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黒衣を纏いし紫髪の天使  作者: 閻婆
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第30節 《溶け落ちる液体生命体 仏は地獄の炎を与えるか》 4/5

今回は戦いではありますが、ある意味では時間稼ぎの為とも言えるかもしれません。どうしてもワームホールの完成まで時間が必要なので、その為の時間稼ぎとして、コーチネルの剣技が光ります。でも相手は強敵の幹部なのでそもそも耐えられるのかどうかも怪しいですが……。






          亜空間の中に(そび)えていたとある小屋


          野盗の1人が出入口を封鎖してしまう


          しかし、潜入していた者達はそれぞれの能力を駆使し、ここから脱出する


          残りはコーチネルとレフィの少女2人であったが


          まるで脱出を阻止するかのように現れた、青い体色の仏……のような荒れた戦士






「受けろやぁああ!!!!!」


 コーチネルへと向けられていた金の杖の先端から発射される激しい炎。


 青い仏の姿をしたデストラクトは挨拶として予め計画していた行為だったのか、真正面にいたコーチネルと、そしてレフィの両者を狙い、炎で包み込もうと発射させたのだ。


 瞬時にデストラクトの目の前が炎に包まれ、少女2人の姿が見えなくなってしまう。




「やっちまったか……。返せば助かってたのになぁ」


 床を激しく燃やしたデストラクトは今の挨拶の代わりに発射させた炎であっさりと終わりを迎えさせてしまったのかと、相手の誤った選択肢をまるで悼むかのように言葉を漏らした。


 尤も、初めから相手を亡き者にする前提で炎を放っていたのは間違いは無いのだが。


 しかし、悼みの言葉は1秒と待たずにあっさりと打ち砕かれる。




「まだ終わってないわよ!!」


 僅かな低さが見える少女の声が炎の中から響いた。当然デストラクトもサングラスの奥で視線を炎の中へと向けるが、炎の一部が不自然に揺れているのを確認した。


 まるで全てを見通しているかのように、先程火炎放射を放った杖を未だに下ろしていなかった。何かを待ち構えるかのように、未だに下ろされていない。




――炎の中から円形状の物体が投げつけられる!――




「おらよっと! そんなもん分かってたぜ? 今のでくたばる訳ねぇだろ?」


 盾でも投げつけられたのか、平たい円形状のそれをデストラクトは杖で弾き返す。


 炎の中から何かをぶつけてくるという予兆を想定していたのか、まだ姿を見せない相手に向かって甘さを自覚させるかのように言い放つ。


 弾いた盾のような物質は、デストラクトの横に無造作に飛んで行ったが、まるで意思でも持つかのように、床に落下せずそのまま炎の中へと戻っていく。




 そして、炎の中から誰かが飛び出すように現れた。


 それは炎の場所から見てデストラクトの横に並ぶように位置を決めていたようだ。


 自身の道具の力か、或いは誰かの魔力か、炎で焼かれている様子は見えず、それでも熱は感じていたからか、それを周囲に弾き返すかのように両腕を広げる動作を見せつけていた。


「派手な挨拶お疲れさん! でも火遊びなんかあたしに通じないわよ!」


 恐らくはレフィの魔力を借りていたのかもしれないが、具体的な対処法をコーチネルはいちいち説明しなかった。


 盾のような形状に変形させていた魔剣は本来の剣の形へと姿を戻させており、青の仏に対し、いつでも向ける事が出来るように右手で握り締められている。




(コーチネル……そいつ火だけが武器じゃないからね?)


 ワームホールの生成を継続させていたレフィも自身を包み込むように、淡い光を発生させており、それによって炎による攻撃を防いでいたようだ。


 魔法をメインの武器として扱うだけであり、保護魔法もお手の物なのだろうか。しかし、相手の武器が火属性の武器に限定されているという勘違いをしていないか、それを不安に思っていたようでもあったが。




