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黒衣を纏いし紫髪の天使  作者: 閻婆
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第31節 《唸る怪奇植物 吐き出す骸は戦死の悲鳴》 4/5

今回は植物の内部で触手に捕まったリディアを助けるという話になってます。戦闘らしい戦闘は無いですが、助ける様子と、脱出した後にどうするかという話で進むかと思います。









           怪奇植物グレイシアペタル


           しかし、何故か深手を負っており、一同は苦戦を免れるが


           内部にはまだ命が残っている女性達がいた


           捕獲の為だったのか、野盗の男達は惨殺されており


           この植物は女性は生きたまま捕らえ、男性は殺した上で寄生虫らしきものを埋め込み……


           そして内部へ突入していたリディアは今、触手で押さえ付けられていた……








「ちょっと何今の音!? 爆発、よね?」


 緑の魔導服を纏っている栗色の髪の少女であるシャルミラは、目の前にいる怪奇植物の中心部で何やら激しい音が鈍く響いた事を聞き取り、そして音の正体を推測した。それは言葉の通り、間違いは無いはずだ。


「それしか思い当たらないと言えばそうなるな」


 濃い紫の忍の装束で全身を固めているガイウスは、シャルミラの出した答え以外考えるのは不可能に近いと緩い口調で言い返す。


 そして、先程までは空中で牽制等を行なっていたのだろうか、フィリニオンがガイウス達の隣に降りてきた。




「っておいさっきリディア飛び込んでってなかったか? 大丈夫なのかあいつ」


 黄色のアクセントを加えた色合いの紺のコンバットスーツを纏っている鳥人のフィリニオンはリディアの様子を見逃しておらず、怪奇植物の内部へと侵入した様子を確かに目視していたのである。


 しかし、出てくる様子が今の時点で一切無かった為、リディアの安否が気になり始めたようだ。


「リディアの事だからなんだかんだで無事な気もするけど」


 赤黒い影のような独特な肉体を保持しているマルーザはリディアを信じているのか、それとも冷たく考えているのか、命を失ってはいない事を想定した言い方をして見せていた。




「ちょっとあたし見てきます! なんか口も死んだみたいに開いてるし、それに……女同士の方がなんか良さそうですし!」


 何だかあまりにも緊張感を感じられないようなやり取りを隣で見ていたシャルミラは、すぐにリディアの実際の姿を確かめる為に、単身で植物の中心部へと一歩踏み出した。


 今は周囲を囲うように垂れていた黄色の花弁(はなびら)も、今は力や支えを失うかのように地面に密着させるように広がってしまっている。


「多分脱がされては無いと思うんだけどな?」


 ガイウスは何故か性別を意識したような考えを持ちながら救助に向かおうとした為、何となくいかがわしい惨状を思い浮かべていたのでは無いかと、シャルミラの背中を見ながら言ってみた。




「別にエッチな意味じゃないですよ!?」


 一度足を止めてから、シャルミラは面倒そうな表情を作りながらガイウスへと振り向いた。


 確かに同性の方が良いとは言ったが、男が考えるような意味合いで使った訳では無かったようだ。そして再び怪奇植物の中心部へと向き直した。




――花弁の上を走り、中央の口内へと入っていく――




 元々植物の口として機能していた6つの器官は今は倒れるように力を失っており、口内へ入る時にそれらが物理的な壁となって妨害となるような事は無かった。多少登る手間はかかるが、自分の腰程の高さの場所まで足を持ち上げられる程度の者であれば苦労はしない程の高低差であり、シャルミラは器官と器官の間に足をかけ、そのまま両手で2本の器官を引っ張るように自分の身体を持ち上げ、口内へと向かっていく。


「リディア! いるよね!? 大丈夫!?」


 6つの器官より奥はそれなりに深かった為、シャルミラは一度下を覗き込みながら、暗い口内に向かって叫び声を飛ばす。


 いる事を前提に叫ぶが、直接目で確かめる事が出来なかった為、まだ口内には入らず、その場で右手の上に弱めな炎を魔力で作り、奥を照らす。




――そして口内にいた当の人物は……――




「あ……、シャル!?」


 リディアは絶命したこの怪奇植物の口内に確かにいたが、自身の両腕と両足、そして首を絞め付けていた触手の力は多少は緩んでいたとは言え、自力で脱出が出来る程の弱さにはなっておらず、体勢的には直立の状態で身体を後ろに反らされるような窮屈な形となっていた。


