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黒衣を纏いし紫髪の天使  作者: 閻婆
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第29節 《頼れるのは粗暴な銃使い 風使いの魔女も見落とすな》 2/5

今回はちょっと久々にガイウス達の場面から始まります。彼らもあの小屋の外で戦ってた訳ですが、スライムの魔物との戦いも遂に終止符が打たれます。流石にディマイオとコーチネルにばかり注目し過ぎるのもなんかあれなので、ちゃんとガイウスやフィリニオンにもスポットを浴びせたい所です。まあレフィも、ですが。






         小屋でエルフによる襲撃を受けていた一方


         外の極彩色の植物が実る地帯にて


         人間の上半身を模した形状を作ったスライムが暴れていた


         スライムの相手は、忍の戦士と、鳥族の亜人と、魔法使いの少女


         しかし、今は弱点が露出しているという話があり……








「さぁてと、もうこいつも終わりだろうなぁ。分かりやすい急所なんか見せたのが間違いだったなぁ」


 滞空をしながら、翼を持つ鳥人であるフィリニオンは敵対している相手を見下ろしながら、戦いの終わりを感じていた。


 下に映っているのは、黄色のスライムであり、ほぼ黄色一色の液体から構成される特殊な構造の身体を持っているが、その中心にはやけに色合い的に非常に目立つ真っ赤な球体が映り込んでいた。それが液体状の身体から食み出すように上部の辺りから露出しており、そして動きも初期と比較すると、まるで何かに押さえ付けられているかのように鈍くなっている。


 人間の上半身を模していたのは過去の話で、今はもう腰より上が無くなっており、腰だけがスライムの上部から突き出た非常に妙な姿を見せている。




「そろそろ終わるのかこいつも。さっさと黙らせちまうか。それがこいつにとっても幸せか?」


 忍の装束で全身を固めているガイウスは地上で刀を構えた状態で、攻撃の為の目標を真っ赤な球体状のコアに向ける。


 今までも繰り返してきた戦法だったのか、フルフェイスのマスクの下で、ガイウスは一呼吸置くとその場から瞬間的に消滅してしまう。




――突然コアに激しい斬撃が走る――




 誰が見ても分かる程に、それでも深いとは言えないにしても、刃による斬れ込みが確かにコアへと入り、そして同時にガイウスは元々いた場所と反対側へと瞬間移動のように現れる。姿を消しながらすれ違い様に斬り付けたのだろうが、斬られたスライムも反撃の為に、人間の腰の部分を泡立てるように膨らませながら、反撃を試みようとする。


 泡立てている場所から何かを発射しようとしているのか、ガイウスも手に持っている刀とは別の物を魔力で2本出現させ、空中で構えさせる。直接持っている刀が1本、空中で構えているのが2本で、計3本でこれから放たれるであろう攻撃に備えている。


「もう遠距離攻撃はオレには通じないって学ぼうぜ?」


 既に体験した攻撃だったのかもしれない。だからこその防御態勢だったのだろう。飛んできた攻撃を刀で弾くように防ぐつもりだったのかもしれないが、横から妙な気配に気付くが、それも殆ど予測済みだったようだ。




――スライムの残骸から人型の形状が生まれるが……――




 まるで初めから把握していたかのように、ガイウスはスライムの残骸が人型に生成される前に腰の辺りを横から斬り払ってしまう。まだ地面から本来の人間で言う膝辺りが出現したかと言った所で切断されてしまい、生成が失敗してしまう。


 左にいたスライムの残骸を始末した後に、右からも同じ気配を感じ取った為、既にそちらは人間のような形状を作った上で一歩踏み込もうとしていたものの、最初の残骸と同じ形であっさりと結末を迎えてしまう事に。


「それと、不意打ちも無駄だぞ? 飽きるぐらい見させてもらったしな」


 スライムの残骸から分裂体のような物を出現させ、奇襲をかける方法も既にガイウスにとっては無駄な戦法そのものであり、まるで事前に告知でもされていたかのようにあっさりと処理されてしまう。