「火の耐性付けただけでその後の対処……」


 デストラクトはレフィの存在を忘れていた訳でも無いはずだ。そして、あの姿を見て、多数の魔法を扱って来る事ぐらいは想像出来ていたはずだ。


 コーチネルの言い分1つだけで保護魔法を受けていた事を読み取ったようであり、それを勝利に導かせる事が出来るのか、試してやろうと思っていた可能性もある。


 証拠に、身体が前に傾いており。




――コーチネルに大股で歩み寄り……――





「出来るのかぁ!?」


 火炎放射を行なっていた金色の杖を、まるで金棒のように振り落とす。狙いはコーチネルの頭上だ。


 気合として飛ばしていたであろうその声は、もしかすると自分の純粋な力を受け止める事が出来るかどうかという確認のようなものだったのかもしれない。


 油断をしていた訳では無かったコーチネルはデストラクトの行動を見ており、そして自分が今すべき行動を魔剣に念じていたのだ。




――再び形状を盾へと変化させる!――




 今度は投擲(とうてき)が目的では無い。円形状の盾は、本来の持ち主の肉体を守るという目的の為にコーチネルの頭上で力強く構えられた。


 元々魔剣は片手でも扱う事が出来る武器であったが、盾の時は両方の腕でこれから落とされる攻撃に備えていた。


 金色の杖が、淡い赤の色合いを見せた円形の盾に激しくぶつかった。




「う゛ぅう!!!」


 相手は身体の構造こそは人間に酷似しているが、盾に与えてきた力は人間と比較しても良いのか分からないようなものであり、コーチネルの噛み締めた白い歯の隙間から苦痛の声が漏れた。


 杖そのものの重量もプラスされていたからなのかもしれないが、どちらにしてもデストラクトの腕力を体認したのは確実だ。


「やっぱり耐えるだけの根性はあったのか。でもまだ終わりじゃねえぞ?」


 金棒のように杖を振り落としただけで終わる訳が無く、デストラクトは防御の体勢を継続させていたコーチネルを足で押し出すように蹴り付けた。




「!!」


 盾を避けるようにコーチネルの決して太いとは言えない身体を押し飛ばし、強引に体勢を崩させた。壁に激突させられる程では無かったが、その力は非常に強かった。




――すぐに背中を持ち上げるが……――




「派手にやってくれ――」


 派手にやってくれたわね、とでも言おうとしたのかもしれないが、上体を持ち上げ、視界に何とかデストラクトの姿を入れると、左手に何か球体のような物を持っている事に気が付いた。


 それは妙に燃え上がっていたが、自分に向けて投げつけられると悟り、コーチネルはその場で左に転がるように離れた。


 実際に球体は投げつけられたが、まるで砲丸のように非常に鈍い音を立てながら床に落とされ、重量も非常に大きかったからか、バウンドもせずに転がった。


「さっきから小細工多いわね!」


 まだ立ち上がっていなかったコーチネルだが、転がり終わるなり、上体を跳ね上げるように持ち上げながらそのまま膝を引いて立ち上がる。


 そして今度は自分から一撃を加えてやろうとその場でデストラクトへ向けて駆け出した。




「へっ!」


 デストラクトの合図のようなものだったのか、先程球体を持っていた左手が握られると、床へ投げられた球体が小規模に爆発を起こしたが、自分に接近していたコーチネルには殆ど無意味であった。


 しかし、爆発に巻き込む事に失敗したとしても、それで敗北が確定した訳では無い。だが、今は剣に形を戻した武器を持ちながら向かって来る相手を処理する必要がある。


「今度はこっちの番よ!!」


 爆発は背後からの熱風で察知していたのかもしれないが、コーチネルは剣へと形状を戻した武器でデストラクトの胴体を狙い、走りながら突きを繰り出す。


 相手の両腕が胴体を守っている形になっておらず、そして防具による保護も無い為、狙おうとした思考に誤りは無かっただろう。




――デストラクトは余裕な表情であり……――




 コーチネルの右に移るように身を回避させる。見て避ける身体能力を完備させているのであろうデストラクトはコーチネルの右の側へと移ったが、左腕がコーチネルの背中を横から襲う。


 それを防ぐ手段は無かった。


 背中に激しい鈍痛を受ける事になってしまう。




「!!」


 背中を反らされそうになったコーチネルだが、踏み止まりながら背後を振り向くと、もうデストラクトの追撃が始まっていた。


「まだ終わらせねぇぞ?」


 デストラクトの金色の杖から炎が漏れていたが、それは火炎放射とはまた異なるものであった。


 炎が更なるリーチそのものになっているかのように杖の先端から伸びており、先端が伸びた杖でコーチネルを突くように狙った。




――鋭さこそ無かったようだが、実質的に鈍器で突かれるのと同じだったはずだ――




「!!」


 コーチネルの目の前に見えていたのは炎の槍だと認識しても間違いでは無かっただろう。


 自分に向けて突き出されている事は確かに認識していたが、それで自分を確実な有利へと導く戦術を発揮出来る訳では無かった。


 魔剣では炎の槍を防ぐ事は不可能に近いと判断したのか、再び盾の形状へと変化させ、身を守ろうとしたが、その余裕を与えてはくれなかった。


 デストラクトと比較すると華奢でしか無いであろう胴体に重たい突きが圧し掛かる。魔剣はまだ剣の状態のままだった。




「こい……つっ……!!」


 炎自体には相手を炎上させる効力は無かったのか、紫の半袖シャツに命中しても衣服を燃やす事は無く、そして炎で伸びた部分は六尺棒のような鋭さが無い構造だったのか、ただ鈍痛を与えるだけのものだったらしいが、それでもコーチネルの体力を打撃によって奪うには充分だ。


