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黒衣を纏いし紫髪の天使  作者: 閻婆
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第30節 《溶け落ちる液体生命体 仏は地獄の炎を与えるか》 1/5

今回は液体状生命体との戦いが終わって、それを操ってた者との最後の決着になるかと思います。メンバーも全員が揃って、いよいよ決着です。今回は生命体を操ってた張本人を追い詰める話になりますが、どうなるのやら……。







       亜空間の最深部というべきだったのだろうか


       極彩色の植物が茂る場に建造されたとある小屋


       更にその奥の秘密の部屋で、遂に空間を指揮していると思わしき男に出会う


       最高傑作と自負する赤い液体の人型生命体と戦う事に


       しかし、弱点である黒いコアを破壊された事で……








「ん? なんだ? ってお前ら来てたのか」


 オールドブルーの皮膚で、鉄の胸当てと白のボトムスを着用した水棲系の亜人であるディマイオは、自分が宙に今存在していた黒い球体を撃ち抜こうとする前に、背後から飛んできたであろう風の刃が球体を両断してしまうのを確認したのである。


 背後から飛んできた刃であった為、大体の予測こそは出来ていたものの、実際に見るべきだと考えたのか、背後に振り向き、昆虫の複眼にも似た黄色の器官で事実を確かめると、やはり予想の通りの者がそこに存在した。


 開きっぱなしの扉を背後に、特徴的な双剣を装備した鳥人の男が自信あり気にディマイオに視線を向けていた。紺色の羽毛と黄色のアクセントの入った黒のコンバットスーツを着用した鳥人の男で、右手の側に持っていた双剣を空中で一回転させながら返事を渡した。


「来ちゃ悪かったのか? それとも(とど)め奪われてムカついたのか?」


 鳥人の男はフィリニオンであるが、わざとディマイオの心情を抉るような意地の悪い言い方で返していたが、ディマイオの反応はどうなるのだろうか。




「別に手柄の奪い合いしてる訳じゃねえからどうだっていいじゃねえかよ」


 ディマイオは元々共に戦う事を前提で行動していた為、自分の手で相手に最期を迎えさせる事が出来なかったからと言ってそれで過度に相手を責めるような真似はしなかった。


「まあ結果オーライなんだから誰が最後決めたって良かったと思うけどな」


 フィリニオンの後ろから、扉を抜けて隣にやってきた者がいた。濃い紫の装束を纏った忍の男であり、それはガイウスである。


 元々は仲間同士であるのだから、まずは敵対する相手を無事に仕留める事が出来た以上は共に喜び合うべきであると緩めの口調を見せた。




 そして、残りの1人もガイウスの後ろから、扉を通り抜ける形で現れた。




「ヤッホー2人共! 元気にしてた!? デートの最中だろうけど邪魔させてもらうよ!」


 青い魔導服と同じ色の三角帽子を纏った金髪の少女は、フィリニオンとガイウスを押し退けながら、2人よりも前に出るなり、まるで久々に友達に出会った時のようなテンションで少女は右手を持ち上げながら振り始めた。勿論2人とは、ディマイオとコーチネルの事であるが、男女のペアだった為にデートという表現を使いたかったようだ。




「やっぱり全員いたのか。こいつはもうくたばったし、皆も揃ったしで後はもう困る事はねぇな」


 ディマイオは仲間達が皆揃った事を実感すると同時に、この部屋を実質的に制圧したものと実感もしたようであった。自分達の命を狙っていたであろうあの人型の生命体も今はコアを破壊され、水溜まりと化すように溶けたまま、一切復元される様子を見せていない。


「皆来てくれたんだぁ? それとデートじゃないから。所で聞きたい事があるんだけど……いいかな?」


 生命体の奥に位置していたコーチネルも、駆け付けた3人と対面する為に一旦水溜まりと化した生命体の横を通りながらディマイオの隣にまで駆け足で進んだ。一度レフィに対して否定の返事を渡した後に、3人の誰に対してなのか、それとも3人全員に対して聞いていたのか、1つの疑問を解決させようとしていた。




「聞かれるのは分かってたぜ。多分あれだろ? 爆発の事、でいいのか?」


 答えようとしたのはガイウスであった。大体想像が出来ていたのかもしれないが、ガイウス達は直接目の前で見たであろう爆発の話をされるのだろうと、コーチネルへと言い返す。


