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黒衣を纏いし紫髪の天使  作者: 閻婆
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第22節 《肉食の氷霧蟲 卵嚢に閉じ込められた少女達の末路は》 2/5

今回も前回に続いて洞窟内での戦闘ですが、洞窟の主である骨のような外殻を持つ魔物の使いとも言うべきでしょうか、無数の小型の蟲達が陣形を組んで襲い掛かります。蟲の魔物だと、人間が相手の時よりも殺した時の罪悪感が薄い感じがありますが、ファンタジーの世界ではどうしても自分が生き延びる為には情けなんて考えてる余裕は無いでしょう。自分が生きる為にはどうしても自分を狙ってくる相手を殺さないといけないなんて事も多いですから。







 骨を連想させる白い巨体の魔物は、これから冷気と共に自分の配下にいる生物を暴れさせようとしている。


 冷気に慣れた子分達は、侵入者を母体の指示に合わせてこれから弱らせていく。


 人間と、人間と共に戦うデミヒューマン達は過度な冷気に耐えられる肉体を持っていない。


 寒い世界で運動能力を奪い取った敵対者を確実に仕留めるという策なのだろうか。


 そして、捕らえた獲物は確実に魔物達の養分として化してしまうのだろう。





「何する気だい? あぁわたしの事リンチにかける気かい?」


 右手首を地中から伸びた触手に掴まれている為、その場から逃げ出す事は出来ない。相当な力で押さえ付けられている為、マルーザの腕力ではそれに打ち勝つ事が出来なかった。自分の元へ引っ張ったとしても、触手は離れようとせず、強引に引き離す事も出来ない。


 空いている左手に炎を溜め込もうとしたが、それを触手の切断手段として使おうとする前に、もう先程産まれてきた翅持ちの幼体達が自分の方へと真っ直ぐ向かってきていたのだ。


 炎で触手を焼き切る前に翅を持った幼体に取り囲まれる可能性の方が高い以上は、もう炎の使い道に迷う事は無いはずだ。




――蟲の幼体は一斉にマルーザ目掛けて飛来する――


 産まれた時から翅の使い方が身体に植え付けられていたのか、成体等の長く生きた存在と差を一切感じさせないような優雅且つ残酷にも真正面から集団でマルーザを目掛けて飛来していく。


 纏わり付かれた時に何をされるのかを想像するくらいなら、多少なりとも接近を拒む事ぐらいはすべきである。


 左手で作っていた炎を、飛来する蟲達に向かって放射する。


「さっさと失せた方がいいよ!」


 接近したら自分に害が及ぶ事を伝えるかのように言いながら、マルーザは左手から炎を放ち続ける。それでも蟲達は炎に怯む事も、炎そのものを物理的に避ける事もせず、そして遂にマルーザへと到着してしまう。飛来してきた蟲の幼体は、外観こそは人間の頭部と同等のサイズの蜂《はち》と言った所だが、その内の1体がマルーザの顔面へと張り付いた。




――深紅の双眸が捉えていた視界が真っ暗になってしまう――


「あぁ邪魔だ! 人の顔に張り付く……っなんて!!」


 反射的に、マルーザはまず自分の顔面に飛び込んできた蟲を左手で引き剥がそうと、蟲の腹部を掴むが、張り付く力は意外と弱く、想像以下の力でもあっさりと剥がす事が出来てしまう。当然相手は蟲である。顔面に張り付いてそれで気分が良いはずも無く、それを乱暴に地面に叩き付けるが、まだ残りの蟲達が黙っていない。


 捨て身のように次々とマルーザの上半身だけしか存在しないその身体を目掛けて飛来する。幼体であるが故に自分が殺されてしまった後の事は考えられないのだろうか。


 顔面に残る滑りが気持ち悪かったが、近寄ってくる蟲を最低限ヌンチャクで弾く事しか出来ないが、攻撃をすり抜けた個体は容赦も無しにマルーザの身体に密着していく。




――片腕だけではまともに抵抗も出来ないのか……――


 右腕を封じられているだけで一気に窮地に陥れられてしまうマルーザであったが、身体中に蟲が纏わり付く事で何か発生するのかはまだ分からなかった。少なくとも身体が脅威を受けている事を教えてくれている訳でも無いが、どちらにしても魔物から産み出された幼体に群がられている状況が続けば、良い未来を期待するのは無理だ。