 一撃だけでは無く、続いて2発、3発と放たれ、意識を集中させる必要のある魔剣に対して力を込める事が出来ず、防御手段の為の変形も叶わない。胸当てである程度の防御手段を装備で補っているとは言え、鈍器のような攻撃に対して平然とする方が無理だ。


「さっさと返した方が身の為……ん?」


 デストラクトは3度、コーチネルに突きを放ち、呼吸を荒くさせる程に体力を奪ってから、まるでもう1度チャンスを与えるかのように薬液を差し出すように伝えようとしたが、右手に何か力を込めている様子が見えた為、特に焦る様子こそ見せなかったものの、一応は戸惑っていた。


 右手をまるで金属質の何かで覆い尽くしたかのような妙な変化を見せていたのだが、明らかに届かない距離から力任せなパンチを放とうとしていた。適切な距離であればデストラクトの頭部に命中していたと思われるが、どう考えても、腕を限界まで伸ばしたとしてもまず接触すらしないであろうその場所でコーチネルは右腕を突き出させた。それは殴打の時のそれと同じだ。




――しかし、腕の先端から何かが発射されたのだ――




「とぅうあぁあああ!!!」


 右手に纏わせた金属質のそれは恐らくは魔剣を形状変化させたものだったのだろう。


 コーチネルは渾身の力で殴り掛かるように右腕を伸ばした後に、右手に纏わせていたそれの意味を明確にさせた。それは一言で言えばロケットパンチの如く、デストラクトへ向けて発射されたのだ。


 それと同時にデストラクトの炎でリーチを伸ばした杖による突きも炸裂されていた。


 互いに同時に攻撃を放っていたが、コーチネルは右腕に全神経を注ぐかのような力んだ表情を見せていたが、デストラクトはまるで全てがいつも通りに進んでいるかのような余裕のある表情のままだった。




――互いの攻撃が相手に命中したが……――




 デストラクトはわざと身体をずらしたからなのか、相手の計画していた頭部への命中を叶わせなかったが、胴体に命中したのは確かであった。元が魔剣という武器の(たぐい)であった為か、身体に走った衝撃はかなりのものだったようだが、それでも戦意を奪い取られる程のものでは無かったかもしれない。


 そしてコーチネルは右手に纏わせていた力をそのままデストラクトへと放つ事に神経のほぼ全てを注いでいたからか、デストラクトの杖による突きをまともに受ける形となってしまう。(とど)まる為に力んでもいなかった為、胸部に命中した事で転ばされた、というよりは暴力的に突き飛ばされたのだ。


 炎による熱は殆ど感じられなかったが、胸部に受けた衝撃は非常に重く、ただ倒されただけでは無く、倒れた反動で両脚まで激しく持ち上がった程であった。




「痛ってぇなおい。でもまだ弱ぇぞ? 捨て身なんてやめとけよ?」


 デストラクトは一応はコーチネルの放ったロケットパンチのような攻撃を真っ直ぐ受けていたのだが、あの衝撃を受けても尚多少怯む程度で済んでいたようである。命中したのであろう筋肉で膨らみを見せている胸部を左手で払いながら、まだ立ち上がっていないコーチネルを見下ろしていた。


「……別に、捨て身って訳じゃないけど? よっと!!」


 倒れた際の背中の痛みも一緒に身体に走らせてしまった事で、言い返す為の言葉を詰まらせてしまったコーチネルであったが、上体を持ち上げた状態で喋り続けるのも、なんだか自分が負けている姿を曝し続けているような気がしたからか、その場でハンドスプリングを行ない、華麗に立ち上がる。自身がスカートである事はもうどうでも良かったのだろうか。




「捨て身なんかでやるかっつの! 簡単に命捨てられるかっつの!」


 立ち上がったコーチネルは右腕を真横に伸ばすなり、どこかに跳ね飛ばされていたであろう魔剣を手元に戻し、そして未だに傷らしい傷を負っていないデストラクトに向かって、自分を犠牲にしてまで深手を負わせるような戦法を採るつもりは無いと言い切った。


