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黒衣を纏いし紫髪の天使  作者: 閻婆
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第27節 《救世主となりかけた風使い 迫り来るは感情を持たぬ液体生命体》 2/5

今回から本格的に風の魔法使いことレフィの登場になります。少女の魔法使いのお約束は外見的にはそれなりに守ってるつもりではありますが、性格の方は……。ともあれ、仲間であって友達でもあると思われるコーチネルを救ってくれたのは事実ですので、2人のやり取りを見てやってください。










              銀髪の少女のコーチネルを触り続けていた、下卑た汚らしい男


              行為は永遠に終わらないものだと覚悟されていたのだろうか


              しかし、男の姿は偽りのそれであり、当時敵対していたエルフ達を惑わす為の変身だったのだ


              もうエルフ達は意識を失っており、事実上邪魔な相手はそこにいない


              外見だけ男の姿をしていた者は、ようやく本当の姿を魔力を使い、明かす事にしたのだ






「え? うそっ……? レフィ……え? あんた、だったの?」


 壁に拘束されている銀髪のコーチネルは、今までは浮浪者のような服装をした中年の男に化けていた金髪の少女を目視するなり、それが自分の知人である事に気付く。ここに来る事は予め説明等もされていなかったからか、思いがけない遭遇に少しの間だけ、拘束による肉体の疲労すらも忘れてしまっていたかもしれない。


「そうよ。わたしよ、あの超ぶっさいくでキモい顔したオヤジに化けて侵入したのよ。こんな可愛い格好じゃすぐ怪しい奴が侵入したって大騒ぎになるでしょ?」


 青の魔導服に身を包んでいるレフィと呼ばれた金髪の少女は、自分が変装の時に利用していた外見を思い出すなり、まるで気分でも悪くなったような表情を作りながらここに来た経緯をやや大雑把に話す。


 そして自分の容姿を自分で評価する為なのか、肩程の長さの髪を右手で抓みながら、この姿では目立っていただろうと説明をする。




「自分の自慢とかどうでもいいから、早くこれ外してよ。もう疲れてきた……」


 勿論コーチネルからすればレフィの自慢話なんてどうでも良いものであり、そして外見を褒めてやろうとも思っていないはずだ。やはり今問題にしているのは、自分の手足総計4ヵ所、束縛している魔力の(かすがい)の存在だ。純粋に力任せでは外す事が出来ない為、他者の魔力が必要になるのだろう。


「そっかぁコーチネルじゃ自力でそれ解除出来ないのか。ま、わたしならそんなもん息するのと同じぐらい簡単に出来ちゃうから安心しなさい」


 レフィはコーチネルの手首と足首に外見上は金属質にも見える(かすがい)のような物体が張り付いている事を確認し、普通の人間であればそこから逃げる事が出来ないのは百も承知であった為、自身が持つ魔力でそれを消滅させてやろうと意気込んでいたはずである。


 レフィからすれば、拘束を解除する行為は赤子の手を捻るようなものなのだろうか。




「自慢と嫌み言うなっつの……」


 コーチネルはレフィとどれ程の親密度を保っているのだろうか、表情こそは露骨に怒りを見せていた訳では無かったが、茶色の瞳がまるで好きでも無い相手を見ているかのような雰囲気を出しており、それでもレフィの人間性を理解しているからこその態度としても読み取る事が出来る可能性もある。


「まあすぐ自由にしてあげ……ってなんでさっきからわたしの事怖い目で見続けてるの?」


 魔力を出す準備なのか、レフィは両手を握ったり開いたりを繰り返しながらまずは足元の拘束を解除する為にコーチネルの足元に左の片膝を付くが、少しコーチネルと目を合わせた時に、明らかに何か自分が悪さでもしたかのような視線を向けている事に気付き、手を止めてしまう。




「わざわざ聞く必要ってある? ずっと捕まってんだからそりゃ苛々するでしょ?」


 言われなくても悟って欲しいと思っていたのかもしれない。しかし、コーチネルの声色は元々のそれよりもトーンが落ちており、今にも誰かに怒りをぶつけてやろうとしているようにも感じられただろう。本当に拘束され続けた事による怒りだけだったのだろうか。