 炎の壁で接近を許さなければ良かったのかもしれないが、何故か頭がよく動かなかった。


 蟲の事しか意識する事が出来ない状況で、突然マルーザの右腕が自由になった。掴んでいた触手が突然力を抜いたせいで、余計な反動がマルーザに走ったが、元々浮遊しながら生きている身である為、転倒をするようなヘマは見せない。




――目の前にいた邪魔な蟲をヌンチャクで叩き落すとそこには……――


 視界を確保したマルーザの視界に入ってきたのは、右腕に魔力の刃を作っていたリディアの姿だった。黒の戦闘服で身を固めている少女であり、刃で触手を一撃で切断した所だったのだろう。


「マルーザさんとりあえず邪魔だった触手は斬っときましたよ!」


 自分に迫っていた蜘蛛の魔物を黙らせた後だったのかもしれない。余裕が出来たリディアは、青い瞳の下からマスクで隠している顔の裏で誇らしげな笑みをマルーザに向ける。刃に付着した緑色の妙な血液を払い落しながら。


「すまなかったね。さてとこれで連中は……って退きやがったみたいだね」


 右手の自由が効く事で両手を自由に使えるようになったマルーザだが、両手に持ったヌンチャクを手首を軸に回しながら迎撃しようとした途端に、翅を持った蟲達は後退を始めてしまう。数が多かった為、下がるにつれてまるで蟲達が壁を作っているかのような光景と化す。




――ふとマルーザは自分がいない場所の事を意識する――




「所で、あんた達が相手してた子分達はどうするつもりだい?」


 母体が指揮を取っているのであろう子分の魔物達の事が気がかりになったマルーザは、それらの相手を今は誰がしているのかをリディアに聞く。


 気持ちにも余裕が出来てきたのか、両手に持っているヌンチャクの回し方も何だか軽快である。


「それですか? それならシャル達が相手してくれるって話になりましたよ!」


 リディアは壁のように広がりながら後退を続ける蟲の幼体に視線を向け続けたままで、マルーザに返答をする。


 全員が母体に向かっていたら、子分達の相手をする者がいなくなってしまうから、子分達を引き付ける役割を持つ者の存在も必要だった事だろう。




「あいつらでもザコの相手ぐらいは余裕って事だね?」


 初めて出会ったシャルミラ達の事を思い浮かべるマルーザであるが、戦う力ぐらいは最低限持っているのかと、自分が抱いていた余計な心配がただの無駄であったのかと思い知ってしまう。しかし、それは決してマイナスの感情を生む原因にはならなかった。


「そうなりますね。って来ましたよ!」


 後退しながら壁を連想させる陣形を作っていた翅持ちの幼体達であったが、リディアは確認した。




――今度は腹部の先端から針を露出させており……――




 その針で何をしようとしているのか、それは2人は簡単に理解する事が出来た。自分達を刺そうとしている、それだけだ。


 だが、その方法はあまりにも無謀且つ無様でもあったと言って良かっただろう。


 最初の1体目の突撃を2人は左右に離れる事で回避したが……


「おっと!」

「!!」


 マルーザのみは無言で退避をしたが、自分達がいた場所に幼体の1体が地面に激突し、衝撃でその身を砕け散らせてしまったのだ。肉体自体が頑丈に出来ていなかった事を明確に表している場面となったが、一度の攻撃と引き換えに絶命も手にしてしまうとは。




(何あれ!? 自殺した!?)


