第27節 《救世主となりかけた風使い 迫り来るは感情を持たぬ液体生命体》 3/5
小屋から出た後も少女2人は危険に晒されます。だけど両者はそれぞれ剣技と魔法を武器にした強い少女なので負けないと信じたい所ですが、今回は厄介な魔物との戦いになります。魔女であるレフィはよく年齢制限を連想させる発言をしますが、それはこの話が年齢制限が入るようなシーンにならないように頑張ってる証拠に……なるんでしょうか?
小屋に閉じ込められていた少女を救出した別の少女
最初は汚らしい男の姿をしていたが、それは魔力による変装であった
今は洗脳によって性格まで汚染されたエルフ達も撃退している
剣使いと、魔法使いがこれから向かう先は……
「ちょっとレフィ! 何今の音!?」
まだ小屋から出ていなかった銀髪の剣使いであるコーチネルは外で鈍い音が響いた事に気付き、外で何かを鋭い視線で見つめ続けている金髪の魔法使いであるレフィに走り寄る。
「ちょっと害虫退治ってとこだね。見てよこれ」
レフィの視線を辿るようにコーチネルは見てと言われた部分を目視すると、そこにはうつ伏せになって倒れている太った体型の上半身裸の男がいた。レフィに重たい一撃を受けたのか、動く気配は無い。
「!? ここの賊の男じゃん!? あたしら待ち伏せとかされてたって事!?」
コーチネルは男の体格と腰蓑だけを付けたような裸にも近い服装を見て、それが間違い無く自分達と敵対している相手である事を察した。
そして、自分達が小屋の中にいたという事実は、確実にこの倒れている男以外の者達にも知られているのでは無いかと推考する。
「だと思うよ? 多分周りにも隠れてると思うし、油断したら18禁的な事されて終了になるからね?」
男達からすれば、ここに敵対する相手がいるというのに、それを仲間達に伝えない訳が無いというのはレフィでも理解出来る話だ。
それが絶対なのかどうかは分からないにしても、捕らわれた時の結末も容易に想定出来てしまう。異性同士であれば、やる事はただ1つであるらしい。
「なんであんたって破廉恥な話に結び付けようとすんのよ……?」
ならず者の男達に捕まれば性的な暴行を受けるのはコーチネルでも想定が出来るとは言え、まるで思春期の男子同士のやり取りのような言い方をしてくる様子に対してはいつものように目を細めながら睨む事しか出来なかった。それでも、危険を伝えようとしている気持ちを受け取る事は出来ていたようだが。
「わたしは事実を言ってるだけ! 男なんて皆そういう事しかしないでしょ?」
レフィの表情にはあまりふざけたようなものが見えず、寧ろ突っ込みを入れてくるコーチネルにバレないように反発の意思を混ぜ込んだような返答を渡していた。男という生き物の本質を理解している上での発言という事なのだろうか。
そしてレフィは右手の上で風を作り始めるが、視線はコーチネルを向いていなかった。
――別の建物の屋根に視線を向けていたのだ――
「それと早速来たよ! 屋根の上! そして相手は変態男じゃなくて変な生物だよ!」
想像の通り、男以外にも近くで待ち構えていた存在がいたようであり、レフィは対象となる相手を指差しながらその場で叫ぶ。
コーチネルと目を合わせていなくても、それが伝わったのは確かである。
「変な、生物? ってあれって……スライム?」
自分達が出てきた小屋とは別の小屋の屋根を、レフィの指先を辿る形で見たコーチネルの視界に入ったのは、半透明の黄色の塊であった。それは前方を引っ張るように徐々に屋根の縁に近づいており、そして球体状のその物体は上から押し付けたかのような潰れた形状になるなり、突如次の行動を起こした。
――その場で激しく跳び上がったのだ――
人間が両手を広げてもそれよりも広いと思われるような体躯で跳ね上がったスライムは、小屋の屋根を反動で破壊する事無く宙を舞い、着地の場所をコーチネルとレフィの居場所へと定める。
「見るからにそうだろうね。まずは逃げるのが大事だよ!」
「はいはい」
重量は見た目に反してそこまで高いものでは無かったのか、着地の場所も把握されている事、そして思いの他落下の速度も速くは無かった為、レフィも相手がスライムの類である事を認める余裕があったようだ。そして回避の為に左右にそれぞれ走り込む事で押し潰しを回避する余裕もあった。
コーチネルも言われなくても理解をしていたからか、返答がやや気怠そうであったが、直撃はしていない。
「さてと……」
背中を向けながら着地点から離れていたレフィは向き直りながら、この黄色のスライムにどのように戦法を仕掛けようかを考えながら両手に風の力を溜め込んだ。
「あんたには悪いけどくたばってもらうからね!」
レフィは足元に散らばっている無数の石ころを風力で浮かせてから、それらを巻き込む形で強風を発生させる。まずは牽制の意味合いも込めてだったのかもしれない。威力は小石である以上は過度な期待は出来ないはずだ。