 しかし、現在自力ではどうしても触手を斬り払う事が出来ない為、シャルミラに降りてきてもらわなければここからの脱出は無理かもしれない。首を絞める力は緩んでいる為、呼吸が阻害されている様子では無かったが、それでも絡み付いているという事実に代わりは無い為、自由な動きは許されない。




「ってかその状態……自分で抜け出せなくなってる、よね? ちょっと待って! 助けてあげるから!」


 上から覗き込んでいるシャルミラは、リディアが他者の力を借りなければ一生そこにい続ける事になると分かった為、リディアの元へと降りる為に一旦その場でしゃがみ込む。


「あぁありがと! でもちょっと高いから足元(あしもと)気を付けてね!」


 リディアも自分を解放してくれる事が分かった為、縛られたままという窮屈な姿で明るい返事を渡す事が出来ていた。しかし、自分が今いる場所はシャルミラのいる端から考えるとやや高所になる為、着地が悪ければ怪我をしてしまう可能性があると思ってしまい、注意を呼び掛けた。




「これぐらい大丈夫よ! よっと!」


 しかしシャルミラも危険な魔物と戦ったり、同じく危険な環境で何度も戦った経験を持つそれなりに一流の魔導士である。魔法を使うという関係で武闘派では無いにしても、自分の身長よりやや高い場所から降りるぐらい、シャルミラでも出来る事であったようだ。


 とは言え、流石に派手に飛び降りるという事は無理だったようであり、少しでも実際の高さを和らげるかのように、角の部分で一度座りこみ、そして滑るようにしてようやく飛び降りた。


 緑の魔導服を派手に(なび)かせながら、リディアの隣に着地する。


「とりあえずこれ電撃は無理みたいなんだよね。炎で焼き切るとかって、出来る?」


 見た目の通り、転んだり等のようなトラブルも無しに上手に着地したシャルミラを見て安心したリディアであったが、降りてきてくれた目的はリディアに絡み付いている触手を除去する為である。まずは触手の耐性の話をした上で、シャルミラの力でこの場を切り抜ける事が出来るかどうかを訊ねた。




「植物って根っ子地面に埋めてるから電気には強いイメージがあるけど、それが事実になってたんじゃない?」


 シャルミラは触手の根元を確かめるようにリディアの足元でしゃがみ込んだ。触手とは言ってもやはり植物の中で伸びていた器官である。質感は蔦の皮に近いものがあり、触るとそれなりの硬さのある力強さが感じられるものであった。


 そして、この怪奇植物は地面に根を刺している為、受けた電撃を地面へと受け流しているという科学の話を持ち出すが、案外それが本当の話として今ここで通じているのかと感じた様子だ。


「いや……それってどうなの? 私そういう植物の科学には詳しくないからさぁ……。所で、炎なら出来そう?」


 しかし、リディアからすると電撃を受けたとしてもそれを地面に逃がすという話をよく理解出来なかったようだ。逃がすにしても身体に電撃を受けている間は何かしらの苦痛は受けるとしか思えず、全くのノーダメージで済むと考えるには色々な疑問が頭を(よぎ)ってしまうらしい。


 そしてまだシャルミラからはこの触手を処理する事が出来るのかどうかという返事をまだ受け取っていなかった為、シャルミラの得意魔法である炎でどうにか出来るのかどうか、この返事が特に知りたかった事だろう。




「待ってね。今やってるとこだけど、これなら出来そうだわ。所でさぁ……」


 シャルミラは片膝でしゃがみ込んだ姿勢で、右手の上に魔力で灯した炎を出現させ、それをバーナーのように小規模に発射させながら触手の根元を焼き切る事を試み始める。


 作業中に聞きたい事が思いついたようであり、そしてそれは触手の話とは関係が無さそうである。


「出来るって事でいいんだね? 所で、って何? なんかあった?」


 リディアは自分の足元で火が音を立てているのを紫の揉み上げの後ろにある耳でしっかりと聞き取っており、そして音自体は継続されていた。


 効果があるからこそ継続されているという理屈で考えるのは間違いは無いと思われるが、勿論シャルミラが何かを言いたそうにしていたのを聞き逃してはいなかったし、忘れてもいなかった。




