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黒衣を纏いし紫髪の天使  作者: 閻婆
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第28節 《凶暴化したエルフの激しい唸り声 『銃弾はお前を守る為にあるんだぜ?』》 2/5

今年最初の投稿になります。去年は後半辺りで更新頻度を復活させたつもりでありますが、今年も何とかこのペースで頑張って投稿をしたいつもりであります。


今回は毒で動けなくなってるコーチネルに野盗の魔の手が伸びるというかなり不味い状況ですが、解毒薬のおかげで何とかなる……と良いのですが、どうなるのでしょうか?








           少女は汚い野盗の男の策略に嵌ってしまった


           目視しにくい毒ガスが原因だったのだ


           銀髪の風格がある少女はその場に崩れ落ちてしまう


           もうそのまま終わるかという時に、テレパシーで仲間の少女からの助言が


           それを信じて、今は言われた通りの場所に手を入れるしか無かったのだ








(あいつ……どこ……に……)


 毒ガスで身体から力を奪われてしまい、うつ伏せに倒れているコーチネルはテレパシーでレフィから言われた言葉を信じ、力を振り絞りながら左手を自分の灰のスカートの内部に潜り込ませる。


 言われた事が事実であれば、淡い桃の下着の後ろ側にそれが挟まっているはずだった。


 心の中でもまともに心情を言葉に出来ない中で、変な場所に隠していたレフィを恨むべきか、感謝すべきか、今は選択する余裕は無い。




――布と尻の間に確かに存在した――




(こ……れ……だよ……ね?)


 いつの間に刺し込まれていたのか、尻と密着している下着の裏に何か固形の物体が存在しており、何とかそれを握るように掴みながら何とかそれを顔の前に持っていく。


 レフィとしての配慮だったのか、もうそれはすぐに飲み込む事が出来るように裸で用意されており、赤いカプセルのような形状をしていた。今はそれを飲まなければ助からない。




「おいおい何ケツに手なんか突っ込んれんだよ? まあこれからケツも前もヤッてやっからどうれもいいけろなぁ?」


 野盗の男はコーチネルのやっている事を理解していなかったようで、単に自分の臀部を触っているだけにしか感じられなかったらしい。


 男は乱れているコーチネルの灰色のスカートの事ばかりに目が行っており、それ以外の事には思考が働かなかったようだ。




――目の前の薬剤を、後は口に入れるだけだ――




 男が何を言っていようが、何を狙っていようが、そんな事はどうでも良い。


 まずは薬剤を口に入れるのが先だ。ギリギリで残った力を左腕と、そして顎に込める。無理矢理に口に薬を入れ込み、何とかして開いた口を閉じ、勢い良く喉に力を込める。味なんか気にしている余裕は無かったが、飲み込む事には成功し、これで窮地は脱出出来た、と表現しても良いのだろうか。


(さて……飲ん……だ……わ……よ……)


 解毒剤であるとテレパシーでレフィから伝えられた為、飲み込んだ以上は効果が出るのを待つだけというある種の安堵を感じたものの、男はコーチネルの事を待ってくれるはずが無い。


 だが、もう薬を飲み込む事で残りの体力を全て使い尽くしてしまったのか、もう左腕にも力が入らなくなり、男の足音だけは確実に聞こえており、そして近づいている事は分かっていても、身体を直接動かして抵抗という事が一切出来ずにいた。




