表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒衣を纏いし紫髪の天使  作者: 閻婆
85/135

第31節 《唸る怪奇植物 吐き出す骸は戦死の悲鳴》 5/5

今回は王立軍の兵士達に因縁を付けられるという話になります。折角怪奇植物の脅威を討ち払ったのにまだ厄介事に襲われると言った所でしょうか。








         怪奇植物のグレイシアペタルは確かに撃滅させる事に成功した


         しかし、それは国家財産として指定されていた植物であったようで


         司法機関の兵士なのだろうか、2人が少女達を問い詰めていた


         単に罪状を自覚させるだけでは無く、ショットガンという危険な武器まで構えて……








「連行……って何ですかそれ!? 何言ってるんですか!?」


 黒の儀礼服に似た戦闘服を纏っていたリディアは、突然現れた2人の正装の兵士に対し、ただこのように言い返す事しか出来なかった。


 ギルドからの依頼で怪奇植物(グレイシアペタル)を討伐したというのに、それを理由に捕まるなんて、納得する訳にはいかなかっただろう。


「一応あたし達ギルドから依頼受けてあの植物の事仕留めたのよ!?」


 緑の魔導服を纏っている少女であるシャルミラは依頼の上で討伐をしたと、リディアとは異なり敬語を使わない口調で兵士2人に言い返した。


 厳密にはグレイシアペタルを仕留めたのはリディアであったのだが、ここでは纏めた上で説明をする事に決めていたようだ。




「そんなもの知るか! そのギルドは国家に正式に登録した場所では無かったんじゃないのか?」


 しかし、兵士の1人は少女2人の言い分を聞き入れようとせず、規律を破ったという事実だけを無理矢理にでも認めさせようとする。既に両手でショットガンを構えており、余計な発言がそれを吠えさせる可能性があるという圧迫感自体も武器にしているかのようであった。


「たまにあるからな。個人で勝手に営むような場所も。そんな信用の無い場所から受注するお前達にも問題があったとは思わないか?」


 呆れたような溜息を漏らした後に、もう1人の兵士もまるで付け足すように喋るが、内容は少女2人の選択のミスをより強く意識させるようなものであった。




「何よそのメッチャクチャな言い分……」


 シャルミラはギルドが本来受けるべき責任さえも全て自分達に押し付けられていると感じ、まだ僅かな言葉しか交わしていないのにも関わらず、苛立ちを覚え始めていた。


 何でもかんでも自分達に責任を押し付けようとしている事を許せなかったのかもしれない。


「いや、それだったらまずあのギルドの方が処分受けないといけないんじゃないんですか? それだとある意味こっちも被害者ですよ?」


 リディアは自分達が依頼を受けた町のギルドが潜りの存在であったのであれば、処罰を受ける対象が違うのでは無いかと反論をする。先日の洞窟での任務も同じギルドから受けていた為、尚更色々と不安が込み上げてくるが、どちらにしても処罰の対象になるのであれば、ギルドの方だとしか考える事が出来なかった。




「そんな脱法のギルドだと見抜けないお前達に問題があったとは思わないのか?」


 兵士の1人が言い返すが、リディア達の気持ちを受け取った訳では無く、ギルドそのものが法から外れた場所であると見抜く事が出来なかった事を責め立てる内容であった。


 目が明らかに2人の少女を見下しているものであった。


「そんな言い分納得行きませんよ? なんで私達に全部押し付けるみたいな言い方するんですか!?」


 リディアは相手の言い分を呑む事を決してしなかった。あのギルドの雰囲気を思い出すが、やはり本当に違法な場所だったとは思う事が出来ず、そしてやはり問題なのは兵士達が自分達に責任を押し付けている所であり、それに対して再度、反発を試みた。




「リディアなんかこの人達怪しいわよ? ホントにちゃんとした兵士の人なの?」


 シャルミラは嫌気も感じていたかもしれないが、そこから更に発展してしまったのか、相手の役職を疑うようにもなっていた。リディアの横顔を見ながら、兵士2人に対して指を差す。


