第26節 《野盗の巣窟への進撃 要塞の中は異形の亜空間》 1/5
今回はもしかしたら普段より少し短い感じかもしれません。ただ、これから敵の要塞に侵入するので決して穏やかでは無い展開が待ってると思います。なかなか要塞に入らない展開が続いてるような気がしますが、そろそろ今度こそは入って欲しい所かもしれません。いや、入ります今度こそ。
ガイウス達は予想外の仲間と出会う事になった
尤も、会った瞬間は仲間として認識すべきかどうかは迷っていたが
始めは敵対こそしていたが、志は両者とも同じ
要塞に住み着く野盗達を殲滅する為に、命を懸けた戦いを覚悟する
もう既に、誤解の過程で向けられていた銃口は降ろされている
「随分雑過ぎる謝罪じゃねえか。こっちゃあ殺されっかどうかって状況だったのによ」
数秒前までは銃口を突き付けられていたガイウスとフィリニオンであったが、銃口を下ろされても尚、鳥人のフィリニオンは今まで自分達に向けられていた殺意によって生まれたであろう不満を拭う事が出来ていなかった。
元々性格面を考えても優しいとはとても言えないようなフィリニオンであるから、銃口を下ろして謝られたからと言ってそれで済ませる気持ちにはならないだろう。
「だけどな、逆にこっちも殺される可能性があったんだからあれぐらいの警戒心は必要だったんだよ。あの感じのやり取りで騙されて後ろから刺される奴も実際に見てるからなこっちは」
水棲系の亜人であるディマイオもフィリニオンの憤りを理解していない訳では無いだろう。しかし、敵か味方かまだ判断が出来ない状況ではいつでも最悪な事態に対抗出来る構えが必要である事を思い知らされているからか、あのやり方は必死そのものであったと説明をする。
それで相手の気が晴れるのかどうかはここでは期待をしていない。
「どんな修羅場切り抜けてきたかは知らねぇけど、そんな物騒なお前がコーチネルと知り合ってたなんてな」
この場では唯一の人間であるガイウスではあるが、ディマイオの今までの甘えが許されなかったのであろう生き方を想像すると、僅かながら苦笑を零してしまう。しかし、それだけの危険な橋を渡っていながらも、人間の少女と共に旅をするような仲を築く事が出来ていたのは意外だったのかもしれない。
「おれに借りがあるから付き合わせてるだけだ。それ以外別になんもねぇよ」
本当にそれだけなのかもしれない。
ディマイオはこの要塞の入り口へと向かう気でいたのか、ガイウス達に背中を向けた上で一歩進み出そうとしていたが、言い返す為に上体を捩じるようにガイウス達へと向けた。
「何があったんだよ? あいつもよくお前から逃げようと思わなかったなぁ」
どのような借りが存在していたのか、ガイウスは思わず聞き出そうとしてしまう。しかし、信頼関係も生まれているようであった為、コーチネルの身柄を著しく拘束するような黒い契約等は存在しないだろうというある種の安心感もあった可能性がある。
逃げないのは、それはディマイオに何かしらの弱みを握られているから、という訳では無いと信じるべきか。
「それよりさっさと中行った方がいんじゃねえか? 仲間ずっと待ってんだろ?」
フィリニオンはディマイオに言うが、本来であれば自分達を待ち伏せしているぐらいなら要塞の内部へと侵入しているべきだったのでは無いかと意識したようだ。内部は危険地帯であるのだから、1人でも仲間が隣にいてやるべきだろう。
「ホントはすぐ突入しようとは思ってたんだよ。でもおれがここに来た時にお前らがいたからさっきみてぇなやり取りが始まったんだよ」
ディマイオは恐らくは自分にも予定があったのだが、ガイウス達の登場がそれを崩してしまっていたのだろう。向かう気はあったらしいが、見知らぬ者が現れた状況でそのまま自分だけの予定の通りに進むのはここでは危険が生じていた事だろう。
初めて出会った時は、ガイウス達が味方に付く側だったのかどうかも判断が出来なかったのだから。
「そうだったのか。ずっとおれらみたいな他の誰かが来るのを見張り続けてたって訳じゃなかったのか」
ガイウスはディマイオの事情を知らなかったのだから、この言葉が出てくるのは当然の話だったのだろうか。初対面であるのだから、見張りと思ってしまっても無理は無かっただろう。
「そんな暇人な訳ねぇだろ。見張り共全員黙らせてたんだよ。あんまり邪魔過ぎたからな」
ディマイオからすれば、見張りはただの暇な者が行う手段でしか無いと考えているようであり、寧ろ本物の見張り達を殲滅させていたようであった。
言葉の内容が事実なのであれば、本来はこの要塞の周囲には侵入者を排除する者達が巡回していたようである。
「そんなにいたのか見張りってのが。だからこの辺随分誰もいなかったのか」
フィリニオンも要塞に初めて到着した時から違和感の1つとして残っていたのかもしれないが、敵の陣地であるというのに周囲を監視する者の姿があの武装された鳥獣しかいなかったというのが妙に手薄過ぎていたと、改めて実感させられた。
よく見ると、周囲の地面には血液だと思われる赤い液体の痕が点在しており、確かに元々は見張りが存在したという証拠がそこに残されていた。
「そうなるぜ。それと今頃だけど、外でいくら騒ごうが暴れようが中には一切聞こえねぇから安心しろ。コーチネルも言ってたけど、中はもう変な空間になってるってよ」