「いや……明らかそっち以外の理由が含まれてるとしか思えないけど? わたしの事襲いそうな目してるし……」


 コーチネルの睨みつけるような視線がどうしてもレフィにとっては殺意までもが紛れ込んでいるとしか考えられず、拘束を解いた瞬間に何が起こるのかが容易に想像が出来てしまっていたらしい。


 思い当たる節があるのか、拘束を解く事が怖くなってしまったのだ。




「あぁ理由は、分かってんだぁ?」


 コーチネルは元々拘束が続いていた事による身体の疲れから滲み出ていた苛立ちと、そしてある種の作戦だったのかもしれないとは言え、自分の恥ずかしい部分をただ凝視されただけでは無く、実際に触られていたのだ。何かしらの形でやり返したいと今、心で意識しているのだろう。


 怒りを内側に隠しているような目付きはそれを意味しているのだろうか。


「いや……あ、あれはさぁあくまでもあいつらエルフどもを油断させる為っていうそういう作戦だったんだよ? 別にあんたにホントに興奮してたって訳じゃないからね? 演技だよ演技!」


 これから拘束を解除する為にコーチネルに近寄っていたレフィであったが、浮浪者の男に変装していた時にコーチネルに行なっていた行為は全てが演技としてのそれであったと説明はするが、どうしてもコーチネルの表情が恐ろしかった為、数歩距離を取ってしまっていた。




「あのさあさっさとこれ外して」


 レフィの言い分をどのように受け取ったのかをコーチネルは明確に返事という形で伝えるという事を一切せず、ただ自分を束縛している魔力で作られた(かすがい)を取り除くように、淡々と伝えてくる。それは懇願のような心で頭を下げているような言い方では無かった。


「それはいいんだけど、じゃ、じゃあ外したとしてもわたしの事、その……仕返しとか無し、だよ? いい?」


 束縛を除去、鎹そのものを消滅させる事ぐらいはレフィの力であればいつでも出来る事ではあるが、その後がどうしても恐ろしいらしく、やはり確かめなければ解除の魔法を放つ事は出来ないようだ。


 相手が自由になった瞬間に殴られでもしたらそれは恐ろしい話となる。助けたのに痛い思いをするなんて、レフィ以外の者でも求めたくない話だろう。




「分かったからさっさと外してって」


 感情を薄めたようなトーンを落とした声でコーチネルは了解と要求をレフィへと渡す。とりあえず拘束を解除したからと言ってレフィに仕返しをするつもりは無いようだが、それが伝わるかどうか。目付きはあまり穏やかとは言えない。


「じゃ、じゃあ……やるね」


 レフィは両手に赤みを帯びた光を発生させ、そして一瞬コーチネルの足元にしゃがみ込もうとしたらしいが、すぐに膝を伸ばした。


 足元にしゃがみ込めばまた変な事を考えていると疑われる危険があったからなのか、コーチネルと向かい合う形で両手を力強く開くと同時に、鎹に魔力を注ぎ込む。


 僅かな時間、鎹が赤く光り始めるが、同時に砂のように細かく砕け散り、まるで壁から引き剥がされるようにコーチネルは前に出るが、レフィに接触する前に踏み(とど)まった。




「おっと! いきなり抱き付くとかそれはしないでよ!? 恥ずかしいから!」


 コーチネルはただ壁に張り付いていた身体が突然自由になった影響で身体が前に突き出ただけだったのに、レフィはそれを見てまるで救助に来てくれた自分にそのまま抱き付いて今までの不安をぶちまけるのかと悟ったらしい。しかし、レフィは抱き着かれる事にはそれなりに抵抗を抱いていた様子である。


「誰があんたみたいな変態女に抱き付くかっつの! バランス崩しそうになっただけだって」


 コーチネルの言葉の通りだったようで、そして身体を受け止めさせるつもりも無かったようであり、何とかして自力で踏み止まらせていたようだ。下手に接触するとよく分からない因縁を付けられると思っていた為、レフィの思い通りにはさせないつもりでいたようだ。




