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黒衣を纏いし紫髪の天使  作者: 閻婆
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第27節 《救世主となりかけた風使い 迫り来るは感情を持たぬ液体生命体》 5/5

スライムの魔物との戦いです。前回の話に続いて今回も戦いになってますが、それぞれ剣技や空中戦、銃撃戦や魔法で戦う姿を見せてくれます。剣技は2人が該当してると思いますが、それでも勝利出来るかどうかは分かりません。相手はスライムで弱点らしい弱点がまだ見つかってないので、どうなるかは分かりません。でも流石に戦闘だけだと物語性が薄くなってしまいますが、終わり際に何かが……。










                 恐らくは、スライムの魔物がこの亜空間の支配者


                 ようやくここに5人の戦士が(つど)った


                 スライムには人間のような知能は無いと予測が付く


                 本能で襲い掛かってくるなら、こちらもそれに対応するまでだ


                 突然出現した軟体型の魔物はここで侵入者を亡き者にしようと暴れ始める








「なんだぁ? 槍なんか作りやがったぜ? だったら潰すだけだぜ?」


 鳥人族であるフィリニオンはスライムの魔物が手元に細長い武器を生成させていた事を見逃さなかった。手元とは言っても、球体状の本体の上に人間の上半身の形を作っており、そこから伸びていた腕の部分に槍が生成された、という話ではあるが、フィリニオンは先手とでも言わんばかりに翼を羽ばたかせる。


 双剣に分類される2本の短剣を、飛行しながらそれぞれ両手に構え、一直線にスライムの槍を持つ腕へ飛び込んでいく。


「行動速いぜあいつは」


 今は濃い紫の装束を纏った忍者の姿をしているガイウスも、フィリニオンに続くようにスライムへと向かっていく。


 ガイウスの場合はフィリニオンのように直接動いて移動、という手段を取らず、その場で姿を消滅させてしまう。瞬間移動の類だったのかもしれないが、どこへ向かったのだろうか。




――スライムは槍を攻撃手段とする――




 スライムも自分に攻撃を開始された事を把握したのか、槍を突き刺す為では無く、横に振るような動きをさせる為の構えを取り始めるが、フィリニオンの突撃は収まらなかった。


 槍が純粋に鈍器として扱われるかのように横殴りに振られるものの、まるで軌道を初めから読んでいたかのように軽々と高度を下げる事で回避し、双剣の本来の使い方を見せつけるかのようにスライムの手首に鋭い斬撃をすれ違い様に入れ込む。


 斬り傷は深く入った為、もうそのまま手首からそのまま重みで落下するのでは無いかという所まで傾いていた。手には槍も握られていた為、槍の重量もそのまま負荷として圧し掛かっていた事だろう。


 だが、スライムの魔物は弱る様子を見せてはくれない。


「やっぱ無理か……」


 相手が人間であれば今の斬撃で確実に戦意を喪失、それ所か出血多量等で絶命にすら追いやる事が出来た攻撃であっても、スライムの場合は致命傷ですら無かったかと、背後を睨みながらフィリニオンはぼやいた。


 当然そのまま飛び去る訳では無かった為、フィリニオンはUターンですぐにスライムの居場所へと戻るが、どうやら次の攻撃が待っていたようであり、それはフィリニオンのものでは無い。




――スライムの球体部分が激しい殴打に襲われる――




 スライムは上部に人間の上半身を生成させていたが、本体である下部の球体状の部分がまるで何かに殴られるかのように凹み始める。それが複数の場所で発生し、そして誰が行なっているのかは直接は見えなかった。


 しかし、殴打が止まると同時に、スライムのほぼ真上に攻撃を炸裂させていた者が姿を現した。瞬間移動から帰ってきたかのように歪んだ空間から姿を見せたのはガイウスであり、姿を消しながら胴体だと思われる球体状の本体に打撃をくわえ、そして次は真上からの攻撃を計画していたようだ。