飛来した小石達を受けたスライムではあったが、最初こそは固形である黄色の身体にめり込んでいたものの、まるで跳ね返すように小石を外へと押し出してしまう。
「ふ~ん、打撃には強そうな身体してるって訳だね」
小石をぶつけた程度で静まるとは思っていなかったようであり、寧ろ何に耐性があるのかを確かめる意味合いもそこにあったのかもしれない。
反対側にいたコーチネルも何かしらの反撃を試みようとしている様子を脳裏に浮かばせてもいたようだが。
――コーチネルの見たスライムの姿は……――
「危なかったけど、そんなのであたしがビビると思った?」
コーチネルも無事に走り込む事でスライムからの着地による押し潰しを回避しており、威圧した所でまるで自分には通じないと言い放つが、言葉が通じているのかどうか。
スライムの傍らには先程レフィによって鉄槌を下された男の姿があったが、襲ってくるであろうスライムに殆ど意識を集中させており、男に気を使う事はしていなかった。
しかし、スライムの目的はもしかすると少女2人では無かったのかもしれない。
――倒れている男に身体の一部を接触させていた――
球体状の、今は地面にやや広がるような横に僅かに潰れたような形ではあるが、スライムは男に擦るように近寄るなり、突起を数本伸ばすように男に接触させる。そして接触させた先端から少しずつ自分の身体の一部を流し込むように男を包み込んでいく。
「えっ……? 何やってんのこいつ?」
男を取り込もうとしているように見えたのだろうか、コーチネルは男に自分の身体を流し込んでいる様子を見て言葉が漏れてしまう。
自分達の元に跳び込んできたのは、押し潰す為では無く、男を吸収する為だったのかと予測すら立てたくなるはずだ。
男を吸収し終えたのか、スライムは触手のように伸ばしていた部分を体内に引き戻したが、男の外見には特にこれと言った外傷等が見えなかった。
しかし、スライムの方には変化が生じており、吸収行為を行なった事による変化が実際に目に見える形で発生しようとしていたのだ。
――内側から身体を突き破るように凸凹にうねり始める……――
「さて、あのスライム何だんまり決め込んでるの? コーチネルの事心配になってきたかな」
レフィはコーチネルと左右に分かれる形で跳び込んできたスライムを回避したが、反対側にいるコーチネルの姿はこの場所からは見る事が出来ない。
風の魔力を使用出来るレフィは足元に風の力を発生させる。どうやら跳躍力を増幅させてスライムを飛び越えてしまおうと計画していたようだ。
まるで目視しにくい風に運んでもらうかのように身体を浮かせ、そして風によってそのまま身体を跳び上がらせる形でスライムの頭上を進ませた。
――着地場所には勿論仲間の少女がおり……――
「やっほコーチネル! 何そんなとこで遊んでるの?」
銀髪の剣士であるコーチネルのすぐ隣に華麗に着地を決めた後に、何やらスライムを警戒しているかのような表情を見ながら、レフィは一言からかうように言葉を渡す。
「いや遊んでないけどね? それよりあいつ見て! なんか吸い付いてんだけどあの男に」
軽々と払い除けられたものの、それでもコーチネルからすればスライムの異変を無視する訳にもいかず、払い除ける際の表情をすぐに切り替え、真剣な眼差しでスライムを指差した。
「吸い付いて……ってあいつ何やってんの!?」
コーチネルに言われて改めてスライムを凝視するレフィであるが、確かに傍らで倒れている先程叩きのめした男に纏わり付いているスライムの様子が確認出来、何を始めようとしているのか疑問になる。
「それは知らないけど……でもなんか始まるのは確かよ」
スライムの生態はよく分からない為か、コーチネルでもその質問に答える事は出来なかったが、意味も無く男に吸い付いているという訳では無いのは確実だ。
最初は先端を伸ばしながら男の肉体に接触させていた程度だったのに、今は身体そのものを男の周囲に送り付けているようにすら見えていた。もう男は数秒もしない内に全身をスライムの身体に包み込まれてしまう。
「まあ考えてみたらどうせあの男の事取り込んで人型にでもなるんじゃない? スライムみたいな奴って大抵そういう事するじゃん?」
レフィは今目の前にいるスライムがこれからどうなるかは分からないにしても、スライムという存在自体は別の個体で見た事や実際に戦った事があったのだろうか。過去の経験が脳裏に過った可能性のあるレフィは男を吸収したスライムがこの後どうなるのかを想像してみせた。
自分のイメージをコーチネルに押し付けるかのように返事を促す。
「そう? でもそうだったとして、まともに相手出来る自信ってある?」
コーチネルとしてはスライムだから人型に化けて襲い掛かるという固定された概念を持ち合わせていなかった様子だが、既に武器の剣を片手に構えており、確実に自分達に向かって来るであろう相手に対処するだけの覚悟がここにあるのかどうかをレフィを横目で見ながら聞く。
