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黒衣を纏いし紫髪の天使  作者: 閻婆
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第29節 《頼れるのは粗暴な銃使い 風使いの魔女も見落とすな》 3/5

前回の投稿から1ヵ月程が経過してしまいましたが、何とかまたペースを縮めるように努めるつもりです。遅くなってしまうとまたそれが癖になってしまうので直さないといけません。今回はガイウス達の視点になりますが、戦闘は無かった気がします。











            極彩色の植物が茂る異様な亜空間


            しかし、今は外のこの場所が舞台では無い


            たった1軒の建物の内部が舞台と言える


            新たに3人がこの中に向かったはいいが


            あの滅びたと思われていたエルフが実は……






「あぁくっそ……。いってぇなぁ……。ここの建築(もろ)過ぎなんだよなぁ……」


 ここはある建物の内部で、床が派手に崩れた部屋の下の階の様子であった。崩れた床と、部屋に設置されていた棚が派手に崩れた影響で下の階は殆ど瓦礫の山となっており、床が崩れた上の階は勿論、下に存在した部屋も殆ど使い物にならないような状態であった。


 その中で、木材で山になった1つの場所から、上半身を突き破るように出現させたエルフの姿があった。


 青いベリーショートの髪と、真っ黒なレオタードの服装のエルフは崩れた瓦礫の影響で身体にいくつかの擦り傷や切り傷を付けていたが、瓦礫に巻き込まれたとは言え絶命には至っていなかったようだ。


 付近の木片等を蹴り飛ばしながら、自身を覆い尽くしていた瓦礫の山から降りるが、周囲にはもう誰もいなかった。




「あの女もういなくなってるのか……。もっと痛めつけてやろうと思ってたのに」


 首の凝りを解すかのようにやや乱暴に首を左右に折りながら、床が崩壊する前に戦っていたとある少女の剣士を思い出す。まだ勝敗が確定していなかった時にうっかり床を崩してしまい、そのまま戦いは終わってしまったのだ。


 エルフは瓦礫に巻き込まれたせいでしばらくは意識を失っていたようだが、回復した時には今の状況だ。つまり、孤立した状態であった。




「もしかして帰ったのか……? いや、そんなはずは無いよな? なんだ? 誰か来るのか?」


 物音1つ聞き取る事が出来なかった為、エルフとしてはもう先程戦っていた少女がもう建物を後にしてしまったのかと思っていたが、静かだったこの空間に、何者かの足音が静かに響いた事を聞き取った。


 まるで自分にとって嫌いな相手を待ち構えるかのように、上の階を狙って目を細め、そして眉間にも皺を乗せながら睨み続ける。








――そして、エルフが生き残っていた部屋に近づく3人はと言うと……――




 1人は床を疾走し、2人はそれぞれ一対の翼、或いは風の魔力を使い宙を舞うように飛行している最中だった。


 疾走している唯一の人間であるガイウスは、それでもエナジーリングの効力を借りているからか、飛行を見せている2人にも全く劣らぬ速度を見せていた。


「さて、あの2人無事ならいいんだけどな」


 ガイウスは忍のマスクの下で、最初に今いる建物に突入した2人が負けていなければと、ある意味ではわざわざ言う必要が無い可能性がある事を何となく言葉として出していた。




「耐毒薬の方はちゃんと飲んだんだろうね2人とも? それ飲んでないと部屋入った途端に麻痺るからね!」


 足元に風の魔力を溜め込み、地面とほぼ平行になるような姿勢で宙を浮きながら進んでいるレフィは恐らくはこの建物の内部に入る前に渡したのであろう耐毒薬の話をここで出す。


 それはこれから向かうであろうとある部屋の内部に密かに拡散されている毒に対抗する薬物であり、それが無ければ助からないという事がレフィから説明を受けていたのだろう。


「心配ねぇよ。飲んでるぜ?」


 隣で滑空のような形で進んでいるフィリニオンも短くではあるが、確実に摂取しているという事をレフィに言い返す。




「おれもバッチリ飲んでるぜ? 事前に調べてくれたお前さんにはホント感謝だぜ」


 扉の前に辿り着いたガイウスはその場で立ち止まりながら、レフィの確認に対して返答を渡す。この亜空間に突入する為に下調べを念入りに行なっていたからこそ、今ここで絶大な手助けを受け取る事が出来ているのだから、言葉の通り感謝をしているのは間違いは無いだろう。