「こいつって何すりゃ効くんだろうなぁ」


 武器の刀を実体化させながら、それを真下目掛けて投げ落とす。


 魔力を混ぜた落下によって刀は人間の胴体部分と、そしてスライム本体である球体部分にまで一気に貫いた。貫いた際に内部に空洞が出来上がった影響なのか、やや膨らんだような形を見せつけていたものの、スライム本体はまるで何事も受けていなかったかのように妙に静かであった。




 空中で見えない壁でも蹴るかのように右へ跳びながら、ガイウスは地上へと降り立つが、今の貫通させた剣技は通じたのだろうか。


「無理だな。ちっとも効いてねぇや……」


 ガイウスはスライムの動き等を見ながら、自分が今発動させた剣技がまるで効果が無かった事を痛感させられてしまう。スライムを相手にいくら攻撃を仕掛けても目立つような負傷をさせる事は叶わないようである。


 貫かれた場所もすぐに穴を塞ぐように復元されてしまう事である。




――ディマイオも2人の動きに関心をしていたようだが――




「オレらもちんたらしてらんねぇぞ。とりあえず適当に弱点でも探すしかねぇな」


 空中と瞬間移動を制すると評価しても良さそうな2人を見ていたディマイオも、両手の拳銃を回しながら、手探りで弱点を見つける事を提案でもする。


 真正面から突撃するか、それとも一旦左右どちらかに跳んで、横から狙い撃ちを決めるかを考えていると、スライムの方から球体状の部位の一部を分離させ、それをディマイオ達の方へと接近させる。それは地面を擦るように近づいていく。




「待って! あいつ何してんの?」


 歩き出そうとしたディマイオを止めるように、コーチネルは分離したスライムの一部に注目させる為に声を張り上げる。


 ただ、丸い塊を千切っただけであればそこまで警戒する必要は無かったのかもしれないが、まるで卵のように左右に割れた後に中から親近感があるであろう形の物体が出現した。


「見ての通りでしょ? 卵から人間が(かえ)ったんでしょ? でもわたし達に嫌がらせしに来るみたいだけど?」


 レフィは見たままの通りの状況を説明するかのように口を動かすが、卵のように左右に割り、内部から出てきた人間の形状の物体に対し、ただの気味の悪い存在だという酷評しか飛ばさなかった。そして、人型の物体が仕掛けてくる行為は、確実に嫌がらせで済まされるものでは無いだろう。


 よくみると、人型の物体の右手が刃物のような形状になっていた。




――しかし、ディマイオは怯む事無く行動に入り……――




「まずは黙らせるぞ!」


 本当は嫌がらせという子供同士のじゃれつきのような言い方に1つ突っ込んでやろうかと思った可能性があるディマイオだが、どう考えても自分達に斬りかかってくるとしか思えなかった為、撃たれた後に相手がどうなるかを考える前に、愛用の拳銃の銃口を頭へ向ける。


 そして1発の銃弾が人型の物体に命中する。




――頭が吹き飛ぶが、それで死にはしない――




 それ所か、頭を失った状態でも歩行は止めず、まだ届かない距離なのにも関わらず、刃の形状をさせた右手を振り回しながら近寄り続けている。


「あいつ止まんないわよ!? どうすんの?」


 コーチネルは刃状の右腕を振り回し続ける相手が近づいてくる事に恐怖しか感じる事が出来なかった。本当は自分の剣で受け止めたかったかもしれないが、スライムから産まれたこの物体の刃を受け止めた後に何が起こるか、それが一番怖かったのかもしれない。




「近距離が危ないんだったらわたしが――」


 尻込みをするコーチネルに代わって、レフィが離れた場所から風の魔法を放とうと、両腕を広げながら、そして2本の腕の周囲に風を纏わせながら大技のような予兆を見せていたが、無理と化してしまう。




――よく見ると、周囲にはスライムの(しずく)が散らばっており……――




 水溜まりのようにも、純粋な固体の欠片とも言えるようなそれらがいつの間にか周囲に散っていたが、小さな塊の何個かが突然糸のような物を発射させた。発射先は、レフィの手足である。