 しかし、正解かはまだ分からない為、確認も忘れない。


「よく分かったわね。まあその通りなんだけど、あれって何だったの? それと皆は大丈夫だったの? 被害とかそういうの」


 ガイウスの相手を読み取る鋭さを、もう既に回数を重ねているのかもしれないような誉め言葉をコーチネルは与えながら、そして爆発の原因と、そして皆の安否を確かめようとする。




「まず結論から言うと、爆発でおれらが怪我とかっていうのは無かったな」


 ガイウスは後からされた方の質問に答える事に決めたようだが、3人の見た目の通り、爆風等の被害を受ける事は無かったようだ。


 そして、爆発の正体を説明する事になったのは、フィリニオンであった。


「あれなんか変なエルフみてぇな奴がいてだ、いきなり腕爆発させやがったんだよ」


 爆発の原因を説明したのはフィリニオンで、どうやらエルフが腕を爆発させてしまったようである。説明自体はあっさりとしていたが、爆発の原因が理解出来たのだから、これで良いはずだ。




「エルフ……腕……? もしかしてあたしに襲い掛かってきたあいつ……かなぁ?」


 腕が強調されていたエルフにはコーチネルは見覚えがあり、それだけでは無く実際に戦った為、そのエルフが今話に出てきている人物だと確信する。


「コーチネルやっぱりあいつと面識あったんだぁ? あいつもコーチネルの事なんか凄い言ってたよ。まあなんて言ってたかは言わないけどさ」


 レフィは腕を肥大化させていたエルフと対峙していた時に言われた事を思い出したが、コーチネルの事をどのように呼んでいたのかは敢えて言わない形で進める事にしたようだ。言った時にどのような罵倒を放たれるか、あまり考えたくなかった可能性もある。




「やっぱりあのエルフだったの? ってレフィさぁ、あいつあたしの事なんて言ってたの? 教えて」


 コーチネルと対面したエルフがやはり該当していたようだ。しかし、聞かなければ分からない話は聞くしか方法が無く、レフィに事実を訊ねようとするが、表情はどこか(いぶか)しげであった。


「いややめとく。今言ったら不味いって。男の前で言ったらコーチネル恥ずかしくて死ねるよ?」


 レフィはコーチネルの表情を見て、明らかにまともな答えを期待しているとは思えなかった為、どのように呼ばれていたかを明かす事をしなかった。やはりレフィやコーチネルから見て異性に該当する者がこの場にいる為、それを考慮するととても言えたものでは無かったようであった。明かした時に心境がどう変わるのかも伝えたが、ディマイオの言葉でもうその話題は終了される事になる。




「この変なスライムみてぇな奴はもうくたばった訳だ。とりあえずあそこにここのリーダーみてぇな奴隠れてっからまずやっちまおうぜ?」


 もうただの水溜まりのようになってしまっている元液体生命体だったものを、ディマイオは指差しながら自分達が次に何をすべきかを皆に考えさせる。


 水溜まりを指差した後は、壁としての役割も負っていたと思われる機材の方に指を向け直していた。今はただ見るだけではその先に誰も映ってはいなかったが、物陰には確かにこの部屋を仕切っていた者が隠れていたのだ。


「うわぁディマイオお前も野盗みてぇな雰囲気出してんなぁおい。お前もう野盗にでも転職したら面白れぇんじゃねえのか?」


 フィリニオンは何となくディマイオのこれから畳みかけようとしているかのような態度と口調を見て、この空間にいた野盗の者達と似たようなものを感じたらしい。今は野盗達を相手にフィリニオン達と戦ってはいたものの、初めて会った者であれば、ディマイオの荒い口調と声色が原因で社会的に忌避されている世界で生きている者と勘違いしてしまうかもしれない。


 それを受け止めてしまったからか、フィリニオンは随分と不謹慎な提案をディマイオへと渡してしまう。




「ふざけてねぇでさっさとやるぞ。お前だって充分荒れてる態度してんじゃねえかよ? 違ぇか?」


 ディマイオは口調だけは野盗や盗賊等にも負けていないかもしれないが、自分の地位を彼らと同等にするつもりは一切無かったようである。そして言われっぱなしでいる訳にもいかなかったからか、フィリニオンも野盗に負けないような態度や口調を見せているだろうと指摘をしてやった。