――空中では、本格的に傷付いたコアに追い打ちをかける魔法使いがおり……――




「じゃ……そろそろ強引な事やっちゃってもいいよね? はぁあああっ!!!」


 青い魔導服が特徴的である魔法使いのレフィは風の魔力で宙に浮いた状態で、スライムの真っ赤なコアに向けて両手を伸ばし、風の魔力を集中させる。


 わざわざ両方の腕を伸ばし、そして青の三角帽子と金髪の下に見える表情にも力が籠っている辺り、魔力そのものにもかなりの力が入っている事を窺い知れるかもしれない。風の力がコアを包み込み、そして元々入れていた力を更に別の方向へと加え、コアに1つの動きを生じさせる。


「ふぅん!!! よし……2人とも! 今の内にこれにジャンジャンやっちゃって!!」


 まるで引っ張るかのように両腕に渾身の力を込めたレフィは、スライムの内部に埋もれていたコアを外に引きずり出す事に成功し、同じ空中におり、尚且つ距離が近いフィリニオンは兎も角、地上におり、やや距離も離れているガイウスにも出来るだけ聞こえるように無理矢理に大声を張り上げながらコアを狙うように頼み込む。




「魔法も力技みたいに使われる事もあるのか。よっしゃ、じゃ、やっちゃいますかぁ」


 ガイウスは風の魔力を殆ど強引に力で引っ張り出す為に使っているとしか思えなかったようだが、どちらにしてもコアが更に露出したのは確かであった為、レフィの要求通り、刀に光を灯らせた。


 ただ光らせるだけでは無く、空中に出現させていた刀もガイウスの隣に移動させ、まるで共に行動でもさせるかのように地面と平行になるように2本とも横に倒れる。切っ先はガイウスの視線と同じ方向を向いている。先は勿論、スライムのコアである。


 少し膝を曲げたガイウスだが、それはエナジーリングの効果を上乗せさせた跳躍を開始する為の準備段階であり、そして一直線にコアへと向かって跳躍を開始する。


 接近と同時に装備している刀で渾身の斬撃を浴びせる。




――元々入っていた切り傷が更に深くなる――




 スライムからすれば命の源であるコアに更に深い亀裂が入り、ガイウスの隣に位置していた2本の刀もコアを中心にガイウスと交わるように突撃しており、この2本はコアに対しては亀裂では無く、貫通による風穴を作っていた。


 空中に残っていたガイウスは重力を倍化させるかのように地面へと落下し、華麗に着地する。


「じゃ、次はお前の番だよな」


 ガイウスが言うお前とは、確実にフィリニオンを指すはずだ。




「さてと、決めちまうか?」


 常に空中に位置していたフィリニオンも、ガイウスの斬撃が完了した事を目視すると、双剣に力を込め始める。


 交差させるように持った後に、それを前に向かって振り付ける。距離がある為、刃がコアに直撃する事は無かったが、目的は直接斬る事では無い。


 真空波を放ち、それを命中させる事であった。




――コアに命中させた後に……――




「じゃあ終わりにしてやるよ。お前の相手なんかめんどくせぇだけだったぜ?」


 真空波はコアに命中して終わりでは無かったようであり、まだ何かを隠しているかのような態度をフィリニオンは見せていたかもしれない。右手の側の双剣を、その場で下から掬い上げるように力強く振る。


 同時にコアに残留していた真空波が内部で爆発を発生させるかのように外へと一気に拡散してしまう。それはコアを破裂させる決定打となったのだ。




「これで終わりみてぇだな」


 フィリニオンは意外とあっけなく破裂する形で粉砕されるコアを見下ろしながら、そして本体であるスライムの本体の方にも変化が現れる事に気付くが、特に何か驚くような様子を見せる事は無かった。