「!!」


 コーチネルの前に出て格好を付けようとしたレフィを、まるで鎖でも伸ばすかのように動きを拘束させてしまう。手足に接触した後に、伸ばしたそれを個々の欠片が引っ張る事で、まるでレフィは地面に張り付けにされるかのような形で引っ張られ、力任せに動きを封じられてしまう。


「何よこれ……! エロい触手……じゃ、ないか……」


 地面に引っ張られるように押さえ付けられたレフィは、地面に倒されぬよう無理矢理に直立の姿勢を維持させ続けていたが、魔力で対抗する事が出来ず、そしてその場から移動も出来ず、刃を構えた物体はレフィの細い首辺りを狙い、斜めに振り落とそうとする。




「うわぁ斬る気!!? ちょっふざけんな!!!」


 レフィは目の前から来るであろう刃の一撃のせいで自分の命がこれで終わってしまうのかと悟ると、恐怖よりも先にここであっさりと自分の人生を破壊される事による怒りに近いものが込み上げてきた為、その場で女子として見ると相当に荒れた暴言で叫ぶが、レフィは単独では無い。




――同じ性別の剣使いが盾になってくれた――




 鉄と鉄が激しくぶつかる音を響かせていたのはコーチネルで、愛用の剣を扱い、人間の形の物体が振り下ろした刃を弾いてくれていたのだ。


 先程までは目の前にいる少女の盾になるはずだったのに、逆に自分の盾になってくれている少女の何だか逞しく見えるが、それでも細身な背中を呆然と見ていると、自分を助けてくれた少女がレフィに振り向いた。


「ふぅ……。良かったね、叫んだ事が思い通りになって」


 レフィを助けたコーチネルは短い言葉を背後にいる少女に渡した後に、再び人間の物体に視線を戻す。相手はまだ刃を振る事をやめておらず、一撃を跳ね返したからと言って、それで相手が引き下がるという話にはならない。次の攻撃に対しても対処しなければいけない。


 コーチネルの背中が邪魔になって、人間の物体の刃の振り回しがよく視認出来なかったが、それでも刃を武器にコーチネルに襲い掛かっているのは目視では無く、接触音で確認が出来たと言えるだろう。再び鉄と鉄がぶつかり合う音が響いたのだから。




「所で……これ誰か……外して――」


 レフィは自分が拘束されていた事を一時的に忘れそうになっていたが、コーチネルに並びながら自分も格好の良い所を見せてやろうと右腕を持ち上げようとしたが、欠片が伸ばしてきた鎖のような細長い物体に締め付けられている為、加勢する事が出来ない。


 しかし、誰かに助けを求めようとした時に、近くで銃声が鳴り、同時に手足の重みが突然消滅する事になる。




――まずは両腕の重みが消滅する――




 腕の自由が利くようになった事を感知して僅かな時間の後に今度は両足の自由も確定される事に。


「これでいいだろ? その辺散らばってっから、捕まんじゃねえぞ?」


 レフィの後ろには拳銃を、丁度今発砲したであろうディマイオの姿があり、地面に向けて斜めに構えながら短い言葉をディマイオはレフィに渡したが、すぐにレフィから視線を外すなり、他の場所に散らばっていたスライムの雫を狙って発砲を再度開始していた。


「その辺って……あぁこれね。ってまた来ようとしてるし!」


 レフィも周囲の地面を素早く見渡すが、確かに雫が散らばっており、恐らく人間の形状の物体が刃を振り回していた時に散った物だと予想したが、手に風の力を込めると雫が泡立ち、何か突き出るような動きを見せた為、再び自分に何かを伸ばしてくるのかと、元々込めていた魔力を更に手に集中させる。


 沸騰でもしているかのように波打っている欠片を見つけた為、それに向けて風の魔力をぶつけ、それを風で閉じ込める。時間を与える事をせずに風の球体で握り潰すかのように欠片を消失させる。