「残念らったなぁ? こんあとこで毒で動けあくなるなんれなぁ? やっぱ見ららいい身体しれんじゃえぇか」


 男は、全く声も出さず、そして身体の部位1つ一切動かさなくなったコーチネルのうつ伏せ姿を見ながらすぐ隣にまで歩み寄った。


 最初は足を使おうとしたようだが、相手は未成年の少女という事で、直接何かしらの手触りを期待したのか、両手で転がすようにしてコーチネルを仰向けにさせる。


 全く力の入らない両腕がだらしなく床の上に垂れてしまうが、男はコーチネルのすぐ横でしゃがみ込む。


「もう反応は無しか。にしれもこれが女の匂いか。汗塗れのはずなのい異臭に感じえぇのは流石だなぁ」


 男は身を屈めながら、コーチネルの紫のシャツの隙間から見える首元や、頭の側面から銀の髪の匂いを確かめていた。男の加齢の影響とそして荒れた生活の証拠なのか、明らかに臭気が漂ってきそうな荒れた皮膚の顔がコーチネルに近付き、視界が失われていないコーチネルに鮮明に入ってくる。長く見ていると吐き気すら覚えそうである。




(レ……フィ……!! 飲んだのに……動か……ない……じゃん!!)


 解毒薬は確かに飲み込んだはずなのに、身体の麻痺は一向に収まらない。ただ上体を持ち上げるだけの事すらも出来ず、そしてレフィからのテレパシーも一切やってこない。


 腰蓑だけの姿の男の皮膚は全身が汚く荒れており、異様な体臭がコーチネルに容赦無しに突き刺さる。自分の汗で濡れた身体は男からするとただの快楽の一種に過ぎないようで、それでも自分の悪臭では無いにしろ匂いを確かめられるのは黙っていられる話では無い。


 身体が動かない以上、男に何一つとしてきつい制裁を加える事が出来ない。




「とりあえずこいつはもう動かえぇ。こんな挑発的な格好で来るなんれ運の尽きだなぁ」


 男はコーチネルの脚に目を向けると、立ち上がるなり丁度コーチネルの足の裏の場所へと移動し、立ち止まるなり、無防備になっている両脚を力任せに持ち上げる。相手は一切の抵抗が出来ない為、ただ脚2本分を持ち上げるだけの力があれば簡単に実行が出来てしまい、コーチネルは男の目の前で広げた脚を、細かく言えば脚の間を見せる事になってしまう。


(ふざ……けんな……てめぇ……!! レフィ……!! いつ……動けん……のよ!!)


 男はもう表情をにやつかせており、何を見ているのかなんて簡単に想像が付くが、本来であれば一撃痛いものを浴びせるはずなのに、今のコーチネルはただ心の中で男を罵倒する事と、そしてレフィから忍ばせてもらっていたはずの解毒薬の効果が無いという憤りが両方表れた。


 だが、男の表情は徐々に快楽そのものへと変わり、そしてコーチネルは抵抗も出来ずにスカートの内部を覗き見されているという羞恥心から、徐々に涙さえ零れさせてしまう。




「戦う女って結構締まってるって聞いらけど、どうなんらよ? 全く無抵抗って最高らぜ。どれどれ……」


 男はコーチネルを好き放題触る事が出来る事を分かっているからか、両手を使って持ち上げていた脚を自分の両方の肩に乗せる。両脚の膝関節が丁度男の顔を左右から挟む形になり、戦いによる傷が殆ど見えない色白な太腿の奥にある目的地をまずは味見とでも言うべきだったのか、右手をそこへ伸ばす。


(レフィ!! いつ……動け……んのよ!! レフィの馬鹿!! 死ね!! 一生恨んでやるから!!)


 解毒薬の効果が出ればすぐに動けるはずだと言うのに、身体の自由が一切利かないまま、男に触られようとしていた為、コーチネルは涙目のままでレフィを恨む事しか出来なかった。効果の発動が遅い事を計算にいれていなかった事を恨みたかったのかもしれないが、心での叫びが何故かスムーズに進んでいた事には気付いていたのだろうか。




 男は嫌らしく指を2本だけ伸ばした形を作り、そして一切閉じる事の出来ないコーチネルの脚の間に、突き刺した。


 しかし、その時であった。男の指の先端と、そしてコーチネルの股間を覆っている唯一の存在である淡い桃の下着が接触したその時だ。




――バチィイイインン!!!!