「あるとしか言いようが無いよね? 無いって言ったってあいつは見逃してくれないよ?」
レフィは半ば強制されていると言っても良いであろう肯定の気持ちを、顔の高さまで持ち上げた右手の上で風を小さく発生させながら伝えた。
逆に否定をしたとしても敵対しているスライムはそれで引き下がる事もしないはずであるし、相手の願い通りに動いてもくれないはずだ。
「覚悟決めてるって事ね? あたしも同じよ。逃げたって絶対追いかけて来るだろうしね」
コーチネルもここからはもう逃げられないという事を理解しており、剣を握っている手の力を更に強める。技術的な意味合いでの武器である剣術も、ここではフルに活用しなければ生き延びられない事もきっと理解している。
「でもあいつホントに何するつもりなんだろ? 男の事吸い続けてるけど、あいつからなんか得られるの?」
レフィは男を吸収するスライムの気持ちを掴み取る気になれなかったらしい。能力とかを吸収しようとしていたのかもしれないが、あの男から奪うものが果たして存在するのかどうかが疑問になっていたのかもしれない。
「さあね。でもあんたがさっき言ってた人の形になるって言ってたのって、なんか的中しそうよ?」
スライムは男に自分の液体状とも言える特殊な性質の身体を接触させながら、頭頂部を伸ばし始めている様子をコーチネルによって目視される。
そしてやはりそれが人型への変形に関係するのだとコーチネルに読まれていた。
――スライムの天辺が見慣れた形に盛り上がっていき……――
「やっぱり人間に化ける気なんだぁ。まあ何が来たってただぶちのめすだけだけどねわたしは」
レフィは変形を完了させた後に本当の戦いが始まる事を意識していたからか、完了を待ちながらいつでも戦闘に入れるように
「でも足元はスライムのままみたいよ? 上半身だけ借りてるみたいね」
人間のような形状に変化をさせている様子はコーチネルにも確認されたが、言葉の通り、下半身の部分だけはスライム特有のやや左右に広がったような球体の形状をしていた。言うなれば、スライムそのものの体型はそのままで、頭上に人間の上半身を作り上げたと表現すべきだろうか。
「下半身だけスライムとか元々モデルもブッサイクなのに身体もダサ過ぎじゃんあれ。ケンタウロスでもパクったのあれ?」
上半身は人間、下半身はスライムそのものというアンバランスにも見えるその組み合わせを見ながら、レフィは鼻で笑ってやった。半分だけ人間の身体を見せている他の魔獣を思い出したようだが、姿はそれを下手な真似をした上で作り上げたものにしか見えていなかった。
「ダサいのは認めるけど、もうふざけは終わりよ! あいつなんか投げてくる!」
人間の特徴を吸収したスライムの姿があまり評価に値しないというのはコーチネルも同意見だったようだ。しかし、スライムの人間の形状をした部分が明らかに投擲を思わせる動きを見せた為、それを見ている事は理解している上で、気持ちを引き締めさせる目的でやや声を荒げながらレフィに伝える。
――投げられたのは自らの身体であり――
直接ぶつけるつもりだったのか、人間の形状をしたスライムは手の上に塊を積もらせ、それをレフィを狙って投げつけた。それはスライム自身の身体の一部であったが、レフィに後方に跳び退かれた事が原因で直撃させる事は出来なかった。
「おっと! 言われなくても投げてくるのは分かってたっての」
自分の足元に落ちてきた塊を、まるで狙いの甘さを笑うかのような目で見つめながら言葉をコーチネルへと返す。落とされた塊は元々スライムという軟体の肉体から剥がされたものであったからか、地面に落ちると同時に溶けるように地面の上で潰れていた。
「さっきから何したいのかよく分かんないわね。襲ってくるならさっさと来いっての」
コーチネルも自分に向けて投げられていた訳では無かったが、多少の警戒が残っていた為、反射的に下がっていた。しかし、戦闘に入るのか入らないのか、積極的に近寄ってくる様子が無かった為、妙な形で苛々が募っていたらしい。
――だが、スライムも決してその場に居座る訳では無かったようであり……――
スライムらしい球体状の部分がまるで地面を這うように少女2人へと近寄ったと思うと、突然その場で4ヵ所から、身体が丁度良くバランスを取る事が出来る場所からまるで蜘蛛を思わせるような関節と太さと、そして先端が尖ったような形状の脚らしき部位を伸ばし始めたのだ。
人間の形状を作る時と同じく、スライム自身の身体を細長く伸ばす事で、それを4本の脚として機能させているようだ。
「何……? 今度は脚なんか生やし始めた……ってうわあぁ!!」
レフィは人間の胴体を生やした次は脚を伸ばしたスライムを見ながら、次々と形状を変化させる様子に面倒な所があるのかと卑しく意識を向けていたが、脚を生やしたのには理由があるという事がその場で明かされる事となる。