「わたしも素直に感謝は受け取らせてもらうね? じゃ、目的地にあっさり着いたけど、わたしから先手で行かせてもらうからね」


 レフィも扉の前に辿り着いた為、足に付加させていた風の魔力を弱め、ゆっくりと床に降り立ちながらガイウスへ言い返す締めとしてだったのか、青い瞳でウィンクを渡した後に、3人の中で最初に扉の取っ手に手を伸ばす。




――最初こそゆっくりと取っ手を引いていたが……――




「誰が来たってこっちは3人だから平気か!」


 まるで突然人格や気合が入れ替わってしまったかのように、レフィは自分自身に言い聞かせるかのように直接声に出した上で取っ手を一気に手前へと引いた。


 そしてガイウスとフィリニオンよりも先に扉の先へと突入する。


「おいレフィ注意しろよ? 中に誰がいるか分かんないぞ?」


 ガイウスはレフィの青い魔導服の背中を見ながら油断はしないようにと声を渡すが、しっかりと受け止めてもらえたのかどうか。




「いたらいたでオレらで始末すりゃいいだろ? まあこいつ1人でも余裕そうだけどな」


 フィリニオンは建物の外でスライムと戦っていた時のレフィの戦い方を見ていた為、自分達でレフィを守る事も出来るはずであるし、逆にレフィだけに任せてしまうという決断も出来るだろうと余裕のある態度を見せていた。


 そう言っている間にもうレフィは完全に室内へと入ってしまっていた。


 扉は閉まっておらず、隙間からレフィの後ろ姿がまだ見えていた為、男2人もまだ特に何も起こっていない内に入ってしまおうと、扉の奥へと進んでいく。




――室内は床が盛大に崩れており……――




「ってこれ凄いね……。床思いっきり崩れてるじゃん。コーチネル達何やったの? 大技とか?」


 部屋に入った瞬間にまずレフィが驚いたのは、まるで巨大な岩1つが床に落とされたかのように1つの巨大な穴が部屋の中央に開けられていた事であった。


 殆ど今いる場所の床は殆ど壁際しか残っておらず、そして崩れた床の下は元々は今いる部屋に設置されていたのであろう棚等が派手に散らかっている。元々は床だったのであろう木片も派手に散乱している。


「技、なのか? 単に床が元々老朽化でも進んでたから弾みでいきなり崩れたように見えるけどな」


 ガイウスはレフィの隣に立ちながら、まだ崩れずに残った床の断面に目を向けたが、なんだか材質が古くなっていたように見えたのか、決して部屋全体を包み込むような大胆な攻撃を行なった事が決定打になった訳では無いと推測していたようだ。




「所でこれあの2人大丈夫だったのか? 棚とかメッチャ崩れてるけど下敷きとかになってねぇだろうなぁ?」


 フィリニオンはこの床が崩れ、そして設置されていた棚まで巻き込まれる形となったこの惨状を見て、まず先にこの建造物に入った2人が巻き込まれていなかったのかどうか、それが気になったようだ。


 派手に倒れていたり、落下の際の衝撃なのか、激しく損傷している棚も沢山見えていたが、それらの下に2人が今いるのかと一瞬想像してしまったのだろうか。




「根拠は無いけどあの2人ならなんだかんだで助かってそうだけどね。こんなつまんない理由で死ぬ訳無いじゃん?」


 レフィとしては、あの2人の中には友人であるコーチネルも混じっており、友達であるからこそ信じてやりたいという心遣いもあったのかもしれない。


 崩壊した部屋そのものを見ていても、何故かここで2人が絶命してしまっていると考える気になれなかったのだ。


「ホントに根拠が無い言い方だな。でも助かってるとしか思えないのもなんか不思議だな」


 ガイウスはレフィの言葉が最初の注意にそのまま沿っていた事によって、思わず口元が緩みそうになっていたようだ。尤も、マスクによって口元は完全に隠れている為、実際に窺い知るという事は出来なかったが。


