や、そしてスカートの中も撫でられているというのに、それを強引に振り払う訳でも無く、ただゼノの行為を受け入れ続けていた。ゼノに対して子供扱いするような言い方も見せていたが、寧ろマチルダ本人もその場で異性との身体の触れ合いを本格的に初めてしまいたいと密かに願望を抱いていた可能性もある。


 リディアとルージュの存在を忘れているようでもあった。




「何やってんだあいつら……。また始まったぞ」


 ルージュは再度2人の身体を触る、触られるの関係を見せたやり取りを見る事になってしまい、その場から離れてしまいたいと意識しているような目付きを見せていた。何故戦いの最中に異性の肉体を求めるような行為が出来るのか理解が出来ないままであったし、勿論ゼノの心理を今後探ってやろうとも思わないはずだ。


「人前で堂々と出来るのがある意味羨ましいですよね」


 リディアもマスクの下で溜息を漏らしていた。友達や仲間の前ではまず聞かせないであろう気力や心が抜けたような低い声色でルージュに言い返していた。勿論今の感情の原因はゼノ達の行為であって、ルージュに直接呆れた感情をぶつけた訳では無い。




「ゼノく~ん、ちょ~っと待ってくれる? あたしのこ~んな可愛い身体を撫で撫で出来るゼノ君に嫉妬してる……」


 一瞬だけ、マチルダは間近にまで顔を迫らせていたゼノから顔を離し、殺意丸出しとも言える目でリディアとルージュを睨みつけ、そして再びゼノに対して優しい視線を向ける。


 マチルダは自分の身体に自信を持っているようであり、そしてゼノだからこそ触る事を許可している様子であったが、再びリディア達に視線を向けたその時は、目付きだけに殺意が籠っている訳では無かった。




――殺意満点の表情を少女2人に向けながら……――




「生意気な豚野郎マジで殺してやっからよぉ!!!!」


 マチルダは立ち上がり、巻き付いていたゼノの手をそのまま離させてしまう。そして、今まで見せていなかったのかもしれない本気の態度を表情で現しながら、耳障りな怒声を激しく散らす。


「またそれかよ? またあの幽霊みたいな変なの使うのか? だけど実際負けてただろ? どうやって殺すつもりだよ? 言ってみろ」


 ルージュからすると、マチルダの怒声は負け惜しみにしか聞こえなかったようであり、特殊能力を使っていたのにも関わらずルージュに負けていたマチルダの事をただの見栄えだけで威張っている弱い女としか認識していないのだろうか。


 もうそろそろマチルダの相手をするより、実験室の機能を停止させる為に強引な手を使いたいとでも思っていたのかもしれない。




――突然通路に続くドアが開かれ……――




「突然すいませんゼノ様! ビスタル様から預かってた宝玉が誰かに盗まれたようです!」


 ドアからやってきたのはゼノの部下である1人の防護服の男であったが、それは緊急の報告が目的だったようであり、盗難被害の話がゼノの耳に届けられた。


「あぁ? なんだって? 盗んだ……奴がいんのか」


 ゼノにとっても大切な物を預かっていたようであり、それを誰かに奪われたとなると、それは黙っていられない話になるはずだ。後でとんでもない事が起きてしまう想像をしてしまったかのように、最後の方で元々濁りのある声が震えていた。


 流石に部下である防護服の男の前では弱そうな姿を見せたら不味いと思ったのか、すぐに立ち上がった。




――しかし、その一方でリディアは何故かマスクの下で表情を緩めており……――




(なんだ、あの宝玉って取引の為にここに保管してたんだぁ……)


 恐らく防護服の男が言っていた宝玉とは、少し前にこの基地内の一室で取り返したあの球体の事だとすぐに分かった。リディアは少し前にヒルトップの洞窟で不思議な力を宿らせていた宝玉が何者かに奪われたという話を覚えていた為、あるべき場所に返す事を目的として、今は懐に隠している所である。エナジーリングの能力を使い、今は実体を消滅させているが、リディアの意思ですぐに実体化をさせる事が出来るが、今はする必要は無いだろう。


「ただ、こいつらが来る前は確かに置いてはあったんですが……」


 防護服の男は宝玉の所在の状況を細かく把握していたようであり、いつからこの基地内に保管し、そしてどのタイミングで紛失したと予測されるのかをしっかりと分析出来ていたようである。結果として、無くなったタイミングを掴む事が出来たようであり、結果的に疑われたのはリディア達であった。




「それはホントか!? だったらもうこいつらしか犯人はいねぇって事だなぁ!!」


 ゼノは大声を張り上げ、宝玉を奪った張本人をリディアとルージュとして決め付けたかのように、元々細くて人相の悪さを現わしているような両目を細くする。


 実際に相手を調べる等の直接の証拠は掴んでいなかったが、そもそも敵対者という事情から、もう半ば強引にリディア達を犯人として確定させていた。




「また一段と大騒ぎになるのか……。所で宝玉って、お前なんか心当たりあんのか?」


 ルージュはゼノがまた大声を張り上げている様子を見て騒がしい戦いが再開されてしまうのかと予測をするが、その原因となったであろう宝玉の事情は知らなかったからか、離れているゼノには聞こえない程の大きさの声で、リディアに質問を飛ばした。


「ストレートに言いますけど、ありますよ。私今持ってますし」


 リディアもルージュのやや小さくさせた声で状況を読み取ったのか、リディアも同じくゼノに届かない程度の大きさに調整をしながら言い返した。宝玉が今基地の一室に存在しないのは、それはリディアの手に存在しているからである。




「取り返すより、あいつん事もう実験材料にしちまうか……。んひひひひぃ」


 ゼノに今のリディア達の話が聞こえてしまっていたのかは分からないが、ゼノにとってはリディアは丁度良い被験体となると初めから睨んでいたのか、ただ奪った物を出させるよりも、実験に利用するついでに取り返す方向で進ませようとしたらしい。




――実験室のドアへとゼノは進み……――




「おい! あの生意気な女すぐに捕まえろ! 実験材料にしてやれ!!」


 ドアを開き、顔だけを中に入れる形でゼノは内部に向かって何者かに命令のようなものを飛ばす。実験室にまだ言葉が通じる仲間がいるのだろうか、リディアの事を言っているのか、言葉の通り、実験室に引きずり込むように荒々しい命令を飛ばしていた。




 すると、ゼノが入り口から身を避けるなり、実験室から出てきたのは、蛇のような胴体に無理矢理人間の腕と脚を装着させたような奇妙な姿の生物であった。









竜人のマチルダは実力的にはリディア達に負けてるようですが、態度だけは人一倍横暴みたいです。負けてるのに態度だけは負けないように必死に振舞う姿がリディア達からどう映ってるかは……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