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黒衣を纏いし紫髪の天使  作者: 閻婆
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第22節 《肉食の氷霧蟲 卵嚢に閉じ込められた少女達の末路は》 3/5

今回は少女2人が魔物の体内に取り込まれてしまうっていうちょっとグロい場面があります。とは言え、決して身体の欠損とかそういう修復不可能な重傷を負うという事は無いですが、巨大な生物の体内に呑まれてしまうっていうシーンは一部のリョナ系の作品で見られたような覚えがありました。その辺を少しネタにさせて頂いた上で、今回のシーンを展開させて頂きました。





 冷気が支配する洞窟で、魔物達は人間を捕える事に成功したのである。


 僅かな時間を突き、力任せに人間達を捕獲する。


 魔物からすれば、人間は骨の周囲に肉を巻き付かせた食糧と同じ存在。


 自分達からやってきた以上は、こちらも丁寧に御馳走として迎えさせてもらう。


 生きて帰れると思う事が間違いだ。




「リディア! 今助けるから待ってて!」


 緑の魔導服を纏っている少女、シャルミラは右手から槍のように細く尖った物質を魔力で生成して出現させ、それを上空で拘束されているリディアを狙って投げつける。猫のような外見を持つ浮遊生物のバルゴはシャルミラの華麗な遠距離攻撃を隣でじっと見守っている。


 勿論対象はリディア本人では無い。リディアの両腕に纏わり付き、無理矢理に束縛者を浮遊させている蟲の幼体達である。


 槍の投擲(とうてき)の如く投げつけられた魔力製の武器はリディアへ接近すると同時に球体状に分離するように砕け、投げられた速度を一切殺さずにそのまま幼体へと付着する。


 包み込むように付着した元々槍だったその物質は、そのまま電撃となり、幼体達を死滅させる。




――浮力を失ったリディアはそのまま落下に入ってしまうが――


 リディアも大人しく地面に落とされる程の未熟者では無い。


 自分の脚部に念じる事で重力加速を減らし、落下速度を一定に保つ事に専念する。紫のポニーテールが上に持ち上がるような速度ではあるが、着地の際に脚を負傷してしまう程の速度では無い。


「ありがとシャル!」


 落下を続けながらリディアは後方の下に振り向きながら、右手に溜め込んでいた魔力を振り払っている状態のシャルミラに親指を立てた。


 下のやや前方には骨そのものと見違えるような外殻を持った母体がリディアを待ち構えていたが、捕食の願いは叶わなかったからなのか、下からリディアを見つめたまま、殆ど動きを見せずにいた。




「さてと……どう仕返ししてやろうかな」


 落下中のリディアは再び戦闘体勢に戻り、両腕からエネルギーで練った刃を伸ばす。目の前の巨大な母体と戦う覚悟は既に出来ている。寧ろ、自分を食べようとした相手なのだからもう手加減をするつもりも無かっただろう。




――徐々に地面へと近づいていくが……――


 恐らくは母体との戦闘を覚悟していたであろうリディアであるが、母体の後部に見える巨大な卵嚢(らんのう)が激しく動いている様子をシャルミラは目にしてしまう。内側から何かが突き破ってくるかのように、激しく波打っていた。


「リディア! なんか向かってくる!」


 これから着地するリディアの隣に走り寄っている最中だったシャルミラだが、伸びた器官を黙っている訳にもいかず、声を張り上げながらリディアに忠告を飛ばす。卵嚢から伸びる触手のような、蛇とも言える細くも太い物質を指差すが、指のよる場所の指示はあまり役には立っていなかったのかもしれない。




「え? 何……っ!?」


 落下中のリディアは忠告を受け取る事は出来たが、やはりシャルミラの指にまでは視線を向けられなかった。


 しかし、正面からは何かが自分の方へと向かってくる気配は無い。だが忠告に偽りは無いはず。見るべき場所は、正面では無く、左だったのだ。




――それを直接見る前に、左から胴体に吸い付かれ……――




「なっ!! 何……!?」


 着地する前に、チューブとも表現すべきなのか、茶色の物体がリディアを横から捉えてきたのだ。


 横腹に吸い付き、リディアの降下を許さなかった。徐々にリディアとの接触部分の面積を広げていき、何とか引き剥がそうと刃を突き立てているリディアの胴体部分をほぼ全て、覆い尽すまでに至ってしまう。残り僅かな時間で、腕や脚にまで面積は達してしまう。