「うわぁああああああ!!!!!!!!」


 静電気の爆発とでも表現した方が良かったかもしれない激しい炸裂音が響くと同時に、男の右腕に激痛を走らせる。コーチネルの下着からそれは発生したが、単に腕を痛めただけでは無く、衝撃自体も非常に強かったのか、男はまるで誰かに物理的に突き飛ばされたかのように激しく吹き飛ばされていた。


 男の両肩に乗っけられていたコーチネルの両脚は支えを一瞬で失った事で無造作に床に落ちるが、そこまで痛みは感じなかったらしい。


(え? ちょっ……何が起こったの? あれ……?)


 突然静電気のような爆発が発生した事に対し、何が起こったのかを把握出来ずにいた。男がコーチネルの股間に手を伸ばしたのは確かだが、触れたと同時に爆発が発生したのだ。それは男を大きく吹き飛ばしたが、コーチネル自身は痛み等の刺激を一切受けていなかった事もまた違和感の1つだったかもしれない。


 そして、今までは一切動かなかったはずの手が僅かに動き、そして直接声を出す事も出来るようになっていた事に徐々に気付き始める。


「手……動く? あれ、ちゃん……と、喋れる?」


 両腕を外に広げるように倒れていた今だったが、最初は指先、そして手首、次に肘の関節、そして腋の関節もしっかり動くようになっている事に気付き、そして今までは心で思うようにしか喋る事が出来なかったが、今はもう普通に直接声を出す事が出来るようになっていた。


 どうやら解毒効果が効いたようであり、勿論今なら立ち上がる事も可能だ。両脚もしっかりと動かす事が出来、一度無造作に伸ばされていた両脚を膝の関節から曲げて、そして無事に立ち上がる。




「ちょっとダルさがあるけど、まあ大丈夫か。いよっと!」


 まだ身体の麻痺から解放されたばかりであったからか、コーチネルはまだ身体の至る部分に(おもり)を取り付けられたような違和感が残っている事を知ったが、それも徐々に抜け始めている。そして手放してしまっていた愛用の短剣を手元に戻す為に軽く右手に力を込め、魔力を念じる事で足元に落ちていた短剣を右手に戻した。


「所であんた、さっきはよくもあたしのパンツ覗き見してくれたわね!? 覚悟出来てんだろうねぇ?」


 男はこの部屋の入口のドア付近まで吹き飛ばされていたようで、右手を押さえながら片膝を立てて(うずくま)っていた。


 しかしコーチネルは元々男に用があったのと、そして毒ガスでやられた後の事で情けをかける理由が存在しなかった為、わざと踏み鳴らすように歩き、男の目の前にまで進んだ。


 男は腰蓑だけで上半身は一切何も纏っておらず、コーチネルは男の決して細いとは表現してはいけないであろう右側の肩を左手で乱暴に掴みながら壁に押し付け、男を追い詰めた。




「お前なんれ動けんらよ? 変な爆発まで出しやあって!」


 男は恐らくコーチネルが何かを飲み込む様子を確認していなかったのだろうか。身体に力を取り戻した理由を理解出来ずにおり、そして爆発の理由も理解出来ておらず、強気で詰め寄ってくるコーチネルにただ疑問形のような罵倒をぶつける事しか出来なかった。


「あたしはこんなとこでくたばらないように出来てるからよ! さてと、あの変な機械が何だったのかちゃんと説明してくれる?」


 まるで自分が特別に死なない身体で出来ているかのような言い分を男にぶつけるなり、コーチネルは右手の短剣をちらつかせながら男に説明を強要する。男から異臭がするとか、もうそんな事を気にする気持ちにはならない。




「教える訳にゃいあねぇよ。お前に言っれたまるか!」


 男は機械とは何を指していたのかを分かっていたのかもしれないが、素直に教えるような人柄では無いのは外見と態度で分かるはずだ。手首の痛みがまだ消えてくれないのか、その苛立ちを合わせるようにしてコーチネルに反発する。


