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黒衣を纏いし紫髪の天使  作者: 閻婆
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第19節 《魔石の行方 守護者は侵略者を地獄へ落とす》3/4

前回はショッキングな死亡シーンがありましたが、今回はそんなシーンはありません。寧ろ、そんな出来事すらまだ知らないで次の目的地を目指すリディア達の話になります。いつものように対話で話が進みますが、世界観の関係でいつも呑気な対話だけで話を進められるという保証は無いんですよね。





 エボニー海岸にて、ミケランジェロと一時別行動を取る事になったリディア一同は次の目的地であるヒルトップの洞窟を目指していた。距離がある為、その場所を目的地としている旅客輸送車に乗車している最中だ。


 数時間、輸送車に乗りながら木々がちらちらと見える山道を通り抜けている。


「なんか……静かじゃねえか?」


 輸送車の後部に位置する客席のある空間に座っているガイウスは、特に話題が広がらなかった為か、一緒に乗っている3人の男女に向かって言った。両端にそれぞれ敷き詰められた椅子は、両方が中央を向いており、それぞれの端にガイウスとリディア、そしてもう一方の端の椅子にはジェイクとメルヴィが座っている。2人と2人が向かい合った状態である。




「いや、静かって、まだ乗ってから10分かそれぐらいしか経ってないじゃん?」


 何となく向かいの窓から外の景色を眺めていたリディアだったが、乗車してからそこまで時間は経過していなかったのかもしれない。体感的に長時間を過ごしたとは思えなかったリディアは、隣に座っているガイウスに顔を向ける。


「話す事はもう昨日のあの町で全部聞いたから、今は無理に話題作らなくてもいいと思うわよ?」


 リディアの向かいに座っていたメルヴィは、この場所で話題を作ろうとしていたのだと思ったのかもしれない。だが、ヒルトップの洞窟に行くに当たって、先に聞くべき話はもう前日に聞かされているのだから、無理に口を動かす必要は無いのでは無いかと意見する。


 車両が小さな段差を通った際に、メルヴィのショートで整えられた萱草色の髪の先端が小さく揺れる。




「確かにそうだけど、とりあえずマルーザさん達はガイウスと仲間で、それで一緒に戦ったって話もちらっと聞かせてもらったのはそうだけどさぁ……」


 どうしてもメルヴィの言い方はリディアには強く突き刺さってしまうようだ。気まずそうな表情を作りながら、昨日説明されたガイウスの仲間達の事を思い出す。昨日既に話を聞いているのだから、再度ここで聞く必要は無いのかもしれない。


 だが、折角皆がここにいるのに寡黙を貫いていなければいけないのかと、寡黙自体に疑問を感じたようでもある。


「お前皆と喋りたい話題とか、そんなのはねぇのか? 珍しくお前も黙ってるからお前の代わりに言ってやったつもりだったんだけどな」


 ここで皆と話をしたかったのはガイウスでは無かったようだ。寧ろ、リディアの代わりに何か話すような話題が無いかどうかを皆に確認していたようである。




「いや……私は別に……あ、いや、この際だからジェイク君の……」

「そうだリディアちゃん! 折角だから教えてよ。あの不思議な力の事!」


 リディアは本当に自分が聞きたいと思っていた話題が無かったのかどうかを模索したが、思い出したかのようにジェイクの事で聞こうとしたが、それを遮るかのように、赤いフードを被った少年の声が張り上げられる。


 内容としては、恐らくはリディアの戦闘時に扱っている能力の事だろう。


「え? 私? あぁこのエナジーリングの事? まあ、折角だからじゃあこの機会に説明しとく?」


 リディアは左の手首を右の人差し指で差しながらジェイクと青い瞳を合わせた。指を差した場所は水色のワイシャツの長い袖の部分であったが、袖の裏にエナジーリングを装着しているのであろう。形は見えなくても、装備している事自体が相手に伝われば充分であるようだ。