 また力任せな攻撃が迫ってくるのかと身構えていたが、側で燃え上がっていた炎の様子が変わるのを横目で認識する。




――突然周囲の炎が瞬時に鎮火され……――




「コーチネル! 準備完了したよ! さっさとこんな変なとこから脱出しちゃおうよ!」


 炎が消滅した奥に見えたのは青い魔導服と三角帽子が特徴的な魔法使いのレフィであった。目の前にはワームホールが円形状に広がっており、脱出の手段が言葉の通り、出来上がっている事を明確に表現している光景であった。


 背後にあるワームホールを左手で指差しながら、右手を使い手招きをする。


「レフィ完了したの!? ありがと!」


 長いようで短い戦いを繰り広げていたコーチネルは、やや荒くなっていた呼吸の中でレフィに明るい声で言い返す。




 そしてレフィに向けていた顔を再びデストラクトへと戻し、言った。




「じゃ、あんたとはもうお別れね!」


 まるで時間制限の中で標的を仕留める事が叶わなかった事実を突き付けてやるかのように、コーチネルは茶色の瞳でデストラクトのサングラスの奥に隠れているであろう目を凝視した上で、言い切った後に鼻で小さく笑ってやった。


 尤も、コーチネルも耐え切った事に対して素直に喜ぶと同時に命拾いをしたと実感していた瞬間でもあったと思われるが。


「へっ! そう都合良く行くと思うのか?」


 デストラクトはその場で左腕を持ち上げ、そして何も持っていない状態で左手を握るような動作をして見せた。


 すると、コーチネルの足元から淡く光る妙な物体が這い上がってきた。




「あんたの都合通りに行く……!」


 コーチネルはすぐにその場から駆け出す為に足を動かそうとしたが、足が両方ともその場から動かなかったのだ。


 明らかに締め付けられるような違和感があった為、反射的に足元に視線を向けるが、そこには何か赤く光る(つた)のようなものが床から生えていたのだ。それが足首にきつく絡み付いており、人力ではとても抜け出せるものでは無かったのだ。


 声が詰まるのも無理は無く、それを発生させたのは誰なのか、時間を使って考える必要も無かっただろう。


「それが行く訳だ」


 足元から蔦のような物体を発生させたのはやはりデストラクトだったようだが、杖を床に突き立て、両手に何も持っていない状態にした上で意味ありげにコーチネルの目の前に近寄っていく。決して身長が異常に高いという訳では無いが、それでも上から見下ろしてくる相手の視線に重圧を感じていた可能性すらあるコーチネルだったが、それよりも、握られていた右手に恐怖を感じていたのは言うまでも無い。




――横から拳が飛んできた――




「おらぁあ!!」


 足元を束縛されたコーチネルを狙ったのはデストラクトの無慈悲な横殴りだ。


 反射的に両腕を盾にしたコーチネルだったが、相手の拳はそれを避けていた。硬い物同士がぶつかり合うような痛々しい音が一瞬響く。


「うぅあぅ!!」


 殴打を受けて黙っていられる人間は少数だろう。コーチネルは少数の中に該当しない者であり、しかし非常に強い威力を受けながらも足を拘束されている事が原因でそのまま倒れ込む事も叶わなかった。






「コーチネル!! ……お前ふざけんなよ!!」


 自分の友人を目の前で殴りつけられた為、黙って立っていられる訳も無く、レフィはすぐにコーチネルを庇う為にその場から走り出す為に踏み込んだが、デストラクトはまだ攻撃をやめてはいなかった。


「まだ終わんねぇぞ? おらよっ!!」


 ふらついていたコーチネルの頭頂部を右手で掴み、その場で固定させるように力を入れたままで、デストラクトは左手で先程突き立てていた金色の杖を掴み、そして杖を左から右へ向かってコーチネルの足元を薙いだのだ。


 膝関節を狙うように薙ぐ際に密かに足を束縛させていた蔦のような物の強度を落としていたが、コーチネルには伝わらない。




――杖の中間部分が膝関節を横から襲撃する――




 「あう゛ぅっ!!」


 元々顔を横殴りにされており、ふらついていたコーチネルは追い打ちとでも言える足払いを受け、勿論膝関節に受けた衝撃も非常に大きく、支えを崩された事で背中から床に落とされてしまう。


