第25節 《完了を果たした魔窟での地獄 関わりがあったのは暴戻の野盗》 5/5
更新に間が開いてしまう事を気にしてる現状ですが、やっぱり間が埋まらないのでちょっと焦りが見えてる頃かもしれません。ストックを残しながら投稿してる身なんですが、本当は1週間に1回は投稿したいつもりなんですが、なかなか出来ません……。
同じ目的を持つ者が複数いるのがこの世界
しかし、会えば意思が通じると思うのは大間違い
野盗が絡む地帯では、初対面を相手にする場では慎重さが求められる
両者が互いに慎重さを持っていたのであれば、確実にそこで持ち出される物は……
「まずは入り口だな。にしても銃声あったのにやけに静かだな」
緑のコートを着用している人間の男性である、ガイウスは金網に囲まれていた要塞の壁を目の前にして、入り口の場所を視線で壁を伝いながら探してみるが、立ち止まっているだけでは目的の場所は見つからない。
今は既に金網を飛び越え、内部への侵入を完了させた後だ。
「出て来られたら逆にめんどくせぇだろ。めんどくせぇ事期待すんじゃねえよ」
黄色のアクセントを加えた黒のコンバットスーツを着用している鳥人であるフィリニオンは面倒事を避けながら要塞の内部へと入りたかったからか、嫌な想像が現実になる事を求めるかのようなガイウスの言い分を否定してしまう。
「そうだったな。寧ろ意外と気付かれてなかったりしてな」
ガイウスは要塞内の野盗達が現れる事をただ面倒な事、という認識で済ませているフィリニオンを考えるなり、本当に襲われたとしてもきっと楽に対処する事が出来るのかと安心すら覚えてしまう。
それでもやはり要塞の内部から誰も出て来なければ、これだけ好都合な事は無いはずだ。
「それが事実だったら幸せだよな」
要塞自体は壁が非常に分厚い印象がある為、フィリニオンはもしかしたら銃声が内部に届いていなかったのではという期待すらしていたのかもしれない。実際、内部からの騒音は一切聞こえてこない為、本当に誰もやってこない可能性すらある。
――しかし、数歩進んだ途端に状況は一変してしまう――
「おいちょっと待てお前ら」
要塞の壁の影から突然現れたのは、人間では無い外見を持った、拳銃を片手に持った者であった。乱暴そうな声色からして男であると思われるが、昆虫の複眼のような形状の目を持った亜人の類と思われる人物はガイウス達の前に立ち塞がる。
機械による強化が施されているような物々しい拳銃が2人の間を狙って突き付けられていた。
「なんか出てきたぞ。いきなり何だ?」
ガイウスは表情が読めない相手の亜人に対しては警戒をする以外の選択肢を選ぶ事を決めなかった。要塞に潜む者達の姿は知らないが、目の前に現れた相手が関係者なのかどうかが分からない以上は警戒を怠る訳にはいかなかった。
「こいつ水棲系の亜人じゃねえかよ。それより、オレらの事撃つつもりなのか?」
フィリニオンも同じ亜人同士であるからか、ただその口が直接存在しない特異な容姿を見ただけでどこで生息しているのかを見抜く事が出来たのかもしれない。水の中で生きる亜人だったのかもしれないが、やはり向けられている拳銃の事を完全に無視する事は出来ない。
本当に発砲された時に対処する事が出来るのか、フィリニオンは撃ちたいなら撃てよとでも言わんばかりに相手に拳銃の件で問う。
「状況次第だな。ってかお前らどこの奴だよ? ここの連中の仲間か?」
まだこの亜人はガイウス達に発砲する事を確定させていた訳では無かったが、ガイウス達のこれからの出方によっては発砲を確定させるつもりなのだろう。
亜人からすれば、外からこの要塞にやってきたという認識しか出来ない為、外にいた野盗の仲間が要塞に帰ってきたと疑うしか出来なかった。
「あのなぁお前が誰かは知らねぇけど、そこにいるって事は見てたんだろ? あの鳥に撃たれそうになってたとこ」
ガイウスは自分に向かって銃弾が飛んでくる事を恐れていないのだろうか。
僅かに笑い出しそうになりながらも、この場にいたのであれば、先程両断を決めた武装した鳥獣の事を目撃していたはずであると問い質すが、狙い通りの返答が来るかは分からない。相手の銃口は自分達に向けられたままなのだ。
「見てたぜ? 一応あれなぁ、仲間だって普通に撃ち殺すからな? 近づく奴は誰だって殺すようにプログラムされてるぜあれは」
拳銃を構えた水棲系の亜人は体勢も拳銃の向ける先も一切変える事無く、質問にはしっかりと答えて見せたものの、それでまだ納得をする様子は見せなかった。鳥獣の話を出したからと言って、それで亜人から見てガイウス達が本当に疑う必要の無い相手だと確定する訳では無いようだ。
「だったらお前がそこで生きてる理由は、まあそんなもんどうでもいいや。一応ストレートに言うけど、オレら寧ろここの連中の敵のはずなんだけどな?」