 そして、レフィの根拠が無いとは言え裏表が感じられない口調を聞いていると、まるで思考が感染でもしてしまったかのように2人が犠牲になってしまったと思えなくなってくるのが不思議な所だった可能性もある。




「とりあえず降りてみるしかねぇな。下は下で部屋になってるみてぇだし」


 フィリニオンは最初に突入した2人が犠牲になっているかどうかはさておいて、まずは崩壊した床の下に見えている部屋に降り立つ事を考えるべきかもしれないと、特に横にいる2人からの返答を待つ事も無く下へ向かって飛び降りる。


 そして翼で重力加速を抑えながらゆっくりと着地した。薄暗い空間ではあるが、何も見えない程では無かった。




「あいつは行動が早いぜホント。おれらも行くか」


 フィリニオンの即座に次の移動場所へ向かう様子を見降ろしながら、ガイウスもレフィに視線を向けながら返事を待った。まだ降りる気配は見せていない。


「そうだね、さっさとコーチネル達と合流しちゃった方がいいしね」


 レフィは直接降りるとは口には出さなかったが、言葉の内容を察すると殆ど降りる事を確定させているようなものだろう。


 下に見える部屋に降りなければ目的の相手に出会う事が出来ない事ぐらいは分かっていたはずだ。




 ガイウスはもう下の状況を把握していたからなのか、躊躇う様子も無く簡単に飛び降りてしまう。元々跳躍そのものを武器にしているような戦闘スタイルである為か、階1つ分程度の高さをものともしていなかった。


 余裕で降りる様子を横で見ていたレフィは、再び自分の両足に風の魔力を纏わせた上で、そして一度下に見える部屋を上から覗き込むように上体を前に突き出し、状況を目視で確かめた後にやがて飛び降りる決意をする。


 青い魔導服を舞い上がらせながら、落下速度を遅くさせた形で下の部屋へと着地する。




「所で、どうするよ? 一応ここで探してみっか? あの2人が潰れてねぇかどうか」


 フィリニオンは自分以外の者達が降りてきた事を横目で確認するなり、部屋に激しく散乱している残骸の中から該当する2人を捜索しようか、話を投げかける。


「広くも無いけど狭くも無いここで1個1個どかしながらだと数時間はかかるぞこれ」


 規模としてはそこまで派手では無い1つの部屋であったが、ガイウスは本当に探す作業に入るのかと、マスクによって外から見えない状態の目を細めていた。


 勿論実際に瓦礫の下を探すとなればそれらを除ける必要があるが、能力等で力任せに吹き飛ばしてしまえばもしも下にいた時に傷を付けてしまう可能性もあるだろう。手作業で調べているとなるとどれだけの時間を使う事になるのか、それは瓦礫の量を見れば一目瞭然だったのかもしれない。




「いや、それ時間無駄になると思うし、ってか絶対あの2人生きてるから。あっちに通路も見えるし、下敷きにはなってないって」


 ガイウスの捜そうという提案をレフィは拒否してしまう。一番の理由はそもそも下敷きにはなっていないという確信があるからであり、そして目の前を凝視すれば、通路が存在する事も確認出来、2人は通路の奥を今頃進んでいるのだと想像をしてしまう。


 流石に自分の友達が簡単にやられてしまっている所なんて考えたくも無いのだろう。


「そんなもん分かってるから。オレはなぁこれでも回りの気配とかで誰かいるかとかそういうのも分かるし、でも2人死体になってるのは確かみてぇだな」


 フィリニオンも実際は2人が瓦礫の下敷きになっていないという事を既に理解しており、それもただ自分に言い聞かせているとかでは無く、鳥人特有の感覚なのか、それで空間の状況を掴んでいた様子である。


 感覚を研ぎ澄ませた時に初めて気付いた事もあったようであり、実際に言っていた通り、死体の確認も出来たらしい。目視しなくても、どこかに死体があるという事実を彼は掴んでいた。




「流石フィリニオンってとこだな。鳥人のスキルってやつだったなぁ。でも2人ってやっぱりあの2人の事なのか?」


 ガイウスはフィリニオンの鳥人特有の力を既に理解していたのは確かであるはずだ。それでもやっぱり毎回のように関心を覚えるようであり、そして2人が死んでいるという話を聞いて、それで黙ってはいられなかった。