 自分を狙っていた欠片は複数を風の球体に閉じ込め、そして押し潰す事で消滅させたが、まだ1つ残っていた欠片がレフィでは無い相手を標的にしようとしていた。




――その一方で、コーチネルは優勢に出ており……――




「ふん! あたしに勝てると思うなっつの! ザコ!」


 剣技には自信があったのだろう。コーチネルによって支えでも失ったかのように液体状となって崩れ落ちた人間型の物体を見下ろしながら、自分の実力を自身で実感していた所だが、背後にまだ残っていたスライムの雫に狙われていた事には気付いていなかったようだ。


(ののし)る前に後ろも見てね!」


 コーチネルの背後から魔法使いの少女の声が響く。何があったのかは分からなかったが、背後を見ると、足元に視線を向けていたレフィの姿があり、そして視線に釣られて足元を見ると、地面にはまるで叩き潰されて更に細かくなったスライムの残骸が散っていた。




「後ろって、またなんかあった!?」


 人型の物体を斬り崩した事で少しだけ安心しきっていたのかもしれないコーチネルであったが、残骸のように散っているスライムを一目視線に掠らせるように入れた後にレフィと目を合わせる。残骸を見ても殆ど不安等に駆られる事も無く、それが下手をすると自分に不利な状況になっていた可能性があるという想像もここでは出来なかったようだ。


「『あった?』じゃないでしょ? 今後ろから狙われてたよ。わたしいなかったら今頃カンチョー受けてたからね?」


 コーチネルの口調と表情を真似するように再現をさせたレフィであるが、足元の残骸は元々はレフィの時のように伸ばした上でコーチネルを拘束しようとしていた存在であった為、レフィによる欠片の処理がされていなければ何が起きていたのかを説明した。


 しかし、下から斜めに伸びるからと言って、その言い方は良かったのだろうか。




「……ちょっとお前、黙れよ……」


 コーチネルはレフィの性格上あの言い方になるのは多少は想定出来ていたものの、同性からとは言え、やはり素直に受け入れるなんて無理であったようだ。少女とは思いにくくなるような二人称と低い声での短い暴言が出てしまったが、スライム本体が真正面から来ている事を知らせてきたのはディマイオであった。


「あいつの事も忘れてねぇだろうな? あいつ狙ってきてるぞ。()けろ」


 ディマイオは元々のスライムの本体の動きも忘れていなかったようであり、ガイウスとフィリニオンの相手をしていたはずのスライム本体が少女2人に目標を変えていたのだ。


 何やら大砲のような形状の部位を本体である球体の部分から伸ばしており、そして小刻みに震わせていたのだ。




――だが、ディマイオは意外な行動に入り…・…――




 コーチネルとレフィは大砲の先端を目視すると同時に何かを言おうとしたいかのように表情を驚かせていたが、2人の背後からやってきたディマイオによって、それぞれ左右に押し退けられてしまう。


 そしてディマイオ自身は射程範囲であろう大砲の正面から避ける事をしなかった。


「ちょっ! ディマイオあんたも()けなよ!!」


 押されるとは言っても、それは殆ど強引に突き飛ばされると表現しても良かったかもしれない力であった為、体勢を何とか崩さずに立ち留まったコーチネルは振り向いて確認をしたディマイオの立ち位置に黙っている事が出来なかった。大砲の真正面におり、このまま発射されればディマイオは無事では済まないはずだ。




「榴弾使えば問題ねぇよ!」


 自分に照準を向けられているディマイオであったが、発射される前に自分がそれを妨害してしまえば良いと考えたのか、愛用の拳銃の銃口を大砲へと向けた。


 そして、ディマイオが銃口から爆発性のある榴弾を発射したのと、相手が大砲から無数の欠片のような砲弾を発射したのはほぼ同時であり、榴弾が大砲へと命中すると同時に、もうディマイオは大砲の射程範囲から姿を消していた。ディマイオは左右にでは無く、上に向かって跳び上がったのだ。




――射程内には大量の欠片がばら撒かれるものの――




 命中していれば大量の切り傷でも付けられていたのかもしれない。1つの砲弾を発射した訳では無かったその大砲だが、既にディマイオによって榴弾を撃ち込まれていた。撃ち込んだ本人は丁度その後の様子を真上から目視する事になる。