「そういえば、コーチネルも昔敵のフリして助けた事があったって言ってなかったっけ?」


 唐突にレフィは少しにやけながら、恐らくはコーチネルから聞かされた昔話だったのだろうそれをこの場で思い出させようとする。


 もしかすると、レフィも過去のそれを参考にした上で今回の救助に入ったのかもしれない。


「何よ? ……あぁ、なんか昔そんな事あった気がするけど、あんたもそれを真似してここに来たって訳?」


 コーチネルもなんだか思い当たる部分があったのか、声を詰まらせていた。確か年下の少女を連行するフリをして集団の中から安全な場所へと連れ出した事があったと、頭の中を(よぎ)らせていたのかもしれない。


 自分がやった方法で救助されるとは想定していなかったのだろうか。




「まっ、そうだと思ってもらってもいいかもね。でもコーチネルも今回結構危なかったんじゃない?」


 レフィにとっては過去のコーチネルのやり方を参考にしたと思われても思われなくてもどちらでも良かったのかもしれない。


 しかし、やはり今回捕らわれたという事実は残っている為、もし自分がここに現れなければ、どのような結末を辿っていたのか、少しはコーチネルにも自覚をしてほしかったという気持ちもあったらしい。


「こんなとこで反省会なんてさせようとしないでよ。でもなんでこいつらあの男達と仲間になってたか、もしかして知ってたりするの?」


 コーチネルもあまり自分が捕まっていたという部分に強く執着されていては、気分も良くないはずである。恥にも価するような話であり、本当はそれに対してはあまり深く意識もしたくないのだが、まるでそれを誤魔化すかのように、エルフとこの空間を仕切っている男達がどのような経緯で繋がりを結んだのかをレフィに聞く。




「なんかなんでもかんでもわたしに期待寄せてるみたいだけど、実は意外とそれ、知ってたりするんだよねわ・た・し・は・ね♪」


 レフィは背後に転がっている、気を失ったエルフ達に身体も視線も向けながら、そしてエルフ達を眺めながら彼女達が男達と仲間になってしまっていたのかを知っている事を伝えたが、1文字1文字をわざと区切るように発音する時に再びコーチネルの側へ向き直す。


「あたしの事助けたからって何妙にテンション上がってんのよ……。でもなんで仲間になっちゃってたの?」


 声色の方でわざとトーンを変えて可愛らしさを強調していた為、コーチネルからは自分を救助した事で気分が乗っているのかと思われたようだ。


 レフィのテンションに付き合うつもりは無かったコーチネルであるが、エルフ達が男達の仲間になった理由はまだ聞かされていない。レフィと一緒にとでも言うべきか、隣に進んだ上で倒れているエルフ達を見下ろす。




「簡単に言うとさ、洗脳ってやつだね。いや、洗脳かどうかはちょっと微妙だけど薬でやられちゃってるのよこの子達」


 レフィは自分の頭を指で突きながら、頭の中を男達の思い通りの形に変えられてしまった事を説明する。レフィの思考では薬物によって相手を自分の思い通りに動かす事を洗脳と呼ぶべきかどうか迷っていたようだが、薬物がエルフ達を侵したのは間違い無い。


「いや、薬でも洗脳って言うと思うけど、じゃあもうこのエルフ達、もう駄目なの?」


 コーチネルの見解では薬物を使ったとしてもそれは洗脳に該当するようである。そして、エルフ達は既に薬物でやられてしまっているのは事実である為、助かる見込みが無いのかをレフィに聞く。あまり期待はしていないと思われるが、折角なのだから聞いた方が良いのかもしれない。




「駄目って言うか……細かく言うと助かる方法が用意されてないって言った方がいいかな。この子達は諦めた方がいいかもね、今は」


 レフィは答えを把握しているのだろうか。倒れているエルフの足元に向かいながら、事情を細かく説明でもするかのように返答をする。気持ちがあった所でもう洗脳をされてしまったこのエルフ達を元の正常な精神に戻す事は不可能なようであり、手段が無い以上はお手上げであるらしい。


 しゃがみ込みながら、辛うじてエルフの腰を隠していた襤褸(ぼろ)の布を持ち上げ、レフィは何も着用していないその部分を特に怪しい表情を浮かべる訳でも無かったが、凝視し始める。


「結構色々調べてたんだぁレフィって。ってかあんたどこ見てんのよ!?」


 助からない理由も、恐らくは短い時間しか無かったと思われるが、その中で調査していたレフィに関心を感じたコーチネルであったが、今レフィのやっている事は、もしこれが男性であれば法の裁きを受ける事が確定するような行為であり、そして見られているエルフは下着を着用していなかった為、尚更コーチネルの声を荒げさせる要因となっていた。