4本の脚をジタバタと動かしながら、身体を前進させたのだ。
――通り道にいた2人を撥ね飛ばそうとしたのか――
しかし、行動が分かりやすかったという理由もあったのかもしれない。
2人にはあっさりと左右に避けられてしまい、前進する行為が相手に致命傷以前に、掠り傷1つ付ける事が出来ていなかった。
「何やってんのこいつ? そんなのにぶつかるかっての」
コーチネルも目の前から真っ直ぐ突撃してくるだけの相手を避けられないはずが無く、特に複雑な技術を使うまでも無く反射的に横へ跳び退くようにして道から逸れる。攻撃の甘さをわざと口に出してやったが、ドタドタと走るその姿は何だか自分達に手痛い一撃を加える為だけだったとは思いにくくなっていたのかもしれない。
スライムの魔物は自分の突撃を回避した少女2人に背中を向けたまま、意味があるのかよく分からない叫び声のようなものを上げていた。それは恐らくは人間の形状をしている上半身から放たれているようで、両腕が空に向かって、まるで二の腕の筋肉をアピールでもするように持ち上げられていた。
「ぶっさいくな声だねホント。そりゃあんな醜男の事コピってたらそりゃ声も不細工になるか」
スライムからすると何か雄叫びの類だったのかもしれないが、レフィからすれば非常に聞き心地の悪いものであり、吸収した男のまるで異性を惚れさせる気が無いような汚らしい外見であれば汚い声になるのは当然かと、もう何度目か分からない鼻で笑う行為を見せてしまう。
しかし、スライムの方にもまた変化が訪れていた。
――人間の部分の背中から何かが生えようとしていたのだ――
肥えた肉体の背中から何かが伸びていたが、それは太った外見にあまり釣り合うとは言えないような天使のような形状の羽で、色は元々のスライムと同じ黄色一色であったが、後方が丸い凸凹を象っていた為、羽という解釈で間違いは無かったと思われる。
「また変な物生やす気? そんな準備しないと戦えないの? 早く皆の所行かないといけないんだからわたし達はさぁ!」
わざとらしく時間を使いながら徐々に形状変化を見せつけてくるスライムの魔物であったが、ふとこれから向かう先がある事を思い出したかのように、そして元々は嫌悪感しか浴びせていなかった盗賊団の男を吸収して今の人間の上半身を模した形状を作っていた為、忘れかけていた本来向けるべき本当の感情を向けた。
レフィは両手を胸の前で合わせるような形を作り、手と手の間に風のエネルギーを生成させる。
そして生成させたエネルギーをレフィの頭上へと移動させ、そしてエネルギーそのものから棒状の物体を生えさせる。それは1つの関節が存在したのか、1ヵ所だけ折れ曲がり、そして先端を見るとそれは人間の拳のような形を見せていた。
「邪魔し続けるなら痛い目見させるからね!」
レフィは風で作り上げた拳、サイズは巨大とまでは言わなくても、レフィの肩幅の3倍はあるであろうその拳をスライムの魔物にぶつけるべく、レフィ自身の右腕を後方へと引き、魔力で呼び出した風の拳と連動させる。
――風の拳がスライムを殴打する……――
しかし、スライムの魔物は人間の形状の部分だけを振り向かせ、そしてまるで悪巧みでも思いついたかのように口元をにやつかせた表情を見せたと思うと、レフィの身体に背後から何かが接触した。
「!?」
押さえ付けられたのは右腕で、そして風の拳はレフィの動きと連動していたからか、風の拳もスライムに一撃を与える前に曲げられたまま静止してしまう。
後ろから押さえられた為、誰にされたのか、背後とそして自分自身の右腕を振り向いて確認すると、いつの間にか背後には、自分と同じ程の身長と言うべきなのか、黄色の液体状の塊がそこに存在した。そして、自分の右腕を押さえ付けていたのは、その塊から細長く伸びた一部であった。
先程自分達に向けて投げられた一部が、そのまま大きくなってしまったのだろうか。今はもう小さな一部という話では済まされない大きさに肥大化していたのだ。
しかし、拘束された右腕を何とかしなければ再び鼻で笑う事は叶わない。
「ホンっト小細工好きな奴だねあんたって……。でもわたしにはこっちの手が残ってるからね!?」
レフィは強がるように言い返すが、右手をかなりの強い力で締め付けられていた為、決して肉体派では無いレフィの腕力だけでは引き離す事が出来なかった。だが、左腕はまだ拘束されておらず、左手の上で円形状の平たい風の物体を作り出す。
それをカッターのように飛ばす事で右腕を押さえ付けている伸びた一部を切断しようと計画したのだろう。だが、背後にいたスライムの分身とも言うべきか、レフィの片腕を押さえ付けていたそれは左腕も拘束すべく、塊の一部を伸ばし始めた。
それは素早くレフィの左の手首に接触し、そして手首周りを絡めてしまう。
「!! 意外と頭は……悪くなかったか……」