「言わないの? あんたに拒否権なんか無いわよ? 早く言え」


 男にされたあの覗き見による怒りも混ざっているのだろうか。右手の短剣の刀身を男の無精髭の混ざった汚い顎に近づけ、無理矢理吐かせようとする。コーチネルも相手を問い詰める時は目付きに殺意を混ぜ込むようだ。




「お前……マジか……」


 短剣の切っ先が人間にとって、どれだけ危険な存在なのかは野盗の男は分かっていた。目の前にいる銀髪の少女の言い分を聞かなければ何をしてくるのか、それはすぐに思い浮かべる事が出来る。


「うん、マジよ。死ぬの嫌でしょ? だったら吐いた方が楽よ? まあどうせあのスライムの制御的な(なん)かだとは思うけど、あんたから説明しなよ?」


 殺す事を前提に、コーチネルは短剣の切っ先を一切男から逸らさず、低めに落とした声色であの端末とも言えるであろう機械の意味を説明させようとする。想像は出来ても、答えは男の汚い口からしか出てこない。命を脅迫してでもここは本気で攻めるしか無い。




「ふん……。お前なんかに負けるかよ!!」


 男は素直に教える事を選択しなかった。それ所か、まるで捨て身とも言えるような行為を突然発動させてしまう。




――突然コーチネルにしがみ付き……――




 勿論それだけでは無く、その場で両腕から抱き着いた訳では無かった。それは飛び掛かるような行為に混ぜる形で行なった為、体重差では、外見で見ても分かる程の細身のコーチネルでは男の体重に勝てるはずも無く、力任せに背中から床に押し倒される。


「何……すんのよこいつ!?」


 腰を乱暴に両腕で巻き付かれる形で掴まれ、無理矢理に背中から押し倒され、両腕以外の自由が無いに等しいこの状況で男が何を始めようとしたのかが理解出来なかった。すぐに手元に戻す事は容易だと思われるとは言え、今は武器である短剣を手放してしまっている。




 押し倒した時までコーチネルの胸当て超しとは言え、胸部に顔面を押し付けながら押し倒す行為を完了させた男だったが、荒れた顔を持ち上げた後に喋り出す。


「お前に教えるぐらいならここで地獄に落ろしてやる!!」


 男はコーチネルの細い腹部に馬乗りになったような姿勢になりながら、そのままコーチネルの細い首に両手を伸ばした。それは所謂首絞めである。


「!!」


 単純な力任せの行為ではあるが、腕力で敵わない少女からすれば、対処の手段を用意していなければ助かる道は無いと言っても良いかもしれない最悪な攻撃である。首を掴まれてしまい、先程までの強気な表情が一瞬で崩れてしまう。




「所詮お前みれぇな女なんてなぁ、大人の俺にゃ勝れねぇんだよ! このまま死ねよ! 後でゆっくりお前の穴全部犯してやるからよぉ!!」


 元々力任せな攻撃ばかりを繰り返していたのであろう男は、コーチネルを絞め上げ続けながら、長年生きた過程を誇るように叫び出す。動かなくなった後に何をするのかも喋っていたが、まだ相手は息が残っており、意識も残っている。


(ふ……ざ……死……の……は……)


 直接声を出す事が出来ない中で、コーチネルはまだ死ぬ訳にはいかないからこその悪あがきのような心の叫びだったのか、それとも、いや、途切れが多いのが原因で解読は難しい可能性がある。


 男の手首を引き剥がそうとするが、力ではやはり勝つ事が出来ない。




「まだ息あんのか? さっさろ失神でもしろよ! じゃねえろ犯せ――」


 気合や根性で耐え抜いていたのか、コーチネルは男の締め上げを継続されていてもまだ意識を残していた為、男は汚い罵声を浴びせてくる。何か目的があるような事を更に叫ぼうとしたが、突然男は声を詰まらせた。