「別に興奮しようと思ってる訳じゃないっつの。だけどコーチネルも男どもに捕まったらどうなるかぐらいは想像出来るようになってよね」


 レフィの見ている場所はエルフである事を考慮しても、人間の身体と殆ど変わりが無い下半身の部位であるせいでとても普通の行為とは思われないはずだが、レフィはそれを見ながら自分達女性が荒れた男達に捕らえられた時にどのような末路を辿るのかを想像してみたようだ。


 その際に確実にされてしまう事を、恐らくはコーチネルもある程度は把握しているがそれを事実として認めたくないとでも思っている可能性があるからこそ、敢えて説明してやろうと考えた可能性もある。


「いや、捕まえてきたの男じゃなくてエルフなんだけどね。それで、想像って何よ?」


 コーチネルに襲い掛かり、そして拘束を企んだのは性別は同じであるエルフの集団だ。軽い訂正をレフィに言い渡した後で、捕らわれた時にされる事とは何なのかを問う。




「いや、分かるでしょ? 男集団がコーチネルみたいな若くて可愛くて近寄ったらなんかいい匂いでもしそうな女の子1人捕まえたら何するか、分かんない?」


 レフィとしては直感で気付いて欲しかった事だったのかもしれない。しかし、自分からは答えを出したくなかったのか、レフィからの説明を当てにしていたのか、どちらにしてもコーチネルの方から答えが出なかった事に対してやや呆れたような態度で本当に分からないのかを聞く。


 コーチネルの外見は男性基準で見れば充分褒められるレベルであるとレフィは話し、そして法も倫理も一切通じない無法者達がそれだけのレベルの少女を捕まえた時にどうなるのかをイメージ出来ないのかと改めて問う。


 レフィの手はエルフの襤褸の布を持ち上げたままだったが、顔はコーチネルの方向に向けられている。


「それ褒めてんのか遠回しに嫌み言ってるのかどっちよ?」


 どうしてもレフィの言い方だとコーチネルは素直に喜ぼうとは思えなかったらしい。レフィの評価基準は期待出来るものでは無い為、からかっているものとして伝わっていた事だろう。怒鳴る前兆という程では無いと思われるが、声色は不機嫌そのものだ。




「まあまあキューティな女の子同士なんだからそれぐらいいいじゃん別に」


 レフィはもうエルフの妙な部分を見続ける事に飽きたのか、それとも気が済んだのか、襤褸の布を叩きつけるように放しながらその場で立ち上がる。重量も質量も皆無に等しい薄い布切れは空気抵抗を受けながらゆっくりとエルフの腰に降りていた。


 女同士であるからこそ、外見に関する過剰な誉め言葉も許されるものだと主張しながらレフィは、わざとらしく青い瞳でウィンクを飛ばす。


「あんたまだ自分の事そんな風に思ってんだぁ? まあ勝手にすれば」


 もうコーチネルもレフィの誉め言葉に細かく反応する事を面倒に感じ始めていたようで、好き勝手に言わせてやる事にしたようだ。喋りながら一緒に溜息を漏らしていた。




「はいはいそうするよ。だけどね、男どもに襲われてある事されたら女の子だったらもう一巻の終わりになるっての、忘れないでよね?」


 レフィは自分の事を褒める行為を日常的に行なっているのだろうか、相手から言われた通りにこれからも生きると言い返した後、僅かに笑みを見せていた表情からそれを完全に引き抜いたような真剣な表情を作った。


「……終わり、って、あんたの事だから身体狙われたら終わりだって言いたいの?」


 終わりという言葉の意味は一瞬戸惑ったが、コーチネルは何となくレフィの考えている事を悟り、異性としての価値が保証されている自分の肉体に手を出される事を意味するのかと確認する。確かに直接命を奪われなかったとしても、性的な行為を実行でもされてしまえば女性からしたら社会的に死んだものとして捉えたくもなるはずだ。




「まっ、そうだね。正解(せ~か~い)♪ わたしの説明としてはそうだね、縛られて、それであんたのその顔でパンツ脱がされたらもうホントに人生終了になっちゃうって言いたかったのよ」