 リディアは自分の身を理解する事無く絶命した幼体に気を取られてしまうが、視線を幼体の大群へと戻すと、大群は更に異なる陣形を作り始めていた。ただの壁とは訳の違う、周囲を驚かせるには充分なものであった。


「ん? って今度は何!?」


 幼体は集団で集まり、それを人間の形へ作り出したのである。人間というよりは巨人と言うべきか、少なくともリディアの身長の倍は下らない。2本の脚、見るからに屈強そうな太い胴体、左右から伸びた両腕、そして一切の感情の見えないまさに頭部だけの存在。


 幼体達は絶妙なコンビネーションによって、その塊が1つの命を宿っているかのように上手に地面を足で交互に踏み付けながら、リディアへと襲い掛かる。




――巨体を活かしたパンチをリディア目掛け……――


「そんなもん当たるかっての!」


 左へと転がるように回避し、僅かな隙も作らずに再び立ち上がるが、幼体の集合体である巨人は地面へと接触する勢いで突き出した右手で小石等を乱暴に掴む。


 その中にはそれなりに大型な物も混ざっていたはずである。回避して距離を取ったリディア目掛けてそれを投げつける。数投げれば1つくらいは命中するだろうという寸法だろう。




――飛来する無数の石達――


「何これ……!」


 リディアは防御の為の能力も心得ている為、身体への衝撃を抑える為に右腕にそれなりの保護膜《バリア》を張ったが、攻撃として考えるには弱すぎるとしか思えなかったかもしれない。とは言え、顔面に無数の小石等を投げつけられてしまえば何かしら身体を守る為の手段を取らなければいけない為、ある種の時間稼ぎだった可能性もある。


 石がもう飛んでこない事を確認するなり、リディアはすぐに何かしらの反撃を開始しようとする。


「もう黙らせるしか無いか……」


 相手が巨人だろうがなんだろうが、自分にもエナジーリングがあるのだからこちらが不利なはずが無い。そう考えているリディアは両手から魔力の刃を発生させ、石が収まった頃を見計らい、巨人になりきった幼体の集団に向かっていく。


 だが、至近距離まで行く事に何かの不安を感じたのか、直前でブレーキをかけるなり、直角を描くように右へ跳びながら左手の刃から衝撃波を飛ばす。狙った場所は巨人の腹部に該当する部分だ。




――鈍い音が響くが、衝撃波は通らず……――




 集団になった途端に、衝撃波の刃すらまるで通用させないような強度を見せてくる。所詮は幼体の集まりのように見えていたのかもしれないが、集団になる事によってそれぞれの個体の強度も一気に強化されたのだろうか。リディアの衝撃波は幼体1体すら切断する事が出来ず、巨人の強度に負ける形で四散するように消滅してしまう。


 ただのなりきりでは無く、本当に巨人そのものに変化《へんげ》していたのである。強度も破壊力も見せかけでは無い。


「う、嘘っ!? あれ通らないの!?」


 しかし、リディアは事実を受け入れるにはまだ頭の整理が出来ていなかったようだ。腹部に該当する場所に密集している幼体の1体すらも刃で切断する事が出来なかった為、体組織に変化があったのは間違いは無いだろう。そこまでの変わり様はリディアの今の状況では冷静に分析する余裕等、無かったのかもしれない。




――巨人の背後から炎の塊が炸裂するが……――


 リディアとは反対方向からマルーザによる攻撃も行なわれていたようだが、炎は巨人になりきった幼体の集団を軽く押し出す程度で、そしてやはり幼体達に致命傷のような打撃は与えるには至らなかった。熱による耐性を身に付けたのは勿論、衝撃に対する耐性も同時に身に付けていた事を改めて周囲の者達に思い知らせてくる。


「こいつどうすりゃ……ん?」


 炎が通じないのであれば冷気ならどうだろうかと右に持ったヌンチャクを手首を軸に振り回すが、巨人が右腕を後方へと引いているのを確認出来た。


 だが、それは自分に対する脅威への警告では無く、リディアに対するものだ。そして、今はそれを伝えるには距離があり過ぎるのと、時間が無さ過ぎた。




――巨人が突き出した掌の後に……――


 外見通りの力を感じさせる迫力で右手が突き出されたが、それが直接リディアへと直撃した訳では無かった。寧ろ、初めから直接殴るつもりが無かったかのようでもあった。しかし、リディアからすればそれはただの迫力を見せる為だけの演出等では無く、実際に攻めようとしている動作の一種として捉えられていたのは言うまでも無かったのかもしれない。