――コーチネルは密かに念じており……――




「う……あっ……おま……え……」


 男は背中に鈍く広がる激痛を覚え始めていた。何があったのかは男が直視する事は出来ないだろう。背中の惨劇は、違う者でなければ確認が出来ないだろう。そして、背中に何をしたのか、それを知っているのは恐らくコーチネルだけだ。


「はぁ……はぁ……悪いわね。あたしあの剣自由に動かせられるのよ。あんたの後ろから刺すぐらい余裕なんだからね?」


 男の両手がコーチネルの首から離れたおかげで、安定した呼吸を出来るようになったコーチネルは仰向けになった姿で、肩で大きく深呼吸をしていた。


 どうやら魔力を帯びた愛用の剣を空中で操り、自分を絞殺しようとした男の背中を勢い良く突き刺したのだろう。元々殺すか殺されるかの世界を生きている少女だ。野盗を殺す事は珍しい話では無いだろう。




 しかし、遂に命が停止を迎えたその汚く大きな肉体がコーチネルに向かって倒れてきたのだ。




「うわっ! こっちに倒れてくんなって! 邪魔! 重いこいつ!!」


 生気を完全に失った男の顔がコーチネル目掛けて倒れてきた為、反射的に顔面を両腕で覆う。男の口が自分の顔に接触するのを避ける為だったのかもしれないが、両腕に男の顔面が落ちてきた時に鈍痛を受けた為、うっかり口と口が接触してしまうという災難よりも、単純に痛みそのものを意識すべきだったのかもしれない。


 力を失った男がコーチネルの上に重なっている為、まずはそれを避けなければいけないが、何とか空いている腕で横に向かって押しながら、そして身体を捩じって傾ける事で男を転がすように自分の上から降ろす事に成功する。


 転がった男の背中にはコーチネルの愛用の剣が突き刺さっていた。確実に内臓にも達したであろう、非常に深く突き刺さっており、それをコーチネルは力任せに引き抜いた。




「悪いけど、これもあたしの仕事だから悪く思わないでね」


 刀身には男の血が大量に付着していたが、魔力が灯っていた為か、男を見下ろしながら短く言い放った後に、刀身を顔の目の前にまで持ち上げながらそれを強く見つめた。何かを念じたのか、付着していた血液が一瞬にして蒸発するように消滅する。


 そしてもうしばらくは剣の役目は無いと思ったからか、腰の鞘に戻し、そして棚やらが密集している中心部へと戻る。そこには無造作に例の端末が置かれており、それをコーチネルは左手で取った。




「これが……スライムの事操作とか、管理とかしてる機械なのかな?」


 色はほぼ黒で統一されており、表面は何かガラスのような透明感のある物質で作られていた。右手の人差し指でどのように動かすのかを探る為に液晶とでも言うべき表面をなぞってみると、突然液晶部分に絵が表示されはじめた。それは円形状の、何か炎のように黄色く揺らぐ物体を閉じ込めているようなものであり、黄色を見た時に何かが脳裏を(よぎ)った。


「黄色……あ、これもしかしてあのスライムの事?」


 思い浮かんだのは、今外で皆が戦っているあのスライムの魔物だ。何か変化が起こるのかもしれないと思い、指で液晶に映っている円形状の物体を(つつ)いた。


 すると突然何かよく分からない形状の文字のような物が横から大量に流れると同時に、黄色く揺らいでいる物体を閉じ込めていた円形状の囲いがゆっくりと透明化していくかのように消滅していった。


 囲いが消えてワンテンポ遅れるかのように、内部に閉じ込められていた炎のような物体も周囲に拡散されていく。


 しかし、コーチネルはそれを液晶で見た所で、何を意味していたのかが分からなかった。




「これ何が……あったの? これってちゃんと操作とか出来たって事でいいの?」


 画面だけを見た所で、それが操作の成功なのか、そうでは無いのか、コーチネルは判断する事が出来ず、ただ液晶の中で炎のエフェクトが拡散されていく様子を眺めるしか無かった。