「おい小娘! お前我らを疑う気か!? 正式な王立軍の兵士だぞ!」


 もしかすると、立場が低いはずの少女から指を差された事で苛立ちを覚えたのかもしれないが、兵士の1人が自分の配属を怒鳴りながら説明をする。しかし、紋章や証明書等の提示は無かった。




「そしてそこのお前、リディアだったな。お前には逮捕状が出てる。先日、かなり日数は経過してるが、シミアン村で逃亡を試みたようだな。しばらく見ないと噂になってたが、こんな所で見つかるとはな」


 まるで元々、この怪奇植物の件とは無関係に要件があったかのように、紫の髪を持った少女であるリディアを指差しながら、口頭だけでこれから連行をしなければいけないという事実を説明する。どうやら兵士達はリディアを探し回っていたらしい。


「あぁ……そんな事ありまし……ってそれは誤解だってもう私の仲間の人が説明したはずですよ!」


 言われてからすぐに思い出したのかもしれないが、それでもリディアはあの時はあくまでも誤解の(たぐい)であり、そしてあの時にやってきた司法機関の兵士達の知り合いであったコーチネルに説明を付けてもらい、解決はしたはずであった。


 だからこそ、今更連行される理由は存在しないはずだと、そこは言い負かされる訳にはいかなかったはずだ。




「リディア、なんかこの人達滅茶苦茶だからさぁ、1回ガイウスさん達に相談しようよ?」


 シャルミラも兵士2人の言い分が曲論に聞こえてきたのかもしれない。もう自分達2人だけでは兵士達の言い分に対抗が出来ないと感じた為か、現在は怪奇植物の口内から人間達を引っ張り上げる作業をしているガイウス達を頼るべきであるとリディアに提案をする。


 シャルミラの表情も早く兵士達から離れてしまいたいという一心なのか、嫌気の色ばかりが映り込んでいる。


「貴様! 勝手な事はするな!」


 元々威圧的且つ乱暴な口調で言葉を出していた正装の兵士であったが、その場から一度立ち去ろうと一歩下がったシャルミラに対し、罵倒のような荒れた言葉を放つ。




「勝手なのはそっちでしょ?」


 シャルミラにとっては正論だったと思っているはずだ。勝手に話を進められては困る為、返答の為に一度止めていた足を再び動かした。


 向かう場所は、勿論ガイウスのいる所だ。




「あのガイウスさ――」


 距離がある程度離れていた怪奇植物の所へと戻りながら、ガイウスの名前を呼ぼうとしたシャルミラであったが、兵士は魔導服に包まれている背中を見つめながらとんでもない行動に走り始めたのである。




――シャルミラに向かって男が発砲を開始した――




 リディアは兵士が構えていたショットガンを警戒はしていたものの、発砲自体を止める事は叶わず、シャルミラに危機を伝えたり、兵士の発砲を強引に叩き潰す事も出来なかった。


 発射されたものは銃弾、では無かった。何やら電気を纏ったような何かであった。しかし、シャルミラの背中に直撃してそれで被弾者が平然としていられる訳が無かった。


 シャルミラが背中に受けたのは、背中に走る痺れるような激痛であった。


「うあぁ゛ぅ゛あぅ゛!!!」


 まるで激しい電撃でも受けたかのように痙攣をしながら、シャルミラは震わせられたような悲鳴と共にうつ伏せに倒れ込んでしまう。


「シャル!! ちょっと何す――」


 リディアは勿論すぐ隣で射撃され、そして倒れ込むシャルミラの安否を確かめるより先に発砲をした兵士に視線を戻したリディアであったが、リディアも同じように兵士が持つショットガンの発砲を受けてしまう。


 しかし、シャルミラの時とは異なる症状を受ける事になる。




――視界が一気に真っ暗になったのだ――




「何これ!! なんも見えないし!!」


 リディアも発砲を受けたが、シャルミラとは異なる状況を受け取る事になった。身体への直接の痛みは殆ど無かったが、何かを顔面からぶつけられた事だけはハッキリと覚えていたはずだ。


 まるで大きな布に包み込まれたかのようにそのまま視界が真っ暗になり、そして布のような物質はリディアを絞め付けてしまい、視界だけでは無く、動きさえも封じ込めてしまう。