切断の為に残っていた左手を使おうとしたのに、そちらもスライムの先端によって束縛されてしまった為、レフィは相手にも知能がある事を把握するが、状況としては有利な側では無い為、表情としては強がっていたが、内心ではそうもいかなかっただろう。
――しかし、レフィは単独では無い――
「ちょっとレフィ! 何そいつ!? すぐ切り離してあげるから!」
元は欠片のような存在に過ぎなかったものが突然人間と同じサイズになった上で、そして仲間であるレフィを束縛していた為、コーチネルは腰の鞘にある短剣を取り出した。銀の装飾が施された剣であったが、刃が短かった為か、コーチネルは顔だけは肥大化したあの塊に向けたまま、茶色の瞳を下にやや睨むような形相で見つめながらその場で軽く振る。
剣自体の魔力を扱ったのか、元々は短かった刃が光と共に長くなる。準備を済ませた後は本来の目的を達成させる為に、その場から走り出す。
――狙うのは伸びた部分――
レフィの両腕を掴んでいる液状の伸びた部分を切り落としてしまえばレフィは自由になる。
その後で巨大化した塊を対処すれば良いと頭の中で整理させていたが、その場で停止させられる事になってしまう。止められたのは、思考では無く、身体そのものであった。
「うぁぐっ!!」
突然の出来事であったが、走っている最中のコーチネルの目の前に黄色の液体状の柱が突然伸び始めたのだ。瞬間的とも言える間に出現した為、止まる事も出来ず、身体と顔面を強打させてしまう。詰まるような悲鳴を漏らしてしまうコーチネルだが、目を強く閉じながら、そして顔面を左手で押さえながら痛みを堪えていると、突然両脚を持ち上げられ、上半身がそのまま地面に向かって落下する感覚によって、強引に再度目を開かされる。
――開いた視界には、無数の腕が生えた物体が見えたようだが……――
コーチネルは柱状に変形したスライムの塊から更に伸びた細長い形状のそれによって両脚を掬い上げられたのだ。両脚を一度のタイミングで持ち上げられれば、後は背中から地面に落とされるだけだ。
「い゛う゛ぅっ!!」
再び鈍い悲鳴を漏らしてしまうが、目を閉じていては相手が何をしてくるのかを確かめる事が出来ない。背中を地面に強打させられたが、痛みに耐えながら閉じていた瞳を無理矢理に開くが、自分と接触した柱状の物質から、気味悪く大量の腕が伸びていた事に気付く。
そして両脚は掴まれたままだが、脚を持ち上げられた事が原因で背中から転んでしまった事は何となく想像が出来たのかもしれない。
(何……これ? 気持ち悪い!!)
直接声には出せなかったコーチネルであるが、人間でも生物でも無いような形状の物体から人間の手としか思えないような物が伸びていたのであれば、生理的に受け入れにくくなるのは当然の事だ。
直接の声でも何かを言おうとしていたのかもしれないが、それよりも早く、無数の手がコーチネルに向かって伸び、そしてそれぞれが身体の至る所を掴み始めたのだ。
――剣で対抗しようとしたが……――
無数の手が伸びる速度の方が遥かに速く、剣で斬り付けるという反撃手段を取る事が出来ず、そして両腕はそれぞれの伸びた手によって押さえ付けられ、そして他の手はコーチネルの身体の背後へと回されており、そして無理矢理に立ち上がらせられた。
「何……する……気よ!?」
引っ張られる形で立ち上がらせられたコーチネルであるが、手足の自由は全て相手の無数の手によって封じられていた。腕や脚に力を入れてもまるで動かす事が出来ず、人力では振り解く事が無理だと悟った瞬間でもあったかもしれない。剣はもう手元に握られておらず、そして拾う事も叶わなかった。
自身の身体に接触している、柱状の物体から伸びた手があまりにも気持ち悪く、そして柱自体に何かしらの感情を見せる様子も無かったせいで、何を企んでいるかの模索も出来ない。
そして更に柱状の物体は行動を継続させ、続いてはコーチネルを持ち上げるなり、元々四肢や胴体の数ヵ所に伸ばしていた手の数を更に柱から出現させ、コーチネルを追い詰めようとする。
「うわぁ! この……変態!!」
最初はただ立たされた状態で押さえ付けられていた程度だったが、拘束する手の形状の部位が増えたせいで今度は仰向けのような倒れた体勢にさせられる。両腕は元々抵抗をさせない為なのか、左右に広げられ、そして脚も派手な開脚とまではいかなかったが、太腿と足首を掴まれており、閉じる事も出来ず、そして数本が閉じる事の出来ない場所へ侵入しようとしているのを目視している。
――レフィも相方の姿は見ていたのだが――
両腕を、伸びた部位によって締められ、そして引っ張られる事で自由を奪われていたレフィはコーチネルの艱難な様子を見て、これが終わりなのかと嫌な想像をしていた時だったのかもしれない。
そしてレフィも、丁度今、両腕だけでは無く、腹部もまるで縄でも廻されるかのように伸びた部位によって押さえ付けられ、とうとう肥大化した塊に密着させられてしまう。
「こいつ……! まさか……レイプでも……する気なの!?」
