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黒衣を纏いし紫髪の天使  作者: 閻婆
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第26節 《野盗の巣窟への進撃 要塞の中は異形の亜空間》 4/5

今回はちょっと頻度を早めに投稿させて頂きました。描き溜め分が想像以上に早く出来上がった為です。


それと、今回はちょっと内容的には刺激が強いかもしれません。まあ一応は女同士なので何とかなるかもしれませんが、エルフ達は牙を剥いてるので少女相手に鋭く襲い掛かってきます。そして後半ぐらいになると確か身体を狙うシーンがあった気が……。







              要塞の内部は亜空間そのもの


              樹液で作られた床や壁のエリアと、極彩色の森林地帯


              ある少女は森林地帯にある集落のような場所に潜入していた


              捕らわれたエルフの小屋に辿り着き、少女は牢屋の中に入り込む


              本来であれば、そこでワープ装置を使うはずだったのだが……






 エルフ達の救助の為に、錠前(じょうまえ)を破壊した上で牢屋に入り、左の二の腕に隠していたワープ装置であるリングから光を右手に宿し、まずは1人目の作業に入ろうとした所だった。突然右脚を別のエルフに掴まれ、転ばされたのは。


「うわぁ!!」


 ワープをさせる為に右手をエルフに伸ばしながら向けていた少女だったが、右脚を突然持ち上げられ、そしてバランスを保ちにくくなった所に更に追い打ちをかけられるかのように上半身を突き飛ばされてしまう。左脚だけではどうする事も出来ず、少女は格子に身体を打ち付けてしまう。


 一体自分に何が起きたのかが理解出来なかったかもしれない。本当は倒れ込む所を格子によって肩をぶつける形になったおかげで牢屋の内部で仰向け、或いはうつ伏せにならずに済んだものの、肩の痛みよりもまず自分に危害を加える者がここには存在しないはずであったのに、今は痛みそのものが現実となっている。




「ってちょっと何する……!!」


 何故転ばされたのかは分からなかったが、原因は隣にいたエルフである事は銀髪の少女は分かっていた為、痛みを無視しながらまずはエルフにどのような意図があったのかを怒りも混ぜながら聞こうとしたが、質問を飛ばしながら掴まれている右脚を引っ張ったが、全く引き抜く事が出来ず、エルフは少女の右脚を、自分の右腕と腰で挟むように拘束しながら、気味悪くにやついていた。乱れた前髪の下では、ぎらついたような両目が少女を捉えていたのだ。


 そして、銀髪の少女が声を詰まらせたのは、脚を引き抜こうにも、抜く事が出来なかったからだ。


「あんた、何しに来たんだっけ? 助けるって言ってなかったっけ?」


 脚を掴んだままのエルフは、先程までの弱々しい口調から一変して、まるで勝利でも確定した事を実感した女王か何かのような尊大な態度へと豹変していた。


 救助の為に来てくれたはずの少女に問い詰めながら、右脚を掴んでいない左手を、ゆっくりと脚に伸ばしていた。




「そうよ! だから来たってのに何してくれんのよ!? まだ変な薬打たれてないんでしょ貴方達って!?」


 格子に背中から寄り掛かり、尻だけが牢屋の床に着いた状態で、少女は掴まれている脚を引き離そうと力を入れながら、エルフの者達が正気を保った状態でいたのでは無いかと問うが、周囲にいる他のエルフの表情も獲物を見つけた猛獣のような鋭いものへと豹変していた。


「あんたは馬鹿そのものなの。誰も助けてなんて頼んでないし、私達もうあの男達の仲間なのよ。何自分から捕まりに来てんのよ? 人間ってお人好しが多いって本当ね」


 別のエルフが銀髪の少女の目の前、脚を保持しているエルフの横に付くようにやってくる。恐らくはもうここにいるエルフ全員がこの救助に来た少女の敵として振舞おうとしている事だろう。


 人間特有の他者を助けようとする気持ちを踏み(にじ)るような事を言いながら、わざと銀髪の少女の横にまで詰め寄り、少女の顔を覗き込むように近付ける。




「悪かったわねぇお人好しで……。それと、いきなり奴らの仲間になった理由なんて、教える訳無いか」


 銀髪の少女は自分もお人好しとして分類されていると自覚をしているのか、それについて、嫌味を混ぜたような言い方で言い返してやった。茶色の瞳を睨むような形にさせながら、すぐ目の前にある長い幽閉の過程で汚れた顔のエルフに今のような歪んだ性格になった理由を聞くが、返答の期待なんかしていない。


