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黒衣を纏いし紫髪の天使  作者: 閻婆
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第5節 ≪目覚めのガールズ ~町で見るのは希望か、暗雲か~≫

お久しぶりです。今回は再びリディアサイドのストーリーに戻ります。相変わらずの仕事で忙しいですが、合間を縫って何とかこれからもストーリーを描画し続けたいつもりです。





  戦いの時に有利になるのが、自分の側にいる者が多いかどうかである


  自分の背中を見張ってくれる者が多ければ、自分に再起不能となる一撃が入る可能性は激減する


  戦う量が減れば、それだけ自分の体力にも多くの余裕が出来上がる


 普段人間が入り込まない洞窟では、どこから何が飛んでくるか分かったものでは無い。

 何が生息しているのか、もし調べた者がいなかった場合、それは想像でしか補えない。

 見た事が無い相手であれば、自分の戦法が通じるかどうかもただ祈るしか無い。

 数があれば、それだけ試す機会が出来上がる為、生存率はきっと高くなる。






「よし! いい感じに突き刺さったなぁ!!」


 洞窟の内部で、鳥の亜人のフィリニオンと影を生物化したようなマルーザを苦しめていた飛行蟲に、巨大な刃を落としたガイウスは力を失い徐々に飛行の力を失わせていく蟲の背中に降り立ち、自分が下した一撃に自惚れたような台詞を飛ばす。




「カッコ付けてんじゃねえよ! ってかガイウスお前随分来んの遅かったじゃねえか!?」


 突き刺さったままの刃の隣に降り立った深い紫の色を帯びた忍者の姿を見たフィリニオンは、仲間の名前を呼ぶと同時に、戦いの時間に遅れていた事をその場で指摘する。


 深手を負っていないとは言え、自分達が戦っていたのに、その間、何をしていたのか、多少の苛立ちになっていたのかもしれない。


「まあまあそんな短気になるなって。実はいいもん見つけてきたから、ちょっとその話もしたくてな」


 生命力を徐々に失い、やがて巨大な蟲は自身を貫いた刃によって、完全に生命活動、同時に翅の動きも停止させてしまい、ガイウスを乗せたまま、漆黒の液体へと身体を落下させる。


 水面に叩き付けられた音を響かせた後、蟲は液体の上で浮かび続けていた。ガイウスは沈まないか多少の心配をしていたようであるが、周囲の漆黒の液体を見渡すなり、再びマスクの下から口を動かし、そして装束の懐から発見した物を取り出そうとするが、その前に隣にフィリニオンが蟲の上に降り立ち、ガイウスの隣に近寄った。




「所でお前この後どうすんだよ? 空も飛べねぇのにあの中にダイブでもして出口目指すんじゃねえだろうなぁ?」


 ガイウスは外見は忍者であるが、素早さは持ってるにしても、飛行能力は無いと他者から思われてもしょうがない事だろう。翼も無ければ、特殊な能力で浮遊する力も無い。フィリニオンのように翼がある訳でも無いし、マルーザのように低空浮遊が出来る訳でも無いのだ。


 人体に悪影響を及ぼすのは確実であろう周囲の黒い液体を見渡しながら、フィリニオンはガイウスのこの後の行動を疑った。




「心配は無用だと思うぜ? だから今コイツの上にいんだろ? おれの事は気にすんなよ?」


 既に命を失ったであろう蟲の背中を右足で2度程、踏み鳴らしながら、表情を直接見る事の出来ないマスクの裏で余裕を思わせる表情を作る。




「ガイウス……。相変わらず手荒な奴だ。だけど、正直言えばわたしら助かったから、一応感謝だけはさせてもらうよ!」


 浮遊で移動している為、マルーザは無音でガイウスの元へと寄るなり、赤黒い腕を組みながら、戦法に対しては心で目を瞑りながら遅れた礼を言い渡した。マルーザもまた、負傷はしていないようである。


「一応ってのはなんか物足りない気がするけど、敢えてそこはじゃあ何も突っ込まないって事にさせてもらうとしましょうか」


 何か心に引っかかるものを感じながらも、ガイウスは話を無駄に長引かせないようにと、聞かない方向を選択したが、わざわざ口に出す事も無かっただろう。




「所でマルーザ、お前のとこはもう仕留めたのか? そいつ、なんかもう動き止まってっけど?」


 ガイウスに最期の一撃に対する礼を言い渡していたマルーザに対し、フィリニオンはマルーザの方で繰り広げられていた戦いの結果を聞き出そうとする。背後を振り向けば、黒い液体に浸かったまま、植物の怪物は既にぐったりと動かなくなっているのが見えている。


「いや、さっきまでは普通に暴れてたから。やっぱりその蟲が本体だったみたいだね」


 戦いの影響で手首が疲れていたのか、マルーザは黒く染まっている手首をそれぞれの反対の手で握り、捻りながら質問に対応する。どうやらマルーザの攻撃で植物の形をした怪物の動きが停止した訳では無かったようである。




 フィリニオンもしばらくは植物の怪物を眺めていたが、ガイウスへと視線を戻し、そして恐らくは完璧な形で終わらせていなかったであろう話を再びガイウスへと持ちかける。どうやって洞窟から出るのか、である。


「だけどこの後どうするかが一番の問題じゃねえのか? っつうかガイウス、オレが聞きたかったのはこれからどうやって出口向かうかって話だった訳だけど、オレとマルーザなら空飛べっけど、お前はどうす――」

「そんな心配に関しても無用だぜ? 脱出手段ぐらいあるって」


 フィリニオンはガイウスの移動手段に対してどうしても引っかかっていたのだろう。蟲の上からどうやってこれから洞窟の外へと向かうのか、答えがはっきりとしていなかった為、話を一旦戻して解決させたいと思ったのだろう。


 だが、ガイウスはこの黒い液体に満ち溢れてしまったこの地の中を切り抜ける方法を持っていたようである。フィリニオンの言葉を遮り、マスクの下で自信を思わせる態度で言い返す。まるで密かに手段を用意していたかのようであった。


「どうやって出るつもりだよ? オレみてぇに翼もねぇくせに。まさかオレらに掴まってとか考えてねぇだろうなぁ?」


 疑われるのも無理は無い。フィリニオンは実際にガイウスの脱出手段を見せてもらっていないのだ。言葉でしか聞かされていないその話をどうやって信じるべきなのか。


 一瞬、自分の翼を利用されてしまうのではと、何か心に面倒な何かが圧し掛かる。




「いいや、お前らにはそんな力仕事は押し付けねえよ。こいつだよ。こいつに運んでもらうの」


 ガイウスは右手を持ち上げるなり、掌を開くと同時にその上で光をバチバチと小さく破裂させる。


 煙で掌自体が一瞬遮られてしまうが、煙が消えたそこに映っていたのは、石を丸く(かたど)った本体に虫のような翅が生えた物であった。サイズだけを見れば、ガイウスが握ればそれだけで本体が隠れてしまう程のサイズではあるが、魔力で呼び出された物体である為、意外と他の者達がサイズに対しての疑問を飛ばす事は無かったようである。