青い魔導服超しに伝わる生温さが気色悪かったのは確実だ。レフィは自分は肥大化した塊に引き寄せられているが、コーチネルの方は手の形状になった部位が本来触れてはならないであろう場所にも伸びていた事を確認していた為、ここで何を実行しようとしているのか思い浮かんでしまったのだろう。
レフィは自分を助けようとしてくれたコーチネルを放置する訳にもいかなかったが、自分自身も今はピンチだ。
だからと言って、ここで弱気になりながら好き放題やられるなんて、それはレフィのプライドが許さないと信じたいものだ。
――そして、レフィの顔の横から何かが突き出てきたようであり……――
「何よ? まあ……レイプとかそういうのは絶対させる気なんか無いけどさ?」
レフィの顔の左から突き出てきたのは、自身の顔とほぼ同じサイズの太さのそれで、それはレフィを無視するかのように一直線へ伸びた、と思うとそのまま引き返しながら先端をレフィの真正面へと近づけ、そして目の前で停止させた。
伸びた先端は何やら波打つような動きを見せていたが、それはやがて人間の顔に変わった。その顔は、丁度エルフ達が収容されていた小屋から出た際に剣を向けていた野盗の男のものだった。当然容姿自体はまるで点数を付けられるようなものでは無い粗悪且つ暴力的な風貌そのものであった。
「何? さっきの奴の顔……って臭っさ! 見た目だけじゃなくて口臭もコピーしやがってんのこいつ!?」
レフィの記憶には一応は自分を背後から斬ろうとしたであろうあの太った野盗の男の顔が残っていたようであるが、スライムの一部であるこの黄色の液状の物質の先端から浮かび上がった顔からも明らかに覚えのある悪臭が漂っていた為、随分と悪い意味で非常に完成度の高い模倣である事を思い知る。
身体は塊に張り付けられたような状態である為、その場から逃げ出す事が出来ず、少しでも臭気から離れる為に顔を横に逸らす。
――レフィの心情を無視するかのように、突然顔は喋り出す――
「ツヨキデイラレルノモイマダケダ……」
黄色の塊が無理矢理作り出した顔は、形と臭気だけでは無く、言葉まで放つ事が出来たようだ。口は当然のように動いており、そして音の高低差を捨てたような無機質な声がレフィの耳に届けられた。声色は当然、男の低さのそれであった。
「何が強気よ? スライムの分際でわたしらに勝てると思ってるの?」
レフィは男――の形を見せているスライムの先端部分――に向かって自分達の方が実力が上であると堂々と言い返す。まるでろくろ首のように伸びている顔面に対しても弱気な表情を決して作らないレフィであるが、両腕両脚、そして身体もほぼ塊に密着させられているせいで身動きが取れないというのに、有利な道を切り開く事なんて出来るのだろうか。
「オマエハイマハジユウガキカナイミダ……」
高低差が無い喋り方をする頭部であるせいで、非常に聞き取りにくいのかもしれないが、あくまでも難しいだけであり、理解が出来ないという訳では無いようだ。
レフィからの返答は勿論存在した。
「あんたは臭いし不細工な変装しか出来ないし、しかも頭まで悪いとかメッチャウケんだけどね! わたしは手が無くても自由なんだからね!」
スライムの方はどうやら自分の身体を拘束したからそれで一切の攻撃を封印出来たものだと考えていたらしい。
それとは対照的に、レフィは両腕を束縛されていたとしてもそれが自分の自由を奪う理由にはならないと威張るように声を張り上げる。
――何やらスライムの伸びた頭部の横がざわつき始める――
砂埃が立ち上がり、まるで小規模な竜巻でもそこに存在しているかのように風が激しく音を立てていた。
「ン? キサマナニヲシタ?」
竜巻そのものは派手な砂埃の存在で場所の特定が出来ていた為、頭部に変化していたスライムの先端はその方向に顔を向けるなり、再び無機質な声をレフィへ浴びせる。それはある種の質問である。
「知りたい? 考えても自分で答え出せない? じゃあ教えてもいいよ?」
魔女の象徴でもある青い三角帽子の下でまるで魔女の本気でも見せるかのような態度をわざと見せつけた。魔女の本気を知らないのであろうスライムの一部に対し、何も知らない相手に自分の力を披露してやろうと決定する。分からないのであれば直接見せるまでだ。
――石の塊がスライムの一部を横殴りにする――
石は外に散らばっている物を風に乗せる形で拝借したのだろう。それらを無数に合わせた風を頭部の形状にしたスライムの先端目掛けて横から浴びせ、頭部の部分を激しく歪ませていく。
「ソレデカッタツモリカ」
普通の人間が石の雨を浴びれば普通に立っている事は不可能に近いはずだが、スライムの頭部を模した部位は顔の形状が石の衝撃で荒れ始めていたのにも関わらず、口調は単調そのもので、苦痛を感じさせるような色は見せていなかった。
痛覚の受け方が他の人間とはやはり異なるのだろうか。
「そうよ? 勝ったつもりよ。まあ最終的に勝つのはこっちだからつもりなんて表現も無くなるけどね?」
