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黒衣を纏いし紫髪の天使  作者: 閻婆
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第32節 《違法薬物の製造基地 再会した野盗の男は少女らを食らう?》 1/5

今回はリディアが連れ去られてしまう場面から始まりますが、ただ捕まるだけでは終わらないと信じたい所、でしょうか? 一応リディアは主人公でもあるのであっさりとやられてしまったら話が続いてくれません。さて、今回はどうなるでしょうか?





        リディアは連れ去られてしまう


        王立軍の兵士を名乗る正装の男が2人


        しかし、捕らえ方はあまりにも乱暴と言えた


        使用した武器はショットガン。発射されたのは拘束用の捕縛袋


        リディアは袋を斬り破り、脱出はしたが、今は駆動車の荷台の中だ








「さてと、あいつを降ろすとしようか」


 まるで影に隠れる事に適した色合いを意識していたかのような黒い色をした中型の駆動車から、正装を纏った兵士が2人、それぞれ左右のドアを開いて降りたのである。


 駆動車の目の前には、木造ではあるが、前後左右どちらにも広い平屋建ての建造物が存在しており、木造の壁の古びた雰囲気と、周辺に木々も一切生えておらず、孤立した建物と表現しても通じていたかもしれない。


「あの袋密封だから酸欠で殆ど意識無くなってるだろうな」


 リディアを捕縛する為に使ったあの袋は、通気性を考慮されていなかったようであり、閉じ込められた者は兵士の言うような結末を迎えるという事だったのだろうか。


 そして、駐車させた車両の右を少し凝視すると、切り立った崖が存在していた。




「気にするな。連れて帰る事に生死は問わないって言われてるからな」


 荷台に向かって歩いていた兵士の1人が言い返すが、リディアの事を、特に命の保証をしてやるつもりは一切無かったという事なのだろうか。兵士2人揃って、荷台を開く為の後方のドアの前で立ち止まった。


「さてと、開けるか」


 兵士の1人が上に向かって開くタイプのそのドアを開き、荷台の内部を確かめる。


 兵士達の考えが正しければ、今頃は袋の中で酸欠で意識を失っているリディアの哀れな姿が今そこで横たわっているはずである。




――開いた瞬間……――




「とぅうおぉおらぁああ!!!」


 兵士が見たのは、顔面に向かって鋭い回し蹴りを放つ誰かの姿であった。兵士が特に目に映ったのは、ブーツの裏だったはずだ。


 荷台は地面と高さが異なるはずであるが、そんな環境が良くない場所で、荷台に閉じ込められていた少女は器用に身体を捩じり、自分を捕らえた男を狙ったのである。尤も、狙ったのは2人の内の1人だけではあったが。




――顔面に蹴りが強烈に炸裂し……――




「んんぐぁぁあああ!!」


 突然の蹴撃を受けた事で、ドアを開いた兵士が鈍い悲鳴と共に背後へと飛ばされてしまう。


 車両から距離を取らされながら、小石が散らばる土の地面へと倒される。


「なんだ!? お前なんで抜け出――」

「こっちの勝手だよ!!」


 蹴りを受けなかった方の兵士は何故か袋から抜け出していたリディアに驚いたが、すんなりと驚く時間をリディアは一切与えなかった。


 荷台の出口の天井に備え付けられていた2ヵ所の取っ手をそれぞれ両手で握りながら、振り子のような反動と自身の脚力を使い、もう1人の男のこれまた顔面を、両足で踏み付けるように蹴り飛ばす。




 蹴り飛ばした際の反動を利用し、そのまま荷台から抜け出し、そしてまだ意識は残っているはずである兵士の1人にリディアは詰め寄った。


 右手に氷の刃を作り、突然の不意打ちにも耐えられるよう、兵士に跨るようにしゃがみながら、左手で男の無造作に伸びていた髪を掴んで無理矢理持ち上げ、そして右手では首元に刃を突き付け、マスクの下で口を動かした。