「こ……これ……呑もうと……してる……!!」


 黒のフェイスマスクで鼻から下を隠しているが、捕食用のチューブ状の物体はリディアの首元にまで広がっている。マスクは外部からの臭気を軽減する効果があるのかもしれないが、気色悪さしか伝わらない独特の柔らかい触手が自分の身体に纏わり付いている状況で、リディアは冷静にこれから自分が何をされるのかを悟る。


 吸血等の目的では無い為なのか、身体には激痛こそは走っていないが、この物体に身体を包まれてしまえばもう未来は暗闇でしか無い。




「リディア! 耐えて! もうあったま来た!」


 リディアを執拗に狙い続ける魔物達に怒りを感じ始めたシャルミラは再び魔力で生成した槍を右手に作る。目の前で友達を捕食しようとする魔物を黙って見ていようとは思わず、触手のように伸びた器官を切断してやろうと、鋭い槍を投げつける。


 見た目こそは皮にしか見えないその器官ではあったが、槍の貫通を受け入れず、独自の弾力で跳ね返してしまう。




 一方で、バルゴはリディアを捕らえている器官では無い場所に目を向けていた。


 それは、地面を這いながら、右から迫る物質であった。それはリディアを今呑み込もうとしている器官と同じ色、同じ形をしていた。


「!?」


 間違い無く、それはシャルミラを狙っていた。リディアを離す事で精一杯であったシャルミラ本人は自分が別の器官から標的にされてしまっている事に気付いていない。




「シャル! シャルも狙われてるよ! とりあえず……フレイム!!」


 バルゴはシャルミラの右に盾を作るかのように、地面を念力で燃やし、シャルミラの身長よりも高く立ち上がる炎を硬質化させ、物理的に機能するであろう白い壁として変質させる。


「え? あたしも!? って効いてなくない!?」


 自身を保護してくれるかのように盾を作られた事を知るシャルミラだが、白い壁は半透明であり、奥の様子を辛うじて確認する事が出来る為、壁越しにシャルミラは自分も狙われていた事に気付く。


 しかし、伸びていた器官は元々は炎だった壁に一度は衝突して停止してしまうが、それで停止を続ける訳では無く、強引に体当たりを始め、壁を力任せに破壊してしまう。




――咄嗟にシャルミラは電撃の球体を飛ばすが……――




「い……いやっ……!!」


 投擲(とうてき)した電撃を、その細長い器官は先端部分でまるで頭突きのように体当たりをする形で弾き飛ばし、口を開いてそのままシャルミラの上半身をすっぽりと包み込んでしまう。


 シャルミラは細長い管状の物体によって、上半身を包まれてしまったのである。外に出ているのは華奢な下半身だけで、腰から下だけがまだ包まれずに済んでいるが、抵抗の為に激しく動かしている両脚が空しく宙を切り続けている。


(ど……しよ……。これ……じゃ……)


 上半身のほぼ全体を締め付けられているのか、シャルミラは言葉を直接出す事が出来なかった。視界が真っ暗になり、両腕を自分の胴体と密着させる形で完全に固定されてしまっている。左右から締め付けられている為に、両腕を自由に動かす事等出来はしない。


 呼吸は妨げられてはいないものの、上半身を締め付ける力が強い為、腹部や胸部を圧迫されている関係で、非常に息苦しい。内部は不気味に生暖かく、そして外に露出したままの下半身には真冬を連想させる冷気が伝わり、温かさと寒さの両方が不釣り合いに身体に伝わっていく。




――外で見ていたバルゴはすぐに助けに入る――




「シャル!! こんな奴に食べられるなんて駄目だよ!!」


 バルゴの特殊能力なのだろうか。茶色の(つぶ)らな瞳を茶色一色に光らせながら、小さな両手から黄色の縄のような物質を発射させる。魔力で作られたそれは、まだあの卵嚢から伸びた器官から外に出たままであるシャルミラの両脚に纏めて絡み付き、足首から引っ張るようにしてバルゴは力を込める。


 シャルミラを呑み込もうとしている管状の物質はシャルミラを地面と水平になるような向きで吸い込もうとしているが、バルゴは魔力を増大させる事で引っ張る力を強めているのか、人間よりも小型な体型ではありながら、確かにシャルミラは管状の器官から徐々に引っ張り出されていた。僅かではあるが。


(これ……バル……ゴ……なの?)