 伸ばされた右腕から、幼体の一部が発射されたのだ。


 それは手枷《てかせ》としてリディアの左手首、そして右手首と準に拘束し、リディアの動きを妨害してしまう。


「うわっ! これ……!?」


 聞いた所でこの正体やこの後の動きを幼体が教えてくれる訳も無い。左右に広げられるようにして腕を拘束され、そして拘束を実行した幼体はそのまま翅を動かし、リディアを浮上させてしまう。飛行能力は幼体の時から完成されているのか、自分よりも明らかに質量の大きいはずである人間を難無く持ち上げてしまっている。




――それは、あの母体へと向かっていく……――


 両腕を拘束させた状態で、幼体達はリディアを自分達を産んだ母体の場所へと飛行する。勿論細かく言えば、頭部である。


 母体は待ち構えているかのように牙の露出している口を開閉させている。


「な、何……? 食べようとする気?」


 勿論リディアは捕食される側になるつもり等、無いに決まっている。しかしこのままでは抵抗出来ずに相手の思い通りになってしまう。


 頼みの綱であるマルーザは巨人になりきった幼体の集団に苦戦しており、リディアの救助に手を回している余裕が無い状態であった。




――ここはもう自分で何とかするしか無い……――


 両腕を拘束されている以上は瞬間移動で消え去る事は出来ない。せいぜい念じる事で手首の周囲に電撃を走らせ、強引に幼体達を引き剥がす事しか出来ないが、今はそれをやり切るしか無い。


 リディアの両手首に密着している幼体に電撃を浴びせるが、思ったように幼体が離れてはくれなかった。


「さっさと離れてっての……!? うわぁあいつ口開いてるし」


 幼体が運んでいる場所は、母体の口そのものでは無かった。口の上部辺りであり、恐らくはそこまで運んだ後《のち》に捕らえた者を離し、母体が開いた口の中へと落下させる寸法なのだろう。


 いくら電撃を浴びせても幼体は一切離れてくれず、時は徐々に迫るだけであった。


「あぁもう!! ふざけんなっつの!!」


 両腕を左右に伸ばされた不格好な状態であっさりと母体の場所へと運ばれていくリディアは自分の電撃が通じない事に苛立ちを感じ始め、一応は自由が効く足をばたつかせるが、どうにもならなかった。




――蜘蛛の魔物と戦っていた少女がそれに気付く……――


「はぁあ!! とりあえず今ので最……ご、ってあ、あれってリディア!?」


 右手を突き出し、掌《てのひら》から炎のエネルギーを目の前にいた蜘蛛の魔物に放ち、吹き飛ばす。


 距離を取らせた蜘蛛が動かなくなるのを目で確認したシャルミラはふと上を見上げると、そこには本来であれば飛行能力を持たないはずのリディアが宙を浮いて存在していたのである。妙に硬直したような姿であった為、只事では無い事をすぐに察知する。




「何やってるの? あんな所で。マルーザさんも何やってるのよ……! もうバルゴ、手伝って!」


 よく見れば、リディアの両腕に何かが付着しているようにも見えた。黒い戦闘服である関係でその付着した何かの形をハッキリと見る事は叶わなかったが、丸い物体のような物が複数絡み付いていた事だけは認識する事が出来た為、何とかしようと、バルゴを呼びながらシャルミラは駆け出した。


「分かってるよ! きっとマルーザさんも追い詰められてるだけだよ!」


 バルゴは青い毛並みを揺らしながらシャルミラの後ろに付いていく。宙を移動しながら、マルーザの手際の事を責めるシャルミラに説明をし、これ以上マルーザの評価が悪くならないように施した。


 他の敵を相手にしていたせいでリディアの救助に手が回らなかったのだとバルゴは信じていた。




「あれ? シャルちゃんどこ行くつもり?」


 ジェイクにも目の前にいた蜘蛛を炎の渦に包み込み、結果として動かなくなった蜘蛛の魔物を捨て置いた後に、自分達の場から離れるシャルミラの後ろ姿を見ながら声を飛ばす。


「リディアが不味い事になってるから行くの!」


 声をかけられたシャルミラは一度走るのを止め、洞窟の上部を指差しながら軽い説明を入れる。指を差した先には囚われのリディアの姿があったが、シャルミラはジェイクからの返事を待つ事をせず、そのまま走るのを再開させる。