「そういえば、魔力で呼び出すってのがあったね。だけど人間はそれが無ければ飛べないなんて面倒な身体してるよね」


 浮遊を自力で行なう事が出来る者からすると、それを自力で行なえない者をどうしても不便であると考えてしまうらしい。マルーザはこの洞窟の脱出手段をガイウスが持っている事を理解すると、元々感情を読み取りにくい無機質な容姿の中で安心する。




「人間には人間にしか無いとこだってあんだから、人間が駄目な生き物みたいには言うなよな?」


 この3人の中では、ガイウスだけが人間に属する種族である。まるで自分だけが劣った特徴しか持っていないかのように言われた為、人間の代表として、とでも言わんばかりにガイウスは、手元に出現させていた飛行用物体を握り締めると同時に消滅させながら、言った。


「ふん。悪かったねぇ」


 闇をそのまま体色にしたような姿を持ったマルーザはあまり性格の方に女性らしさや御淑(おしと)やかさを持ち合わせていないらしく、相手から不満を持っているのかと思われるような態度で言い返す。




「飛べるとか飛べねぇとかそんなもん別に今はどうでもいいだろ? こんな薄暗れぇわ変な液体塗れになってるわこんな蟲の死体が浮いてるわで気分も悪くなってきたし、オレとしちゃこんなとこさっさと出てぇんだよ。そっからゆっくり話でも別に良くねぇか?」


 折角ガイウスが飛行による移動手段を見せたというのに、洞窟を出ようという流れにいつまでも進まなかった為、フィリニオンはこの洞窟内から受け取れる不満を次々と口に出す。既に戦いは終わっている為、何か言いたい事や伝えたい事があるなら、洞窟を出てからの方が効率は良いだろう。


「そういえば、さっきガイウス言ってたね。何か見つけたって」


 丁度蟲に止めを刺した時にガイウスは確かに発見した物があったと口に出していたが、マルーザもそれはしっかりと聞き取っていたようである。だけど直接口に出さなくても、マルーザもこの洞窟の外に出たいと思っているのは、フィリニオンと同じだろう。


 ガイウスが何を探し出そうとしていたのかは事前には聞かされていなかったのだろうか。




「皆の意見が1つになるのはいい事だな。この蟲が沈み始めてるのが少し気になってたから、じゃあおれがこいつと一緒に沈んでしまう前に、出口に向かうとするか?」


 きっと、この後は蟲の上から離れ、洞窟の外へと出たいと考えていたのはガイウスも同じだったようである。蟲が沈みきってしまえば、ガイウスは黒い液体に浸かってしまう事によって命を落とす危険もある。蟲の異変を察知した為、もしかしたらここで長話をしていたら自分の身に危険が走ると焦ったという理由もここにあったのかもしれない。


 洞窟内の環境は非常に悪い位置にある為、長くいれば空気に含まれるであろう有害な物質が多少なりとも身体に悪影響を与えてしまう可能性もある。ここにいる理由が無いのなら、去ってしまった方が身体の為にもなるだろう。






*** ***






 洞窟の外は、まだ太陽が空に映っており、時間はまだ昼を過ぎた辺りと見て間違いは無いかもしれない。


 洞窟から脱出をした3人は、戦いを終えたという事で、緊張という感情を身体から抜いており、この後に何をするのかを話し合っていた。




「とりあえずオレらはギルドの方に報告出しとっけど、お前は行くんだったっけ? あの、誰だったっけ」


 フィリニオンは愛用の剣に染み付いていたあの植物の姿の怪物の血液を振り落としながら、ガイウスがこれから出会うであろう人物の名前を思い出そうとしたが、名前が出てくる事は無かった。


「リディアだな。あいつ、今ミケさんとこに会う為に今一人旅の最中だから、おれもミケさんとこに向かえば丁度これも渡せるだろうし」


 ガイウスは誰に会うのか決めている以上は、名前も当然分かっているはずである。その名前の主の顔を思い浮かべながら、洞窟の内部で見つけたであろう白い円形状のプレートを懐から取り出した。土が残っている影響で汚れているが、プレート自体には罅が入っていたり、穴が開いていたり等という損傷は無い為、大した問題にはならないだろう。




「ミケランジェロの場所に着けば、そのコンパスも役に立つって訳かい?」


 マルーザも、そのコンパスの部品が一体何に使えるのかは完全には理解出来ていないのだろう。使い道が分かるのは、これからガイウスが向かうべき場所に到達し、目的の者に出会えた時である。


「ま、そうなるだろうなぁ。だけどこんな薄汚れたコンパス何に使うかが気になるとこだけど、古代のアイテムだと思って大事にした方がいいのかねぇ?」


 ガイウスは返事をするが、円形状のプレートをどうも大切にしようと思う気にならないからか、親指と人差し指だけでいい加減に持ちながら、それを左右に揺らしながら自分に言い聞かせようとする。少しでも指を滑らせれば、確実にプレートを落下させてしまうだろう。




「お前がそんな興味無さそうにしてどうすんだよ? それ無くしたらお前あいつらから責められんだろ? 折角の戦利品なんだからちゃんと大事に運べよ?」


 フィリニオンだって、そのプレートが一体どのような使い道があるのかは分からないが、紛失してしまえば取返しの付かない事になる事は大体は予測出来た事だろう。いい加減な扱いをしているガイウスに対して注意を施すが、ガイウスの手が止まる事は無い。


「おれは興味無いからって途中でその辺に捨てるとかなんかやらねえよ。子供じゃねえんだぜ。おれは」


 きっと自分が途中で今手にしているコンパスの部品の一部を廃棄してしまうのだと思われたからか、ガイウスは振り続けていた右手を止め、それを懐へと再びしまい込んだ。




「とりあえずやる事も片付けたって事だし、オレらはギルドに報告済んだら山賊どもの見張りでもするか?」


 背中から生えている翼にも何かしらの疲れが染みていたからか、フィリニオンは弱い風を付近に発生させながら翼を羽ばたかせる。しかし、この後にもまだ仕事が残っているらしく、まだ完全には休息には移れないようでもある。


「最近は妙に魔物がよく出没するようにもなってるし、それに便乗した奴らもいるから、その方がいいかもしれないね」


 マルーザもここの所、物騒になっているこの環境に対しては警戒を怠っていなかったのかもしれない。フィリニオンの意見に反対する様子を一切見せず、いつでも準備が出来ているとでも言わんばかりに、両手のヌンチャクを一度だけ、手首を使って回した。




「それぞれの目的もハッキリ決まった訳だし、じゃ、おれはとりあえずリディアの奴に連絡でもしとくわ」


 ガイウスは仲間であるとある女の子との合流、フィリニオンとマルーザはいつ出てくるか分からない山賊達に対する警戒と、ここにいる3人には暇という時間を過ごす事を許されないようである。


 ただの仲間なのか、それとも恋人なのか、或いは友達として留まっているのかは分からないが、ガイウスはリディアと合流する為に、これから向かうであろう場所へと顔を向ける。


「分かった。あんたの方も注意して向か――」

「貴様らぁ!!! 俺らの宝横取りしやがったなぁ!!」


 これから走り出そうとするガイウスの背中を見ながら、マルーザが声をかけるなり、それを遮るように今までこの場で聞いた事の無い汚らしくも乱暴な男の声が響き渡る。




――岩の上から現れたのは、大型の機関銃を構えた髭が濃い男である――


――遅れて子分らしき男達も他の岩影から現れる――


――髭の男がリーダーなのだろう。『撃てぇ!!』という合図と共に、一斉に銃弾が乱射される!!――




「!!」


 3人は揃って表情を強張らせると同時に、その場から横へ飛ぶようにそれぞれ回避する。ガイウスは単独で、フィリニオンとマルーザは一度は同じ方向に、そしてそれぞれ異なる隠れ場所、岩の側面へと回り、一時的に銃弾を逃れる。


――ダララララァア!!!!!