「さっきあたしが飛び降りる時……パンツ見たでしょ?」


 リディアからは、しゃがみ込んで作業をしているシャルミラの表情を直視する事は出来なかったが、そこまで過度という訳では無かったが、口調にはまるで相手が隠している心情を白状させようとしているかのようなやや低めな声色になっていた。


 降りた時にスカートが乱れた事は着用していた本人も理解していたようだが、それをその場から身動きが取れない相手に対して聞く質問だったのだろうか。一応視界に入る場所を狙って降りたのもシャルミラである。


「……あのさぁなんでこんな状況でそんな事聞くの? 私、なんか、嫌な事でもした?」


 一瞬だけ、リディアは誰かのからかい行為がシャルミラにうつってしまったのかと思ってしまったが、戦う前に防臭対策の1つであるマスクの所持の事で多少揉めたのを思い出し、もしかしてそれに関して仕返しのような事でもしてやろうと思ったのだろうかと、自分のあの時の問いかけをこの場で反省するかのように気まずそうな表情を見せた。




「別に。ただこの場所だとやっぱり見えたのかなってちょっと疑問に感じただけ。女同士なんだから一応答えてよ」


 シャルミラからすると、仕返しの為に返答に困るような質問を飛ばした訳では無かったようであり、一本目の触手を根元から切断する作業を完了させたのとほぼ同じタイミングで、性別が同じだからこそ答える事が出来るはずだと、半ば無理矢理言わせるかのように急かす。


 リディアからの返答を待ちながら、次の触手の切断作業に入った。


「じゃあそこまで言うならじゃあ、答えるよ? 一応派手に見えてたよ? でも私で良かったね捕まってたのが。男の誰かだったら酷い事になってたからね?」


 言われたのであれば答えなければいけないと観念したのか、リディアは単刀直入に話す事を確定させた。尤も、リディアもシャルミラと同じ少女である為、目視したからと言ってそれで何か特別な気分に浸る気にもならないし、そしてもし今この場で触手に拘束されている者が男性であった場合はどうなっていたのか、少しだけ想像してみたが途中でやめたかもしれない。




「リディアだったからこうやって助けに来たんだから。それと、別にあたしリディアから嫌な事なんかされてないからね?」


 シャルミラは作業を続けながらリディアへと言い返したが、それは女性同士だからなのか、友達同士だからなのかは判断が出来ないかもしれない。


 そしてリディアの方もマスクの有無の話をここで直接持ち出した訳では無かったが、シャルミラとしてはマスクの話で根に持っていた訳では無かったようだ。


「はいはいありがとう。所で、そろそろ切れてくれる?」


 リディアは自分に対して何かしらの恨み等を持たれていた訳では無かった事に安心し、そして相手は上下関係の無い友達であった為、力が抜けたような感謝が感じられにくい口調で言葉を渡す。


 そして、現在の切断の進捗状況も確かめる。




「うん、順調に行ってる。よし、そろそろ……」


 片膝でしゃがんだ状態で触手の数本を焼き切る作業を続けていたシャルミラであったが、残りの1本を相手に最後の切断作業を続け、そして残り数センチの所まで炎の発射を止めなかった。シャルミラの中ではまだ魔力が残っているようであり、これぐらいであれば寧ろ魔力を消費したという部類には入らないのかもしれない。




――遂に最後の1本が完全に切断される――




「よし! 切れた! これで自由よ!」


 シャルミラは最後の1本だけであった触手を焼き切る事に成功し、ある種の達成感を味わったからか、まるで自分自身が何か高い利益でも手に入れたかのような明るい声を出した。


 リディアの自由が確定したと意識すると同時にしゃがみ込んでいた身体をその場で勢い良く立ち上がらせた。


「切れたんだぁ? ありがとシャ……う、うわぁああ!!!」


 リディアも何だか足元が軽くなったような感覚を覚え、本当に切断が完了したのだと理解し、目の前の魔導士の少女に感謝を渡そうとしたが、その際に身体の力を抜いてしまった為に、身体にまだ絡み付いていた触手の重量に耐える事が出来ず、体勢を崩してしまう。




――背中から派手に床に倒れてしまう――




「ちょっとリディア何やってんのよ!? 凄いカッコ悪いわよ?」


 触手の重量はリディアでも耐える事が出来なかったようであるが、それを見ていたシャルミラからすると、既に命を失った植物が嘗て利用していた触手に力負けをして転んでいたようにしか見えず、そして倒れたまま立ち上がる事も出来ない不格好な姿が、シャルミラに今の言葉を出させてしまったようである。