石の横殴りで頭部が歪んでいた対象に対し、レフィはまるで念じるかのように、勝利宣言をした後に表情も口も静かになる。
静かにしていたのは、それは一点に力を集中させる為であったようであり、澄んだ青の瞳が光り出していたのだ。
――スライムの頭部の目の前で、火花が弾けた――
それはこれからの予兆とでも言うべき一発であったと言うべきか。
「これでも受けてみな!」
次の火花は音だけでは無く、スライムの頭部を更に激しく滅茶苦茶にさせるだけの威力を炸裂させたのだ。
――スライムの頭部が派手に砕け散る――
両腕の自由を奪われていても、視界さえ確保出来ていれば魔力を発動させる事が出来るようであり、目で魔力の集中箇所を作り上げていたようだ。
充分に魔力を集中させてから、手足を一切動かす事が出来ない状況でレフィはそれを火花として派手に爆発させる。
頭部の形状をしていたスライムの先端は特に何か声や悲鳴を発する事も無く、頭部があった箇所が欠損したのにも関わらず、大きく仰け反るような事もせず、ただ静止させているだけだった。
「あぁら? だんまり決めちゃう? 序にこっちも引き剥がしてやるからね?」
火花の威力に怯んだのか、それとも純粋に人間の頭部の形状を作っていなければ声そのものを出す事が出来なかったのか、どちらにしてもスライムの方からの返事が一切聞かされなかった為、レフィは自分の魔力が勝利したものだと勝ち誇ったような笑みを浮かべながら、次は背後で自分を張り付かせる形で束縛しているスライムの塊に対して魔力を込める。
レフィを押さえ付けていたスライムの塊は何やら内側で何かが暴れているかのように外に向かって突き出すような動きを見せていた。
直接真後ろを向く事が出来ないレフィであったが、視線だけは真後ろを意識しているかのように限界まで右に向けられていた。
――今度は足元に魔力を集中させており……――
言葉を一切発さなくなったスライムの塊に再び風の魔力を浴びせようとしていたのだろうか。
しかし、放たれた場所は、レフィを拘束している塊というよりは、塊とレフィの隙間であった。隙間を狙った理由としては、スライムに背中から密着させられている自身の身体を引き剥がす為であり、真下から激しく吹かれる強風はレフィ自身には一切の傷も衝撃も与える事をせず、逆にスライムの塊に対しては徐々に斬り付けるような形で傷を付け、そしてレフィを塊から押し出すような形で引き剥がさせた。
塊から離れたレフィは振り向きながら、次の一撃の準備を始める。放置という真似はしないのである。
「さてと……わたしの身体ベタベタ触った罰は、分かってるよね?」
無言と化したスライムの塊、それは先程までレフィの手足に絡み付き、そして身体も密着させ続けていたが、今は自由と化したレフィから敵意しか感じられない視線を向けられ続けている。
再び魔力を使っているのか、青い瞳が再び光り出していた。再度レフィを束縛しようとしていたのか、触手のように数本を伸ばそうとしていた塊であったが、突然内側から何かが暴れるかのように体面が波打ち始める。
――それはレフィの行為によるものだ――
スライムの塊の内部で風の力を凝縮させ、それをいつでも自分の気分で爆発させる事が出来る状態にまで持ち込んでいく。
性別がはっきりとしないスライムの行為とは言え、レフィの女子という性別が確定されている身体を触っていたのは事実である。魔導服の上からであったとしても、それを見逃す訳にはいかず、ある種の法度に該当する行為に触れた相手に自分が何を行なったのかを自覚させようとし、時が来た時に発動をさせようとしていたのだろうか。
「どうせ言っても分かんないか……。はいお仕置きね!」
レフィは頭部を再び生成しようとしないスライムの塊を眺めて、さっさと事を始めてしまおうと考えたに違いない。
右手の手首を捩じるようにわざとらしく捻りながら力強く顔の前で握り締める。そして集中させていた魔力を放出させる。
――内側から塊を破裂させてしまう――
少々暴力的にも見える内側から破裂させる魔法を解き放ったレフィに飛んでくるのはスライムの雫とも欠片とも言える残骸であったが、レフィにそれが付着するのを防ぐ為に、即席で作ったであろう風のバリアが残骸を止めていた。
――その一方で、コーチネルも決して不利を持続させていた訳では無く……――
コーチネルは周囲に手の形状を形作っていたスライムの残骸を散らかしながら、まるで高所から降りるかのように綺麗に着地を決めていた。
それらの手は先程までは自分を掴んだ上で更には地面から浮かせていた猥雑な雰囲気まで見せつけていたが、今は全てが綺麗に、そして残酷に斬り刻まれていた。
特に呼吸は乱れている訳では無く、自分の身体を直接触っていた手達を斬り刻んでいたであろう剣がコーチネルの右手に宙を浮きながら戻ってくる。