「そうなの!? リディアでも……!」


メルヴィは自分に声をかけられた訳では無かったが、耳に入ったのは間違い無い。リディアが危機に曝されている事を知ったメルヴィはあのリディアでも追い詰められてしまうのかと、捨て置いた蜘蛛に背中を向けたまま立ち尽くす。




――死にかけていた蜘蛛の魔物が吐いたものは……――




 焼かれた蜘蛛はまだ命を絶っていた訳では無く、震える8本の脚で身体を何とか持ち上げるなり、口から糸を撒き散らす。狙っていたのは、メルヴィであった。


「えっ……!」


 僅かに響いた鳴き声を聞いたメルヴィは振り向いたが、瞬間に視界が初めは白で、そしてしばらくするなりそれが黒へと変わる。糸が持つ白の色が視界を覆う事によって、黒という名の暗闇に変貌したのだ。




――糸はメルヴィの身体に重く圧し掛かり……――


 糸は対象となる相手には粘着効果を見せないようであるが、糸と糸が接触した際に非常に強い粘着力が発生するようである。


 どうやら糸は上半身だけを拘束していたようであるが、足の自由を奪われていなかったからと言って、糸の脅威から抜け出せるという事は一切無い。視界を塞がれた獲物を蜘蛛が放置する訳が無かった。


 瀕死の火傷を負っていた蜘蛛は、前足でメルヴィを無理矢理に突き飛ばす。それは殴っているようにも見え、視界を奪われた状態で突然自分に強い衝撃を受ける事になったメルヴィは踏ん張る事も出来ずに、そして糸で遮断されてしまているのか、悲鳴を上げているのかどうかも周囲に知らしめる事無く倒されてしまう。


 この一連の襲撃はあまりにも短すぎる時間の中で起きた事だ。




――ジェイクはすぐに闘志も手の先に燃やすが……――


「!! メルちゃん!」


 自分の詰めの甘さを意識する前に、蜘蛛の魔物に引き摺られていくメルヴィを我武者羅に追いかけ、蜘蛛自体の動きを止める為に、手から魔力で練った炎を蜘蛛の魔物の頭上へと放つ。


 頭上で一旦停止した炎は3頭身程にも見える真っ赤に燃え上がった騎士の姿となり、剣を真下に向け、蜘蛛の真上から落下する形で突き刺すが、蜘蛛はそれでも後退を止める事をしなかった。


 炎が通じなかったのか、それとも痛覚が麻痺しているのか、そもそも剣の形状をした炎が胴体に命中したのにも関わらず、糸で束縛したメルヴィを引き摺る行為を一切やめようとしなかったのだ。


 何としてでも止めなければと、今度は自分の両側を挟むように炎の騎士を召喚し、蜘蛛を追いかけさせる。勿論ジェイク自身も蜘蛛を追いかけるが、ジェイクの場合は引き摺られているメルヴィを追いかけると言った方が適切なのかもしれない。




――だが、ジェイクの視界が突然真っ黒になり……――




「え? ちょっ、これって!?」


 ジェイクの足元から膜のような物が現れ、それがジェイクの前後左右を一気に包み込んだのだ。


 そしてジェイクはそのままいつの間にか柔らかくなっていた地面の中に膜ごと引っ張り込まれてしまう。召喚した炎の騎士を置き去りにした状態で、ジェイクはそのまま地中へと消えてしまう。


 やがて、メルヴィの方も蜘蛛の糸で上半身を束縛されたまま、蜘蛛によって地中へと引き摺り込まれてしまう。ジェイクと同じ空間に移動させられたのだろうか。

蟲に限った話では無いかもしれませんが、魔物との戦闘の時は何かしらのピンチ的な要素を入れたいと思ってしまいますが、蜘蛛の場合はやっぱりあの繭にされた後に体内に消化液を流し込まれるというとんでもない見せ場があるとの噂もありますが、今回はメインキャラの数名が蜘蛛に捕まるという最後に……。まあ何とか無事で済めばいいですが、これからどうなるかは次回以降の話にて描写されます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ピンチシーンがドキドキできて最高です。
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