「今日初めて会ったってのにもうそんな風に思われてんのかオレ」


 フィリニオンはここで初めて自分がどのような評価を受けていたのかを知ったようだが、あまり怒っている様子も見せず、寧ろ自分にとってはそれぐらいが相応しいと感じているかのように余裕のある表情を見せていた。




「ディマイオいいからそういう態度。下手したら喧嘩になるわよ? それより……」


 ディマイオの隣にいたコーチネルは、相手を刺激するような言い方を見せたディマイオの胸部辺りを一度手の甲で叩きながら言い合いのようなものを辞めさせた。ここで仲間同士の醜いやり取りをうっかり思い浮かべてしまった為か、これ以上は言わないようにと自分がストッパーになったようだ。


 そしてこの室内には本来最も強く問い詰めるべき相手がおり、それは今皆の視界に入らない場所に隠れている。それを忘れていなかったコーチネルは皆が視界に入らない方向へと顔を向けた。




――コーチネルは機械設備の影に向きながら再び声を張り上げた――




「そこに隠れてる奴! もう出てきたら!? あんたが言ってた最高傑作だっけ? もうあたしらが倒したんだから出てきた方が身の為よ?」


 機械設備に向かって、コーチネルは影に隠れているであろう野盗の男に言い放つ。既に人型の形状を見せていたあの真っ赤な生命体はコアを破壊し、絶命に追いやっているのだから、もう抵抗が出来る立場では無いはずだと、先程まで多少切らしていた息を整えた状態で威勢を見せつけた。


 尤も、相手は直接は目視していないが。


「そういやぁ隠れてたんだったな。野盗だか野郎だかそんなもんどうでもいいけど、出て来ねんならこっちから行くぞ?」


 今思い出したかのようにディマイオも、野盗が身を潜めていた事実を改めて受け止めるかのような様子を見せていたが、相手が野盗と呼ぶべきか、それとも罵る時に使う言葉として有名なそれで呼ぶべきかはどうでも良かったようだ。


 それでも追い詰めてやろうという気持ちはコーチネルと同じだったようであり、自分から来ないようであるなら自分達で逃げ道を塞いでしまうと伝えてやった。


 それが相手に聞こえているかどうかは分からない。




「何? なんかあるの? 誰か隠れてるの? まあ友達同士でかくれんぼ……じゃあ無いよね」


 レフィはこの部屋の事情を知らない為、次は何が待っているのかを聞こうとする。隠れているという事はある種の遊びを連想してしまうが、それは確実に正解では無いという事ぐらいはレフィであればすぐ分かる事だ。寧ろ分からなければ仲間達から何を思われていた事か。


「隠れてるって……あぁもしかして今戦ってたあのスライムみたいな変なのに任せっきりにしてたってやつか。もうこりゃ詰んでるな、人数的に」


 ガイウスは話の流れで敵対している誰かがこの部屋のどこかに隠れているという事を読み取ったが、隠れているのは兎も角、人数の面で確実に相手の方が不利だとしか思えなかった。その為、もうここの場では勝手に勝利を手に出来たものだと決めつけても良いのではと感じていた可能性も。




「いいからさっさと引き摺り出せよ。もうあそこにいるって確定してんだろ?」


 フィリニオンは最初にこの部屋に突入していた2人が見ている場所に隠れている事を読み取り、そして確かに機械設備の背後には丁度誰かが隠れる事が出来るような隙間が壁と設備の間に出来ており、そして横から見に行けば隙間の様子を見る事が出来るという配置方法も確かに読み取っていた。




「ちょっとあたし行って来るね? そもそもあの変な生き物に戦い全部任せてたような奴だし、引っ張り出してくるわ」


 出て来いと言った所で、自分から出てくるとは思えなかったコーチネルは自分の方から強行手段に走る事を決めた。


 しかし、数歩歩いた所で、ディマイオに肩を引っ張られてしまう。


「っておいコーチネルお前やめとけって。あいつ何すっか分かんねぇぞ? 近付いたらいきなり刺されたとかじゃ洒落んなんねぇからな?」


 追い詰められた相手の心情を考えると、穏やかに解決出来るとはとても思えなかった為か、ディマイオは行かせてやろうという気持ちにはなれなかった。言った事がそのまま現実になってしまうとは限らないが、だからと言って自分達の都合の良い方向に進む保証も一切無い。