「ちげぇな、1人はまあ女だけどコーチネル、だっけ? あいつじゃねえな。そんでもう1人も……男だけどディマイオと違って明らかな汚ねぇオヤジだわ。だからちげぇな」


 確かに気配そのものは受け止めたフィリニオンであったが、それはコーチネルでは無かったようだ。確かに女ではあったが、それが具体的に誰なのかという所まで解析出来るようであり、そしてもう1人も気配を感じたようだが、ディマイオとは異なる相手だったようだ。


 恐らく、気配として感じた2人の死体は、ディマイオとコーチネルにそれぞれやられた者達である。




「そこまでの区別出来ちゃうんだぁ? でもその2人って、誰なの? コーチネル達じゃない2人って……誰なの?」


 レフィは正直内心で驚いていたようであり、そして表情にもそれがしっかりと現れていた。人間では無い種族であるからこそ出来る事に関心を感じながらも、やはり実際にこの瓦礫の下に埋もれているのであろう2人とは誰の事なのか、それを知りたい所であったが、聞いた所でそれがフィリニオンに分かるのかどうか。


「そんなもんオレが知るかっての。それと明らかに生きてる奴も1人混じってるみてぇだけどな」


 フィリニオンでも流石に実際に見た事が無い相手の姿や性質を特定する事は出来ないようだ。レフィの質問を払い除けるような言い方を見せていたが、決して無視する事が出来ないであろう1人の存在を明かす。ここで言う1人とは、確実に味方の(たぐい)では無いだろう。




「何それ? 生きてる奴……ってそれどういう意味なの? ちゃんと説明してよ」


 突然生きている者がいると言われても、レフィはそれをよく理解する事が出来なかった。生きているとか、死んでいるとか、誰か1人が生き残っているとか、生と死の話を交互にされている為、もうフィリニオンの説明を上手く整理する事が出来ていなかったようだ。


 ゴチャゴチャになってしまった頭の中で何とか整理をしたいからか、レフィは誰が死んでいて、逆にどのような相手が今生き延びているのかを纏めてもらうように僅かに声を荒げるようにフィリニオンから聞こうとする。


「まあ、そういう意味だ!」


 フィリニオンは唐突に双剣を1本だけ右手に持ち、左側にいたレフィの目の前に踏み込むなり、レフィにぶつかった事を一切意識せずに、左の方向を狙って振り付けた。




――フィリニオンの真空波が1つの瓦礫へと飛ばされる!――




「ちょっとフィリニオン何すん――」

「はははははぁー!! よく気付いたなぁ鳥野郎!!」


 レフィは体当たりをされた為、フィリニオンに文句の1つでも言ってやろうとしたが、飛ばされた真空波の着弾地点から1つの女の笑い声が響いた。


 当然それはレフィのものでは無く、可愛さが隠れていない暴力的な声色で、どうやらフィリニオンが真空波を放った先に積まれていた瓦礫に隠れていたようである。相手は青いベリーショートの髪をしたエルフで、どうやら真空波を肥大化した両腕で弾いた後であるらしい。




「何この変な男みたいな笑い声……ってあいつがもしかして生きてたって奴?」


 レフィも流石にわざとらしい暴力的な女の笑い声を聞いて黙っている訳も無く、その場所を振り向くと、そこには瓦礫の山の上で腕を組みながら立っている青い髪のエルフがいた。


 フィリニオンの言っていた、1人だけ存在する生きている者の正体が、あの尖った耳を持った人種ことエルフであった事を察知した。フィリニオンに対する一時的な苛立ちはもう既にどこかに消え去っていた事だろう。


「なんか不自然に腕が太くなってるな。おい、おれ達と戦いたいって言うんだったらこっち来いよ? 3人で悪いけど、相手してやるぜ?」


 ガイウスもいつものパターンだと意識した為、刀を取り出し、本当に自分達の元に跳び掛かってきた時に瞬時に対応出来る戦闘体勢に入る。




「これからめんどくせぇ作業に行くとこだから、準備運動には丁度いいかもしんねぇなぁ。ってか誰が鳥野郎だおい」


 まだ瓦礫の上から降りてこないエルフをやや見上げながら、フィリニオンはかかってくるなら好きにしろとでも言わんばかりに、右手に持った双剣を自分に向けて振る。


 だが、自分が鳥人である事は自覚しているものの、言い方がまるで嘲笑(ちょうしょう)を含めたようなものであった為、それに対しては仕返しとでも言うべきか、威圧的な言葉を飛ばす形でその場で反撃をする。