 下手な銃弾も無数になれば一発でも命中する可能性がある事を信じながらなのか、男達は隠れ場として使っている岩の周囲を無数の銃弾で一掃する。




「ってなんだよおい!! また面倒事かよ!!」


 銃弾が逃げ道を塞ぐこの状況の中で、フィリニオンは銃声に負けんとばかりの音声(おんじょう)の怒りを露にするが、それはきっと、山賊達には通じていないし、伝わってもいない。寧ろ、山賊達からすれば、その感情こそが目的だったのだろう。無論、最終的な目的は殺害なのは考えるまでも無いが。


「挨拶が銃弾とは流石は下品な山賊だね!!」


 下半身がガス状で出来ているマルーザでも、きっと銃弾を直接撃ち込まれればただでは済まないのだろう。フィリニオンやガイウスと同じく、岩陰に隠れながら、少しでも銃声及び銃弾が収まるのを待ち続ける。


 無数の銃弾によって、完全に動きを制限されてしまっているが、まだまだ表情には焦りは出ていなかった。先程の巨体を誇っていた植物や蟲の怪物とも対等に戦えるような実力を所持しているのだから、機関銃による攻撃にも慣れているのかもしれない。




「よし! 2人とも!! おれこのままあいつんとこ向かうから! ぜってぇ生き延びろよ!!」


 フィリニオンとマルーザとは別の、離れた岩陰に隠れていたガイウスは、丁度目の前を銃弾が横切るその場所から、無理矢理切り詰めたようにその場で別れを告げた。きっと、返事を聞く余裕も無かった事だろうガイウスはそのままフィリニオン達から離れるようにその場から跳び去った。




「あぁ!! お前こそ死ぬんじゃねぇぞ!!」


 果たして、そのフィリニオンの命を大事にする事を約束しろとでも伝えたかったであろう言葉はガイウスには聞こえていたのだろうか。距離をどんどん離していくガイウスの後ろ姿を僅かな時間だけ視界に入れてから、すぐにこれから自分達が取るべき行動の為に思考を働かせる。


 先程まで使っていた片手持ちの剣とは違う刃物を取り出し、岩陰から半身だけを横から出し、そしてそれをリーダー格の男の腕を目がけて投げつける。






――背後から男達が追いかけてくる中、ガイウスは目的の相手へと連絡を取ろうとする――




「よぉ、リディアか? おれだ、ガイウスだ。ミケさんから言われてたコンパスの部品見つけたから――」


 小型の通信機を片手に持ち、それを耳に当てながらガイウスは大切な相手に連絡を続ける。だが、走っている最中に強い爆風を全身で感じた為、その影響でガイウスの声が途切れてしまう。


「!!」


 真横に立っていた岩が爆発し、ガイウスに爆風と岩の粒がぶつかったのである。恐らく岩に爆破する弾丸が命中したのだろう。


 その爆破音は、確実にガイウスが話していた相手の声を上回る音量だった可能性も高く、近距離での爆発によるガイウスへの影響と合わさり、声を強制的に途切れさせられてしまったのだ。




「あぁ? あぁなんでもねぇよ! おれは無事だ! 心配すんな!」


 爆発によって生じた煙の中から飛び出すように抜けたガイウスであるが、きっと通信機の先で心配でもされたのだろう。自身の命が無事である事を手短に伝える。爆発音は、通信機を通じて相手にも聞こえてしまったのだろう。


 しかし、ガイウスの背後には、ロケットランチャーを肩に乗せた大柄な男の姿があり、そして罵声が響き渡る。


「生きて逃げれっと思ってんじゃねえぞ!!」


 爆風には巻き込む事が出来たが、それでも致命傷に至っていない事を確認した男は、悔しさも混ぜ込むかのように力任せに喉の奥を通り越して腹の奥から絞り出したかのような大音声の罵声を飛ばしながら、再びロケットを発射させる。




――爆発物質を詰め込んだ弾がガイウスの背後から迫る……――




 耳障りと言ってもいいような轟音で風を切るその弾は、ガイウスに気付かれない訳が無かった。


 走りながら背後を確認したガイウスは、直撃だけは免れる為に、脚に力を込め、その場で跳躍をする。忍者の外見をしているだけあって、身軽さに関しては天下一品であり、そして発射された弾はガイウスの元いた足元に命中する。


 土の地面は爆風で大きく吹き飛んだが、ガイウスはそこで死傷を負うような真似はしなかった。爆風によって自分の姿が相手から確認されなくなった事を丁度良いチャンスとして、再びガイウスは目的の場所を目指して再び自分を走らせた。


 今は戦う事が目的なのでは無く、目的の人物に出会う事が目的なのだ。






(さっさとリディア(お前)に会いてえよ。ホントに)








*** ***




 ガイウス達が洞窟内で植物と蟲、それぞれの姿を持った怪物と戦った3日後、つまりは、丁度リディア達が眠気に負けて森林の中に建造された小屋の中で睡眠を取ったその日、ようやく朝が時間の経過と共に訪れ、そして窓から差し込む太陽の光によって、リディアは起こされる。


 黒い帽子を脱ぎ、比較的汚れの少ない藁を枕代わりにして横になっていたリディアは、身体を仰向けに直してから、上体を持ち上げ、固まり切った身体を(ほぐ)すかのように両腕を力強く天井に向かって伸ばす。


 身体中が解れる快感と同時に、思わず口が大きく開き、そこから大きな欠伸が漏れる。


「ふあぁああ~……。もう……朝か……」


 まだ寝ぼけているからなのか、頭の中でまた充分な思考回路を働かせる事が出来ない状態のリディアであった。2度目の欠伸に襲われ、口の上下から白い歯をうっすらと覗かせる。だが、寝起きである為、きっと口の中が乾いている為、あまり本人はいい気分では無いだろう。


 薄い黒のベストを纏った身体は、まだ思い通りに動かせるような柔軟さに戻り切ってはいない。




「さてと……とりあえず、コーチネルさんの事起こさないと……」


 隣にはコーチネルがいる事を理解しているリディアは、座り込んだままの状態で右を向くが、コーチネルの体勢を見るなり、やや呆れたように青い瞳を細めると同時に、ここに誰一人男性がいなくて本当に良かったと、心の中で安堵の溜息を吐く。