 自分の能力がどのような原理で発動されているのかを真剣に説明した事が無かった為、この時間を上手く使おうかと、リディアはまるで希望を手にしたかのように笑顔を作った。




「うん教えてよ! メルちゃんも一応知っといた方がいいよね?」


 ジェイクは相当興味を持っていたようで、直接教えてくれると言ってくれた事に対し、リディアに負けないような笑みをフードの中で作った。メルヴィも同じ気持ちなのかと考えたのか、隣にいるメルヴィに確認を取る。


「あたしは……まあとりあえず、じゃあ聞いとく事にする」


 ジェイクのような乗り気では無かったようである。しかし、沈黙であるよりはまだマシだと思ったのか、退屈凌ぎとして、メルヴィはリディアの話を聞く選択肢を取ったようである。まだリディアの事は仲良しの対象としては認めていないのだろうか。




「メルヴィはあくまでも(ついで)、なんだね。まあいいや、えっとね、私のこのリングはね、自分で思い浮かべた力をそのまま具現化させる効力があるの。因みに正式にはイマジンスキルって言うんだけどね」


 もう少し自分の話に興味や関心を持って欲しいなと心で願いながらも、リディアは自分が装着しているリングの話をする事にした。


 リディアの能力は、自身の脳内で想像した動作をそのまま自身のアクションとして形にする事が出来るというものである。


「思い浮かべた力?」


 ジェイクはいまいちそれを適切な説明として受け取れなかったのだろうか。具体的にどのようにして力を発揮するのか、それを理解出来ていない事を示すかのようにゆっくりと首を傾げた。




「うんそうそう。例えば私だとしたら……えっと、目の前に敵がいたとして、瞬間移動みたいに背後に回るとか、手に刃、剣とかみたいなのを出してそれで近距離戦をやるとか、大体そんな感じなの」


 ジェイクの言葉だけは正解で間違いは無かったらしい。彼が頭でどういう捉え方をしているのかまではリディアは追及しなかったが、手を大胆に動かしながら説明を始める。


 自分の正面に敵対者を例えたイメージを置くかのように、両手を同じタイミングで頭の上から目の前に振り落とす。真っ直ぐ目の前で両腕をピンと伸ばして止めた際に、そこに誰かが目の前にいるという設定になるようだ。


 そして右手をその架空の誰かの背後に回り込ませるように動かす事で、敵対者の背後に瞬間移動をするというイメージを相手に伝えたのだ。


 手から武器を生成させる説明をする時は、左手で手刀にした右手の指を一度軽く握り、まるで指を引き延ばすような動作を見せた。これが手から武器を生成している時のイメージなのだろう。


「それって想像すればどんな事でも出来ちゃうって事? じゃあそれなら敵が一撃で木っ端微塵になるような状況想像して念じればすぐ勝てちゃうんじゃない?」


 リディアの大振りな手のアクションを見ながら説明も一緒に聞かされたジェイクは、リディアの使いこなすイマジンスキルの内容を把握する事が出来たようである。しかし、やはり疑問も残るようであり、想像を武器に出来るのであれば、一撃必殺を連続で決める事が可能なのでは無いかと無意識に思ってしまったようだ。




「いや、流石に限度を超えたようなものだと私でも、ま、まあ訓練すれば出来ない事も無いだろうけど、少なくとも私の体力とかその、知識、っていうのかな、そういう複雑な仕組みとかをちゃんと頭で理解してないと無理なんだよね」


 ジェイクの一撃必殺の話に関しては、リディアも明るい表情では答えられなかったようだ。


 想像を直接形にするとは言っても、それを行動にしたり、生成したりするのに直接の体力を必要とする事に加え、具現化させる為にはそれがどのような原理で成り立っているのかという知識を頭で理解していなければいけないのである。理解せずして具現化させるという事は、エナジーリングでは行なう事は出来ないようだ。


「体力? それってやっぱり体力が無いと使いこなせないってやつなの?」


 ジェイクの連想する体力とは、言葉の通り、如何に長い時間運動を続けられるかという数値だろう。




「うん、体力が無いとまず使えないと思う。だって、今言った瞬間移動だって、あくまでもその分の移動自体は自分の体力使って歩くなり走るなりしてる訳で、その瞬間移動っていうのは、その、本来だったら歩いてた時間をただ一瞬っていう時間に置き換えてるだけなんだよね」