 笑いそうになりながらも、心配の表情も浮かべているシャルミラはまた次の作業がやってきたのかと、面倒な気分にもなっていた可能性がある。


「いや、これ絡み付いたままだったから……。これ結構重いんだね……いいや、これぐらいなら普通に自分で……んん~っ!!」


 リディアは素直に背後に向かって倒されてしまった理由を喋りながらも、どちらにしても触手が身体に巻き付いている以上は立ち上がるのは厳しい為、決して軽量では無い太い触手をまずは上半身に纏わり付いている物を両手を使い、掴んで引き剥がすように身体から離させる。


 まずは両腕ぐらいは自由に扱えるようにしたかったからか、両腕に纏わり付いていた触手を引き剥がす。




「あぁあたしも手伝うわよ? 1人じゃこれめんどくさいじゃん、多分」


 流石にシャルミラも黙っているのは気まずいと思ったのだろうか、リディアの足元に再びしゃがみ込み、脚に絡み付いている触手を引き離す力仕事に加わる事にした。


 ニーソックスのような形状のレッグガードの上から螺旋(らせん)状に絡み付いていた触手を、脚の周りを回らせるように取り除いていく。


「ありがと。意外とこれ、硬いし重いんだねこれ……」


 脚にかかっていた圧迫感が抜けるのを感じながら、リディアはシャルミラの好意に感謝をしながら、そして触手の重量と質感に対して愚痴のようなものを零していたが、リディア自身も脚以外の場所に絡み付いていた触手を取り除く行為を忘れてはいなかった。


 足元はほぼシャルミラに任せる事にしたようだ。




――2人の作業によって、ようやく触手は取り除かれた――




「さて……と! よし! これで全部外せれた! あぁ窮屈過ぎたわ……」


 リディアは最後の自分の腰から腹部に巻き付いていた触手を乱暴に払い除け、ようやく身体の自由が利くようになった為、立ち上がるなり、何だか忘れていた疲労が重圧となって身体に圧し掛かるような気分を感じたようである。不快そうに溜息をマスクの下で漏らしながら上体を前に少しだけ傾けていた。


「1人で無茶なんかするからよ? 所でやっと聞きたいんだけど、この周りの人達って……死んで……るの?」


 シャルミラのそれは純粋に触手に掴まれた事、では無く、この怪奇植物(グレイシアペタル)の口内へと単身で乗り込んだ事を言っていたのだろう。


 そして先程まではリディアを触手から解放する事ばかりに意識が集中していたが、ようやく他の話が出来るようになったここで、この口内の周囲、壁とも言うべきだろうか、貼り付けられているかのように直立した姿勢で縛られている女性達の事で質問を渡す。


 シャルミラからすると、壁に横に並ぶように貼り付けられている女性達の意識は無い事は見て分かったようだが、命まで奪われている状態なのかどうかまでは把握出来なかったようであり、尚更聞くしか無かったらしい。




「いや、これ……じゃなかった、この人達は女性だから、死んでは無いと思うよ? 確かジェイク君言ってたはずだよ。女性は殺さないでなんか変な事するって言ってたじゃん」


 リディアも円形状に近いこの空間で周囲を見回しながら、妙な呼び方をしそうになった為、それを訂正させた上で、ジェイクの説明を思い出した。


 女性はすぐには殺さず、生殖の為に利用すると説明を受けていたが、あくまでも殺害はすぐに実行しないというだけで、だからと言ってこの場に縛り付けられていてとても安心出来るとは思えなかったはずだ。


「もしかしてもうされちゃった後……なのこれ?」


 シャルミラはまさかと思い、細めな茶色の眉を(ひそ)めていた。




「それは私は判断出来ないけど、とりあえずこの植物はもう死んだからこの人達はここから出してあげようよ? 見た感じは死んでは無いと思うし、なんか肌も生気、ちゃんと感じられるしさ」


 リディアでは目の前の女性達の生死を確かめる事が出来ないようである。しかしもうこの怪奇植物は絶命している為、ここに女性達を放置する訳にもいかなかったのか、救出を行なうべきだと口に出した。