自身の意思で刃長を変える事が出来るこの剣は、どうやら魔力によって宙に浮かせる事も出来るようであり、そして役目を終えたのであろう剣はまるで磁石同士が接触するかのようにコーチネルの手元へと戻ってきていたのだ。
「変態なのはムカつくけど、弱かったら逆に助かるかもね? さてと……」
人間のような複雑な意思を持っているのかどうかは分からないにしても、触ってきたのは事実だ。何を目的としていたのかは直接は聞いていないにしても、手を出されただけで大体の想像は付いていたようだ。
今は自分に纏わり付いていた手達を、愛用の剣を魔力で空中を浮遊させる形で操り、全て斬り放す事に成功させた為、今は自由の身だ。
胸部を保護する黒のプロテクターの上からとは言え、纏わり付かれた事は気持ち悪い意外の何物でも無かったし、そして灰色のスカートの中にも伸びていたとしか思えない物もあったような感覚が残っていた為、愛用の剣で斬り刻むぐらいの仕返しをしても罪は無いはずだ。
だが、自分の身が自由になったのだから、本当は自分の事を助けようとしてくれた友人の元へと駆ける必要があった。
「レフィ! そっちは大丈夫だった!? あたしは平気だったけど」
コーチネルの目に映っていたのは、丁度スライムの塊だったであろう物体を爆発させ、そして満足気な表情を浮かべるレフィの姿であった。後ろ姿であっても、手を自慢げに握っている様子を見れば、誇らしげな表情を浮かべているのを安易に想像が出来るはずだ。
「あれ? コーチネル自分で解決しちゃったの? まあそうしてもらわないと困ると思ってたとこなんだけどね」
背後からまず聴き間違える事が無いであろう少女の声を受け取ったレフィは普通に振り向きながら、自分の身を自分で守る事が出来ていた事を確認する。
「あんな奴に追い詰められて溜まるかっての! とりあえず、そろそろあの本体の方も黙らせた方がいよね? 邪魔ばっか入ってたけどね」
コーチネルは風格を感じさせるような歩き方を見せながら、そして背後に散っているスライムの残骸を一瞥する。しかし、斬り刻んだのは本体からすれば分身とも、ただの囮でしか無い。実質的に本体へのダメージは無いに等しいだろう。
一瞥は余計なものを分身として生み出した無意味な行為に対する蔑視のようなものだったのだろうか。
「あいつも戦う気満々みたいだよ? こっち見てなんかどうやって甚振ってやろうかなとか考えてそうな手の動かし方してるし」
レフィはコーチネルと一緒にスライムの本体の方へと意識も視線も向け直した。
特に変わった行動に入り始めていた訳でも無く、自分達が束縛されている間はずっとその場で立ち尽くしていたようである。だが、少女2人を見つめながら、怪しい手の動きを見せていた。
「あいつの事始末しないと皆にも会えないだろうから、じゃ、ちゃっちゃとやっちゃう?」
これから何をしてくるのかはあまり想像もしたくなかったのかもしれない。コーチネルは先程の束縛の時にされた事を思い出すと、このまま放置すると他の者達にもあのような被害が入ると嫌な想像を勝手にしてしまう。それを阻止する為にも、そろそろここで決着の為に戦う必要があったはずだ。
剣を改めて構え直しながら、人間の上半身と妙な羽を生やしたスライム本体を真っ直ぐと凝視する。
「言われなくてもするつもりだけどね? たかがスライム程度に負けてたら大恥の超恥になっちゃうし」
元から決着を付けるつもりは満々だったとレフィははっきりと言い返す。大した実力が無いものとしての認識が強いスライムに敗北する姿を思い浮かべたくは無かった事だろう。
造語のようなものを言いながら、両腕を地面に向かって、外側に伸ばす事で全身に風の力を纏わり付かせる。魔導服が風によって激しく靡くが、隣にいるコーチネルには一切影響が出ていない為、風は完全にレフィにのみ共鳴していると言えるのかもしれない。
――スライムの本体も、少女2人の威勢を受け取ったのだろうか――
虫の脚のような4本の器官を巧みに動かしながら、スライム本体を歩かせ、少女2人に近づこうとする。
スライムの上に人間の上半身が乗ったような形状を維持させており、人間の形状をした頭部は確実に少女2人を見下ろしている。
一切引き下がる様子を見せない少女2人に徐々に近寄るスライムの魔物。
数歩歩いている最中だった。スライムの頭部、人間の形状のそれが破裂したのであった。
――頭部に、何者かの銃弾が命中したのだ――
今回はスライムとの戦闘がメインになったかと思います。スライムってRPGとかだと序盤のザコ敵として起用されてる事が多いですが、実際だと消化液とか、軟体な身体を利用しての強敵になる事も多いみたいです。小説とかだと身体を伸ばして相手の動きを封じたり、分裂して数で襲い掛かってきたりとか、身体の形が固定されてないからこそ出来るような戦法も取れてしまうんでしょうね。一部のスライムは少女相手に凌辱する事もあるみたいですが、両者とも強い少女なのでそういうシーンはありえない気がしますが。