 まるで無事に試験に合格でもした相手を褒めるかのように妙なテンションでレフィは相手を褒め称えるが、説明の内容は現実そのものを現わしていたと言えるかもしれない。


 装備と言うべきか、服装とでも訂正した方が良いのか、どちらにしても拘束された少女であればまず抵抗も出来ずに相手の思うがままにされてしまう致命的な弱点をレフィは周囲に男がいないからこそ、伝えたのである。言葉の通りに脱がされてしまえば、恐らく被害者の方は精神を正常のままで保っていられなくなるだろう。


「……ま、まあ確かにそれは正論だと思うけど……まさかエルフのそこ見てあたしの事妄想とかしてない……だろうね?」


 ピンポイントな部位を指摘されたコーチネルであったが、ここでは今までのように反発的な態度を取る事はせず、実際にやられてしまったら対処が出来るのかどうかを想像してみたが、恐らくは方法が思いつかなかったのだろう。


 そして、レフィは再びエルフの足元にしゃがみ込み、布切れを持ち上げていた為、エルフの部位を見ながら自分と同じ場所の事を何か思い浮かべていないかを疑っていた。女同士とは言え、あまりデリケートな部分を狙われたくは無いはずである。




「コーチネルさあ、まさかこの性格おかしくなったエルフ達と同じぐらい汚いって伝えたいの? わたしはただこのエルフ達も勿体無い末路辿っちゃったんだなぁって思ってただけだからね?」


 レフィは人間と異なる種族の秘密の部分を確かに目視はしていたものの、それを価値のある世界だと認める事をしなかったようだ。寧ろ汚れているからこそ、それがこの無理矢理連れられた空間の劣悪さをより一層噛み締める事になっていたのかもしれない。この場に連れられてさえいなければ、本来のエルフらしい美しさをとことん表の世界でアピール出来ていたのかもしれないのに。


 しかし、今は性格も肉体も両方が(けが)れてしまっており、レフィでさえもエルフを興奮の対象として扱う事が出来ないのだ。


「あんたがそんなとこ見てたら普通に変態欲求発散させてるだけにしか見えないんだけどね? それより、さっき外で侵入者がってあの連中達皆出てってたから、あたし達も向かった方がいいと思うんだよね。あんたその辺の話って把握してる?」


 もうコーチネルからすると、レフィはやや変わった性欲を持った人間の少女という認識でしか無い事に加えて、出来ればもう少しまともな場所で他の少女達を愛でて欲しいと願っていたのかもしれないが、元々この建物の中にいた男達が外に飛び出した理由をコーチネルは忘れていなかった。




「してない訳無いでしょ? そのコーチネルの言う連中って多分コーチネルの仲間の事だと思うし、そしてわたしはまずは大事な友達の救助を優先にしないとって思って、真っ先にコーチネルのとこに飛んできたのよ。今頃は仲間達、あの変態集団相手に戦ってるんだろうけどさ」


 レフィも外の騒ぎの事情は記憶しており、汚らしい男に化けてコーチネルの身体を触ったり、エルフ達を叩きのめしたりしていたからと言ってそれを忘れてしまったりする事は無かったようだ。


 そして既に騒ぎを起こした張本人達がコーチネルにとっての敵に該当する者達では無いという事も何となくではあるが察知しており、寧ろこの空間を徘徊していた男達の気を反らしてくれた事に感謝すらしていたはずだ。男達がいなくなってくれれば、大切な相手の救助も楽になるというものである。


「あぁ……あたしの事そこまで、ホントはちゃんと心配はしてくれてたって訳、なのね」


 男集団と戦う事よりも、自分の救助を優先にしていたという言葉がコーチネルにとっては重たい何かを感じたのか、ただ同性である女性の身体を見てニタニタするだけの変わり者の少女という訳では無いと改めて実感したのかもしれない。助けられたのは事実である為、それを責める理由はどこにも存在しない。




「当たり前でしょ? わたしだって大事な友達が変な奴らに乱暴受けてるとこなんて見たくも無いし想像だってしたくないからね」


 それが当然である事を伝えなければ気が済まなかったレフィであった。しかしそれだけでは友達だからなのか、それとも純粋に自分と同じ性別の人間が欲求を剥き出しにした者達に襲われている現場を目撃したくなかったからなのかの判断は出来なかったかもしれない。