「さっき王立の兵士だとか言ってたけど違うんでしょ? 私の事ここに連れてきた理由、ちゃんと教えてくれる?」


 しかし、男の視線は威圧的なものであったが、リディアは一切怯む事をしなかった。なかなか喋ろうとしない兵士に、再度リディアは言葉を飛ばした。




「そういえばなんだっけ? 逮捕状とか嘘みたいな事も言ってたみたいだけど、私が必要な理由ちゃんと話してくれる?」


 車両に乗せられる前に言われた事を思い出し、リディアは自分がここにわざわざ連れてこられる原因を知りたかった為、武器による脅迫をしてでも吐かせる事を試みた。


「悪いけどなぁ、どうしても連れて来るように命令されてんだよ?」


 顔面にきつい一撃を受けていた兵士ではあったが、元々ここが自分達の拠点であるからか、何かの期待でもしているかのような強気な態度であった。


 しかし、言った事は事実だと受け止めても良さそうである。




「だから誰なのそれ? たまに私野盗とかみたいなのに絡まれる事があるんだけど、そいつらの仲間とかリーダーとかそういうのって事?」


 命令を受けて動いたという事はは理解出来ても、やはりリディアとしては命令を下した本人の名前や正体を知りたかったようだ。


 左手で掴んでいた髪を更に強く引っ張り上げながら声を荒げた。日頃から荒れた者達に狙われた事はあったが、関係者であったのかどうかも知りたかったはずだ。


「けっ、そんなもん自分で確かめりゃいいだろ? どうせ対面すんだろこれから?」


 兵士としては、自分が説明をしなくてもこれから侵入してしまうであろう平屋の建造物の奥で結果的に出会うはずなのだから、わざわざ自分が説明をする必要は無いと、リディアからの要望を拒否してしまう。




「あぁそう? まあ私どうせそいつに会いに行くつもりだし、あんたがいなくても私は困らないからね?」


 リディアはもしかすると情報を吐かせる代わりにもうこれ以上は痛い思いをさせないようにしてやろうという配慮も意識していたのかもしれない。


 しかし、ここで否定をされた為、マスクの上から見えている青い瞳には諦めの色と、そして密かに滲み出ていたかもしれない殺意が浮かび始め、もう右手に持っている氷の刃で本当に終わりにしてやろうと考え始めていた可能性もある。相手は元々リディアの命を奪おうとしていた可能性すらあるのだから。


「困らない、か? じゃあ死ね!」


 兵士は強気な態度を崩す事をせず、跨がれている立場で尚且つ実際にリディアに殺傷を与えるような手段を持っているとは思えないような状態で突然暴力的な言葉を放つ。




「何いきな――」


 死ねと言われたとして本当に絶命するなんて一切信じていないリディアであったが、背後への気配りを一切していなかった事が失態となってしまう。




――背後から突然掴まれてしまい……――




「!!」


 リディアは背後から、腕で口元をマスク超しに締め付けられ、そしてもう1本の腕で、リディアの両腕と共に胸部を締め上げられてしまう。


 対話を交えていなかった方の男の事を完全に意識の中から外していた為、背後から押さえ付けられる行為に対処する事が出来なかった。口元も押さえ付けられたせいで叫ぶ事も反発する事も出来なかった。


「よし! よくやってくれた! ……こいつめっ!!」


 仲間に褒めたような言葉を渡しながら、先程までリディアに跨られていた男は立ち上がり、そして一発リディアの腹部に拳の一撃を飛ばした。黒の戦闘服超しに男の重たい一撃が入ってしまう。




――リディアの瞳に力が入ってしまう――




 身体を潰されるような痛みを受け、身体から力が抜けてしまう感覚を覚えてしまう。


 このままでは男達のペースに飲まれる事になるが、兵士の2人は弱ったリディアに更に追い打ちをかけようとする。


「生死は問わないって言われてたよな? もうこのまま殺しちまった方がいいな。これでやっちまうか」


 リディアの腹部を殴った男は、上からの指示を思い出したのか、腰のポケットから小振りではあるが、人間相手であれば充分と言えるような刃長のナイフを取り出した。


 これでリディアに最期を与えるつもりなのだろうか。




「もうこいつも気絶しそうだし、さっさと地獄に堕としてやるか」


 兵士は元々握っていたナイフの柄を更に強く握り締め、確実にリディアの戦闘服さえも貫いてしまうであろう先端を向け、歩きながら近寄った。


 腹部を殴りつけた影響で押さえ付けている少女、即ちリディアの抵抗する力を奪い取る事が出来たのであれば、命を奪うのも今がチャンスと、まともに目が開いていないリディアにナイフを突き刺そうとする。




(馬鹿なのこいつ?)


