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黒衣を纏いし紫髪の天使  作者: 閻婆
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第20節 《地獄から降りた炎の仏デストラクト 卵が産むのは魔の未来》 2/5

前回に続いて、今回も戦闘がメインのお話になります。今回は雷撃使いのエンドラルに加えて、魔法と剣技で戦うミケランジェロも加わって、より激しい戦闘になると思います。人間がいない戦いだと、本当に一撃が人間であればあっさりと死ぬような攻撃が激しく繰り返されますね。

▼▼  炎の背後霊を味方に付けた、青の仏は2人の敵対者に高熱を浴びせ始める  ▼▼




 青い仏のデストラクトの背後に付き纏う炎の守護神は、自らが意思を持つ事を伝えるかのように、周囲に炎を撒き散らす。石の床や柱で作られた神殿の内部には炎が立ち上がり、炎を避けながら生きる事を強いられる者達からすれば、それは自分達の行動範囲を制限されるようなものだ。


 空間も無機質な白をイメージされたものだったが、炎の熱と炎そのものの効果により、周囲を赤い色に染め上げていく。


 炎が2人の逃げ道を塞ぐかのように、揺れながらその場で燃え続ける。




「演出なんかされても喜ぶ気にはなれんぞ!」


 雷撃使いであるエンドラルは全身を電撃で包み込みながらデストラクト目掛けて弾丸のように飛び込んでいく。


「お前いきなり攻めるのか?」


 蜥蜴の外見を持つ、大剣使いの亜人であるミケランジェロは自分の隣から突然突撃を開始してしまう様子を横目で見ながら口に出すが、きっとこの声はエンドラルには届いていない。




――電撃の体当たりを引き受けるのは、炎の分身であった――


「効くかっつーのそんな単純な攻撃」


 力の籠っていない声を発しながら、デストラクトは両手をまるで何か気功でも放つかのように前方に突き出す。同時に自分の背中に纏わり付いていた炎の分身が自身の目の前に瞬時に移動し、エンドラルの身体を全身を使いながら受け止める。


 炎の分身は両手で左右から包み込むようにしてエンドラルを掴み、そして持ち上げる。




――乱雑に真横に放り投げる――


「ぐわっ!」


 人間とはまるで比較対象にならないような腕力で、受け身の術を持たぬ一般人であれば床に落ちた衝撃で怪我をしてもおかしくないような距離までエンドラルは投げつけられてしまう。戦いを潜り抜けていたであろうエンドラルは空中で体勢を整え、足から上手に着地するが、目の前から更なる追撃が空中を飛んでくる。




――隕石のように、炎が直線状に飛来する――


 凝視すれば、それは岩が燃え上がっているのが見える。複数飛んでくるそれは追尾(ホーミング)している訳では無かったが、その場に立ち止まっていれば直撃は免れない炎が数個、存在する事をエンドラルは察知する。


 両腕に電撃を発生させ、まずは顔面に迫る炎の1つを右ストレートで打ち砕く。砕けて粉のように細かくなってしまう炎に見向きもせず、続いて飛んでくる2つ目をアッパーで突き上げながら粉砕してしまう。


 最後の3つ目が飛んでくるが、まるで3つ目の炎を追いかけるかのように炎の分身がこちらに走り寄っていた事をエンドラルは理解する。




――回し蹴りで炎を粉砕すると同時に……――




 右腕を力強く前方へ伸ばすと同時に手を広げる。広げた(てのひら)からは雷撃が飛び散り、それが炎の分身の腹部へと命中する。


「今度はこっちが攻撃する番だぞ?」


 分身とは言え、分身そのものにも痛覚というものは存在するのか、雷撃を受けた分身の足が鈍り始めていた。威力の前に怯んでいたのだろうか。


 遠距離からの攻撃で一度怯ませた後は、接近戦に持ち込もうと、エンドラルは右手の中から両刃状の光を発生させ、再び弾丸の如く、飛び込むように炎の分身へと急接近する。




――しかし、地面から瓦礫が持ち上がり……――


 まるで床が爆発でもしたかのように瓦礫が跳ね上がり、それが壁になる事でエンドラルの突撃を阻害する。炎の分身自体も、周囲の空気を持ち上げるかのように両手を持ち上げており、床が共鳴したのであろう。