「お前以外誰がいる? 所でお前らってあの変な亜人みてぇな奴と、それとパンツ女の仲間か?」


 エルフは瓦礫の山の天辺から飛び降りてから、鳥野郎という言葉に相応しい者は他にはいないだろうと言い返す。


 そして、エルフには他にも戦った相手がいたようであるが、その時の視覚による情報で得たものを頼りに即座に呼び方を思いついたらしい。まずは仲間なのかどうかを確かめるのが先だったようだ。




「パンツ女? え、何言ってんのこいつ……。きぃんもっ……」

(絶対それコーチネルの事だろうけど、黙っとこっと)


 女同士であるレフィでも、流石にエルフの今の表現方法には嫌悪感が走ったようであり、少女のどこを見ているのかと、物理的に距離を取りたい気分になっていたらしい。


 内心では該当する人物を理解していたが、ここで下手に言い返したりすると同行しているガイウス達に変な気分を与える可能性もあった為、余計な口を動かす事をやめた。勿論、ここに直接いる訳では無いコーチネルの為にも敢えて黙る方向に行った。




「お前の言ってる奴らがオレらとどう関係があったってどうでもいいじゃねえかよ。お前にいちいち答える気なんかねぇよ」


 フィリニオンはエルフを相手にまともに情報の提供をする事をしなかった。互いに敵同士であるのは確かである為、そこに互いの必要以上のやり取りをする必要性は無いと考えたのだろうか。


「同感ってとこだなおれも。ただなぁ、こっちも大事な役割持ってるから負けてはいられないんだなぁこれが」


 ガイウスもエルフの質問には真面目に答えるつもりが無いようである。しかし、敵対者であるエルフがこちらに向かって来る以上は負けるつもりも無いと説明も入れた。


 ここにいるエルフはこの建物を何かしらの理由で監視でもしている存在だったのだろう。どちらにしても自分達にとっては障害でしか無く、そして自分達がここに来た詳しい意図を説明する義理は無いと見て間違いは無いはずだ。


 それとも、エルフの発言に食らい付く事でレフィが機嫌を悪くする可能性があるから、気遣っているだけなのだろうか。




「まあ別にいいや。どうせお前らここで終わんだからよぉ? おい金髪、お前がパンツ女の代わりに私の事満足させろよ?」


 元々話し合いには興味を持っていなかったようであり、エルフは歩み寄りながら、レフィに視線を集中させた。


 肩まで伸びている金色の髪を持つレフィに対し、突然自分の為になれと命令口調で要求を始める。


「だから誰なのそれ? 言ってる事全く意味不明過ぎるし満足って何をどうしようとしてるの? なんであんたの代わりにわたしが満足させてやらなきゃいけないの?」


 一部の男性であれば恥じらいすら感じたり、妙な期待さえ抱いてしまう可能性のある言い方を続けるエルフに対し、同じ女性――尤も、相手はエルフという人間とやや離れた種族ではあるが――であるレフィは面倒そうに細い眉を顰めながら、理解に苦労しているという事を言い返してやった。そして、エルフの言いなりになる理由も分からなかったようだ。




「お前って同性に好かれるタイプなのか?」


 フィリニオンは気になったのか、何となくレフィに聞いてみた。同じ女性から好かれる人間は珍しくないのかもしれないが、初対面であるからなのか、レフィを知る為になのか、敢えて聞く決意をしたようである。


「どうだろうね。だけどわたしあういう暴力系の女は嫌いだよ? 可愛い()なら超歓迎だけど」


 レフィはどんな女性から好かれるのかをあまり分析していなかったようであるが、レフィ個人としては力で捻じ伏せてくるような相手を迎えるような性格はしていなかったようだ。純粋に外見が可愛い相手は歓迎する性格であるようだが、今目の前にいるエルフは好みの対象外であるらしい。