差別無しに爆撃を行うのであれば、目の前の亜人が生きている理由に疑問を感じたフィリニオンであったが、それを詳しく問い詰める気持ちにならなかったらしい。それよりも、自分とガイウスがこの要塞に潜んでいるであろう野盗達と敵対関係にある者である事を理解してほしかった事だろう。
しかし、銃口を向けられている以上は、フィリニオンも穏やかに済ませてやろうという考えには到底なれなかった。
「口で言うだけなら誰でも出来るぜ? そうやって騙してから背後から襲う奴もおれ結構見てたからな。簡単にゃあ信じんのなんか無理って話だ」
水棲系の亜人はフィリニオンの言葉を簡単には信用せず、過去にも騙された経験があったからなのか、一向に拳銃を降ろす気配を見せようとしなかった。
「おれは別にお前の事疑う気はねぇけど、もしかしてこれ戦う事になるのか? 勝った奴だけが連中のアジトに侵入する権利が与えられるってやつか」
ガイウスは穏便に済んでほしいとは願っているが、相手は自分の願い通りには動いていない為、覚悟を決める必要もあるのかと、嫌な未来を思い浮かべる。
本来は同じ志を持つ仲間であるはずなのに、弱い者がここで命を散らせるのであれば、ガイウスもそろそろ表情を本気にしなければいけないはずだ。
「こいつが勝手に絡んでくんならやるしかねぇだろ? オレはいつでもオッケイだぜ」
フィリニオンは戦意があったのかどうかは分からないが、相手が武器を向けているのであれば、自分も戦うしか無く、鞘から双剣を取り出した。
――拳銃を構えた亜人の方から、通信音らしき音が鳴り響き……――
「変な時に通信してくんじゃねえよ。取り込み中だってのに」
水棲系の亜人は恐らくは通信機か何かで外部と連絡を取り合っていたのだろうか。鉄の外観の胸当て、或いは白のボトムスの裏に通信機を隠すように装備しているのかもしれないが、今は通信先の相手に意識を向けている。
「あぁ? 今変な連中と出くわしたんだよ。人間と、鳥人、だな」
通信先から一体何があったのかの説明を求められていたのだろう。
亜人は求められた通り、誰と遭遇したのかを説明するが、名前が分からない為、外見による種族だけの説明をここでしていた。
「違げぇよ、すげぇ奴って意味じゃねえよ! 鳥人間って意味だよアホが」
通信先の相手はどのような勘違いをしたのだろうか。水棲系の亜人の乱暴な文面を見る限りでは、鳥人を超人と勘違いしていたように見えてしまう。意味を砕く形で再度説明をするが、この亜人の口調は誰に対しても乱暴であるようだ。
「あぁ名前? まだ聞いてねぇけど、教える必要も聞く必要もねぇだろ?」
たった今飛ばされた乱暴な返答を相手がどう受け取ったのかは分からない。
だが、相手の方は今対面している者達から名前を聞くようにこの亜人に求めていたようだが、亜人の方はそれを否定してしまっている。
「分ぁったよ、じゃあ聞いてやるよ」
一度は相手から名前を聞く事を断ったが、それでも通信先の相手から聞くように強く求められたからなのか、観念したかのように返答し、そしてやや逸れていた視線を再びガイウス達の方へと正す。
ただ、この亜人は複眼のような形状の目をしている為、本当に真っ直ぐ合わせているのかどうかは相手からは分からない可能性がある。
「おれの仲間が聞けって言ってくるから聞くけど、お前ら名前なんて言うんだ? それで結果が決まるみてぇだぜ?」
水棲系の亜人は人間でいう耳に該当するであろう自分の頭部の側面を指で突くように差しながら、名乗らせようとした理由を説明する。
ここで名前が判明すれば、事は丸く収まるようである。尤も、相手側がそれを呑んでくれるかどうかは別の話ではあるが。
「あのなぁ人から名前聞く時はまず自分から名乗るのが筋ってもんだろ? 結構色んなとこで聞くけどなこの話」
ガイウスは何となく今の状況がありふれたものだと意識したのかもしれない。出来れば自分が名乗った上で、こちらの名前を聞いて欲しかったようだが、やはりガイウス自身も異なる場所で似たようなやり取りを見た事があったのだろう。
「分かったよ。こいつも聞けってうるせぇからじゃあおれから言っとくわ。おれはディマイオだ。じゃあ次だ。お前らはなんて名前だ?」
どうやら通信先の相手からもまずは自分、つまりは水棲系の亜人の方から名前を出すように言われてしまったのだろう。本来はここでどちらが死ぬかを決定させるのが目的では無かったのだから、ここは自分のやり方を強引に貫くよりも、世の中のセオリーに沿った方が結果的に自分の身を助ける事にもなると感じたのだろうか。
水棲系の亜人はマスクのような特殊な形状をした口から、自分の名前をここで初めて明かす。続いて、目の前にいる人間と鳥人から名前を聞こうとする。ガイウスとフィリニオンの名前は、このディマイオと名乗った亜人は知らないままだ。
「言わなかったら話が進まねぇってやつだな。一応だけど、おれはガイウスだぜ」