 眠っている最中に身体の向きが変わってしまったのだろうが、リディアに対して足を向けた状態になっていた。そして、まるで太腿を大きく投げ出すかのように脚を開いてしまっている。右脚の膝は天井に向かって立っており、白いミニスカートの間からは、男であれば喜びや興奮の対象になるであろう真っ白な布が見えているが、女の子であるリディアからすれば、それを見たからと言って特別な感情が沸く事は一切無かった。


「ってなんて格好で寝てるのよ……。まあいいや、コーチネルさん! 朝ですよ! 起きてください!」


 本当は脚の状態をこっそりと直してやろうとでも思ったのかもしれないが、脚の状態を一切放置したリディアは、コーチネルの横へと歩み寄り、幸せそうな寝顔に向かって声をかける。




「あぁ? なんで……よ?」


 身体も揺さぶられたコーチネルは、茶色の瞳をゆっくりと開くと、目の前には年下の女の子の顔が映っている事を把握する。やはり寝起きであるが故に、あまり深い思考を働かせずに、単純な言葉を返した。


「なんでって……。いやいや、今日向かうって昨日話してましたよね? クリザローの町に行くって。ミケランジェロさんだって待ってるはずなんですから、急がないと駄目ですよ!」


 リディアはもう眠気から解放されているのだろう。ぼやけていた青い瞳にもしっかりと生気が戻っており、その口調もしっかりと内容が纏められたものであり、コーチネルに自分の気持ちを真剣に伝える。




「そう言えば……そう言ってたっけ? ちょっと待って……うあぁああ~……」


 記憶を正確に取り出せないぐらい、まだ睡魔に取り付かれていたのだろうか。だけどいつまでも取り付かれている訳にはいかないと心のどこかで思ったのだろう。コーチネルはなんとか自分の記憶の中から的確なものを取り出そうと、だらしなく脚を開いたまま膝の関節を曲げながら、上半身を起こした。


「だからあんまり脚開くなっつの……」


 流石にもう隣の位置にいた為、リディアからはもういくら脚を開かれたとしてもその奥にある布を見る心配は無かったが、それでも自分を隠す事を意識しないその動作に、思わずリディアは口からそれを漏らしてしまうが、きっとコーチネルには聞かれてしまった事だろう。




「え? リディア今なんか言った? 脚開くな……って、えっ!? あんたまさかパンツ見たの!?」


 そのよく耳を澄ませていなければ聞き取れなかった言葉も、すぐリディアの隣にいたコーチネルであれば、確実に聞き取る事が出来ていただろう。冷静に自分の今の脚の状態を見直すと、自分が何を見られたのかを悟る。同時に、開いていた脚を素早く閉じると同時に、両手でスカートの中を、太腿を両方から包み込むように隠す。


「あの……私一応女なんですけど? 女同士で見られたぐらいでそんなに恥ずかしがる事無いと思――」

「あんたあたしのそういうとこに興味あったんだぁ……。趣味悪い奴ね!」


 リディアは、まるで男に自分の下着を見られたかのような恥ずかしがり方を取ったコーチネルを呆れたかのような目付きをしながら言い返そうとしたが、途中で遮られ、少しだけ顔を赤らめていたコーチネルに怒りの眼差しを向けられる。




「だから好きで見た訳じゃないんですって!! そもそも私の目の前で思いっきり脚開いてる方が悪いんじゃないんですか!!」


 リディアだって、同性の下着を眺める趣味は無いはずであるが、それを見たという事実を明確に明かしてしまうのは不味かっただろう。確かにリディアのすぐ目の前で意図しない状況だったとは言え、丸見えになるような脚の開き方をしていた本人にも要因はあると思われるが、その状況を説明した時点で、リディアの運命は決定されてしまった事だろう。


「……。へぇ、あんた随分とマジマジと見てたみたいねぇ……。っていうか逆ギレなんて随分いいご身分してんじゃないの?」


 リディアが声を荒げた事に対して怒りを覚えたからか、コーチネルはゆっくりと立ち上がるなり、リディアへと近寄っていく。反射的にリディアも立ち上がるが、徐々に壁際に追い詰められ、やがて壁に阻まれ、後退が出来なくなる。




「えっ……あっ……いや……なんでそうなるの……? ってかちょちょ!! 拳握るのは勘弁ですよ!! やめてください!!」


 折角昨日は燃え盛る建物の中から救い出したというのに、次の日の朝を迎えるなり、些細な事情で自分自身に危機が迫る事になったリディアは表情を怯えさせながら、コーチネルの密かに強く握られた拳を確認する。


 きっと、力による仕返しを受けると思ったのだろう。涙こそは出なかったが、それでも必死な懇願である。


「大体あんたが人の恥ずかしい所見たから悪いんでしょ? それにあたし相手に怒鳴るなんて随分度胸あんじゃないの?」


 リディアの懇願を聞く気にはならなかったのだろう。コーチネルの心境としては、自分の下着を至近距離から見られた事による羞恥心よりも、年下から荒げた声を飛ばされた事による、年功序列を意識したかのような無意識な怒りの方が(まさ)っているのかもしれない。拳は未だに開く様子は無かった。




「だからその……あ、えっと!! それより早く町に向かわないと駄目ですよ! ミケランジェロさんだって待ってるんですから! 喧嘩してる場合じゃないです!」


 適切な言葉でコーチネルを納得させる事がどうしても出来なかったのだろうか、リディアはわざとこれからの目的を持ち出し、それを理由にある種の絶望的な空間から逃げ出そうと、小屋の外へと走り出す。その時にコーチネルが今立っている場所を殆ど意識していなかったからか、肩にぶつかりながら出入り口を目指したのである。


「って痛いって! ってコラ! 話逸らそうとするなっつの!」


 身体で体当たりをされれば、コーチネルだって痛みを覚えるものである。走り去るリディアの背中を見ながら叫ぶが、リディアが振り向く事は無かった。怒りをいつまでも引きずろうとする所がややしつこい性格にも見えるが、コーチネルはこのような性格なのだろう。




「それにこんな所だとまた昨日みたいに変な怪物とかに襲われる可能性もありますよ? それに私早くどこかでシャワーも浴びたいですし!」


 まるでコーチネルの隙を封じるかのように、わざとコーチネルを納得させるような正論を出入り口の前で振り向きながらリディアは口に出す。そして、戦い時に滲み出た汗をそのままにしていた為、気分の良くなる癒しの湯を全身に受けたい気持ちもあったからこそ、わざと共感を覚えさせるような事もコーチネルへと飛ばす。


「完全にあいつ……逸らしやがったし……」


 シャワーの事も、コーチネルはしっかりと返事をした訳では無かったのだが、リディアは返事も聞かずに結局、外に出て行ってしまったのである。だが、いつまでも不満を持ち続ける自分に対し、何故か突然罪悪感すら覚えるようになっていく。




「まあいいや。あたしもちょっと大人気(おとなげ)無かったかな……」


 どうしてあそこまでムキになっていたのだろうかと、今更ながらに馬鹿々々しく思ったコーチネルは、自分自身に呆れたような溜息を一度吐きながら、そして昨日から何も食べていなかった事を思い出し、そして同時に全身から徐々に力が抜けていくのを感じていく。








――森林を、1機の移動機が突き進んでいる――


 青色の小型の本体に引っ張られるように、4本それぞれのワイヤーで繋げられた機械が、前進に合わせて揺れ動いているが、その部分それぞれにリディアのそれぞれの足が置かれ、そして同じくリディアのそれぞれの手が握られている。引っ張られるような形で足場とハンドルを支配しているリディアの後ろには、コーチネルが背後からしがみ付くようにリディアと密着している。


 きっと、目的地であるクリザローの町までの距離はそこまで離れている訳では無いだろう。


 ただ、リディアは3日前の事を思い浮かべ、脳裏に大事な相手の事を思い浮かべる。




(そう言えばガイウス……大丈夫だったのかなぁ……?)