「そんなセンスねぇ攻撃なんか当たんねぇよ!」


 誰もいない場所に大砲を発射したスライムの魔物を見下ろしながら、ディマイオはこれから着地に向けて体勢を意識するが、命中率の悪い発射を見せたスライムがこれからどのような目に遭うのか、それは予測していた事だろう。


 榴弾の効果が数秒後に発動し、大砲が見事に爆発を起こしてしまう。


 遠距離を狙う為にわざわざ生成させたであろう大砲は、榴弾の爆発によって形を崩してしまい、もう使い物にならなくなったのは確実だ。




――空中でもまだ余裕があったらしいディマイオは……――




「さてと……。まあ上から狙える場所なんかねぇか……」


 ディマイオは空中から落下をしながら、スライムの魔物を真上から観察していたが、特に弱点らしい弱点が見つからず、どの部位も同じ黄色をしており、特徴的な部分が見当たらなかった。


 どうやらディマイオは落下の速度を低下させる能力があるようであり、まるで重力が仕事をしていないかのように遅い落下を見せ続けていた。地面に降り立つまで時間があるからか、両手の拳銃でいつでも相手を狙う事が出来るように構え続けていた。


「ん? なんだ?」


 そしてすぐにディマイオはスライムの魔物の変化に気が付く。人間の上半身を作っていた部位の更に頭部の部分が激しい凹凸を波打たせていたのだ。


 もしかすると今度は頭部から何かしらを発射してくるのかと身構えていたが、発動させたのは、発射では無く、伸ばす行為であった。




――それは触手として、ディマイオに襲い掛かる――




 無数の触手と形状を変化させたスライムの部位が、空中からゆっくりと降下していたディマイオを狙う。


「やっぱ来やがったか! 気持ち悪りぃなおい!」


 ディマイオもあっさりと捕まる程の弱さでは無かった。伸びてくる触手の先端を的確に、そしてスピードが乗った速度で両手の拳銃を発砲させる。


 自分の足元や顔面を狙って伸びてくる触手の先端に銃弾を見事に命中させ、先端を破裂させるように砕いていく。先端が砕けた触手は力を失うのか、支えを失うように重力に引っ張られていた。




――空中を制している者は他にもおり……――




「あいつなかなか面白れぇ奴じゃねえか……。気に入ったぜ」


 先程まではディマイオの見えない所でスライムの魔物の猛攻を回避していたのか、距離を取っていたフィリニオンは自分のように翼を持っていないのにも関わらず空中戦も過激にこなす初対面のディマイオに関心してしまう。だからと言って自分も手を抜く訳には行くまいと、再び魔物へと空中から接近し、懲りずにディマイオへ触手を伸ばし続けている人間の形状の頭部を狙う。


 攻撃手段は、双剣から放たれる真空の刃だ。




――刀身に何やら空気の膜のようなものが張られ……――




「おらっ! プレゼントだぜっ!」


 薙ぐように振られた刀身から飛ばされる真空の刃が2発、スライムの人間状の部位へ向けて飛ばされた。刃はそれぞれの双剣から一撃ずつ飛ばされ、刃は首元を目掛けていた。


 フィリニオンによって飛ばされた真空の刃は、不気味に触手を伸ばす頭部を斬り落とす事が目的だったのだろう。




――しかし、人間の頭部は唐突にフィリニオンに向けられる――




 声を発する事が無いスライムの魔物は事実上無言で滞空するフィリニオンと顔を合わせるが、その時には既に真空の刃が人間形状の首を通り過ぎており、頭部がそのまま首から転がり落ちそうになっていた。