「じゃ、もうこれで番人みたいな奴はいなくなったからもうおれ達が勝ったようなものでいいのか?」


 コアがやはり動力源だったのか、スライムの魔物はまるで支えを失ったかのように液体状の身体を地面へと崩していく。それを、数歩下がりながら、ガイウスはただ眺めていた。液体状である関係で崩れる事で地面へ広がっていく為、流石に接触だけは勘弁なのか、やはり実際に距離を取らなければいけないだろう。


 眺めていたガイウスの隣に、風の魔法で戦いを披露していた魔法使いの少女が下りてくる。まるで高所から飛び降りるかのような形ではあったが、魔力で浮力を活用していたからか、決して衝撃を伴った着地という訳では無く、速度を殺した形での着地であった為、少女自身には殆ど痛覚は伝わっていなかったはずだ。




「まっ、勝ったのは事実として認めていいと思うよ? だけどわたし達はまだする事が残ってるの、知ってるよね?」


 着地する時に肩程の長さの金髪や、魔導服の下部が持ち上がっていたものの、重力に引っ張られるように降りていく。


 レフィはガイウスの隣に立ちながら、残りの任務が何なのかを問う。笑みを見せたその目付きは、分かっていて当たり前だという自信が覗かれていた。


「捕まってるエルフ……は無理だったっけな。確か洗脳されてもう駄目だってレフィ言ってたもんな?」


 ガイウスは流石にここで答えを間違えてしまっては今日初めて出会った魔女であるレフィからの評価を落とされてしまうのかと感じたかもしれない。


 ある程度は思考を走らせながらも、答えとして間違いでは無いであろうエルフの救助を忍のマスクの裏から声として出したものの、それはここで初めて出会ったレフィから事情を聞かされていた為、エルフ自体には会えたとしても、救助は不可能だという事を思い出す。


 ただ洗脳されているだけなら兎も角、厄介な事情がそこに含まれていたのだから。




「うん、駄目あれは。それに無理に連れてくにしてもあの人数とそれと攻撃的にもなってるから下手に近寄ったらこっちが危ないし」


 レフィはきっぱりとガイウスの意見に肯定の意思を見せた。洗脳されている状態ではもう外には連れ出す事が出来ないのと、そして理由も理解していた事だ。自分達の身すらも危険に晒す事になる為、連れて帰還というのは捨てるべき決断になっている。


 本当はエルフ達も揃えて帰還したかったのかもしれないが、出来ないものは出来ない為、もう諦めは付いているらしい。


 そして、レフィの近くに何かが近寄ってくる気配があった。





――翼を持った仲間が2人の元に降りて来る――




「エルフの事より、あの2人の後追う事が今する事じゃねえのか? 分かってるとは思うけどな」


 地面に降り立つ前からレフィの話を聞いていたのだろうか、フィリニオンは降りると同時にこの場で残されている、今自分達が最優先にすべき任務を言った。


 エルフの救助が駄目であるなら、自分達の元を離れた2人と同じ場所に向かう事が最優先であるとフィリニオンは言った。勿論、彼もそれを2人が分かっている事を前提にしていたようではあるが。


「おれらもやる事はやったんだから、次は援護って事だよな」


 突然フィリニオンと考えが一致していたかのようにガイウスはまるでフィリニオンの言いたそうな事を想像しながら口に出す。自分達はもうスライムの魔物を仕留めたのだから、まだ別の場所で苦戦している者達の為に手助けをするのは仲間として当然の思考だと言いたかったのだろうか。