ガイウスは相手の方から最初に名乗った以上は、自分も名乗らなければいけないと感じたからか、一言で済ませる形で短く済ませた。ただ自分の名前を明かす。それだけだ。
「じゃあオレも流れに合わせとくか? フィリニオンだ」
折角仲間であるガイウスも相手に名前を明かしたのである。フィリニオンも名乗らないといけないはずであるから、彼も一言、自分の名前を出した。
「ガイウスとフィリニオンっつうのか。って、あ? 何だって?」
ディマイオは名前を聞いたからと言って過度に敵対意識を持つような事はしなかった。名前さえ名乗れば手荒な事をするつもりは無かったようだが、自分の口で相手の名前を再確認したのが通信先の相手に聞こえていたようであり、そこからまた話が発展する様子であった。
通信機の先にいる仲間がガイウス達の名前を聞いた事によって、目の色を変えていたのかもしれない。
「確かに言ってたな。ガイウスだって。あぁ、仲間なのかお前と?」
通信機の先にいる相手はどうやらガイウスを知っている者であるらしく、だが、それでもディマイオからすればそれがまだ確定出来る話では無かった為、ガイウス達に対しては謝罪の類に該当する言葉は一切出そうとしない。
「見た目か? なんか緑っぽい髪してんな。歳? まあ見た目的にゃあ成人ぐれぇじゃねえか?」
通信先の相手は今ディマイオが対面している相手の外見を一切確認する事が出来ない為、ディマイオから外見を聞き出すしか無かったようであり、そして本人は見たままの特徴を細かさを無しに説明する。説明として利用した部分としては、服装では無く身体の特徴である髪の色と、そして外見を見た時に直感で感じた年齢である。
「分かったよ、今聞いてみる。それで答えが分かるって訳だな」
通信機の先の人物から、ガイウス達に何か質問をするように頼み込まれていたようだ。それを聞く事によって本当にガイウス達を信用しても良いかどうかが確定するようであり、ディマイオにとっての最後の仕上げと言った所なのだろうか。
「ガイウス、だったよな? お前コーチネルって奴、知ってるか?」
まだ一度しか名前を聞いていなかった為、ガイウスという名を持つのは人間側の方で間違いが無いかどうかを確認するかのように聞いてから、続いて、この場で初めて出すであろう名前を聞いた事があるのかどうかを訊ねる。ディマイオの仲間なのだろうか。
「知ってたらなんかまた因縁付けてくる気か?」
ガイウスからは信用をされている訳では無く、寧ろ警戒状態が続いている状況である。あっさりと答えようという気持ちにはまだなれないのだ。目を細めながらディマイオに言葉を渡す。
まだこのピリピリとした空気が残ったままである為、質問の1つ1つに重圧が存在するのだろう。
「おれと今通信取ってる奴がコーチネルっつんだよ。こいつがお前に聞けってうるせぇんだよ。そんでどうなんだよ? 知ってんのか?」
どうやら今名前を出した者はディマイオと通信機を通じて対話をしている相手の事だったようだ。どうしてもディマイオとしては、ガイウスとコーチネルに接点があるのかを確かめたかったのである。疑う前にそれを明かして欲しかったのだ。
「結論から言うと、おれは知ってるぜ。結構一緒に戦ったりもしてるからな」
ガイウスもそろそろディマイオの通信先の相手の事を意識してきたのだろうか。ディマイオも恐らくは通信先で色々と話し方や態度の事で色々と言われているのかと思うと、ガイウスもそろそろすんなりと返事をしてやった方がディマイオの為にもなるのかと考え始めたのかもしれない。
コーチネルという人物と対面した経験があったのか、ガイウスは事実を伝えた。
「知り合いだったのか……」
ガイウスの言葉には嘘は無かったはずだ。恐らくは通信機の先でもガイウスは自分とは顔見知りだとコーチネルからも散々飛ばされているはずだ。
ようやくここまで来て信用する気になれたのだろうか、向けていた拳銃をゆっくりと降ろす。外をまだ明るく照らしている太陽の光は確かに暑さを撒いてはいたが、空気の冷たさによって相殺されている。今まで止まっていたかのように感じられた微風も、この瞬間に再び実感出来るようになっていた事だろう。
「だったら警戒はする必要は無くなったって訳だな。コーチネルの奴も騒いでたけど、とりあえず手荒にやって悪かったな」
拳銃を腰のホルスターにしまい込んだディマイオは、通信先の相手から散々言われていた事を明かした上で、自分が異様に2人を警戒していた事を詫びた。
詫びとしては何だかそこまで謝罪の気持ちを混ぜていないようにも見えてしまうが、彼の性格からするとこれが限界なのだろうか。
次回は恐らくは要塞の内部のシーンになるかと思います。どうしてもキャラ達のやり取りを描いた上で行動に入ってもらうっていうのが私の作風ですので、もしかしたらまだ要塞には入らないかもしれません。そして要塞の中も決して穏やかではありません。とりあえず更新速度を速めないといけないのに……。