 通信機の奥で響いた爆音と、ガイウスの明らかに焦りの見えた口調、それらを考えると、確実に命を危険に晒されていた事ぐらいはすぐに想像が出来るし、そして無事にまた再会出来るのか、それがリディアにとって一番気にするべき問題であった。


 再会の約束をしたはいいが、恐らくはその3日前に連絡を取り合ってから、それ以降の連絡を取り合えていないのだろう。だからこそ、本当に無事なのかどうかの確認も未だに出来ないのかもしれない。


 それでも、リディアにとってはガイウスは少なくとも弱い存在だとは思ってはいないだろう。命を落としているとは考えてもいない可能性があるが、やはりあの通信機の向こうから聞こえた爆音だけはどうしても頭から切り離す事が出来なかった。


 無言のまま、移動機を操縦させている間に、ようやく目的地であるクリザローの町へと辿り付く。全体的に角ばった形状の、白い煉瓦で作られた民家が目立つ町の入り口で、リディアと、その後ろにしがみ付きながら同乗していたコーチネルは移動機から降りる。






                 ――クリザローの町 / Clitheroe town――


白の煉瓦で作られた建物が町全体を埋め尽くす。横幅や奥行きはそれぞれ違えど、四角で整えられた形がまた特徴。


規模としては村を上回るが、それでもまだ国家の権力を強く受けていないからか、人間外の種族の姿もちらほらと見受けられる。

しかし、村よりは警戒態勢が強いからか、機関銃を背中に装備した兵士が町の至る所に配属されている。


亜人達の存在は人間社会では差別を受けているのか、それとも、人間を超える力を持つ事を警戒されているのか。

だが、リディア達がここに来た段階では、まだ騒動は発生していない為、調和は保たれていると言えるだろう。


今は、料金を払う事で数時間の使用が認められているシャワールームで、それぞれ個室で身体を洗い流している最中だ。






 個室のドアが開かれ、袖が長い水色のワイシャツを着た女の子が賃借りのバスタオルを左手に抱えるように持ちながら出てくる。多少濡れた雰囲気を残した紫のポニーテールの髪型のその少女は、それぞれの個室へと繋がる中心部とも言える広間で待っていた銀髪の女の子に呼びかける。


「コーチネルさん! 今出ましたよ!」


 後ろから、リディアは空いていた右手を上げながら、待たせていた女の子に明るい声を投げかける。声をかけられた方も、すぐに振り向いた。


「あ、リディア! やっと出た? それと、これ飲んでいいよ!」


 コーチネルの方がリディアよりも早くシャワーを済ませていた為、少しは暇を持て余していたのかもしれない。だが、その声色からはあまりストレスを感じさせない様子であり、そして、リディアの為に余分に1本購入していたのであろう、果物の果汁を溶け込ませたような色をしたミルクの入った瓶をリディアに下準備もさせずに投げ渡す。




「おっと! それと、ありがとうございます!」


 リディアは咄嗟の判断力には優れているからなのか、瓶を落とす事無く、右手だけで上手に受け止め、自分の為にわざわざ用意をしてくれた事に対し、礼を言った。瓶の中身はそこまで時間のかかるような量では無いと判断したからか、コルクの蓋を抜くなり、その場で立った状態で飲み干し始める。




「じゃ、とりあえずそれ飲んだら一旦酒場の方に行こ? 色々あんたと話したい事もあるしさ」


 飲んでいる最中のリディアに対し、もう少し安心して時間を使う事が出来る場所で話し合おうと、コーチネルは提案を投げかける。


「……ふぅ、一応飲み終わりましたので、行きますか?」


 丁度コーチネルが言葉を一旦停止させた頃に、リディアも飲み終わった為、一息吐いてから、コーチネルの提案に一切の否定を見せる事無く、賛成する。施設内で必要以上に長居すると、管理人から苦情を飛ばされてしまう為、別の用事は別の場所で行うべきである事はリディアにも理解があったのかもしれない。


 身体を洗い流してさっぱりとしているから、きっと頭もスムーズに動いてくれるから、話したい事もきっととことん進める事が出来るだろう。








「そういえばあんたってさぁ……」


 いくらかの人々で行き交う道を、横に並びながらリディアとコーチネルは歩いていた。ふと気づいたかのように、コーチネルは横目でリディアを捉えながら、話を聞く姿勢を作らせる。


「はい? なんですか?」


 リディアも紫色のポニーテールを揺らしながら、自分を呼んだ女性の方に、足を止める事無く振り向いた。




「ミケランジェロさんに会いにここ来たって言ってたけど、あんな夜中から飛び出す必要って、あったの? 今思ったんだけど」


 このクリザローの町に来る前に滞在していたシミアン村にいた時の事をコーチネルは考え直してみたのだろう。朝までしっかりと睡眠を取った上で、疲労も回復させた上で出発するのが最も効率的では無かったのかと、桃色の飛竜から得られる鱗で作られた武具を纏った姿で、リディアへと問う。


 コーチネルはリディアのように魔力で服装を自由に変える事は出来ないらしく、この場にいる限りはリディアの着用しているような日常生活に対応した衣服の姿ではいられないようである。


「いや……まあ本当は別にちゃんとあのシミアン村で一晩過ごしてから朝に出発ってのも有りだったんですけど……ってでもそれだとコーチネルさんの方も危なかったんじゃないんですか? あの時私が来たから助かったみたいな状態でしたし」


 尤も、リディアはあの時、ならず者に襲われ、尚且つ通報で駆け付けた治安局の職員達に誤解を受けてしまった為に止むを得ずにシミアン村を飛び出したのだが、その後に実際に直面した出来事だけを考慮していたリディアは、その予想外の逃亡のおかげでコーチネルを救い出す事が出来たと、本人は無意識ながらもどこか誇らしげに説明をする。




「ま、まあ確かにあの時はあんたのおかげであたしは助かった訳だけど、自分が優勢になったみたいな言い方しないでくれる?」


 自分が助けたのでは無く、逆に助けられていた事実は今となってはもう消し去る事も誤魔化す事も出来ない為、コーチネルは自身の僅かながらの恥を誤魔化すかのように、リディアから一旦視線を外し、リディアのいない右側へと視線を向ける。