 不意打ちを恐れてだったのか、コーチネルに行かせてやろうという気持ちどうしてもなる事が出来なかった。




「大丈夫だって! あたしそんなにのろまじゃないって!」


 コーチネルは自分の右の肩に乗っていたディマイオの右手をやや乱暴に払い除けながら、自分の実力を信用してもらえない事になんだか物悲しさを僅かながら感じていたかもしれない。しかし、本当に突然刺されそうになったとして、対処する手段や思考を持ち合わせているのだろうか。


「そうやって結構ここでピンチになってなかったっけ? また助けてもらうの?」


 レフィは明らかにからかってやろうという気持ちを裏に隠しているかのような、にやついた表情でわざわざコーチネルに近付いていく。まるで自分が助けて点数でも稼いでやろうと企んでいるかのようにも見えるのは気のせいだろうか。




 コーチネルはレフィに対しては何も言葉で言い返す事をせず、右手で振り払いながら目的の物影へと進んでいく。振り払う行為そのものが返事の代わりだったのだろうか。




 戦闘でも扱っていた魔剣を(さや)から取り出し、いつでも自分の身を守る事が出来るようにと、右手で強く握りながら、そして機械設備の影へと踏み込んだ。




「さてといつまで隠れてんのよ!? 諦めて出てきたら? あんたはもう終わりなんだからさぁ?」


 設備の影まで進むと、やはり野盗の男がそこに隠れていた。特に何かをしていたという様子も無く、ただ背後の壁に追い詰められたかのように背中を預けているだけであった。しかし、その場では何もしていなくても、あの真っ赤な液体生命体を放った張本人である為、ここで放置という訳にはいかないのだ。




「そうか……。遂に倒したのか。もう俺は終わり、だろうなぁ……」


 真っ黒なズボンと斜めにかけたショルダーベルトが特徴的な引き締まった肉体の男は、コーチネルに詰め寄られているからなのか、自分が呼び出した生命体を倒された事実をゆっくりと受け止める。それに伴い、もう自分も威厳を放ち続ける事はもう不可能なのかと、諦めたような表情も見せ始めていた。




「やけに諦め早いわね。でも抵抗したってあたし以外に4人控えてるから、よく考えて抵抗してねって先に言っとくわよ?」


 元々逃げ場が無い野盗の男であったが、逃げる場所が無いからだったのか、男はあっさりと自分の負けを認めていた。その様子がコーチネルにとっては不自然に素直過ぎると感じられており、そして相手が抵抗をする様子を見せていないにしても、実際に抵抗をしたとしてどうなるのかという説明も忘れなかった。


 右手に握っている魔剣は、いつでも発動が出来る状態なのだろうか。


「あぁ……残念だ……。もう俺は終わりだ……」


 野盗の男はコーチネルの持っている魔剣に視線を向け、自分がこれから何をされるのかを悟ったのか、その意味を持った上で終わりだと口に出したのだろうか。




「さっきも似たような事は聞いてるから、じゃあさっさと来てくれる?」


 終わりだという言葉はたった今より後にも聞いていた為、コーチネルは魔剣の切っ先を男に向けながら言い放つ。大人しく来れば切っ先を男に対して突き出す事はしないという意味もそこに含まれている事だろう。


「しょうが……ねぇなぁ」


 小声で、野盗の男は諦めたかのようにゆっくりと前に一歩踏み込んだ。それは実質的にコーチネルに近寄る事を意味していたが。




――しかし、物陰から突如自動小銃を男は取り出した!――




「てめぇだけでも蜂の――」

(やっぱ来たか!!)


 機械設備の隙間だったのだろうか、そこに男は手を伸ばすなり、物々しい銃、それも自動小銃と呼ばれる類の武器を取り出し、コーチネルへと銃口を向けた。


 だが、コーチネルは違った。このまま発砲され、命をこの場で落とすのでは無く、男が実際に発砲する前に魔剣の力を、それを自分を守る為に形を変化させる。


 今回は変形をさせる前に魔剣を男目掛けて槍の投擲(とうてき)のような形で投げつけていた。それは武器としてというよりは、拘束具として使う為であった。


 (たこ)の足のように6方向に広がり、それが男の胴体を前から掴んだのだ。自動小銃から発射されるはずだったであろう銃弾すらも受け止めるかのように開いたコーチネルの魔剣は男を拘束し、一切の攻撃を封じ込める事に成功する。