 見ていても、外の結果がどうなったのかは分からない。想像も難しい。


 そんな時であった。




『コーチネル! なんか今スライムの方がね、あからさま弱点みたいなの露出させ始めたの! 上手くやったんだよね!? グッジョブ!!』


 レフィの声であった。テレパシーで再びコーチネルの脳内に語り掛けていたようで、あの小さな機械を操作する事によって、好都合な状況へと変わってくれていたようだ。口調はいつものように明るかった為、皆が窮地やピンチ等から逃れられていたと想像して間違いは無い。


「あぁまたレフィ? 弱点……まあじゃあ上手く出来たって事でいいみたいね。でもあたしから伝えるってこれ出来ないんだったか……」


 声を確かに受け取ったコーチネルは外で今どのような有利な形になっているのかを想像してみたが、出来れば本当はコーチネルの方からもレフィにどのような形でも良いから何かしら返事を渡したいつもりだったようだ。しかし、コーチネルの方は相手にテレパシーを伝える能力は所持しておらず、それは長い付き合いの中で判明している事だったようだ。


 自分もいつかは身に付けた方が良いのかと考えていると、再びレフィからテレパシーが届けられる。




『その感じだと肉便器っていうバッドエンドは回避出来たみたいだね! でも注意してね! なんかあんたが突入した小屋に誰か降り立ったみたいだから!! 死ぬなよ!』


 レフィからするとスライムの弱点を露出させてくれた事よりも、男に負けてしまい、そのままもう1つの意味である乱暴な行為をされてしまわなかったかどうかの方が心配だったようだ。わざわざ言う必要は無かったのかもしれないが、コーチネルのいる小屋にまた敵のような存在が入り込もうとしていたらしい。


 それが今の話の中では最も重要なものだろう。


「降り立つ……? いや、誰か来るって事? でも出口1つしか無いから……まいいや、一旦出るかここ!」


 まるで空を飛ぶ者を連想させるような言い方をしてきた為、そこでやや無駄な時間を使ってしまったコーチネルだが、どちらにしても小屋の内部にはもう用が無い事に加え、そして小屋自体が更に危機で覆われてしまうだと分かったなら、もうここに長居する理由は存在しない。


 既に絶命している腰蓑だけの姿の男を飛び越えながら少女は真っ直ぐに部屋の出口のドアに向かった。


 しかし、ふとコーチネルは何かを思い出した。




(そういえばあの電撃みたいな音って何だったんだろ?)


 部屋に突入する前に派手に響いていた電撃の轟音の正体が気になったが、男が放っていたのか、それとも単に男の近くで誰かが、或いは何かが放っていたのか、今はもう確かめる為の相手がいない。


 しかし思い出すという事は、正体を直接目で見てみたいという願望が少なからず存在したという事かもしれず、そして、意外と正体はコーチネルの離れた後方に存在した。




「死ねよお前……」


 その声はコーチネルに聞こえていたのかどうか分からない程に小さかったが、その手を伸ばした誰かは、手から魔法を発動させる。


 真っ赤なローブを纏っていたが、そこから伸びた腕は細く、そして年齢的にも若い肌に見えていたが、酷く汚れていた。


 その魔法は、最初にコーチネルが部屋の外で聞いた轟音と全く同じ音を鳴らした。








やっぱりどうしてかは分かりませんが、少女キャラのピンチなシーンってかなり執筆する時に気合が入るような気がします。まあ……何故かは分かりませんが、なんか少女キャラだとピンチになるとかなり露骨に怯えたりするみたいなんですが、その様子がちょっと……。ただ、流石にそのままだと敵に思うがままにされてバッドエンドが確定してしまうので、使える手段を全部使ってもらわないといけない訳ですが、コーチネルって意外と窮地に弱い所があるのかもしれません。そして色々な場所でレフィに助けて貰えてるので単独での戦いはまだ早かったかもしれませんね。

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