 突然自分の脚を閉じられた状態で押さえ付けられた感触は伝わったが、そのまま引っ張られるのも身体で感じる事が出来たようだ。脚に力がかかっている事を意識したシャルミラであったが、それがバルゴの能力だと理解している辺り、過去にも似た力を使っている様子を見た事があったのだろうか。


 バルゴから見たシャルミラの様子は、緑のスカートが乱れてとても直視するには気まずいような形になってしまっていたが、今は引っ張り出す事に専念するしか無い。心を謝罪を続けながら、何とかして引っ張り出そうと、宙を浮きながら魔力を放ち続ける。


 このまま力を振り絞れば、きっとシャルミラを引っ張り出す事が出来るだろう。




――その一方で、リディアは……――




「こんな……とこ……で……!!」


 リディアはシャルミラの時とは異なり、身体の横から管状の器官に吸い付かれていたが、徐々に向きを変えられ、臀部(でんぶ)から折り畳まれるようにして吸い込まれそうになっている状態だ。何とか口元で足掻く為に、まだいくらかの自由が効く両腕と両脚を、口の(ふち)へと引っ掛け、少しでも内部へ入る時間を遅らせようと力を込めていた。


 黒の戦闘服に纏わり付く粘液が非常に気持ち悪かったが、それよりも自分を圧迫するこの器官の内壁がリディアの能力の使用を見事に阻害してしまっている。力を込めようにも、思うように力を発揮する事が出来ない。


 マスクを装備していなければ、恐らくは何かしらの悪臭を受けていたと確信しても良いような生温い空気がリディアの顔面に当たっている。しかし、今は尻が窪みに嵌ってしまったような姿勢であっても、身体中に力を入れ続けなければ、呑み込みを許してしまう事になる。


「呑まれたら……やっぱり……終わり……?」


 本当に呑まれようとしている状況で、リディアは本当に奥にまで達してしまった時に自分がどうなってしまうのかを考えてみたが、やはり一般的な生物と同じく、そのまま消化を開始してしまうのかと、それを考えたら尚更ここから脱出をしなければいけない。


 両手は今まさに自分を呑もうとしている器官の(ふち)を両手で掴んでおり、とても手を使って器官を黙らせられるような状況では無く、もう対抗の手段は無いに等しい。


 そして、リディアは目の前にまた違う何かが現れるのを目視してしまう。もう視界は左右と上下は口元の内側しか見えない程に挟められているが、正面だけならまだ確認する事が出来る。正面から迫っていたのは、細くて長い、そして先端に口は存在していないが、丸くなった、まさに触手そのもので、そしてそれが今見えている分だけでも、5本がリディアを先端で捉えていたのだ。




「何……これ……?」


 5本全てが自分を見つめているかのように、目の前で先端を向けている。触手には目は付いていないが、もしあった場合、確実にリディアと視線を合わせている事だろう。


 呑み込まれないように口の縁に掴っているリディアではあるが、触手達は間を置いてから、とんでもない行為を始める。




――触手達がリディアを目掛け、先端で突き刺す……――


 先端が丸い為、刺すというよりは人間等で言う殴打の行為に近いかもしれない。


 リディアが握った際の拳よりも若干太いであろう太さの触手がリディアを更に奥へと押しやる為なのか、窮屈に折り曲げられた胴体辺りを殴りつけてくる。


「なっ!!」


 リディアは目の前から触手がパンチの如く向かってくる事を把握した為、反射的に両腕で顔面だけは力強く守ろうとする。触手達はリディアの身体だけでは無く、やはり顔辺りも狙っている。殆ど大人の男と同じか、それ以上の力で殴られている為、それだけの力で顔面に入れられた時の事は考えたくなかっただろう。