「うわぁ何しやがる!?」


 野盗の男は突然前方から6つの方向に広がった魔剣によって掴まれてしまい、そのまま両腕の自由を奪われてしまう。ただ立ち続ける事しか出来なくなった男は、何とか抵抗の意思を見せようとしたのか、聞かなくても分かっているような事を敢えてコーチネルに言い放っていた。


「自分でも分かってるでしょ? あんたの事ひっ捕らえたのよ?」


 コーチネルはいちいち説明をするのも面倒だったかのような口調を見せてやった。それでも実際に説明を聞かせてやる事に決めていたが、男の台詞に対し、何だか聞き飽きていたかのような表情でもあった。拘束された後に自分に何をしたのかを聞くのは、人間の性なのだろうか。




――騒音を怪しんだディマイオはすぐに駆け足で近寄り……――




「おいコーチネルなんだよ今の音……ってもうやっちまったのか」


 男の怒声や騒がしい足音等を心配に思ったのか、ディマイオは真っ先にコーチネルのいる機械設備の物陰へと向かったが、そこにいたのは見た目状は特に外傷らしき損傷を負っていないコーチネルと、そして少女の目の前には物々しい拘束具で上半身を締め付けられた野盗の姿があったのだ。


 本当は自分も束縛に関して協力する必要があったのかもしれないが、既に決着は付いていたのだ。


「あぁディマイオ? うん、もう大丈夫。完了よ? あたしだってやる時はちゃんとやるからね?」


 後ろからやってきたディマイオを背後で感知したコーチネルは軽く背後を振り向きながら、拘束した野盗の男を指差した。


 もしかして自分は頼りないと疑われていたと感じていたからか、自分だけであっても目の前の男を封じる事は普通に可能だったと自慢でもするかのようにディマイオと目を合わせていた。




「別にお前じゃ無理だなんて言ってねぇけどな?」


 ディマイオはコーチネルの心配こそしていたが、逆に達成が不可能だとは言った覚えが無かった為か、否定の意味を込めた返事を見せたが、元々の荒い声色のせいで普通よりも乱暴に聞こえてしまう。


「そんな怒ったような言い方しないでって……。とりあえずさ……」


 コーチネルからするとやはりディマイオの機嫌を損ねてしまったのかと受け取った為、非常に回りくどく自分の言い方に関して詫びるような言い方を見せた後に、拘束していた野盗の男を引っ張り出しながら、皆の前に連れて行く。


 そして改めて皆に伝える決心を見せた。




「皆! とりあえずここの元凶捕まえたからさ! ほら!」


 利き腕では無かったはずの左手でコーチネルは野盗の男を機械設備の物陰から引っ張り出し、そして皆からはっきりと見えるであろう部屋の中央まで男を半ば強引に引っ張り、そして目的の場所にまで到着するなり無理矢理そこで立ち止まらせ、コーチネル自身は男の右に立ちながら左の親指で男の人相の悪い顔を差した。




「おぉナイスじゃんコーチネル! まあディマイオ君のフォローで出来た事だと思うけどさぁ?」


 レフィは見事に野盗の男を何かしらの道具を使い、身動きを封じた事に対し、わざとらしく拍手をしながら褒め称えた。しかし、直接現場を見ていなかった為か、ディマイオの助力があってこその成果だと疑っていたようでもあるが。


 そして、拘束の為に扱っていた道具が魔剣が変化したものだと気付いてはいたのだろうか。


「いや、オレ別になんもしてねぇけどな? ホントにこいつだけで全部やったからな」


 直接表情に出さない、というよりは見ただけでは判断が出来ないディマイオの潜水用のマスクのような容姿から、なんだか笑いが漏れたかのような言い方でレフィに返答が渡されていた。


 言葉の通り、確かにディマイオは拘束する行為に関して直接の関与はしていなかったのだ。




「今騒がしくなった気がするけど、まあ経緯(いきさつ)なんかどうでもいいか。じゃあ、引き上げるか? 勿論そいつも連れてな」


 ガイウスは自分が見えない場所で騒音に該当するであろう音を確かに聞いてはいたが、直接は見ていない以上は余計な追求をしようとは思わなかったようだ。それよりも元凶を折角捕らえたのだから、元凶と共に外に脱出すべきでは無いかと疑問形で問いかける。これはコーチネル以外の者に対しても聞いていた事だろう。