「あんた口悪いねぇ? 立場分かってる? あんたの周りに味方なんかいないのよ? あの男達といたらこれからムカつく奴をぶちのめし放題になるって言われたから付いただけだから」


 エルフの態度はもう改善される事は無いと思うべきなのかもしれない。多勢であるエルフは少女の態度1つを執拗に責めながらも、この亜空間にいた男達と仲間になる事で今まで敵視していた相手を徹底的に痛めつける事が出来るようになると、薄汚れた口を釣り上げた。




「呆れたねホント。エルフってそんなに意志弱かったんだぁ? ってか息臭いから離れてくれる? 不潔な顔近づけるなっつの」


 少女の周りにいるのは5人のエルフだ。その内の1人がまだ少女の右脚を抱えるように掴んだままだ。


 この亜空間にいたあの下卑た男達と手を組むようなエルフでは無かったはずだと今までは思っていたのもそうだが、それよりも今は囲まれている事で恐怖が身体を包み込んでいたとも言えるだろう。エルフの心が弱い事や、身体の手入れも一切出来ない環境にいるせいで口臭までも発生している事を責める形で反撃をするも、内心では震えていたはずだ。


 ここで武器を取り出したとして、本来であれば救助の対象であるはずだったエルフを負傷させるのが良い結果になるのか、それすらも不安になっていた。




「そんな事言ってただ逃げようとしてるだけでしょ? ってか人間の女って……ホント可愛いわよね?」


 ここで言うエルフの逃げるという言葉は、純粋に身体そのものをエルフ達の囲まれている状況から距離を取るという意味では無く、囲まれる事による恐怖を紛らわせるという意味だった可能性もある。


 しかし、怖がっている表情を眺めていると、未成年の人間特有の何かが表れている事に気付いてしまう。性別の関係もあったのか、詰め寄っているエルフも相手が生物学的には同じ性別であるのにも関わらず、本能で可愛さを意識する。色白な頬を、垢で塗れた手で乱暴に撫でる。その際に元々近づけていた顔を更に近づける。


「余計に近付くなっつの! そして触るな!」


 ただでさえ鼻に突き刺さるようなエルフの体臭と、そして種族特有の連想される美貌からはとても想像が出来ないような口臭が更に強くなり、銀髪の少女はまずは自分の頬を好き勝手に触ってくるエルフの右手を払い除ける為に、右手を強く握り、拳の形にしてそれを飛ばそうとする。


 怒りが素手による反撃を呼び込んだのかもしれない。




――しかし、物凄い力で手首を掴まれてしまい……――




「おっとぉ、何するつもり? ここで下手に殴って私らの事キレさせたらあんた半殺しにされちゃうよぉ? 良かったねぇ受け止められるだけで済んで」


 臭い息を漏らし続ける顔を近づけ続けているエルフは、少女の飛ばした握り締めた右手を、左手で受け止められてしまう。手首を掴まれ、それ以上前に進ませる事が出来なくなってしまう。女同士とは言え、少女は右手を引っ込める事も、純粋に腕を捩じる事でエルフの手を解く事も出来ず、エルフの忠告をただ聞く事しか出来なかった。


「な……何あんた達……。ホントこれから……どうするつもりなの?」


 銀髪の少女は力で勝負しても勝てない可能性があると悟ったのか、あまり相手をいきり立たせないように少しだけ態度を弱めたような口調で何が目的なのかを聞こうとする。


 5人に一斉に攻められれば、確かに言葉の通りの半殺しにされてしまうかもしれないと思ったからでもある。




「どうするって、これからここの男達に強化してもらうのよ。あんたが今盗んだ薬でね。ってかそれ返せよ貴様!」


 まるで当たり前とでも言わんばかりの返答を、そろそろ怯え始めている少女に向かってエルフは言い放つ。少女が自身のバッグにしまい込んでいた、あのカプセルに入っていた薬品を打たれる事でエルフ達は何か力を身に付ける事が出来るようであるが、現状の態度を見る限りは、もう既にカプセル内の薬品以外の物も何かしらの形で浴びていると見て間違いは無さそうである。