「上手く行ったな! こいつさえ確保出来れば充分だ! 急ぐぞ!」


 真っ黒な布のような物質でリディアを封じ込めた兵士は、構えていたショットガンを背負い直すなり、もがいているリディアを強引に肩に担ぐ。


「これで(かしら)も喜ぶはずだ!」


 兵士には上司に該当する者達がいるようだが、リディアを連れて帰る事で言葉の通りの結果を受け取る事が出来るようである。しかし、王立軍の兵士が上司の事をこのような呼び方をするのだろうか。


 そして、これらの言葉はリディアには聞こえておらず、あの布のような物質は外部からの一切の音を遮断していたのである。




「……リ……ディア……!!」


 うつ伏せで倒れたまま放置されていたシャルミラであったが、リディアに何をされていたのかは、何とか首を自分の背後へと向け、何か黒くて長い袋のような物を兵士達が担ぐ様子を目視しており、そして袋のような物に包まれている者の正体がリディアであるという事を見抜けない訳が無かった。




――ふと現場を目にした者がいた――




「ん? あれってシャルミラ、だよな? 何やってんだ?」


 植物の口内から人間達の引き揚げ作業に携わっていたマルーザであったが、地面の方で何かが発射されるような音を聞き取り、一度口内という作業現場から真紅に染まっている視線を逸らし、地面を覗き見るように確かめたが、そこには見慣れない正装の男2人が何かを担ぎながら逃げるように走り去る姿があったのだ。


 そして男達の背後には、うつ伏せで倒れているシャルミラの姿が存在した。


「2人ともちょっと悪い。一旦ここ降りるよ?」


 赤黒い影のような肉体のマルーザは倒れるように怪奇植物の上から飛び降りた。下半身が存在しない為、宙を伝うように降りたと表現すべきだったかもしれないが。


「ん? マルーザお前どうしたんだ?」


 フィリニオンは何故降りる必要があったのかを、もう既に飛び降りる動作に入っていたマルーザに背後から声をかけたが、もう遅かった事である。


 そして、フィリニオンにも確かにシャルミラの姿が見えていた。




――その一方でマルーザはシャルミラの側へと辿り着いており……――




「シャル! なんか逃げた奴がいたけど、何があったんだ!?」


 マルーザは何だか痙攣をしているとしか思えなかったシャルミラの傍らに寄り添い、事情を聞き出そうとする。


 下半身が無い構造である為、マルーザは元々低空で浮遊していた身体を更に地面のギリギリにまで落とし、何とかシャルミラと視線を合わせた。


「あの……リディ……ア……(つか)……まって……」


 身体がまだ痺れているのだろうか、シャルミラは苦しそうに、そして何とか絞り出すようにマルーザに託そうとする。


 リディアは捕らえられてしまったが、無力である今のシャルミラでは救い出す事が出来なかった為、事情を察知してくれたマルーザに任せようと決めたのだろうか。




「リディア? あぁもしかしてあれか?」


 大きな岩の物陰から、エンジン音が荒々しく撒き散らされていた。それに気付いたマルーザはそちらに顔を向けるが、如何にもな物体が動いており、そこにリディアがいるのだと悟った。




――中型の駆動車が爆走を開始していたのだ――




「おい……かけ……て……」


 まだシャルミラの傍らで高度を低くしていたマルーザにかけられた言葉がこれであった。


 自分にはもう追いかけるだけの体力も余裕も無かったからか、あの黒色(こくしょく)の駆動車を見失ってはいけないと、苦しそうな表情を浮かべながらシャルミラは伝えた。うつ伏せなのはそのままで、顔を何とか無理矢理に持ち上げながら、必死で伝えた。


「分かった。それと、あんたが無事だって事もちゃんと伝えるから安心しなよ!」


 既に駆動車は発進しており、時間に余裕が無い中で、マルーザはシャルミラの気持ちを受け止め、そしてリディアに追いついた時にシャルミラの状況も説明してやると言い残し、そして今度はシャルミラとは別の人物に向かって、女性として見るとやや重圧感のあるその声を張り上げた。