 しかし、レフィとしてはどちらも今回助けた理由に該当していたようである。


「あたしも同じよ。ってかあたし被害受ける側だったからそんなもん()で当たり前だけど、でも助かったのはホントだからありがとねレフィ」


 コーチネルは被害を受ける側である為、実際に受けたいだなんて思うはずが無いだろう。だが、被害が極大になる前にそれを食い止めてくれたのは間違い無くレフィである。確かに途中までのお触りの行為はどうかとは思われるかもしれないが、結果は無事に助かっていたのだから、ここでようやく真面目な形での礼がレフィへと渡されたのである。




「困ったらすぐわたしに甘えなさい。健全な少女達を守るのがわたしの使命と趣味なんだからさ」


 レフィは右の親指で自分の顔を指しながら、自分は少女全員の味方であると力強くアピールを見せる。本当に護衛をするだけの実力があるかどうかはさておき、守るという気持ちの強さは本物だと見て間違いは無いだろう。寧ろ本当に守れるように意外と死ぬような努力もしている可能性すらある。


「いや……趣味って言い方は余計過ぎるけどね。とりあえずそれより皆のとこに行かない? きっと大変だと思うし」


 折角格好が付いた覇気のある言葉だったはずなのに、余計な気持ちの持ち方があったせいで台無しに感じていたかもしれない。


 そしてコーチネルは先程の話にも出ていた、外で戦っているであろう者達の場所へと向かう必要があるのでは無いかと話す。そこで戦っている者達は、コーチネルにとっては他人では無く、心当たりのある者である可能性も高い為、尚更向かう理由があるというものである。




「あの男達って散々わたしみたいにキュートな女の子達に凄い事しやがってたはずだから一切手加減なんかしなくていいって事でいいよね?」


 コーチネルから視線を逸らしながら、残念ながら男達に手を出されてしまった被害者の少女達を思い浮かべ、尚更のように男達への敵対意識を強く燃え上がらせる。


 本来は可愛くて美しくあるべきである少女達に手を出した事を全身で後悔させてやるつもりでいるのかもしれない。


「あたしに確認する必要ってある? あたしだって情けなんかするつもりゼロだからね?」


 男達に制裁を加える事に関して、コーチネルから許可を取る必要は無いだろう。コーチネルの方からも殆ど勝手にすれば良いとしか思われていないようであり、そしてやはり元々散々自分と同じ性別の者達を蹂躙(じゅうりん)していたであろう男達に対しては、自分も同じく痛い思いをさせてやりたいと考えていたようだ。




「いい言い方! これこそぶちのめしに行くのに相応しい態度! じゃ、行こうか!」


 レフィは少しだけ吹き出してしまいながらも、コーチネルのあの男集団に対する怒りを認めたのである。この感情が男集団と戦う為に必要な養分となるだろうと何だか期待すらしながら、レフィは小屋の出入り口を指差した。


「テンション高すぎだって……。まあ返り討ちとかに遭わないように注意してよね!」


 余程男達への怒りが強かったのか、まるでこれから娯楽の世界にでも行くかのような明るい表情を浮かべながら、握り締めた右の拳を左の手にぶつけるような行動を見せているレフィを見ながらコーチネルはそれが逆に自分を追い詰める事にならないかと心配をしたが、一言言えば問題は無いだろうと、レフィと同じく表情を明るくさせる。




「おっけぃ!」


 レフィはまるで自分の晴れ舞台にでも飛び出す直前でもあるかのように、持ち上げた右手の上で目視出来る程に白く煌かせた風の球体を作り上げ、それを握り潰すと同時に駆け足で出入口へ向かってしまった。


「なんで変にテンション高ぶらせてんのよ……」


 余程男達に強い憎しみでも抱いているのか、それをエネルギーに変換させ、そして怒りで挑めばそれが身の危険の回避に遅れが生じる可能性もある為、敢えてまるで競技にでも挑むかのように気持ちを変わった方向で高ぶらせていたのかもしれない。