「今頃あの2人アツアツデートの最中なんだと思うけど、危ない男も女もわんさかいるっぽいから多少は邪魔覚悟で突入しなきゃだね!」


 レフィは話題に出ている2人が今何をしているのか、突入した建物を見つめながら説明をしてみたが、内部には大量の危険が潜んでいるという想像は出来ている様子である。


 しかし、2人は本当の意味でデートの為に建物の内部にいる訳では無いはずだが、レフィとしては敢えて言いたかったのかもしれない。表情が強気を混ぜた笑みになっている。


「デートかどうかは知らねぇけど、お前ふざけてねぇでちゃんとやれよ?」


 フィリニオンは今ここにいる3人の中で唯一人間では無い鳥人の1人であるが、ここでデートという表現を使った意図が理解出来なかったのか、レフィに対してやや威圧的な視線を向けた。




「いやいやふざけてないでしょ? 男女2人なんだから敢えてそう言ってみただけ! でも絶対ここの野盗の連中もあの建物にいるだろうし、エルフも配属されてたっぽいし、わたしだって油断はしてないしする予定も気持ちも無いからね?」


 レフィから見るとどうしてもフィリニオンの目付きが威圧的にしか見えず、鳥そのものとも言える灰の嘴を始めとした鳥人特有の容姿の作りの関係なのか、怒っているのか、それともただの苦笑で済ませてくれているのかが目視だけでは分からなかったのかもしれない。


 あくまでも例えの言い方であると説明した後に、自分が真面目にものを言っていた事を証明させるかのように、これから自分達が向かうであろう建物の内部にはどのような危険が潜んでいるのかという予測を持っているのか、そして自分が気を緩めている訳では無い事を複数な表現法で話す。


 自分の言い方が相手に意図しない形で伝わったままにならないかどうか、不安そうな表情を見せている。


「はいはいレフィの気持ちは受け取ったぜ。じゃあ2人が安全にデート出来るようにフォローに向かうって事でいいな?」


 ガイウスはやはりフィリニオンと異なり、レフィと同じ純粋な人間同士である。だからなのか、レフィの言いたい事はよく分かったようであり、寧ろ多少ふざけたような表現を使っている方がレフィの雰囲気に相応しいとすら思ってくれていたのかもしれない。


 レフィの言ったデートという表現をあくまでも崩す事をせず、それでも2人の為に突入するという一番の目的だけは忘れなかった。




「そういう解釈も意外といいかもね……。じゃあそれで行こっか! 2人の為にわたし達が援護に行くって事で!」


 ガイウスの言い方にレフィは何だか嬉しくなったようであり、自分の思考だけでは追い付かなかった言い回しに感動でもしたのか、フィリニオンからの威圧感で少し怯えていた心を再びいつものテンションに戻した上で、そして最も重要である援護の為の突入という任務により一層気持ちを集中させる。


「なぁに人間同士で意気投合なんかしてんだよ? 野盗連中の事潰すのが一番の目的なんじゃねえのか?」


 呆れたかのようにフィリニオンは、人間同士で互いの言い方に納得し合っているガイウスとレフィを眺めていた。


 2人のムードを意識する事よりも、建物の内部に潜んでいる野盗達の掃討を意識すべきであると、亜人特有なのだろうか、戦いの事だけに意識を集中させていた。




「フィリニオンって人間のやり取りちゃんと理解してないの?」


 レフィはフィリニオンの価値観や思考に違和感を感じたようであり、何かと否定的な意見を出してくる事に対し、人間だからこそ出来る表現や想像やある意味では奇妙かもしれない言い回しが分からないのかを問う。


 人間との関わっての期間が短い訳では無いと考えていたレフィであるが、どうしても人間特有のノリに付いてきてくれない事に疑問を感じていたようだ。


「意味分かんねぇよ。なんでデートに例えんのかそんなもん理解するつもりもねぇな」


 これはフィリニオンからすると、どうして今の質問が飛ばされたのかもよく理解出来なかったようだ。そして、今の状況でデートという表現を扱う理由を知りたいとも思わなかったようである。




「まあ深く考えすぎるのも良くないのが人間同士のやり取りだけど、どっちにしてもこれが最後の仕事になりそうだな」


 どうしても理解が出来ないのであればもうそれで良いとガイウスは開き直るかのように、それが人間の長所だとフィリニオンに伝えると、視線をこれから向かう建物の方向へと向けた。