 そして薙ぐ為に使用された杖はそのまま先端をレフィへと向けられる。一方でレフィは手元に風の力を溜め込んでいたが、杖の先端の意味を理解していたレフィの表情は瞬時に変わる事になる。




――先端が熱したように赤く染まり……――




 先端から炎を使った攻撃が開始される事を瞬時に悟ったレフィは元々攻撃用に溜め込んでいた風だったのかもしれないが、一旦それを盾として拡散させた。


 自身の前で壁のように広げ、そして目の前から弾丸のように発射された炎の球を受け止めた。


 それだけでは無く、レフィはもう次の行動へと移っていた。溜めていた風の魔力の全てを防御に注いだ訳では無かったようだ。あまり武闘派とは言えない魔法使いのレフィは、足元に風の力を集中させ、滑るように床を蹴り、そのままコーチネルの前へと移動した。


 デストラクトからの攻撃を防ぐ為に、コーチネルの前に立ち塞がる気だったのだろうか。




「あんた最低だね! 女の子殴るなんて。仕返しする奴がいる事忘れてない?」


 コーチネルを放置する事が出来ず、まだ起き上がっていない銀髪の友達の前で立ち塞がりながら、デストラクトに見せつけるかのように右手の上に風の塊を生成させる。仕返しの担当は、レフィ本人であるようだ。


「戦いに男も女もねぇよ? 返すもん返さねぇならお前も後ろの奴と同じ目に……なんだ?」


 自分達が不利になった途端に性別を持ち出すレフィに向かって、平然とデストラクトは言い返す。ただ自分の目的を果たそうとしていただけであると、しかし、背後に違和感を感じたのか、目の前に敵対している魔法使いがいるのにも関わらず、身体毎背後に向けていた。


 それは目視して正解だったかもしれない光景が広がっていた。




ー―目の前に瓦礫の塊が飛んできた――




 部屋に散らばっていた小さな欠片を集めていたのだろうか。相当な重量なのは間違いは無い。


 デストラクトも直撃したらどうなるかぐらいは分かっていたはずだ。それを避ける為に、瓦礫そのものの存在を消してやろうとしたのだ。デストラクトには腕力という武器があり、目の前に迫る瓦礫を力任せな処理で終わらせる事にしたのだ。




――左の拳が瓦礫を殴り返す――




「邪魔だ」


 声には気合が灯っているようには聞こえなかったが、左手による殴打は確かな威力だったようであり、デストラクト目掛けて飛来していた瓦礫は殴打によって粉々に砕け散ったのだ。小さな塊等を集めて作り上げたものであったから、過度な衝撃には弱かったのかもしれないが、不意打ちとしては失敗に終わったようだ。




「さて……」


 背中を見せたデストラクトに対しては、レフィも今がチャンスと考えていたはずだ。


 相手に気付かれぬように詠唱を心で唱えていたのか、短くそして小さい声を漏らしながらも、両手には横に倒したような小規模な竜巻を発生させていた。それを炸裂させ、デストラクトを吹き飛ばそうと計画していたのだろうか。まだ相手は背中を向けている。散らばる瓦礫の行方でも見ているかのようでもあった。


(チェックメイトだよ! 仏のくせに罰当たりな事ばっかしやがって!)


 そのまま両腕を真っ直ぐ突き出せば魔法が発動されるのだろう。デストラクトの見た目だけはうっすらと仏を思わせる螺髪(らほつ)の髪型をしているが、実際の仏とはまるで比較対象にすらならないような荒々しい攻撃を炸裂させていた為、これで終わりにしてやろうと本気で考えていたのかもしれない。




「へっ!」


 デストラクトは何も考えずにレフィに背中を向けていた訳では無かったのだろうか。


 寧ろ初めから分かっていたかのような笑い声を口から漏らしていたが、決して口だけの話では無かった。


 瓦礫を粉砕した左手をここで再び使ったが、それは何かを破壊する為では無く、掴む為に使ったのだ。








――左手は、レフィの細い首を乱暴に締め上げた――











今回の戦闘で思ったんですが、意外とコーチネルもレフィも真面目に戦おうと思えばホントに実力者として力を見せてくれるみたいです。コーチネルは変化自在の魔剣で攻撃と防御を切り替えられますし、レフィも風魔法とそして応用なのか、物体を浮遊させてそれを相手にぶつける力技みたいな事も出来るので、2人だけでも色々と窮地を突破してくれそうな雰囲気はあるのかなって。まあでも最後はちょっとレフィが……。

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