「え? 私そんな風に言ってましたか?」


 リディアとしては、コーチネルの弱みを引っ張り出そうとした訳では無かったのかもしれない。だが、相手が出した感情は、リディアの意図しないものであった為、言われて初めて気付いたようである。


 真っ直ぐな疑問形の表情が、真っ直ぐコーネルへと向けられる。




「あたしにはそう聞こえたのよ。まあそれはとりあえずその辺にしといて、それで、なんであんた、あんな夜に出発しないといけなかったのよ?」


 聞きたい部分が横道に反れてしまいそうになった為、やや強引に修復させると、再びコーチネルは自分が最も聞きたかった部分を今度こそリディアへと尋ねる。


「まあ……それなんですけど。私いきなり変な奴らに襲われたんですよ。なんていうか、どっかの賊なのか……どっかで雇われた変な部隊か……なんかよく分かんないんですけど、まあ兎に角変な集団が私の事襲おうと、っていうか殺そうとしてきたんですよ」


 きっとリディアにとっては、ただの乱暴な言葉や、物理的な力だけの暴力しか扱えない奴を相手にする事はそれほど苦では無い事だろう。それでも、相手からの殴打を受けてしまった事を思い出したのか、一瞬だけ嫌な表情を作るが、だけど事情を説明しなければ話が進まない為、あまり細かい説明はせずに、大まかに自分の身に何が起ころうとしていたのかを説明した。




「あんたも……殺されそうになってたんだぁ……。もしかしてそれであんたは逃げてきたって訳なの?」


 ある意味では、リディアもコーチネルも同じ状況だったと言える。リディアがあの集団に襲われていた頃、恐らくコーチネルも怪物に襲われていたのだから、確かにどちらも命の危険に晒されていた訳である。


 勿論コーチネルからすれば、あの集団を相手にして勝敗がどうなったのかは知らない為、またここで質問の時間が始まった。


「いや違いますね。流石の私もまあ……今考えれば結構あの時腹立ったので、それで私の方でちょっと、痛い思いさせてやったんですよ。相手は確か5人ぐらいだったけど、まあ男女混ざってたんですけど、そいつら全員に同じ思いさせてやりましたよ」


 もしかしたら、リディアはコーチネルから怖くて逃げ出したと勘違いされるのが嫌だったのかもしれない。だからこそ、リディアの事を襲ったあの集団達にどういう反撃をしたのかを、少し余裕の見えたような表情で、力による仕返しをしてやったと誇らしげに説明する。


 殴られた事を思い出し、少しだけストレスが蓄積されるのを覚えてしまったが、だけど逆に殴り返す事もしていた為、言葉で見ればただの暴力に見えても、それで相手に同じ思いをさせられるのなら、これほど気分の良いものは無いだろう。




「自慢話は別にいいっての。だけど、あんたが勝ったっていうならじゃあ別にやっぱり一晩泊まっても大丈夫だったんじゃないの?」


 コーチネルには対人戦のスキルは揃っているのだろうか。


 何だか自分には無い戦闘能力を聞かされたから、それで少し機嫌を悪くしてしまったかのような、払い除けるような言い方で嫌々な雰囲気でリディアの言葉を受け取った。


 自分がもしかしたらリディアよりも劣っているかもしれないという不安を忘れてしまおうと、すぐに次の質問を投げかける。確かに連中を力で黙らせたのなら、安心してその日の疲れをあのシミアン村で癒しても問題は無かったはずである。


「なんか……私に対する対応ちょっと冷たくない……ですか? あ、それと問題はその、やり返した後だったんですよ。治安局の職員の人達が騒ぎを聞いて駆けつけてくれたんですけど……」


 自分の優勢の話をする度にやや冷めたような返事をしてくるコーチネルに不安を覚えながらも、リディアはまだ話の続きが残っている為、それを説明する。ただ、その内容に対して何だかまた別の不安がこみ上げてくるのはきっと気のせいなんかでは無い。




「『けど』ってのは? あんたその職員達にあんたの事襲った連中の事連行させたんじゃないの?」


 無意味に話が続く事に疑問点を抱いたのだろう。コーチネルは何となく自分が予想していた結末と異なる展開がこれから話されるのかと思うと、茶色の瞳を細めずにはいられなかった。ショートの銀髪を横から揺らした風が妙に冷たく感じた。


「いや……まあ……なんか私が襲ってたみたいな風に誤解されたんですよ。私一応自分は悪くないって何とか説明しようとしたんですけど、とても耳貸してくれるような状態じゃなくて、いきなり私に対して撃ってきたんですよ。まあ実弾じゃあ無いとは思いますけど」


 本当はリディアもあまり思い出したくない話だったかもしれない。ただ、この話をコーチネルに明かす度に、何だか徐々に不安が心の奥からこみ上げてくるような気を覚えてくるが、ここまで来ると、もう気のせいとは言えないだろう。




「それって要するに治安局の人があんたが犯人だと勘違いして、それであんたの事を逮捕しようとしたって事?」


 リディアの言い分から容易に状況を把握する事が出来たのだろう。勿論その内容は、とても明るく聞けるようなものでは無い。コーチネルだって、決してリディアが全て悪いとは思っていないと思われるが、目つきの方はやや鋭くなっている。後処理の事で、きっと表情を変え始めているのだろう。


「そうですね。でも逃げ切りましたけどね」


 いつの間にか両者の歩く速度が非常に遅くなっていたが、リディアは事実だけは伝えようと、最終的にどうしたのかを話したのだが、不安が充満してしまっていたからか、声色に自信は灯っていなかった。




「逃げたって……リディアあんたもしかして今ももしかしてずっとマークされっ放しって事よね?」


 明らかに重大な事を逃しているだろう、とでも言いたそうな険しい表情をコーチネルは浮かべている。治安局から逃げたとしても、姿を見られている以上はそれを放置するはずが無いのだから、実質的に今もリディアは治安局から捕まる可能性を持っている事になる。


「え? あ、は……はい……多分、そうだと……思いますね」


 もしかすると、言われて初めて自分が今非常に危険な状況にいる事を自覚したのかもしれない。コーチネルの口調にも怒りが混じっており、身の危険をその場で感じた為に、返事も非常に歯切れの悪い、何かに怯えるようなものになってしまっていた。




「多分じゃなくてあんたずっとマークされてると思うわよ? このままだったらあんた、指名手配にされてもう外歩けなくなんじゃない? ってかまさかこのままほっとこうとか思ってたりしてないよねぇ?」


 顔も怒っているが、声も怒っている。コーチネルは今のリディアの状況を把握するなり、近い未来でどのような扱いを世間から受けるのかを荒く説明する。本来であれば誤解を正確な形で解かなければいけないはずなのに、リディアはそれをしていなかったのだ。




「えっと……あ、いやいや! ほっとくなんてとんでもないですよ! ちゃんと事情は説明しようと思っ――」

「言い逃れとかしないでいいから! どうせあんたの事だから勝手に都合のいいような形で解決されるとか思ってたんでしょ? あんたってそういう細かい所とか見逃すんだから、ちゃんとやってっつの!」