「それがいいかもしんねぇな。とりあえずギルドに連絡入れて後でここ調べさせっか。オレらじゃもうこんなとこいたってしょうがねぇしな」


 フィリニオンもあまりこの地に長居はしたくなかった事だろう。


 ガイウスに賛成した上で、ギルドへの報告を次の自分がすべき事として意識する。




「残念だけどなぁ、お前らはもう脱出なんか出来ねぇぜ?」


 拘束されたままの姿で、野盗の男は突然言い出した。


 それは自分自身も今は負けている状況ではあるが、相手に対しても勝利を抱えたまま生きて元の世界に戻る事が出来ないという内容であった。言葉自体は短かったが、意味は確実に深かった。




「おいおい今頃んなって負け惜しみかおい? どうせ起爆装置とか言うんだろ? 無理だぞ。一応こいつがワープ装置持ってっからそれであっさり脱出出来るぞ?」


 ディマイオは初めからこの空間から普通に帰る事が出来るとは思っていなかったようで、野盗の男が何かしらの妨害を行なってくる事を予測していたらしい。


 言い出した場合のパターンを察知していたのか、男が見せつけてくるであろう脅威を先に言ってやった。しかし、コーチネルを指差しながら、起爆装置に該当する何かを作動させた所で無意味であると、話を終わらせてしまう。


「まあね。だから何があったって別にこっちは困んないわよ?」


 コーチネルはワープ装置を所持した状態でこの地へと来ていたのだ。出入口として使った場所が封鎖されてしまったとしても、それで自分達の未来が奪われるという事は無いと言葉をぶつけてやっていた。


 野盗の男は拘束されている時点でもう何を言ったとしてもそれで周囲を震えさせたりする事なんて出来ないのである。




「じゃあ一応おれも。こっちもテレポート出来るからそこんとこ宜しくだぜ?」


 ガイウスにも脱出手段があるようで、自身がその場から消えてしまう事も出来るらしい。勿論消えた後は任意の場所に姿を戻すという工程を自分で発動させる事が出来るようであり、それは自分の事情を知らないであろう初対面のとある3人に向けた言葉だったのかもしれない。


「オレは出来ねぇけどガイウスの奴自分ともう1人だけなら一緒に出来るからオレもこうやって同行してる訳だからな」


 鳥人のフィリニオンは自分自身は特殊な移動手段を持ち合わせてはいなかったようだが、ガイウスの能力を借りる事を前提として共にこの地へとやってきた為、脱出手段に困る事は結局の所、誰にとっても無かった様子だ。


 ガイウスのテレポートは本人だけでは無く、誰か1人だけを連れた状態でも発動させる事が出来るようだ。どちらにしても、フィリニオンのみが脱出が不可能という話にはならないようだ。




「あぁ皆意外と緊急時の手段持ってたんだぁ。因みにわたしもワームホールみたいなの魔法で作れるから閉じ込めようったって無駄だからね?」


 レフィはもしかするとここで大量の点数を稼ぐつもりだったのかもしれないが、自分自身が持つ魔力で脱出用のルートを作る手段以外にも、それぞれが各自で方法を持っていた事を知った為、自分だけが過剰に目立つという事は出来なくなったようだ。


 だが、表には隠れた感情や態度を見せる事はしなかった。寧ろ自分自身の能力の説明がそのまま皆に対する自分自身の脱出手段のそれになっていたはずだ。




「けっ……。好き放題言いやがって……。だったら実際に地獄見せてやるよ! もうすぐだぜ?」


 脱出の為の手段をほぼ全員が、そして自分だけでは無く他者も一緒に連れて行くだけの制御力も保持している事を聞かされてしまった野盗の男であったが、手段を持たれている以上はもうそれしか言う事が無かったのだろうか。


 それでも、実際に惨状を作り上げてやった時に彼ら彼女らがどうなるのか、それだけは期待していたのかもしれない。


 男は密かに作動させていたのかもしれないが、それは発生した事を床が教えてくれたのだ。






――突然建物内に大きな地響きが発生する――









途中でコーチネルったらカッコ付けようとして返り討ちに遭いそうにはなってましたが、これでも幾戦の戦いを切り抜けてきた少女剣士なので、無事に相手を捕らえてくれました。あの変化自在の魔剣もホントに使い勝手がいいような気がしますし、上手に使えばかなりの強キャラになってくれるんでしょうか? まだ分かりませんがw

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