――対象はフィリニオンであった――




「フィリニオン! ちょっとここ離れるよ! 後で事情は伝える! それじゃ!」


 マルーザは怪奇植物の本体部分の上にいたフィリニオンに向かって、それだけを伝えると、今度こそ本当にこの植物の怪物がいる空間から離れる事を決定させた。


 宙に浮いている身体を滑らせるように、駆動車の後を追いかける。




「マルーザの奴どうしたんだ? それと、シャルミラの奴なんで倒れてんだ? ガイウス、ちょい来てくんねぇか?」


 フィリニオンの返事を聞く前にマルーザは行ってしまったと見て間違いは無かったはずだ。


 この場を離れる事に対して声をかけてくれた事と、後に連絡が貰えるのであれば特に今の現場で困る事は無かったのかもしれないが、やはり気になったのはうつ伏せに倒れていた魔導士の少女であり、ガイウスを呼んだ上で少女の安否の為に一旦怪奇植物(グレイシアペタル)の上から降りる事を決めた。










――リディアの方は、あの袋のような物体の中でもがいていたが……――




「何……これ……!! 破けない……かな……っ!?」


 リディアは真っ暗な、そして非常に狭くて窮屈な中で、必死で両腕に力を込め、自分を包み込んでいる袋のような物質を破ろうとしていた。


 視界を完全に奪われた状態で持ち上げられた事は、身体が浮かび上がる感覚で把握しており、そして突然投げ飛ばされた事も覚えていた。


 身体に衝撃は走ったが、怪我をする程のものでは無かった。しかし、その後に自分が投げ入れられた場所に振動が走ると同時にどこかに走り出すかのような慣性を感じた為、この腕と脚を左右に広げる事が出来ない窮屈な状況から兎に角今は抜け出すしか無かったのだ。




「これで……破れ……!! あっ……破れ……る……??」


 リディアはエナジーリングの力で両手から氷の刃を生成させており、先端を何とか無理矢理に前方に突き出させながら、そのまま鋭さとリディア自身の女子だからと言って馬鹿にされては困ると誇っているであろう腕力を駆使する形で、目の前の袋の壁に氷の刃を押し付け続けていた。


 何かが刺さったような、食い込んだような感覚を確かに両手に受け、1つの希望を見出したかのようにリディアは力を入れる事を持続させた。




――徐々に氷の刃は袋の外へと貫かれていく――




「もうすぐ……!! だよね……?」


 確かに刃は外にまで僅かに通っており、このまま諦めずに力を込めれば切り口が更に広がると希望を心の中で激しく燃やし始める。


 リディアはまだ暗闇の中に閉じ込められている為、早く暗闇の中から脱出し、今の状況を理解と目視をしなければいけないのである。




――遂に両手を入れる事が出来る程の大きさまで穴を広げた――




「後は手で開けちゃうか!」


 リディアは一度魔力を無くし、そのまま両手から伸ばしていた氷の刃を消滅させ、後は両手で無理矢理袋の穴をこじ開ける方法で行く事に決めた。


 今は戦闘服のままである為、薄緑の手袋が袋の外に出ている事になると思われるが、リディアのいる荷台には自分以外の誰もいないのだろうか。


 脱出しようとしている姿を直接見ている物がいない為か、リディアの脱出劇は順調である。




――腹部の場所辺りに、袋に穴が空いていた――




 もうリディアは意地と気合で左右に開く事だけを考え、力のほぼ全てをそこに集中させていた。


 マスクとハットの間の青い瞳にも力が入り、今誰かと視線を合わせた場合、意図しない暴力性を相手に覚えさせてしまうかもしれない程であった。


 しかし、袋は徐々に口を広げていき、力を入れればそれだけ大きくなっていくそんな状況であった。




「こん……ど……こそ……!!」


 もう脱出は目の前だと本当に希望が見え始めたリディアは、もう最後の締めという気持ちでまるで自棄(やけ)にでもなったかのように更に両手に力を込める。


 袋自体にも切れ目が入った影響で強度も弱くなっていた為か、どんどん口が開いていく。腕に鈍い疲れが蓄積されていくが、諦める事をせず、疲れを無理矢理に無視しながらどんどん口を広げていく。