 リディアもこのままでは言われっ放しで最終的には怒られてしまうと焦ってしまい、初めから自分で解決するつもりであったと妙に明るい口調で言い返したが、コーチネルは真面目であった。


 まるで見破っているかのように、その場で歩いていた足を完全に止め、そしてリディアへと真っ直ぐ向き直す。視線の高さが殆ど同じであるリディアの戸惑った様子等、まるで気にもかけず、荒げた声をリディアへと飛ばし続けた。




「それは……えっと……ごめんなさい……」


 確かに自分の欠点だったかもしれない。かと言って、今からではもうどうする事も出来ず、ただここでは、自分の不足な部分に付き合わせてしまった事に対して、弱弱しく頭を下げるしか、リディアには出来なかった。


「いや、別にあたしに謝られてもしょうがないんだけどさぁ。ま、まあいいや。だけど考えたらあたしもあんたのその微妙ないい加減な所があったおかげであの化け物に殺されないで済んだ訳だから、まあいいわ。今回はその辺の事も考えて大目に見てあげるから、そんな落ち込んだ顔なんてもうやめなさい」


 コーチネルが直接実害を飛ばされた訳では無かった為、自分に謝罪をされたとしても、それは逆に困るだけだったようだ。


 急激に弱々しくなったリディアの心境を意識してか、自分の命が助かった事も考慮して、また数分前の時と同じような明るい表情にコーチネルは戻す事にした。リディアだってきっと好きで治安局とのいざこざを放置しようとしていた訳では無いのだから、状況を察知してやるのも年上のする事だろう。




「そう……ですか? あの……所で……」


 勝手に話を進められるかのように自分の過ちを許してもらえたリディアであるが、やはりコーチネルの剣幕を忘れる事が出来なかったのかもしれない。そして自身の過ちの事も考えれば、言われた通りにいつものような明るさを前面に出したような表情に戻すのは無理があったかもしれない。


 それでも聞きたい事がどうしてもあったから、聞こうとはしたものの、やはり気持ちが回復しきれていなかった為に、歯切れの悪い状態が続いてしまった。


「何よ? だからちゃんと喋ってっつの。あんたらしくないわよ? ハッキリちゃんと聞きたい事があるなら聞きなさい」


 コーチネルは腕を組みながら、そして一旦止めていた足を一切動かす事無く、リディアが聞きたがっている何かを聞く姿勢になる。やや強い風がコーチネルの腰を横切り、短いスカートが内部の防御を崩してしまっていたが、リディアは敢えてそれは口に出さない事にした。




「えっと、ですね。そのさっきの治安局から逃げてそのまま放置したっていう件ですけど、今からならちゃんと事情説明すれば何とかなります……か?」


 指で目に見えない壁でもなぞるかのようにいい加減なラインを描きながら、リディアは治安局の職員と直接話を持ち掛ける事で、今の自分に纏わりついている社会的な危機から逃れる事が出来るのかどうかを恐る恐る聞いた。


「あぁそれね。簡単よ。あたしの知り合いが局の職員やってるから、今から連絡すれば分かってもらえるはずよ」


 初めから、コーチネルは解決する手段を整理していた上でリディアに怒っていたのだろう。予め回避手段を持っていなければ、きっとコーチネルも自分の事では無いとは言え、どう対処すべきだったのか、あたふたとしてしまっていたかもしれない。




「なるほど。だったら安心です。わざわざありがとうございます」


 自分に降りかかっていた危機が完全に無くなってくれる事が分かったからか、まるで緊張感の無いような口調でコーチネルに笑顔を見せる。




「確かあんたが襲われたって場所、確かシミアン村、だったわよね? じゃあちょっと通信機、借りてくるから――」

「それなら私持ってますよ? 私の携帯式ので良かったら貸しますよ?」


 早く事実を伝え、いつまでも纏わり付く不安から解消されたいからか、コーチネルは今のリディアの気の抜けた言い方には特に意識も向けず、実際にリディアが勘違いされた場所を確認するなり、通信機を使える場所に向かって走り出す。


 リディアは連絡手段の為の携帯型の通信機を持っていた為、それをコーチネルに貸そうとするが、コーチネルはそれを拒否してしまう。




「いやいいわよ。あんたはちゃんと常に持ってなさいって。いつ連絡とかが入るか分かんないんだし。あたしはちゃんと別のとこで借りてくるから、それより先にあんたは酒場に行って、そこでミケランジェロさんがいるかどうか聞くなりしてなさい。じゃ、あたし行ってくるわね」


 リディアの持つ通信機の重要性を理解しているであろうコーチネルは、一時(いっとき)でもその通信機をリディアから隔離させようとは思わなかったようである。もし緊急の連絡が入ったとしても、コーチネルが使っていれば確認が出来なくなる為、それならば、多少の労力を使ってでも他者から借りた方がいいと察知したのだ。


「分かりました! 先に行ってますね!」


 リディアが向かうべき酒場と、コーチネルの向かう場所はそれぞれの分かれ道に繋がっていた為、2人はそこで一時的に分かれる事となった。


 自分だけになった事で、心に余裕が出来てしまったのか、独り言を思わず口から漏らしてしまう。




「まあとりあえず……良かった。確かにあのまま逃げっ放しだったら絶対不味かっただろうし……。ちゃんと反省しないと……」


 恐らくは直接あの場にいたリディア本人が治安局に事実を伝えるより、第三者である誰かが代わりに伝えてくれた方が解決もしやすかっただろう。リディア本人が出たとしても、場合によっては嘘を吐いていると思われる可能性もある為、コーチネルに甘えて正解だったのかもしれない。


 それでも、やはり他者に迷惑をかけたのは事実である為、心の中での反省文が1枚追加されたのは言うまでも無い。




「とりあえずまずは酒場の方に行ってみるかな!」


 合流すべき相手であるミケランジェロの居場所を聞く為に、リディアは改めて目的地を見つけたかのように、明るい心境で酒場へと駆け足で向かい出す。黒いニーソックスで覆われた足は軽やかにリディアを酒場へと運んでいく。


 そして、駆け足の状態でリディアは再び通信機を懐から取り出し、目的の人物へと連絡を取ろうとする。しばらく耳に当てていたが、やはり繋がる気配は無かったようである。




(駄目だ……やっぱり連絡全然付かないや……ホントにここにいるのかなぁ……?)