「おいおいそれ以上近づいてきたら、こっちは戦闘開始として見るぜ?」


 ガイウスはそろそろエルフが近寄ってくる距離に危機感を感じたのか、刀を自分の前で相手に見せつけるように構えながら、刀そのものが持つであろう威圧感で無理矢理止めさせる。


「別に戦うつもりはねぇんだよ。ただそこの金髪と戯れたいってだけなんだよ私はなぁ」


 ガイウスの刀にやはり何かしらの警戒や危機感を感じたのか、確かに足は止めたエルフであったが、何か1つの強い目的があったかのようにレフィに対して乱暴に指を差し始めた。




「随分わたしに拘ってるみたいだけど、わたしあんたの事チョー大っ嫌いだからね? 嫌われてる奴と遊んで何が楽しいの? もしかして見た目通り馬鹿?」


 レフィは嫌悪と嫌気の両方を混ぜた表情で、エルフに言い返す。口調も明るさとは無縁の何だか低いものも混じっており、出来ればもう目の前からさっさと消えて欲しいとでも内心で思っていそうな態度である。


 ただ視線を合わせるだけでもストレスを感じてしまいそうな相手に対し、レフィは自分の今の心境を伝えた上でそれでも要求を続けるのかを確かめた。


「誰が馬鹿だって? あぁ!? あのパンツ女と一緒にすんじゃねえよ!」


 レフィとしては自分の意見ばかりを通そうとし、相手の意見を一切受け入れようとしない姿勢に対して話を的確に聞く能力が劣っているのかと聞いたつもりだったのかもしれないが、エルフからすると純粋に馬鹿と呼ばれた事に対して腹が立ったようであり、そして自分だけが酷評された扱いになるのが嫌だったからなのか、先程戦ったレフィとは違う少女を無理矢理に自分と同類であるかのような扱いにしながらレフィへと怒鳴りながら言い返す。




「いやいやいやいや……今の発言からして馬鹿丸出しじゃん? 一応だけどパンツってさぁ、ズボンって意味でもあるからね一応さあ。わたしはあんたが叫んでる以上はずっとズボンの方で解釈するつもりだからちっともあんたが意図する意味でこっちに届いてないからね?」


 レフィはエルフが本当の意味での愚か者であるという事を確信してしまったらしい。


 そしてまるで注目でもさせようとしているかのような言い方に対し、レフィは異なる意味も含まれている事を説明し、そしてわざとらしく相手が意図した意味と異なる方を受け止め続けていると言い放っていた。


 やはりエルフの思考が愚かである事が徐々に頭に強く残るようになってきたからなのか、嫌気を見せていた表情に馬鹿にしたような笑みが含まれ始めていた。


「知るかよそんなもん。お前こそ揚げ足取るような事して何がしてぇんだよ? お前だって同類の馬鹿じゃねえのか?」


 エルフは細かい意味を把握した上で言葉を使っていた、という訳では無かったようであり、いちいち細かい指摘を飛ばしてくるレフィに対してはまるで挑発に乗ったかのような不要な怒声等を出す真似をしなかった。


 逆に相手の言い分の粗を無理矢理に見つけながら喋りかけてくるレフィも、実際はただ相手を追い詰める事しか考える事が出来ない愚か者だとエルフは感じ始めていた可能性もある。同類であると、自分と相手の魔法使いを纏めてしまおうとする。




「あぁ自分の事馬鹿って認めちゃうんだぁ? 所で、わたしはあんたが言うパンツ女の属性には該当しない気がするけど、それでもいいの?」


 もうエルフも諦めてしまったのかと、口元も気持ちも緩ませたレフィであったが、仮にエルフの意図に従ったとしても、レフィの服装はあくまでもスカートでは無く黄色のホットパンツの姿であり、物理的に脱がせる等でもしない限りはエルフの考えている意味の物が実際には見えないと言える。


 エルフの条件を満たしていないレフィであるが、エルフはそれをどう捉えているのか、気になる所なのか。


「まだあいつの茶番に付き合うつもりか? こっちはさっさと行きたい気分なんだけどな」


 ガイウスは女同士だからこそ特別な感情が出ずに済んでいるのかもしれないやり取りを横から聞いていたものの、流石にもう長すぎると感じたのだろう。そして聞いていて横から自分も加わる気にもなれないような内容であった為、この場からさっさといなくなりたいという気持ちをほぼそのままの形でレフィに言った。