 しかし、コーチネルもここで立っている訳にもいかない為、一旦牢屋から出るなり、レフィの背後を追う形で同じく駆け足で出入口へ向かう。




――小屋から出たレフィは外の空気を浴びるものの……――




「しっかし外出たのにくっさい空間ね。中も臭い外も臭いでよくこんな場所で生きてられるわねここの変態集団って」


 小屋の内部は数日間まともに入浴もしていなかったであろうエルフ達の酷い体臭で充満していた為、外にさえ出れば、少なくとも異臭からは解放されるだろうとレフィは期待していたらしい。だが、出た後もなんだか妙な臭気がレフィの整えられた鼻に入ってきた。


 厳密にはこの空間はアジトの内部で展開された亜空間であり、あくまでも周囲が外の世界にいるように見せかけた極彩色の植物が茂る場所であり、その影響で臭気が漂っていたのかもしれないが、本当の原因は数秒もせずに知る事になってしまう。




――背後から、剣を首元に突き付けられた事を察知し……――




 剣自体はコーチネルも扱っていたが、自分の首元、斜めの左後ろから先端が細い顎のほぼ真下で止まるように突き付けられていたそれはコーチネルの扱っている物では無い事にすぐ気付く。


 そして、剣の持ち主も当然背後に存在しており、どうやら出入口の死角で待ち伏せをしていたようだ。


「おいおいお前らあここえ終わいになう事分かっえんらろうなぁ?」


 レフィは男の姿こそ目視していない、いや、出来なかったと言った方が良かったかもしれないが、非常に掠れた低い声色、そしてそもそも活舌も非常に悪く、適当に聞いていては確実に聞き間違えるレベルだ。しかし、視界の下にうっすらと見える剣の先端がレフィの気持ちを無理矢理に締め付けているのは確かだ。




「あぁ待ち伏せ? なんであんたみたいな(くさ)い……ってこの(にお)いあんただったんだぁ? 環境破壊に貢献し過ぎてウケるかも」


 聞き取りにくい汚い声の方向に青い瞳だけを向けながら、それでも男の想像するまでも無く酷い容姿であるはずの顔を直視はしていないが、室内にいた時点でもう敵に目を付けられていたのかと少しだけ自分の行動の甘さを恨むが、密着している訳でも無いのに同じ男同士でも嫌がるとしか思えない臭気を感じ取るなり、わざとらしく男の自尊心を傷つけるような批評を与えてやった。


「お前殺されう側の分際え何偉そうい――」


 ここの空間を支配している男達は異性から何を言われても揺らぐ事が無い奇妙に固い心を持ち合わせているようであり、臭気の事を異性から言われた所で一切口調を変えたり弱めたりする事をしなかった。そしてこれから命を奪う事を確定させていたからか、レフィの首筋でギリギリで止めている剣に力を加えようとしたその時であった。




――レフィは左手を男に向けると……――




「臭い奴は滅べ!!」


 臭気の酷い相手を好む人間はそうそう多くは無いはずだが、レフィは左手を男に向け、そして顔も男に向けると同時に男の批評点と、そしてどのような末路を辿るべきなのかを叫びながら得意の魔力をその場で力強く放つ。




――突然男は地面に倒れ込む――




 倒れたというよりは、無理矢理に上から押し付けられて倒されたと表現すべきだった可能性もある。折角構えていた剣をその場で手放し、そして地面に無理矢理叩きつけられ、男は汚い悲鳴を上げる。


 レフィは男の真上に目視が難しい風の塊を出現させ、それを(おもり)のように落下させたのだ。重量に耐えられなかった男は地面と風の塊に挟まれたのである。




「魔女っ子なめんなよ!」


 自分の実力を既に聞く力を保っていないであろう男を見下ろして言い放ちながら、まるで拳銃の銃口から立ち上がった煙を息で吹き消すような仕草を自分の左の人差し指で行なった。










とりあえず、レフィは一応外見は本人も言ってる通り、可愛い属性らしいけど性格の方がやっぱり……。まあ女同士だからこそ言える発言もあると思いますし、彼女には彼女なりの考え方もあると思うのでそこは多少は大目に見てやるべきなんでしょうか? ただ、キャラは折角架空の存在なんだから現実的では無いような性格であってもいいっていう考えもあるっぽいので、意外とあれでいいのかもしれません。実際は分かりませんが……。

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