 例えいたとしても、いないにしても、酒場に向かうという目標は変わらない。もしいないのであれば、どこに向かったのかを聞けない事も無い為、どちらにしても酒場が現在の目標地点である。


 もしかしたら、リディアの中では死を思い浮かべてしまっているかもしれない。確かに死んでいれば、連絡をしようにも一切繋がらないのも辻褄が合うと言えるが、死を確定するのは、きっとリディアの精神が許さないだろう。


 恐らくは最低でも死を予想はしていないと思われる。表情には明るさが滲み出ている為、会えない事による絶望よりも、会えなかったとしてもきっと行方だけは聞けるという希望の方を期待していると見て間違いは無いだろう。


 中央から左右に開くドアのある建物を見つけたリディアは、心の準備を僅かな時間を使って済ませた後、そのドアに右手を伸ばす。






 やはり内部は酒場という雰囲気に相応しく、無数に設置された円形状のテーブルを、沢山の男達が囲んで座っている。女性も少なからず混じっているが、何れも成人を超えているとしか思えないような威圧感さえも携えた者が多い。


 男達も、腕に刺青を彫っている者や、限界まで短い髪にしている者等も複数おり、若い男達とは格が違う事を周囲にアピールしているようでもあった。


 そんな空気の中で、リディアは酒場に入ってから、まずは目的の人物がいないのか、周囲を見渡しながら歩き回ったのである。時折男達の視線が突き刺さる事もあったが、リディアはそれによって怯えたり、怖気付くなんて事も一切無かった。


 怖がるより先に、目的の人物がいるのかどうか、それを確かめる事が先だったからだ。外見だけの威圧感で怖がっていては、きっと外の世界で無数に存在する怪物なんかを相手にする事は実質的に不可能である。




 しかし、酒場には結局姿は無かった為、リディアはその場で暗い表情を浮かべてしまうが、だけどもしかしたら聞く事で何か分かるかもしれないと、向かう場所を同じ酒場の内部の、今度はバーカウンターへと決める。


「あの、ごめんなさい! 1つ宜しいでしょうか?」


 ワインの入った瓶を丁寧に拭いていたマスターに向かって、リディアは自分の明るさを武器にしながら、明るい表情で声をかける。力強さを感じさせるような中年太りの男は、ゆっくりとリディアに振り返る。




「あぁ? なんだ子供か。うちは未成年には酒は出さないぞ? ジュースならいくらでも出してやるが」


 外見通りの低く威圧感のある声で、マスターはリディアの年齢を見破った事をリディアに伝えた。


 商売とは言え、未成年の飲酒は認める訳にはいかなかったようであるが、恐らく、リディアの目的は飲酒では無いだろう。


「いやいや、飲み物は間に合ってます。それより、ちょっと人を捜してまして……」


 リディアが要求しようとしたのは、飲み物では無く、情報である。カウンターに両手を付き、身を軽く突き出すような体勢でマスターを見つめている。




「人だと? さては迷子にでもなったのか?」


 水色に近い青い瞳と、紫のポニーテールがリディアの歳若さと幼さを表現していたのだろう。マスターの男はまるでリディアが仲間とはぐれてしまったと思ったのか、笑い出しそうになる感情をいくらか堪えながら、からかうように言葉を渡す。


 他の客の何人かも、リディアの後ろ姿を見ているが、話のやり取りを面白いと思っているのか、外見に見惚れているのかは分からない。


「いや迷子では無いですよ。今日ここで待ち合わせしてる人がいたんですけど、見当たらなかったので、ちょっと聞こうと思った訳なんですよ」


 冷静に相手の質問に答えながら、リディアはこの酒場に来た理由をマスターへと伝えた。リディアも決してふざけている訳では無かった為、表情は真面目そのものであり、早く事実を知りたいが為に、マスターの男の冗談交じりな喋り方に多少の苛立ちを覚えていた可能性もある。




「さてはデートの約束でもしてたのか?」


 マスターは、リディアの年齢を利用して面白がっていたのかもしれない。真剣な表情が可愛らしかったから、わざと話を長引かせて、顔を見る時間を稼いでいると見てももしかしたら強ち間違っていない可能性がある。


「それも違うんですけど、まあミケランジェロさんっていう方です。爬虫族の亜人なんですが、ご存じ無いでしょうか?」


 やや面倒そうにリディアはそれを否定すると、話を早く進ませる為に名前を直接出した。元々人間とは異なる種族である為、その種族の説明も簡単に明かし、そしてそれを知っているのかどうかをマスターへと聞く。




「ん? ミケラン……ジェロ……か?」


 名前を聞いた途端、男の表情に僅かな変化が見られた。それも悪い方向へと傾いていたが、ワインを棚に戻しながら、自分が今リディアから聞かされた名前を連呼し、それが間違い無いかどうかを確かめる。


「はい、そうです。もしかして、ご存じ、でしょうか?」


 口調にも何か怖さが感じられたからか、リディアも一瞬だけ恐怖に駆られてしまうが、目的の情報はすぐ近くである為、崩れかける感情を無理矢理に押さえ込み、相手がミケランジェロの事を知っているのかどうかを聞こうとする。


 他の客達も、リディアが出した名前に反応して、視線をリディアへと向け始めている。何れも、それは好意的なものでは無く、感情の見えないものから、明らかにリディアを敵対しているかのような目つきのものまで様々だが、やはり笑顔は誰一人作っていない。




「おい小娘……。そいつと知り合いなのか?」


 マスターは眉間に激しい皺を作りながら、カウンターの裏に両手を伸ばしている。先程までの可愛がったかのような感情の一切消えた呼び方にもリディアは1つの恐怖を覚えていたが、男が取り出した物に対し、最も強い感情を表した。取り出した物は、ショットガンであり、当然銃口はリディアの顔面へと向けられる。


「って、えっ!? ちょっと何なんですか!? そんなもの持ち出して!」


 リディアだって、銃口の意味を理解していないはずが無い。自分が殺害されてしまうと察したリディアであるが、きっと何か理由があるのだと非常に短い時間の中で整理し、この場では数歩後退ってしまったが、すぐに酒場から逃げ出すような事はしなかった。


 だが、簡単に人の命を奪い取る事が出来る銃口に対しては、恐怖の感情を表に出さずにいる事は出来なかった。




「さっさと出てけよ。こっちはそいつのせいで大迷惑したんだよ!!」


 何かミケランジェロが問題を起こしたのだろうか。それを説明するかのような言い方ではあるが、マスターはもしミケランジェロの味方をする者がいるなら、そいつをここで射殺しようとしか考えていなかったのかもしれない。


 リディアから銃口を一切逸らそうとせず、マスターは怒鳴り散らす。


「迷惑って……何があった――!!」


 状況をまともに把握する事が出来ず、リディアは自分が捜していた相手が一体この町で何をやらかしたのかと、厄介な気分になり始めてしまったが、カウンターの奥に設置してある無数のワインの内の1つが、リディアに危機を知らせてくれたのだ。




――硝子(ガラス)に僅かに映った、男の姿……――


その男とは、マスターとは別の男であり、今まさに、リディアの背後から襲い掛かろうとしていたのだ。

右手にナイフを逆手状に持ち、気付いていないであろう少女の背後から、そのまま刺してやろうとしていたのだ。


だが、リディアも油断をしていた訳では無い。青い瞳は硝子の反射を通して、自分の状況を教えてくれた




ナイフはリディアへ突き出され……

酒場は何かしらのトラブルが発生する場所として結構ポピュラーな気がしますが、それは洋画の影響でしょうか? そもそも酒場なのに未成年が入るというのもあれですが、だけど入るからにはそれなりの度胸も必要ですし、絡まれた時にそれを処理する根性も必要でしょう。だけど、今回リディアは最後の方でピンチになってるけど、どうなるんでしょうか?

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