「そうだったね。こっちもあいつが態度悪すぎるからムキになっちゃってたけど、所であんた帰った方がいんじゃない? こっちは3人だし、私含めて全員強いよ? そもそもあんた弱くてこの瓦礫に巻き込まれてたんでしょ? 恥晒しじゃん」


 まるで我に返ったかのようにレフィは本来自分達が何をすべきだったのかを思い出したようだが、エルフと言い合っていたのはあくまでも相手の態度の問題があったかららしい。


 しかし、エルフに対する態度は一切変わらず、レフィはエルフに対して戦うという選択肢もあまり有効な策とは言えないと説明した。人数だけでもこちらが(まさ)っている事に加えて、そして皆が最低でもエルフ以上の実力を備えているとレフィは皆に代わって話したが、床の崩壊に巻き込まれた本当の理由を考え直すと何だか身体の奥から笑いが突き出てきそうな気にもなった可能性がある。


「違げぇよ!! 私がもうすぐ勝てるとこだったのに勝手に床が崩れたんだよ!!」


 エルフは自分が負けたと決めつけられた事が耐えられなかったのだろうか、まるで図星でも付かれたかのように突然声を荒げ始める。どうやら床が崩れた事で自分の思い通りの結果を出す事が出来なくなっていたようだ。崩れてさえいなければ自分が勝利を手にする事が出来ていたという事なのだろうか。




「なんで怒って言い返してくるの? 負けた奴が何か言われてそれでキレて反論してくる典型的なあれだと思うけど? まあ襲い掛かってきた所で負ける気は無いけどね?」


 レフィは不思議に感じた様子であり、突然怒り出した様子を見て、言われて気に障るものがあったのだと察知した。しかし怒ってきたからと言ってそれで相手の実力が過度に大きく見えてしまう等と言った事は一切起こる事が無かったようで、寧ろ返り討ちにしてやると言わんばかりの勝ち誇った表情を見せつけていた。


「じゃ、オレもこいつに乗ってみるか。来てぇなら遊んでやるぜ?」


 フィリニオンはレフィの戦闘意欲を初めとした堂々とした態度に改めて感心したのだろうか、レフィに同意するかのように、エルフに対して自分達にいつでも攻撃を仕掛けても構わないと言って見せた。




「私の事馬鹿にするつもりか? じゃあやってやるよ」


 自分の方が弱いと思われている事を受け取ったエルフは、自分がただやられるだけの軟弱者では無いと証明させるかのように、まるで改造でもされたかのように膨れ上がっている前腕の筋肉を、腕を持ち上げた後で自分自身で目視してから、再び口を開いた。


 青のベリーショートの髪の下で表情は、自分を見下した部外者への怒りで満ちていた。




「私のこの腕で……あぁ?」


 自分の胸程の高さまで両腕を持ち上げた状態で、筋肉そのものを強化された腕で戦う為のアピールだったのか、わざとらしく力を込め、前腕をブルブルと震わせていたのだが、エルフ自身が聞いたのは、腕から何か破けたような音であり、それは一瞬であった。しかし、エルフは確実に聞いたのだ。


 自分の身体から妙な音が鳴ったのだから、無視して目の前にいる3人に向かう訳にもいかず、足を止めたが、原因はすぐに理解する事が出来た。




――突然エルフの腕に亀裂が走り……――




 皮膚が破けるように亀裂が広がっていき、そして内部から光のようなものが漏れていた。人体から光が漏れる事が異常な事であり、エルフはその時はもう何も声を出そうという気持ちにはなれなかった。


 いや、奪い取られたとでも言うべきだっただろうか。









今回はあの両腕が肥大化したエルフとばったり会ってしまう話にしましたが、ガイウス達も上手に払い除ける事が出来たみたいです。しかし何となくやらしい言い方もしてましたが、そこはレフィに何とかフォローしてもらった感じですね。しかしエルフって本来は美しい姿のはずなのに、ここのエルフ達は性格が荒れてるので台無しです。まあ洗脳されてますので……。

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