 しかし、薬品は少女のバッグの中にある。少女に対して一番変貌した態度で接し続けていたであろう真正面のエルフは、カプセルがしまわれている少女の黄色いバッグに右手を伸ばし、乱暴に掴んだ。


「うるっ……さいわねぇ!! こんな危ない物渡して……たまるかって!」


 少女から見て左側に位置しているバッグに手を伸ばされ、勿論それを奪われる訳にはいかない為、少女は掴まれていない方の手、つまりは左手ですぐに自分のバッグを掴み、相手に奪い取られる事を防ぐ。上部を覆う皮を捲り上げられてしまえば中身が見えてしまう為、上から(ふた)として機能している皮ごと押さえ付ける形で左手で守る。


 本当は右手も使いたかったが、エルフのせいで右手は押さえ付けられている。左手でしか抵抗する事が出来ない。それでもバッグの中身には到達する事が出来ておらず、少女の抵抗は充分出来ている状態だ。




「抵抗するとはいい度胸ねぇ! 人間は平気で泥棒もする犯罪種族なのかい!?」


 エルフからすれば、折角これから打ってもらおうとしていた薬をこの銀髪の少女に奪われているのだ。まるで人間全体を讒謗(ざんぼう)するような言い分と共に汚い口の周りを舌で舐める。


 エルフの右手と、銀髪の少女の左手がバッグを求めて、そして守る為に抗い合っている。


「こんな危ない物作っといてどっちが犯罪なんだろうねぇ!? んんっ!!」


 ここでバッグを奪い取られては、自分の目的の1つが失敗に終わってしまう事に加えて、そしてバッグ自体にはしまい込んだ薬物以外の私物も存在している為、それらも一緒に奪われる事も同時に防がなければいけなかった。


 どのように進んでもこの先はどうせ自分が痛い思いをするとしか思えなかったからか、まずは目の前にいる憎らしくて臭いエルフに渾身の一撃を与えてやろうと考えた。




――咄嗟に思いついた反撃として、頭突きを食らわした――




 銀の前髪に隠れた額をエルフの鼻目掛けて突き出した。


 鈍い音がエルフの鼻から響き、エルフは潰れたような鈍い悲鳴を上げながら身体を後退させる。少女を掴んでいた左手も離れ、少女はバッグを奪われるリスクから回避されるのと同時に、右手の自由も利くようになった。


 周囲のエルフ達もざわつき始め、そして少女の右脚を拘束していたエルフも、仲間を攻撃された仕返しと言わんばかりに、まるで覆い被さるかのように襲い掛かってくる。




「お前!!」


 あまりにも短くも、口調と音量だけで怒りを見せている事が分かるような怒声を放ちながら銀髪の少女の首でも絞めるかのように両手を突き出したが、少女は既に自由になっている両脚を使い、向かってきたエルフを押し出すように蹴り付ける。


 元々尻もちを付いている状態で足で押し出していた為、蹴るという表現も怪しいものがあったが、低い場所からの押し出し行為であった為、命中したのはエルフの脚である。まるで膝の関節を逆から曲げられるような痛みを受けたであろう相手は絞り出したような痛みの声を漏らした上で、少女に掴み掛る事が出来なくなった。




「もうあんた達に関わって――!」


 銀髪の少女はもう囲まれ続けている訳にもいかず、このまま時間が経過すれば何をされるのかも想像したくない。不自由な生活の過程で身体から異臭を放つ程に汚れていたのは分かっていたが、折角救出する立場であるはずの自分を追い詰めている姿を見ていると、もうしょうがないとか、そんな相手側を庇う気持ちすら捨てたい気分になる。


 だが、囲まれている状況から離れようとした少女の左腕を乱暴に掴むエルフの存在があった。




「逃げんじゃねえよ!」


 逃がすまいと少女の腕を掴んだ他のエルフは暴言と共に本当と無計画を意識したような形で殴り掛かる。ただ痛い思いさえさせれば良いとでも言わんばかりの単純な殴打を少女の顔を狙う。


 横殴りになりそうになるが、咄嗟に右腕を盾にした為、直撃だけは免れた。逆に腕には痛みが走る事になったが。


「お前はここで生贄にでもなれよ!!」


 少女の腕を掴んでいない別のエルフも、少女に対する拘束を認識するなり、まるで性格の荒れた未成年同士の喧嘩のような、まるで型が成っていないとりあえず痛い思いをさせられれば良いと言わんばかりの力任せな殴打を少女に放つ。