 足を付いて、宙を舞う瓦礫の前で一度止まる。しつこく目の前で落下し続ける瓦礫の横、エンドラルの両側と言うべきだろうか、突然両方の側が炎で支配されてしまう。炎の壁そのものだ。


「また派手な真似をする気か?」


 何をするのかと警戒していると、2つの壁が僅かに振動を起こす。それはすぐに自分を挟み込もうと迫っていると気付くが、跳躍ではどうする事も出来ない事は分かっていたようだ。




――炎の壁はエンドラルを左右から挟み込んでしまうが……――




――挟み撃ちにされていたエンドラルは瞬間移動で回避しており――




 2つの炎が接触し、火の粉を欠片のように炸裂させながら消滅していくが、その中から電撃を帯びた爆発が発生し、そこから無傷で回避したエンドラルが現れる。炎に挟まれるその間は姿をその場から消滅させ、場を凌いでいたのだろう。


「吾輩はまだくたばるつもりは無いからな?」


 わざとらしく合間に言葉を挟みながら、エンドラルは今度こそと、右手から発生させた、電撃によって煉られた両刃の剣で炎の分身に斬りかかる。






――◆■ 炎の分身に別行動をさせたデストラクトも黙っていた訳では無い ■◆――


「まさかミケランジェロ、お前なんかに会えるとは嬉しいぜ?」


 デストラクトは杖を持っていない左腕を、まるで殴る準備でもするかのように関節部分から回しながら、視線を真っ直ぐとミケランジェロへと向ける。余計な脂肪を削ぎ落した青い皮膚に包まれた上半身の筋肉は充分な威圧感がある。


「その卵を置いてった方が身の為だぞ?」




「だったらオレの事泣かしてみろよ? それから景品求めるのが筋だろうよ?」


 デストラクトは数歩歩き出すが、杖の先端を爆発させ、その反動を利用する形でミケランジェロに飛び蹴りを食らわす。ミケランジェロは大剣の腹で蹴りを防ぐが、力が強かったのか、人間より遥かに大柄である彼の身体が反動で足の裏を引き摺りながら後退する。


 挨拶として与えた蹴りの一撃に続き、足が地面に降りる前に左腕を使い、ミケランジェロの顔面を殴り付けようとする。そしてそれはただの拳では無かった。




――炎で激しく焼いた拳であり……――


 まるで自分自身さえも骨になるまで焼こうとしている程に燃え上がったその拳はミケランジェロの顔面を的確に狙っていた。


「おぉらよぉ!!」


 威圧感のある体格と、仏というイメージに反するサングラスの影響で、拳の一撃はまるで弱そうには見えなかった。




――大剣から一度手を離したミケランジェロは顔面を両腕で保護する――


「!!」


 体色を除けば殆ど人間のような相手だと言うのに、まるで自身の人間の平均以上の体重を誇るであろうミケランジェロさえも一撃でよろめかせる威力にここでは踏ん張る事しか出来なかった。炎の影響か、茶色の直綴(じきとつ)の袖が焼け焦げる。


「なかなかやるな……」


 炎を纏った剛腕によるパンチなんかで怯む訳にはいかない。


 それを強く意識したミケランジェロは再び大剣を持ち直し、大剣が持つであろう重量からは想像も出来ないような速度で下から掬い上げるように斬り付けようとするが、大剣は持ち上がらなかった。


 デストラクトの金の杖が大剣の道筋を妨害、防いでいたのだ。右腕の力だけで、ミケランジェロの大剣を止めている。




「そうはさせねぇぜ?」


 デストラクトは敵対する相手の大剣を押さえ付けながら、目の前にいる相手にしか聞こえないような声で言った。


 そしてその声は、ただ大剣の攻撃を防いでいる事を証明させているだけのものでは無かったようだ。


 徐々にデストラクトの全身が黒く染まり、一体何をし始めるのかと相手に思わせる前に、突如デストラクトは脂肪よりも筋肉の密度の方が遥かに多い腹を突き出しながら体当たりを食らわせる。