 少なくとも、リディアから見ると本当に死んでいるとは思えなかったようだ。


「まだ生きてるなら、救助してあげないと可哀想だもんね。でもこの高さまで、持ち上げるの?」


 シャルミラもリディアに言われてから、周囲の捕らわれている女性達がまだ生気を残していると考える事が出来るようになったのか、リディアの意見に同意する意思を見せた。


 女性達の中にはまだシャルミラ達と同じぐらいの者も混じっており、服装を見ると自分達と同じ戦士や魔導士も含まれていた事を知り、尚更助け出さなければという気持ちに駆られた事である。


 しかし、外に出るには自分達の身長よりも高い場所に登らなければいけない。




「それはかなりきついと思うよ? ここは皆で、特に男の人もいる訳だからちょっと協力してもらった方がいいよこれ」


 リディアでも流石に自分達2人だけで女性達を口内から出す作業を行なおうとは思わなかったようである。エナジーリングの力を使うにしても、それはリディア自身の体力が尽きれば効力も失ってしまう為、体格的にも力があるであろう男達にも協力をしてもらった方が効率的であると考えたようだ。




――リディアとシャルミラは一度口内から抜け、皆に内部の事情を説明する事にした――




 口内に捕縛されてしまった女性達がいる事をガイウス達に伝えたリディア。


 外にいた寄生によって凶暴化した野盗の男達は既に沈められていたようであり、口内での救出をしている最中に不意打ちを受ける心配は無かったようである。


 仲間達はリディアの呼びかけに応えてくれた為、今はガイウスやフィリニオンと言った実際に力を保持していそうな者達が口内で運び出す作業をしてくれている所である。




「とりあえずあれかな。この植物の脅威、っていうか任務っていうのかな、それはもう完了って事でいいのかな? 救助も出来る事になった訳だし」


 ガイウスとフィリニオンの捕らわれた女性達の引き上げ作業を植物のやや離れた場所で見上げながら、リディアは自分達の任務が完了に近づいている事を実感していた。


「ギルドの方にも連絡出来たから職員が来てくれるっていうのも凄い便利な話よね?」


 シャルミラもリディアの隣で任務が無事に終わりに近づいている事を実感しながら、怪奇植物を見上げていた。


 どうやら任務の依頼を渡してきたギルドへの連絡は済ませているようであり、恐らくは救助した人々の運搬作業を請け負うのだろう。




「あのエルフさんが連絡手段持ってくれてたから余計な手間が省けたよね。後は……何あれ?」


 今回初めて同行する事になったあの金髪のエルフがギルドに連絡をしてくれたようである。


 リディアも当初は助け出した人達を自分達で運ぶ事になるのかと、面倒な予想を立てていたのかもしれないが、植物のいない方向から何やら微かに足音が聞こえた為、そちらに目をやるなり、やはりそこには音を立てている正体が存在したようであった。




「ん? リディアなんかあったの?」


 怪奇植物と異なる場所を凝視し続けるリディアが気になったのか、シャルミラは何を見ているのかを率直に聞く。


「いや、なんか向こうから誰か来るんだけど……職員?」


 一度シャルミラと視線を合わせた後に、再びリディアは自分が凝視していた方向に向きながら指も差す。


 確かに自分達の元へと歩み寄ってくる男が2人、いずれも青い軍服のような正装を纏っており、そして表情も離れた場所からでも分かる程に固いそれであった。




「あ、ホントだ。2人だけど、なんだろ?」


 シャルミラもリディアの指に従うようにその場所に茶色の瞳を向けた。そこにはやはり2人の正装の男性がおり、もうすぐ目の前にまで迫っていた。


 ただ近くを通りかかるという雰囲気では無く、明らかに自分達に用があるかのように真っ直ぐ近づいてきており、そして目の前で2人揃って立ち止まった。




――肩に背負ったショットガンを構えながら、2人の職員は声を荒げた――




「お前達! 国家財産である植物を損壊させたな!」


 1人目の男が、銃口を少女2人に向けた上で、犯した罪の内容を説明するかのような怒声を飛ばす。どうやらあの怪奇植物(グレイシアペタル)は国家財産として守られていたようであり、死なせた事がそのまま凶状となってしまったようだ。


「規律によってお前達を連行させてもらうぞ!」


 2人目の男もショットガンを構えていたが、これがリディアとシャルミラに突き付けられた運命だったのだろうか。








ただ植物の内部で捕まったというだけでここまで長くなるなんて……。だけど台詞とか、触手を避ける力仕事とかを描写すると大体これぐらいになってしまうのが自分です。しかし折角脱出したはいいけどまた厄介な者達に狙われたらしいです。

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