 ジェイクの考え方は大抵が正解であるようだ。


 ただ、細かい部分の説明をするのがリディアの役目で、イマジンスキルを使用する際に体力を消費する理由をここで説明しなければいけない。どうやら何かしらのスキルを使った場合、それを手作業で行なった時と同等の体力の消費や疲労を身体に受けてしまうようである。時間短縮から来る代償と言うべきか。


「えっと……歩くのにかかった時間を一瞬っていう形に短縮……なんだね」


 ジェイクは赤いフードの中から覗かせる青い色で光り輝く目を細めた。意味を自分の中で整理している様子を示しているのだろう。言葉をある程度詰まらせている様子を見ると、自分の中で本当に理解しているのか、それすらも分かっていないのかもしれない。




「ジェイク……お前意味理解出来たのか? まあ実際に瞬間移動分の距離は自分で歩いた訳であってだ、体力と引き換えに時間を一瞬にさせてるっていう原理なんだけど、ってこの説明も通じてるか不安になってきたな」


 ガイウスは見兼ねたのか、一度ジェイクに原理を把握する事が出来たのかを確認した後、相手からの返答を待つ事も無く、ガイウスとしての解釈を説明するが、言った本人ですらこれが相手に伝わっているのか分からない様子でもある。


「ま、まあ何となく原理の方は頭で皆理解出来てる……と思うからそれでいいと思うよ? 下手に追及してたらあの洞窟に到着してもこの話終わらないよ?」


 珍しくガイウスが説明に手古摺っている様子をリディアは横目で見ながら、そろそろこの瞬間移動に限定させた話を終了させようとする。各自で自分の頭では整理出来ているとリディアは信じていたから、もうそれだけで充分であると皆に話す。完璧に理解をしていなかったとしても、リディア本人が使いこなせているのであればそれで充分なのかもしれない。




「所で、リディアちゃんって魔法で戦うような事って考えなかったの? なんか剣士みたいな戦い方ばかりしてるみたいだけど」


 ジェイクはふと感じたのか、イマジンスキルを使えば魔法使いのような炎や氷等を駆使した戦闘が出来ると想像するが、やはりジェイクとしては、折角少女であるなら魔法使いのような可愛い戦い方の方が良かったのでは無いかと、それでも意外と下心の感じさせないような言い方でリディアに問う。


 リディアの戦い方はどちらかと言えば身体を激しく動かすような、男性を連想させる戦い方であるからこそこの場でジェイクは気になったのだろう。


「そう、だね。一応やろうと思えば、ってか練習とか訓練だけど、それをやれば魔法みたいな事は使えるんだよね。炎とか雷とかを出すみたいな感じで。でも私はそういう可愛い感じはあまり好きじゃなかったから、私は剣士と格闘技を混ぜたような形にしようって考えたんだよね」


 結論から言えば、リディアとしては魔導士のような戦闘スタイルは選びたくなかったようだ。元々運動能力が備わっていたからか、走り回ったり、飛び回ったりするような視覚的にも派手な道を進もうと考えていたようであり、エナジーリングの力を借りる事によって、更に鋭いスタイルを作り上げたようでもある。


 身の上話をするかのように、座っている状態から上体を前に出し、指や手首を動かしながら、目を真剣にさせていた。




「確かにリディアちゃんってなんか男みたいな戦い方してるよね」


 ジェイクはリディアの戦い方に対し、率直なイメージを渡した。実際の性別に反する戦い方は皆の目に深く刻み込まれているようだ。


「そういう言われ方だと素直に喜べないんだけど……。ま、まあ私はカッコいい戦い方が夢だったから、瞬間移動を混ぜながら蹴りとかの攻撃で攻めるとか、両手に刃を生成、まあ魔力を練って作った武器だけど、それを両手に構えて手技で攻めるとか、ホントに体力使うような戦い方でやってるんだよね」


 リディアは外見的にも、喋り方も、そして服装も今の女性という性別を意識したものを用意しているつもりだったのだが、直接男性のようだと言われれば、少しだけ細い眉を顰めずにはいられないだろう。