 触手を暴れさせる力も失われていたのか、これからディマイオを狙おうとしていた触手も今は力を失うかのように重力に引っ張られている。


「やっぱこいつ頭が弱点だったか? にしても弱ぇ奴だぜ」


 頭部を斬り落とした事で実際に頭の動きも停止し、頭より下、つまりは人間の形状をした上半身、そしてスライム本体も動かなくなってしまった為、フィリニオンはこれで生命活動を停止させる事が出来たのかと疑っていたが、再び双剣の方に真空の膜を帯びさせていた為、まだ終わりだと確定はさせていなかったようだ。


 そもそも相手はスライムだ。自分にとって都合の良い形状に変化させているというだけで、元となった生物にとっての弱点を狙ったからと言ってそれが致命傷になるという保証は無いだろう。




――切断された部位が復元されると同時に……――




 切断されて落下していった頭部を無視しながら、切断部位を再び復元させたスライムだが、それをデタラメな凹凸を見せた塊にさせた上で、虫のような(はね)を生やさせ、そしてフィリニオン目掛けて飛ばし始める。それは言うなれば、翅の生えた岩のようなものであった。


「だろうと思ったぜ? 邪魔だ!」


 フィリニオンは自分に真っ直ぐ飛来してくる翅の生えた塊に対し、言葉の通りの対応をして見せた。何かを発射してくる訳でも、何か鋭利な物を伸ばして斬りかかる訳でも無く、ただ塊と化している身体をフィリニオンに接触させようとしているだけであったその塊を、フィリニオンも塊相手に飛び掛かるように空中で自分を前方へと押し出した。


 突撃し、塊と接触する直前に双剣を力強く振り、縦に塊を両断してしまう。


 ただ飛行して体当たりを企むだけの塊ではフィリニオンに打撃を与える事が出来ず、2つに分かれてしまった塊は翅の動きだけはそのままにバランスを失いながら落下していく。




――そして地上でも決して穏やかでは無く……――




「頭がもげても動き続けるか……」


 フィリニオンの真空の刃が何をしたのか、それを地上でガイウスは確認していたが、首から上を見事に斬り落とされたのにも関わらず、スライムは動きを止める事をしなかった。


 あくまでも人間のような形をしているだけで、弱点までも人間のそれになった訳では無かったようであり、そして落下した頭部はそれを目視していたガイウスを標的にし始める。


「流石に黙り続けるって事はしないだろうなぁ」


 忍の姿をさせているガイウスはすぐに刀を横に向けた形で構えながら、自分に向かってくるであろう頭部を警戒する。


 落下した頭部は、その場で非常に薄くなり、そして円形状の刃へと姿を変えた。




――縦に向きを変え、独りでにガイウスへと動き出す――




 まるでタイヤのように回転し、地面を斬るように抉りながら、それはガイウスへと向かい出す。


 直径はガイウスの身長を超えており、直撃した時の運命は言われなくても分かるはずだ。


「悪いけど、命中はしないんだなぁこれが」


 目の前から巨大な円形状のカッターが迫る中で、ガイウスは真正面というわざと回避を推奨させているかのような方向に対し、哀れみの感情さえも渡しながら、自身の身体をまるで(きり)そのものに変化でもさせるかのように歪ませた。


 カッター自体には意思があったのかどうかは定かでは無いが、姿が見えなくなりそうになっていたのにも関わらず、ガイウスへと真っ直ぐと地面も斬りながら、そして小さくバウンドもさせながら突き進んだが、霧となって消滅したガイウスには命中する事も無く、ただ通り過ぎていくだけであった。




――通り過ぎた後に再び実体化するガイウスは――




「正面から狙うのは未熟者の証拠だぜ? それとあれはこうしてやる」


 その場からは移動せず、ただ姿を消す事でカッターを回避したガイウスだったが、標的から外れたのにも関わらず回転しながら進み続けていたカッターに対し、右手を(かざ)した。