 エルフの掴む力はやや細身の外見からは想像が出来ない程に妙に強く、そして殴り掛かってくる力も無視出来ないような強さで、何度も受けていると下手をするとやられた箇所の感覚が麻痺してしまうかもしれない。




「何必死になっ……!! うっ!! あんた達いい加減正気に戻ったら!?」


 銀髪の少女は一体どのような目的で自分をこの場に留めようと企んでいるのかが見えてこなかったが、エルフ達の殴打は1人につき1発で終わるものでは無かった。もう性格の荒れた未成年と同類にしか見えてこないようなしつこい殴打が少女を襲うが、その内の一撃が顔を横殴りにするものとしてやってきた為、それが痛みによって涙腺が、では無く怒りが再び心の奥から這い上がってきた。


 腰の鞘に装備していた短剣を右手に持ち、刃の部分では無く、柄の先端部分を、丁度自分の顔を横殴りにしたエルフの肩目掛けて、まるで短剣を逆手に持った上で振り落とすような形で一撃を与えた。


「うぐぅあぁああ!!!!」


 性格や態度が粗暴になっていても、身体に電撃が走ったのであればまず耐えられるものでは無かったはずだ。


 他のエルフ達は勿論、実際に電撃を与えた銀髪の少女自身も思わず耳を塞ぎたくなるであろう激しい悲鳴を浴びたが、少女は深呼吸をしながら、そして電撃による一撃を見て呆然と立ち尽くすエルフ達に短剣を見せつけながら言い放つ。




「大丈夫。これスタンガンだから死なないって」


 まだ銀髪の少女はこのエルフ達に何かしらの希望を抱いているのか、斬り付けるというある種の殺傷という選択肢を取らなかった。


 少女はエルフ達が何かしらの行為をされたからこそ、今の横暴な振る舞いを見せつけているものだと信じていた為、突き刺したり、斬り付けたりする事で絶命させるという選択肢をどうしても取る事が出来なかったのだ。


「勝った気でいるなよお前?」


 強がっているのか、挑発をしているのか、電気ショックを受けなかった別のエルフが少女を睨みつけながら、まるでナイフでも投げつけるかのように横薙ぎに右手を払った。エルフの右手には何も持たれてはいなかったものの、それは決して何も意味を為さない行為では無かった。


 確実に、エルフの手から何かが飛ばされていた。




――少女は右の手首に何かをぶつけられた事に気付き……――




「いっ!! ん!? ちょっ何よこれ!?」


 エルフ達を真正面に捉えながら後退していた少女だが、突然右手が引っ張られるように背後の壁に吸い寄せられたのである。右の手首が引っ張られていたのだから、右手の方に顔を向けたが、吸い寄せられた理由をすぐに理解する事になる。円形状の(かすがい)のような物質が少女の右手首を壁にしっかりと固定してしまっていたのだ。鉛色に見えるそれは、恐らくは金属質であろう。


 壁に強く撃ち込まれており、手首をそこから抜く事が出来ず、顔と高さが並ぶような形で固定されてしまったのだ。そして、手首に衝撃が走った際の反動で武器であった短剣を落としてしまっていた。


「さっき言わなかったか? お前は生贄になるって。記憶力も鈍いのかお前は?」


 恐らくは少女に拘束用の器具を魔力の力で投げつけたエルフが強気な口調で言い放った言葉だ。


 何とか手を引き抜こうと力を入れながら焦っている少女に歩み寄りながら、ここで少女がどのような結末を迎えるのかを思い出させようとする。エルフの中では、これから生贄になる自覚があるのであれば、逃げようとする行為そのものが、生贄になる事を放棄する証明になると認識しているのだろうか。




「勝手に記憶力弱いみたいな言い方しないでくれる!? 言われた事ぐらい覚えてるから!」


 右手が壁から離れない為、その場から逃げる事が出来ない事による焦りを見せる銀髪の少女であったが、記憶力が悪いとは思っておらず、数分前に言われた事であれば忘れる訳が無いと強がる形で反発をする。


 しかし、一向に右手は拘束用の器具から離れてはくれなかった。


「強がるなって言ってるでしょ? あ、これもオマケね!」


 最初に拘束具を魔力で放ったエルフとは異なる者が少女を追い詰めるような口調でそれを言うが、少女からしたらエルフの外見を区別している訳では無かった為、誰が喋った所で何も気持ちは変わらなかった事に加え、自分にとって都合の良い話に進むとも思わなかった。