「さっさと終わらせて帰る方がいいか。こんな変な場所からさっさといなくなりてぇしな」


 フィリニオンはもう人間同士でしか通じないような言い回しの隠れた意味を深く模索する気持ちにもなれなかったからか、まるで一番乗りで建物へと向かうかのように突然その場で羽ばたき、飛び立ってしまう。




――飛び立つ鳥人に遅れを取らぬように……――




「ありゃりゃ、理解出来ないから逃げたんかもな。じゃ、おれも行くか!」


 それだけ言うと、ガイウスも元々身体能力をエナジーリングで強化している身だったからか、跳躍1つで目的の建物の側へと向かっていった。


 元々忍者の姿をしていた為、レフィも跳躍力の強さには納得をしていたのかもしれないが、置いて行かれていたのは事実である。


「あぁちょっと待ってよ! わたしも行くからね!?」


 ガイウスへ何かしらの言葉をかける前にガイウスは跳躍でその場から離れてしまった為、レフィもすぐに2人の後を追うが、レフィはその場で走り出す、のでは無く、足元に風の魔力を集中させ、それをまるでサーフボードのような形状にさせた上で、そのまま空中を走らせた。










――建物の内部にいる者に、テレパシーが届けられたようだ――




 丁度建物の内部では、奥で光が見えていた通路を歩く者が2人いた。


 崩れた部屋の下で新しい通路を見つけた2人は、奥に向かって逃げるように消えた光を追っている最中だった。


 しかし、この通路は本当の暗闇であり、光が無ければ相手の姿すらまともに見えない程であった。




 その最中に、コーチネルの意識の中に聞き覚えのある少女の声がテレパシーで届けられた。


(コーチネル元気? まあ絶対生きてるとは思うけど、これからわたし達もそっちに向かうから最後はオールスターで決めちゃおうね♪)


 レフィの方から、遠方から一方的に投げかけられたそのテレパシーに、ただコーチネルはふざけたテンションに対して呆れるしか無かったが、一応は隣にいるディマイオに伝えなければいけない。


 歩く足を止めずにレフィから連絡が入った事をディマイオに伝える。


「あのさディマイオ、なんか今レフィからテレパシー届いたんだけど」


 コーチネルに届いたテレパシーはディマイオには聞こえていないはずであった為、まずは隣を歩いているディマイオに自分がテレパシーを受け取った事を伝えた。




「テレパシー? なんだよそれ。お前そんな事出来たのか?」


 ディマイオはあまり聞き慣れない能力を聞かされた為、コーチネルにそれを扱う力があったのかを思わず聞いてしまう。尤も、能力自体の意味合いや中身だけは彼でも把握はしていたと思われるが。


「あぁ違う、レフィからなんだけど、あの()特定の相手に対してね、距離離れた相手の頭に言葉渡す事出来るの。まあ通信機みたいではあるけど、逆にあたしの言葉はレフィには届けられないけどさ」


 コーチネルは純粋に受け取る側になるのと、自分自身で発するのは別物として意識しているからか、受け取る側にしかなる事が出来ないコーチネルは自分をテレパシーを扱えない人間として見ているようであった。その意味で最初は否定の言葉を渡していたのだろう。


 とりあえずは、レフィは任意の者にメッセージを脳内に響かせるように伝える事が出来ると説明をするが、逆にコーチネルは受け取る事は出来ても、自分の言葉をレフィに伝える事は出来ないという事もここで説明した。




「流石魔法使いってとこか。所であいつなんて言ってたんだ?」


 尤も、テレパシーは魔法というよりは超能力に近いものである為、魔法使いよりエスパーの方がテレパシーを使う者としては相応しいのかもしれないが、ディマイオにとってはそこまでの細かい区別を考える気にはならなかったようだ。