 しかし、殴打によってリディアの手足が器官の口の(ふち)から離れてしまい、数回の殴打の後に遂に呑み込みが完成に近いものになってしまったのである。


 肉の壁がリディアを容赦も無しに奥へと進ませていく。リディアは自身の目の前に防御壁(バリア)を辛うじて作っていた為、触手からの殴打で激しい痛みを伴う事が無かったが、無理な体勢であった関係で完璧な形を作る事が出来ず、衝撃のいくらかは無抵抗な身体に容赦無く降り注ぐ結果となった。


(もう……これ……私……どうな……ちゃう……)


 肉壁が遂に視界全てを覆い尽してしまったが、リディアはこの自分に襲い掛かってきた器官の根本を思い出し、必ずいつかは空洞のような場所に出る事が出来るだろうと、今は奴の思い通りに呑まれる道を選んだ。幸い、呼吸は疎外される事も無く、この肉壁からは消化液のような妙な分泌液も出ていない為、身体を荒らされる事も無いとリディアは多少の思い込みも混ざっていながらも、理解はしていた様子である。




 リディアの状況を知らないバルゴは魔力で作った縄でシャルミラを引っ張り出そうと力を込め続けていたが、ここで戦っているのか、シャルミラを呑み込もうとしている卵嚢だけでは無い。しかし、今はそれを忘れているかのように、シャルミラの救助に集中してしまっていた。


 決して殲滅させた訳では無かった残りの蜘蛛の魔物が地中から現れ、バルゴの背後から不意打ちをかけようとしていた。バルゴの仲間も今は回りには一切見えず、狙うには絶好の機会。


 蜘蛛らしく、糸で背後から狙うのかと思いきや、放射状に開くであろう牙で塞がれた口を開き、同時に赤の色を帯びたガスを解き放つ。




――濁ったような発射音を聞いたバルゴだったが……――


 魔力の縄を維持させたまま背後を確認したバルゴ。


 しかし、その時はもう遅かった。真っ赤なガスが自身を包み込み、突然身体に激しい痺れが走り始める。魔力の維持も出来なくなり、シャルミラを掴んでいた縄も消失してしまう。空中浮遊だけは維持されていたが、攻撃や補助等の魔力を使う事が出来なくなり、ただ自分に麻痺性のガスを発射したであろう蜘蛛の魔物を睨みつけるしか出来なかった。


(ヤバッ……これじゃ……魔法……が……)


 身体に激しい痺れが走っていれば、目の前の蜘蛛に反撃を仕掛ける事も出来ない。そして、今まさに呑まれようとしているシャルミラを助け出す事も叶わない。


 動きを取る事が出来なくなったバルゴに対し、蜘蛛の魔物は最後なのか、それとも最期なのか、口から今度はガスでは無く、束ねた糸を吐きかける。身体が人間よりも一回り小さいバルゴはこれによって全身を瞬時に糸で巻き付かれてしまったのである。




――バルゴはそのまま引き摺り込まれてしまい……――


 糸で全身を巻き付かれてしまったバルゴはもうそれが猫のような外見を持つ浮遊生命体であるという面影を無くしており、蜘蛛の力によって無抵抗に引っ張られていく。


 その場所とは、他の者達と同じく、地中であった。蜘蛛はバルゴを糸で引っ張りながら、後部から地中へと潜っていく。自分が潜った部分が開いたままだったのだろうか、バルゴも糸に引っ張られる形で蜘蛛が潜っていった場所から内部へと引き摺り込まれていった。


 引き摺り込まれるバルゴの周りに、それを阻止してくれる者の姿は誰もいなかった。




 救助されるはずであったシャルミラは卵嚢から伸びた器官によって上半身からまさに丸呑みをされている最中であったが、蜘蛛の放った赤いガスはバルゴだけで終わった訳では無かった。


 バルゴを突き抜け、距離が更に離れているはずであったシャルミラにもガスが届いていたのである。まだ外に出たままになっている脚にそれが接触する形となったが、身体に浴びていたバルゴが麻痺を起こすような毒を含んだガスである。シャルミラにも影響が無いとは思えない。


(!! 何……これ……。脚……熱い……よ……。なんか、感覚……が……)