「死ねやぁ!!」




――それは相手からすると大木で殴られるようなものだったらしく……――




 真っ黒に染まったデストラクトに体当たりを受けたミケランジェロは相手の力に負けてしまい、撥ね飛ばされてしまう。転倒こそはしなかったが、肥満体質では無い相手に体当たりだけで後退させられた為、黒く塗り潰した行為に特殊な力を宿らせていたのだろう。


「ちっとも攻められてねんじゃねえか? 卵の奪還はどうしたよ?」


 自身を覆い尽くしていた黒の色を、内側から破裂させるようにして弾き飛ばしながら、自分に決定打を与えていないミケランジェロを挑発する。


「お前の出方を確かめてただけだ。見た目に反した罰当たりな戦い方も関心に値する」


 体当たりによって深手を負っていた訳では無かったようだ。ミケランジェロも本来の仏は人々に神として扱われる存在という事は理解していたが、その外見に近いものを持つデストラクトの乱暴な戦い方を見ると、今のような評価を下さずにはいられなかったようだ。




「オレは好きでこの外見にしてんだよ。罰当たりとかそんなもんどうでもいい」


 杖を持っていない左の親指で、デストラクトは自分自身を差す。螺髪(らほつ)を施した頭髪も、それだけであれば仏の外見を維持出来ていたのかもしれないが、威圧的なサングラスがそれを全てぶち壊しにしていると言えるだろう。


「そんな偽りの神にはこれが一番だ!」


 ミケランジェロは、胸部の目の前で左手を天井に向かって広げ、その上で緑を帯びた球体を作り、それを握り潰す。




「喚いたって何も出ね……って風、か?」


 デストラクトは相手が球体を握り潰した所を見ていなかったのだろうか。しかし、分かったのは自分の右から妙に強い風が襲ってきた事だ。


「ただの風なら呑気も許されるだろうけどな?」


 再びミケランジェロは左手の上に緑の球体を作り、同じく握り潰す。




――風の力が更に強くなり……――




 横殴りの風がデストラクトを襲う。風に逆らうように体勢を作らなければ転ばされる程の強さで、これを発動させた意図をデストラクトは理解しない。


「おいおい何訳分かんねぇ事してんだよ?」


 決してその風には殺傷能力がある訳でも無く、やはり風の意図を理解する事は出来なかった。


「今に分かるぞ?」


 ミケランジェロは目を細めているが、それはまるで風を操っているかのようでもあり、そして、それは直接形となって現れる事となる。




――デストラクトのショルダーバッグが宙を舞い……――


 ショルダーベルトの部分が風で切断され、支えが無くなったかのようにそのまま風に乗りながらバッグは持ち主の元から離れていく。


「悪いな!」


 意味を把握しにくい非常に短い言葉だけを残しながら、ミケランジェロは宙を舞うバッグを追いかける為に駆け抜ける。


 亜人だからか、人間に劣らないような瞬発力を見せつけていた。魔力の力も借りていたのかもしれないが。


「ってお前! 盗賊みてぇな事しやがって!」


 バッグを破損させ、尚且つ中身まで奪い取ろうとするミケランジェロの背中を見ながらデストラクトは言い放つが、もうミケランジェロはバッグに向かって跳び上がっている所であった。尤も、デストラクト自身も卵を奪い取っていた所を見ると、盗賊に似た行為をしていたと言えるのだが。




――宙に位置するバッグに手を伸ばす――


 ミケランジェロの手が届けば、卵の奪還は完了する。手がバッグの場所にまで届くのにそう時間はかからない。


 残り数秒である。数秒で、事は終わる。








――突然バッグの真上から赤黒い円形状の空間が現れ……――




――バッグを鷲掴みにしたのは、同じく赤黒い骨で構成された手であった――







次回は敵側に新しい刺客がまた登場します。世界観はファンタジーなので、それに恥じない怖い奴を出したいと思うのが自分で、もう本当にやりたい放題やってるつもりです。ただ、自分のアイディアは一説によると他に数万人以上の人が考えてるとも言われてますが、それを恐れてたら何も出来ませんので、自分はひたすらただの思い込みでも思い付きでもいいのでとことんやるつもりです。

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