 その様子をリディアが目視していない訳が無く、そして黙って刺されようとしている訳も無かった。


 リディアは意識を朦朧とさせているようなフリをしたまま、右足に氷の塊を纏わり付かせていた。これはエナジーリングの力であり、そして氷の塊が更なる質量として威力が増大されているであろう右足で男の右手を蹴り飛ばす。


「うわぁ!!」


 ナイフはあっさりと男の手から離れてしまい、そして直接蹴られた右手にも激痛が走ったのは言うまでも無いだろう。




「私が簡単に殺されると思ってた!?」


 目の前の男のナイフを蹴り飛ばした後は、リディアはまだ自分を背後から押さえ付けていた男にでも言うかのように、普段の少女特有の声色から無理矢理に低くさせたような威圧感のある口調で言ってから、今度はその押さえ付けている男に痛い思いをさせる為に再びエナジーリングの力を発動させた。


 今度は身体に電撃を走らせ、密着している相手を痺れさせようとしたのだ。




――リディアの全身から激しい電撃が走るが……――




「馬鹿かお前! 俺達の服は電気なんか通さないんだよ!」


 どうやら男が着用していた正装は耐電機能が備わっていた服であったらしく、リディアのエナジーリングの力を頼った放電は通じなかったようだ。実際に男は平然とした表情で密着しているリディアに言い放っていた。


「あっそ?」


 リディアは電撃が通じないからと言って、それで諦める気は無かったようであり、そして寧ろ電撃で全てが解決出来るとも考えていなかったようでもあった。


 寧ろ次の戦法を計画していたようであり、男によって上半身を固定されるように締め付けられている状況を利用し、リディアは自分の両足を男の足に絡ませる。




「はぁああ!!」


 男の反応を一切待たずにリディアは男に自分の足を絡ませた後に、そのまま自分の両足に魔力を注ぐ。


 自分の足を前方に突き出させるかのように再びエナジーリングを使い、それは実質的に男を足払いさせるような形となる。


「うわぁ!」


 リディアを背後から締め上げていた男は突然足元を掬われ、背中から転ばされてしまう。何が起きたのか分からなかったのかもしれないが、リディアとしては男の両足をエナジーリングによる見えない手で引っ張り上げて転ばせた、と言った所であり、そして男の両腕の力が緩んだのを確認するなり、すぐに抜け出す、という事はしなかったのである。


 まだ互いに仰向けに倒れた状態で、そしてリディアは男の上で仰向けになっているが、自分の背後には男の顔面がある事を把握していた為、頭を持ち上げるなり、それを再び下に向かって下ろしたのである。力を込めて。




――男はリディアの後頭部で頭突きを受けたのだ――




「!!」


 男は顔面に非常にきつい一撃を受けたが、リディアは当然それを気にも留めず、すぐに立ち上がると同時にもう1人の男に意識と、敵意という照準を定めた。


 ナイフを弾かれた男はまだ武器を隠し持っていたのか、いつの間にか上腕と同じ程の長さの(なた)を構えており、リディアにはもう殺意以外のものを向けてはいなかった。


「随分好き勝手やってくれるなぁ! もうお前はぶっ殺してやる!!」


 もう兵士は王立軍の所属だという偽りを、もうそれが本当に偽りであった事を自覚してしまっているかのような粗暴な言葉遣いをリディアへと向け、自分達に歯向かい続けるリディアの胴体を狙っていたのか、上から斜めに斬るかのように振り落とす。




――リディアは右手を前方に伸ばし……――




 鉈を構えた男から逃げる事をせず、リディアはアームカバーでしっかりと保護された腕を男に向けて伸ばすなり、手の先から冷気を弾丸のように発射させる。


「好き勝手なのはそっちでしょ? 少し黙って!」


 自分が殺されるかもしれないこの状況で、リディアの青い瞳にも殺意が灯り始めており、目の前の男の鉈を持つ右腕を氷漬けにしてしまう。


 右腕を封じられた男に向かって、リディアは特に魔力に頼る訳でも無く、両手を強く握り締め、休む間も作らずに男の顔に数発の殴打を決め、そして最後に渾身の力を込め、振り被るように右手による一撃を加え、強引に倒させてしまう。




「もうホントさっさと思わらせたい……」


 リディアはこれを大した意味を持たない戦いだと感じ始めていたのか、目の前の男が再び起き上がってきた時の事を僅かに思い浮かべるなり、思わずマスクの下から漏らしてしまう。


 そんな時に、リディアの後頭部による頭突きを受けた兵士が上体だけを持ち上げ、鉈とは異なる武器を右手に持っていた。


 それは、距離が離れている相手に対しても確実な致命傷、場合によってはそのまま絶命すら狙う事が出来る武器だ。




(?)