 先程ガイウスが消滅する際に見えていた霧のようなものがカッターの周囲に現れるが、それは細長く、カッターを貫くように空間を歪ませていた。


 右手を握ると霧が刀へと姿を現し、まるでカッターの側面から突き刺さる形となった刀達は無理矢理にカッターの回転も前進も止めてしまう。




「さて、じゃあ次は……ってまた同じ事すんのか?」


 ガイウスに飛ばしたカッターはもう動きを無理矢理に止められたせいで崩れ落ちていた所だが、スライムの本体はまた自分の身体から同じカッターを発射させようとしていた。


 本体である球体状の部分と、人間の形状をさせている部分をそれぞれ半分ずつ使うかのようにカッターを体内から捻り出していた。


 そして円形状の刃が完全に体内から完全に隔離されようとした時に、ガイウス以外の者がカッターの発射を阻止してしまう。




――ガイウスの死角から放たれる無数の銃弾――




 銃弾を扱うのはこの場には1人しかいなかった為、ガイウスは姿を直接見なくても誰が発射したのか、すぐに理解が出来た。


 発射された銃弾は適当な狙いだった訳では無かった。刃としての機能を奪い取るかのように見事に先端に銃弾を直撃させ、変形させてしまう事で斬れ味を劣化させてしまう。それを数発、刃に命中させており、そして狙いが逸れた銃弾もスライムの人間の形状をさせている部分に命中しており、いくらか怯ませている。


「こいつどんだけ攻撃しても意味ねぇぞ? なんか考えねぇと時間無駄になるだけだぜ」


 銃弾を炸裂させていたのはディマイオであったが、ガイウスの隣に背後から歩み寄りながら、仕上げとしてだったのか、もう1発、右手に構えていた拳銃から発射させた。




 それは榴弾であったようであり、再びスライムの体内で爆発を発生させる。それが致命傷になっているのかどうかは分からないが、体内で爆発し、身体に穴が()くと少しの間だけであるが、攻撃の手が止まるようであった。


「無駄なのは分かってるぜ? だけどこっちが攻撃やめたらあいつはやりたい放題暴れやがるぜ? まあ弱点探す係でもいてくれりゃいいんだけどな」


 ガイウスも、スライムの魔物が自己再生を行い、広がった胴体部分の穴を修復している様子を眺めながら本当に弱点が存在するのかを考えてみたが、分からないからと言って攻撃の手を止めていても相手は黙っていてくれない為、確実に沈める事が出来る手段を探索する専門家のような者を頼めないか期待していたようだ。


 一瞬ではあるが、ガイウスは今目の前にいる人間の上半身を形状として生成させているスライムの背後の遠方に、何か気配を感じていたが、それは気のせいでは無かったはずだ。




――その頃、あの倒れていた野盗の男は……――




 レフィを襲おうとしたが、風の魔力であっさりと叩きのめされ、そして倒れている間にスライムに身体の構造をコピーされていたが、絶命をしていた訳では無かったようであり、痛み等の蓄積による身体の重さに耐えながら立ち上がり、そしてスライムと戦っている者達に気付かれていない事を確認した(のち)、忍び足と駆け足を混ぜたような走りでその場を立ち去った。


 走りながら腰蓑から何か長方形の物体を取り出し、何かを触っていたが、逃げる姿をコーチネルは偶然目にしていた。スライムの分身とも言える小型の物体からの攻撃で体勢を崩された際にふと背後に視点がぶれた際に偶然逃げる男の姿が視界に入ったのだ。


 そして、ポケットから取り出した物体を指で触っている様子も、しっかりと目撃していた。


(あいつさっきのじゃん? 何してんのあいつ?)


 数秒程、背後を凝視していたコーチネルだが、まだ戦っていたスライムの分身が近づいてきている事に気付いた為、すぐに正面に向き直し、未熟とは言わせない剣捌きで相手の胴体を、攻撃用に利用した左腕と共に斬り付けた。

なんか戦闘自体はまだ続いてしまいそうですが、流石にそればっかりだと冗長になりそうな感じがあったので、ラストの方で怪しい男の動きを加えてみました。これで別の視点での話が次回から展開される事になると思いますが、個人的にどうしても今回の話で初登場となった風の魔法使いであるレフィと、友達であるコーチネルのやり取りをもう少し描きたくて、それで次回もこの2人のやり取りが目立つかもしれません。

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