 もう視界は伸びている器官が全て覆い尽している為、真っ暗でしか無い。しかし、脚には何か高温の風でも吹きかけられているかのような熱さが走るのを感じ、そして同時にまるで正座を長時間続けていた時に感じるような痺れが太腿から足首にまで走る。赤いガスには毒の成分が入っていたのは間違い無いが、吸い込まずとも、皮膚に付着しただけで何かしらの異常を起こすような性質だったのだろう。




 それでもガスを直接口から吸いこんだ訳では無かった為、完全に自由を奪われた訳では無かったようであり、シャルミラはこれ以上、今で言えば脚から先に入ってしまわないよう形振(なりふ)り構わず脚を開いて無理にでも抵抗をする事しか出来なかった。スカートであったせいで、本人が今の状態を見たら絶句するのは間違い無い程に激しく乱れていたが、1人の少女を呑み込もうとしていた器官の側面から、細い無数の触手が伸び始めた。


 リディアに激しい殴打を加えながら奥へと押し込んだあれらと同じ形であり、そして同じ場所から伸びている。そして今の捕食対象はシャルミラだ。


 シャルミラの上体を包んでいる器官は地面と水平になる形を保っていたが、本格的に呑み込む形態に入る為なのか、地面に対して垂直に伸ばし始める。それは丁度シャルミラの足が天井を向くという事になる。呑み込まれる事を(あらが)う為に脚を暴れさせていたが、器官の側面から伸びた触手達はゆっくりとシャルミラのまだ外に露出したままの部分へと接近していく。




――外の様子を一切確認出来ないシャルミラも何かが触れるのを感じる……――


(えっ? ちょっと……誰……? 触ってるの……?)


 赤いガスを脚に受けたせいで痺れてはいたが、何かが触れた事に気付く事は出来た。誰が手を出しているのかは分からないが、太腿を撫でるように触られた事を確かに感じ、もしかすると今自分はとんでもない連中に囲まれているのかという不安に駆られてしまう。


 触っているのが誰か等を詳しく考えている余裕は無かったが、下手に反撃をしても良いのかも分からなかった。逆上されればこちらは無抵抗だ。しかし、明らかに触っている者の数も増えている。まるで対象を分析でもしているかのように嫌らしく接触を続けている。


 相手が誰なのかを確かめる事が出来ないシャルミラはまさかここにならず者でも加わったのかと更に恐怖を感じてしまうが、恐らくは最も触られたくないであろう部位に触れられた事を察知してしまう。




――両脚の間にゆっくりと触れられる――


 外から見れば、触手の先端がシャルミラのあられも無いような状況になっている下半身の、特にデリケートとも言える白の下着越しに、まるで何かを探るかのようになぞっている様子が見えたであろう。数本が前後からゆっくりと近寄り、それぞれが脚の付け根や、後部に膨らんだ部位までも探るようになぞっている。


 逆立ちをさせられるような体勢になっているシャルミラの緑のスカートはもう既に正規の遮断という機能を果たしていなかった。


(どこ……触ってるのよ!? こいつら……!!)


 視界を塞がれているシャルミラからすれば、自分の脚や尻を触られているとしか感じ取る事が出来ず、そして、今までは下着越しに股間や尻を押すように触られているだけであったが、羞恥心を覚えさせられるような仕打ちはまだ終わらなかった。


 明らかに感じたのは、下着と素肌の間に何かが侵入してくる感触であった。


(!!)


 覆われた視界の中でシャルミラは赤面する気分になったが、前の部分を触られながら、そして下着を引っ張られるような感触を確かに感じ取った。直接外気が下着の中に入った事を示すかのような冷気を感じ、もうシャルミラは魔力にも頼れないこの場で、唯一残されている手段を使い、反撃を試みる事を決心する。




――自分に纏わり付く何かに対し、蹴りで対抗する――


(ふざ……けんなってこの!! どこ触ってんのよ!!)