ディマイオは歩きながら短く答える。
そして、ここで自分達がどれだけ戦闘で騒音を出したとしても、要塞の内部にはそれが伝わらないようである。要塞の中の構造も関係があるのかもしれないが、どちらにしても外の騒音が伝わらないのであれば、今のこの3人に危機が迫るという事は無いのだろう。
「だったら尚更突入したくなってくるなぁ。おれもそういうのは大歓迎だからな」
ディマイオの背中を眺めながら、ガイウスも後ろを付いていく。要塞と言えば煉瓦等の壁で包まれた通路や部屋で構成された冷たさすら漂ってくるような無機質な空間を連想していたのかもしれないが、ディマイオの話を聞くと、今までの常識が通じるような気がしなくなってきたらしい。
「おれ、も、か。オレは別に一切歓迎なんかしてねぇからな? 中で女達が捕まってるから救助したらそれで終わりだって。さてと、じゃ、入るからな?」
ディマイオは些細な部分に引っかかったようであり、『も』という部分がまるで自分も要塞の不思議な構造をガイウスと同じく期待をしているかのように聞こえたらしく、自分が要塞の構造に期待を寄せている訳では無いという事を何としてでも直接伝えなければ気が済まなかったらしい。
内部に対する期待を一切抱いていない事を伝えながら、ディマイオは出入口であろう扉に両手を添えた。扉は左右に開く構造であり、錠前も特に施されていなかった扉は徐々に開いていた。
「その扉開けりゃ変な空間が広がってるって訳か。普段から普通じゃねえ生活してるから普通じゃねえ世界でも何とも思わねぇぜオレも」
扉の奥がフィリニオンの目にも入り込んでくるが、内部は暗いのか、ただの暗闇しか映っていない。隙間は徐々に広がっていくが、それでも闇は続いたままだ。扉の向こうにまで行かなければ闇の奥に何があるのかを目視する事が出来ないのかもしれない。
――要塞を狙っていた者の存在は3人だけでは無かったようであり――
要塞から離れた場所の空中に浮いている者の存在があった。まだ木々が生えている付近で直立姿勢で浮いている為、過度に目立つという事は無いのかもしれないが、橙色のアクセントを混ぜた魔導服を着用した姿は木々と比較すると色合いが極端に異なる為、誰かがいればすぐにばれてしまうだろう。
腕を組みながら、そして魔女が着用するであろう形状の茶色のブーツの裏からは風のようなものを発生させている。魔法使いのような外見に相応しく、魔法で風を発生させ、宙に浮き続けているのだろうか。
服と同じ色を使っている三角帽子の下には肩よりも低い位置の長さを見せた金髪が風で揺れており、整えられた前髪の下に見える青の瞳は要塞をしっかりと捉え続けていた。
「あれね。散々女の子達に酷い目に遭わせてるイケない建物って」
まるで要塞の事情を外部から聞いた上でやってきたかのような口調である。要塞に対して良い感情を抱かないのは誰だって同じなのだろうか。
この女性も、外見はやや大人に近いものがありながらもまだ幼さが残っているかのような容姿をしているが、それより、同じ女性として、女性を攫う者達が集うこの要塞を放置する訳にはいかなかったようだ。
「折角の瑞々しい身体を狙うなんて……。もう死刑だなこりゃ。ちっ!」
恐らくは女性に卑猥な行為を働く男達に憎悪を抱いていたのかもしれないが、言い方はもしこの少女がこの性別と異なっていた場合、この者自身も女性達の敵として思われてしまっていたかもしれない。
身体の表現方法が同じ女性同士であるにしても、多少は選んだ方が良かった可能性もあるが、今それを触っているのは要塞の内部にいるであろう男達である。想像をした瞬間に感情が怒りに切り替えられ、命を伴った償いを強要してやろうと、瞳に殺意を浮かばせてしまう。
要塞へ侵入した3人、そして既に要塞の内部で捜査を行なっている1人とは何か縁があるのだろうか。それとも、個人で要塞へ乗り込むつもりでいたのだろうか。
左手を前に伸ばし、常人ではまず聞き取る事が出来ないような難解且つ複雑な言葉を発すると、少女の目の前を塞ぐかのように円形状の魔法陣が現れた。それは小さな円が徐々に広がるように大きくなっていき、少女の身長とほぼ同じくらいの直径になるなり、膨張がぴたりと止まる。
「あの可愛い脚は全部わたしが味わいたいってのに……。皆、すぐ自由にしてわたしが正しい形で愛でてあげるからね! 出動!!」
本当の意味で救助が目的なのか怪しい言い分ではあったが、少女は目の前の魔法陣を目掛け、そして自身に驚異的な瞬発力を漲らせるかの如く、まるで背後から何か強い力によって押し出されるかのような速度で飛び込んだ。
魔法陣は波打つように少女を吸い込むと、出現した時とは逆の形で縮小するように消滅していった。
今回でやっと要塞に入り込む話になりましたが、まずは入る前に互いに信頼が出来るかどうかを確かめる必要があったかもしれないから、ちょっとあういうやり取りがしばらく続けられてたのかもしれません。まあ何とかやっと要塞内の話が次回から始まると思いますが、ちょっと今回また別のキャラが出てくるような雰囲気もあったと思います。執筆中もやはりアニメとかも色々視聴するので、その際にこのキャラいいかも、って思ったらすぐネタにして新しいキャラを考えてしまうので、その過程で生まれたキャラだったかもしれません。とりあえず、今回はこれで終わります。