 リディアは背後から明らかな殺気や嫌な予感を浴びた為、殴り倒した男を見下ろしていた状態からすぐに後ろを振り向くが、勘で身体をずらしたすぐ隣で何か小さくも非常に鋭い物体が高速で飛んでいく様子を確かに感じた。それは男が所持していた武器の意味を明確にすると同時に、武器そのものの正体も明確に意味する行為でもあったはずだ。


 男が構えていたのは、拳銃だ。


「さっきから好き放題やりやがって……。さっさと死にやがれ!!」


 男は再び引き金を引こうとするが、リディアも咄嗟に反撃手段に入る事を決定させていた。




――右手の中で氷の刃を作っており……――




「あんたが先に死ぬけどね!」


 手の中で氷を膨らませるように、それをナイフのように細く尖った形状を作り、それを拳銃でリディアの殺害を試みていた男を目掛け、腕で投擲の勢いを作り、そして手首のスナップで刃は男目掛けて投げつけられる。殺されそうになったリディアは、ここで拳銃を構えていた男の胸部に氷の刃を突き刺し、その場で絶命させてしまう。


 無造作に背中から倒れ込む男を特に気に留める事せず、いや、している余裕が無かったと言った方が良かっただろう。




「お前俺の仲間殺しやがったな!」


 まるで逆上するかのように鉈で襲おうとしていた兵士は、リディアから目を離されていた間に再び鉈を拾い上げていたようであるが、自分1人だけが残った状況で追い詰められていると感じ始めていた可能性もあるが、再び鉈でリディアを狙って斬りかかる。


「いや、そっちが変な因縁付けてきたんでしょ? 最初に」


 リディアもやや苛立ちを見せたような口調で言い返していたが、身体の方はしっかりと男の振る大振りな鉈の軌道から回避する事に専念していた。


 2度の攻撃をリディアは身軽さを駆使して左と後方に回避していたが、再び右手に氷の刃を作り、それを強く握り締めた。




――そして男に向かって飛び掛かる――




 男は力任せに戦っていたが、リディアは身軽さも武器にしていた為、鉈の重量にいくらか振り回されていたであろう男の隙を狙い、接近すると同時に男の首元を横から突き刺した。


「終わり、だよ?」


 男は首に氷の刃を深く突き刺さられた。リディアも男がこれで絶命する事を把握していたようで、青い瞳を細めながら淡々と言った。


 結局王立軍の兵士だと偽っていたであろう2人の男からは命令を下した者の正体を聞き出す事は出来なかったが、目の前にはもう男達の拠点が建っているのだ。


 やや乱暴に氷の刃を引き抜き、リディアはそれを無造作に横に向かって放り投げる。既に役目を負えていたからか、落下と同時に消滅するように跡形も無く砕け散る。




――次の目的はただ1つであった。――




 すぐ目の前に建造されている、本来であればそこに無理矢理連れ込まれていたであろう平屋の建物。それは拠点と呼ぶには何だか装飾等も決して派手では無く、見方によってはただの民家にすら見えてしまう可能性もあるが、今はもうリディア自身が自分から突入してやろうと、万策こそは無いものの、流石にこのまま後に引くのも何だか勿体無い気がしたのかもしれない。


(でもここって何やってる場所なの? やっぱり人攫(ひとさら)いで集めた人達……沢山いるって事……なの?)


 確か兵士2人はあの岩の地面が目立つ公園に生息していた怪奇植物(グレイシアペタル)の生態の事を説明していたが、それがこの建物とどう繋がっているのか、いまいち想像もする事が出来なかった。


 どちらにしても潜入をしなければ何も分からない。そして潜入出来そうなドアは1つしか無いが、窓からであればあっさりと潜入自体は出来そうであった。


 換気の為なのか、それとも単に防犯意識が低いだけなのか、或いは侵入者をわざと誘っているのか、それは分からなかった。




「とりあえず、入ってみるか……」


 リディアは木造の基地に侵入する事を確定させた。


 中で何が起きているのかは分からないが、自分以外にも無理矢理連れて来られた者がいる可能性があると考えると、ここを放置する訳にもいかなかったのかもしれない。


 単独ではあったが、後戻りする事は出来ない。そんな空気が今、リディアに吹き荒れていたのだろうか。









一応リディアは難を逃れますが、目の前の建造物を前に引き下がる事をしません。リディアらしく突入する事になりますが、それは次回からのお話になります。何故か少女系のキャラって背後から力任せに押さえ付けられると抵抗が出来なくなるような認識が強い気がしますが、能力持ちだと押さえ付けられても純粋な力以外で抜け出す方法をいくらでも作れるんですよね。

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