 蹴るというよりは、足で無理矢理に距離を離すと言うべきかもしれない。この決死の反撃のおかげで下着の内部へ侵入しようとしていた触手を離れさせる事が出来、そして他の近くで眺めるようにうろついていた触手にもブーツの裏が命中し、それらの距離を離す事も出来た。


 思えば自分の上半身を包み込んでいるこの器官の動きが止まっているようにもかんじる。奥へと呑み込まれる雰囲気も見えない。


 しかし、このままでは自由は効かない上に非常に窮屈だ。外で自分を触ってきた者の正体は知らないが、腕に力を入れてもそこからぬけだせるような希望は一切見えてこない。暫く腕に力を込めながら、無理なのは多少なりとも理解をしている上でこの自分の上半身を拘束している管状の器官から抜け出そうと試みるが、その時であった。




――突然、太腿に殴打を受け……――


「あ゛う゛っ……!!」


 麻痺性のガスを浴びて痺れが多少残っていた太腿に、まるで鈍器のような物で横殴りにされたかのような激痛が走った。無理矢理に吐き出された苦痛の声をまるで意識する事も無く、シャルミラに激痛を与える要因を作ったそれは、再び暴れ出す。


 再度、シャルミラの脚に激痛が走るが、外で何が起こっているのかは本人には分からない。しかし、殴られているのは確かで、横からだけでは無く、真上からも加えられている事を激痛の中で理解は出来ていた。脚の間の付近を狙われている時もあったが、今は連続で入る激痛で深い思考を持つ事は出来なかった。




 外では、捕食を試みようとしている筒状の器官の側から伸びた触手達が、下半身を天井に向けた状態で束縛されているシャルミラを狙っていた。殴打を加えたのは言うまでも無くこの触手達であり、先端を下半身の部位に衝突させる一番の目的は、捕食者を器官の奥へと押しやる事であった。


 触手達は内部へと押し込む過程で、シャルミラを真上から叩き付けるように先端から体当たりを仕掛けるが、相手の体勢の関係でそれが必然的に脚に命中する形となり、その場から逃げる事の出来ないシャルミラには一撃の度に激痛を提供される事になる。


 徐々に太腿に目立つ痕が見え始めるが、触手は恐らくは本能で殴打や打撃を加えているのである。相手の心情を知る事は無い。


 徐々に捕食者の身体が埋まっていく。触手の叩き付けに共鳴するように、器官の肉壁も捕食者を徐々に奥へと吸い込ませていく。捕食者の苦痛を意識も理解もしない触手達は、下半身しか見えていないその身体を上から乱暴に突き刺すように叩き付けていく。遂に器官の口の真横から見た時に、もう脚の間の部位が見えない程に吸い込まれていたが、それでも触手達は内部へと押し込む行為を止めようとはしなかった。


 脚に鈍痛が入るだけでは無く、両脚の間にも突き刺さるような鈍痛が連続で入る事によて、もう既にシャルミラは抵抗したり、自分の身体に接触する事に対する怒りを見せる気力すらも失ってしまっていた。殆ど意識も保っておらず、激痛をただ受け止めながら、奥へ奥へと呑まれてしまう。


(だ……れ……よ……。こんな……こと……す……る……や……つ……)


 もし抵抗が出来る状態であったら、相手がだれであろうと、自分の下半身を触ってきた奴を叩きのめしてやろうと考えていただろう。だが、もうシャルミラには意識は殆ど残されていなかった。鈍痛の上から更に重なるようにやってくる鈍痛が、主に脚の間という女性からすれば様々な意味を合わせた上で狙われたくない場所を中心に広がっていく。一撃が入る度に鈍痛が身体を貫くが、そこから数秒経過すると、まるで感覚が麻痺でもしたかのような状態となる。




――意識が遠のく中で、奥へ奥へと吸い込まれてしまう――







現実では人間が何か他の生き物に呑まれる事は滅多に無いですし、仮に呑まれたとしたらその時はもう滅茶苦茶に噛み砕かれてたり、消化液でもう原型を留めない程に派手に溶かされたりすると思います。それに普通呑まれたら食道を通ってる最中に全身の骨を砕かれそうですけど、フィクションだとどういう訳か特に大きな重傷等を受ける事無く体内に送り込まれる事が多いみたいです。とりあえず、2人には無事に脱出してもらえるように話の展開を用意したいと思いますが、折角の体内なので多少はグロテスクに描いた方がいいのかな?

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