 まだ本題を確かめていなかった為、結局レフィが何を伝えてきたのか、それをコーチネルから聞かなければ内容は一生分からないままだ。


「これからあたし達のとこに来るって。多分あのスライム倒したんだと思うわよ」


 コーチネルは今歩いている通路の床を指差しながら、レフィ達が自分達の場所へ向かっているという事を伝えた。流石に渡された言葉そのものを全部そっくりそのまま自分の口で喋るのは難しかったからか、要点だけを纏めたようである。




「なかなかやんじゃねえかあいつら。でも弱点が露出したとかそういうのもあったから当たり前か」


 ディマイオからすると、今日出会った3人、現在はその誰とも一緒には歩いていないのだが、スライムにとっては防御を奪い取られたような状況だったとは言え、それでも無事に勝利を勝ち取る事が出来た3人にやや上から目線であるかのような態度で褒め始める。


 しかし、狙われれば致命傷に至ってしまう箇所を見せていたのだから、寧ろそれで勝利出来ない方がおかしいという考えも彼には存在したのかもしれない。


「ガイウスもそうだけど、皆普通に強いはずよ? まあフィリニオンは初めて見たから分かんないけど、あの雰囲気見るとどう考えても簡単にやられるようには見えないし」


 コーチネルはガイウスとは面識があり、そしてレフィとは付き合いの長い友人である。最低でもこの2人の実力は把握していると思われる為、実力を認めるのは当然の話かもしれない。


 フィリニオンは今回は初対面ではあったが、第一印象からなのか、実力的に皆の足を引っ張るような姿を想像するのは無理だったようだ。




「さてと、あれじゃねえか? さっき逃げた光の正体ってやつ」


 歩きながら対話をしていたディマイオであったが、どうやら見つけたようである。そもそもこの2人が通路の奥を目指そうとしていた理由そのものが、やや遠方に落ちていたのだ。


松明(たいまつ)? なんでこんなの捨てられてるの? 扉もあるし、明らかにこれ誘い込んでるようにしか見えなくなってきたわね」


 駆け足でコーチネルは目的の物体の場所へと近寄った。火が灯ったままの松明がまるでそこに捨てられているかのように倒された形で置かれており、そして光で灯されている目の前を見ると、まるで招待でもされていたかのように扉が目の前に用意されていた。


 本当は松明を拾おうとしたのかもしれないが、コーチネルは手を伸ばすのを途中でやめていた。




「どうせまた変な奴が待ち伏せしてんのは確かなんだろうけど、勿論行くんだよな?」


 ディマイオもコーチネルの側に追いついたが、扉を見るともう自分達がこの後にすべき行動を確定させられているような気分にもなったかもしれない。


 扉の奥には何かがあるのは誰が見ても分かる話であり、元々怪しい異空間の中に建てられている建造物の、更にその地下に敷かれていた通路の奥がここである。


「当たり前じゃん? レフィ達が来る前にこっちで出来る事はちゃんとやっとかないとさ!」


 コーチネルは扉を目の前にそこから逃げ出す選択肢を取る事をしなかった。そしてしばらくするとレフィ達もこの場所に来るという事が分かっているのだから、逃げ出している姿を見せる訳にもいかないはずだ。


 今までこの建物の中での出来事を思い出すと、扉の先に何があるのかは大体の想像が付いていたのかもしれないが、だからこそ心の準備も整理も出来ていたのかもしれない。




 コーチネルは右手に愛用の魔剣を構え、左手で扉のレバー状のノブに触れる。


 そして扉は恐る恐る開かれる。









今回は前回と比較するとやや大人しかったような気がします。レフィは初対面の男2人相手に何だか堂々としたやんちゃな振る舞いを見せてましたが、きっと悪い子ではありません。


それより、スライムの魔物を倒したのでこれから合流になる訳ですが、まだまだこの地帯の脅威は去った訳ではありません。何とか無事に解決してくれればいいですが。

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