 しかし、少女はエルフがまた何かを放ってきた様子を見逃す事をしなかった。直接は投げていなかったものの、投げるような素振(そぶ)りと同時に例のアレ(・・)が発射される事実は数分前のものと一切変わらなかった。




――残りの3ヵ所の部位が拘束されてしまう――




「痛っ! ホントにどうする……つもりよ……?」


 少女は右手に走った時と同じ形の痛みを、別の3ヵ所に同時に受けた事を知る。左の手首と、そして両脚の膝の上である。


 左手は両腕を開くような形で壁に打ち付けられたせいで、ほぼ無防備にも近い状態となってしまう。何か攻撃をされたとしても身体を守る術は無い。


 両脚も太腿から壁に打ち付けられ、もうそこから歩く事も、脚を閉じる事も一切出来なくなっていた。少女は壁に固定される形となってしまった。


「弱気なとこもまあ、人間にしちゃ可愛いかもだけど、このまま殺す――」

「ちょっと待って待って。折角若い人間にありつけたんだから、ちょっとは味見してからにしようよ?」


 エルフの1人が元々少女が扱っていた短剣を拾い上げ、刃の部分を見つめてから少女の怯える顔に目を向けるが、やはり思いついたのは短剣でそのまま少女を突き刺す事だったのかもしれない。


 しかし、別のエルフは長い間生きた人間に出会っていなかったからか、ここですぐに絶命させるより先に、言葉の通りの行為をしたいと言い出したのだ。短剣を持っていたエルフの右手を引っ込めさせるように押さえていた為、本気だったのかもしれない。




「味見って……何……よ?」


 少女は分かってはいたと思われる。味見とは、味覚で感じるものを確かめる行為とは別の行為である可能性の方が高いと。


「分かってんだろ? お前の身体があたしらの事馬鹿に出来るか確かめるんだよ? それからお前が盗んだ薬を取り返して、そのままお前は死ね!」


 短剣を持っているエルフは自分達の事を馬鹿にした発言、恐らくは臭気が酷いという発言の事だったと思われるが、折角少女の自由を奪ったのだから、その場で確認が出来る事を全て行なおうと企んでいたのかもしれない。


 元々はまだ少女が肩から斜めにかけているバッグの中にある薬を取り返す目的も残っていたが、最終的には命を奪うという目論見もそこには存在したようだ。もう正気を保ってはいないのだ、このエルフ達は。




――最後の言葉だけで少女は悟ってしまう――




「何……よ……結局……殺す気……?」


 両手も両足も拘束されているせいで、もう相手の思うがままなのである。ここではもう相手の都合だけで自分の運命が確定されるのだから声が震えるのも無理は無いはずだ。


 下手に強がると、逆に相手の神経を逆撫でする事になり、自分の命の炎が消えてしまう時間が早まり兼ねない。


「当たり前だろ!? 勝手に来て生きて帰れると思ってたか!?」


 折角生きた若い人間にありつける事は喜ばしいと思っているであろう短剣を持っていないエルフであるが、ここに現れた事自体に対しては一切の容赦を見せる事をしなかった。若い個体であっても、ここに来た事自体に甘い考えを与える事は決してしなかった。


 エルフ達が徐々に身動きの取れない少女に近づいていたその時であった。




――突如、格子の向こう側から停止を強要する声が響く――




「ちょっと待て! そいつはすぐに実験材料で連行する! お前らが遊ぶのはそこまでだ!」


 小屋の出入り口に飛び込むように現れたのは、無造作に伸びた黒の髪と、口全体を派手に覆い尽くした長い髭が汚らしく目立つ、服装も汚らしい男であった。


 手には警棒らしき細長い武器を持っており、浮浪者のような長いズボンと薄汚れたシャツを纏っていながらも、この空間での大事な任務を請け負っている立場なのだろうか。






折角捕らえられてたエルフを助けるはずだったのに、もうエルフ達は悪い影響を受けてしまってたようで、逆に少女は追い詰められてしまいます。助けるはずが逆に追い詰められてしまうのは……。それに今は頼れる仲間がいない状態なのでちょっと不味い展開かもしれません。単独の時に身体を拘束されるとまず助からない訳ですが、ここではどうなるか……ですね。

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