 そして遂に自分の身体を外に出す事が出来る程に口が大きく広がった。そして最後の締めと言うべきだったのか、まだまだ残っているであろう力を更に余分に使うかのように一気に両腕を左右に広げる勢いで袋のようなそれを押し破った。




――ようやく外の視界が鮮明になったリディアであったが――




「はぁ……はぁ……ってここどこ? 馬車?」


 リディアはマスクの裏で深呼吸を、仰向けの姿勢のままで、そして袋から抜け出していない姿で何となく視界に入った天井を見て、自分が今どこにいるのかを考えてみた。


 天井とは言っても、薄暗い中でやや無機質な鉄の壁が広がっているだけで、そして常に微動で響いている振動が、ここが室内等のような地面に固定された空間では無いという事はすぐに分かったはずだ。




「とりあえず、これどうしたらいんだろ? 脱出……いや、このままこいつらに連れられた方がいいかな。なんか分かるかもしれないし」


 リディアはとりあえずは自分を閉じ込めていた袋から抜け出す事を決めた。上体を持ち上げ、そして両脚も袋から出した上でそのまま立ち上がる。


 この常に微動を続けている空間には窓が無い為、外の状況を直接見る事は出来ないが、この空間が一体どこに向かっているのか、それが気になっていたようだ。




――しばらくは無言でいたものの――




(あぁでも抜け出したって事って、多分あいつら知らないよね。どうしよっかなぁ……)


 恐らくはこの荷台のすぐ側に兵士達2人もいる事である。運転席にいるのは確かだが、誰も様子を見に来る気配も無い為、リディアとしては袋を破る為にそれなりに大きな音を出していたつもりだったのかもしれないが、運転席からの反応が無い以上は余計に不安がる必要は無いのかもしれない。


 しかし、抜け出したからと言ってそれで終わりという訳では無い事はリディアでも分かっていたようだ。




(でも到着して私が抜け出してるって知られたらまたなんか煩くなりそうだし、なんか無いかな……)


 リディアは自分が袋から抜け出したはいいが、抜け出した行為そのものを放置する気にもなれなかったようだ。抜け出した後に自分を閉じ込めていたあの黒い物体が何だったのかを改めて目視すると、本当に袋そのもので、人間を閉じ込める為に細長く出来上がっていたが、生地は硬く作られていたのは間違いは無かったはずだ。


 何を探していたのか、荷台の中を見回してみるが、何も無かった。本当に箱すらも1つも無かった。


 隠れる場所も無い。本当に何も無かったのだ。




(どうしよ……。開けてきた瞬間に畳みかけるしか無いかな……)


 隠れる場所が無ければ、荷台を開かれた時に自分が抜け出している事をあっさりと知られてしまう。


 そして袋に戻り、まだ閉じ込められている事にして、到着した時に兵士達に運ばれる道を選ぶのも何だか怖かったはずだ。


 自身の身に危害を加えられる事がどうしても連想出来てしまう為、やはり相手が力で来る可能性がある以上は、自分も力で対抗するしか無いと考えたのである。




(まあいいや、私ならあんな男2人ぐらい簡単にブチのめせるはずだし。これで行くか……)


 リディアは一旦荷台の中で座り込み、壁に背中を預けた。


 そして今は無理矢理単独にさせられた状況であった為、まずは自分の安否を仲間達に伝える事にした。


 魔力の力で耳元に無線機を出現させ、そして仲間の1人と通信を試みた。






「あ、ガイウス? 私、えっと、リディアだけど。今ちょっと変な連中に捕まって、まあでも無事だから、私は無事だって皆に伝えてくれる?」


 まずはガイウスと通信を繋げる事を決め、リディアは自分自身の安否を説明し、そして自分は自分でこのまま連れられるルートで一旦進む事を決意した。


 折角怪しい男2人が怪しい場所へと連れていってくれるのだから、そこで彼らの秘密を暴いてやろうと、ある種の危険なチャンスに挑むつもりでいたようだ。


 確実にもうあの兵士2人が王立軍の兵士だなんて思ってはいないだろう。

今回ちょっと更新のペースが遅くなったんですが、ストック分でちょっと長くなってしまったので投稿も遅くなるという……。まあ他にも色々と事情や理由はありますが、投稿自体は勿論続ける気でいます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