 それでも、男性に見られるような体術を駆使した戦闘スタイルを貫いているのであれば、多少なりとも男性的に見られたり扱われたりするのは当然なのかもしれないし、そして本人もその戦い方が夢であると主張している以上は、相手からの感想に文句を言う権利は無いのかもしれない。




「今頃だけど、おれもエナジーリング持ってんだよな。おれは忍術ベースでやってるけど、ジェイクの方は元々魔力が備わってるみた――」


 ガイウスは、自分の力も説明したいと思ったのだろうか、自分もリディアと同じ装備品を手にしていると説明し、そしてジェイクに対する質問を渡そうとした途端、突如輸送車が急ブレーキによって急停止する。




ガタァン!!


 輸送車が告知や連絡も無しに急ブレーキをしたのである。


 当然中に座っていた4人は進行方向に向かって強い力を受ける事になるが、進行方向側に座っていた男性2人は、自分の方に飛んでくる相手を受け止める役を負う事に。


「うわぁ!」

「おっと。って何があったんだよ急ブレーキなんかかけやがって……」


 急ブレーキを想定していなかったリディアはそのままガイウスに突っ込んでしまうが、彼の左腕がそれをあっさりと食い止める。


 ガイウスは自分に接触してきたリディアには何も感じなかったようだが、それより、やはり急ブレーキの原因が気になる所だろう。客は大事にしろよ、とでも言いたそうに目を細めていた。




「ひゃぅ!」

「わっ……。メルちゃん大丈夫だった?」


 ジェイクとメルヴィの方は、メルヴィの妙に可愛さのある悲鳴に対し、少しだけ下心を感じさせる目つきを作りながらも、ジェイクはメルヴィに心配の言葉をかける。身体は両手で掴むように受け止めていた。


「あたしは特に、大丈夫」


 自分を受け止めてくれていたジェイクの両手をゆっくりと離させながら、メルヴィは自分には何も問題が無い事を伝えた。




「あれ? なんか外で誰か喋ってるみたいだけど?」


 大した衝撃を身体に受けた訳では無かった為、リディアは停車した輸送車の外での対話を聞き取る事が出来たようだ。気になったのか、椅子から立ち上がり、前方に位置する運転席のすぐ後ろにある出入口に向かって進む。




「いきなり飛び出して危ないだろ!?」


 運転手は怒るというよりは、困ったような感情を見せながら声を荒げていた。聞いている感じを見ると、怒鳴るという表現はここでは間違いになるだろう。


「すいません! この車ってヒルトップ行きなんですよね? あたしも乗せてください! 代金は勿論払いますから!」


 声色からして、まだ未成年の女性なのだろうか。まるで性別を武器にするかのような多少の惑わしを見せつけた優しめな声色で謝罪と、そして乗車の懇願を要求していた。




 車内でやり取りを聞いていたリディアは外に出る前にその声色で何かを思い出したかのようにその場で足を止める。




「あれ? この声って……なんかシャルっぽいけど……?」


 リディアは一度聞いた事のある声色を聞いて、それが誰なのかを思い出せないという事は無かったようだ。仲間なのか、友達なのか、いずれにしても、その声の主がその名前で間違いは無いのかもしれない。


「言われてみりゃ……なんかそんな声だなあれ」


 ガイウスも面識があったのだろうか、深く思い出せば確かに聞き覚えがある声であると、力が入らないような自信の薄い口調でそう言った。




 声の主を何となく思い浮かべていると、外で車両を止める要因を作ったであろう人物が輸送車内に入口から入ってくる。最初に車内に入り込んできた右脚の色白な肌が輝かしく映り、そして間を置かずに身体全体が車内に収まる。


 緑のローブを纏った少女はすぐに乗車していた4人に謝罪を渡そうとするが。




「皆さんすいませ……ってあれ?」


 本当は急停車させた事を謝ろうとしたのだろう。しかし、目の前に見覚えがある少女が丁度入り口から椅子へ進む通路に立ち塞がるように立っていたのだから、自然と身体も声も止まってしまうものである。


 紫の色に包まれたポニーテールの少女こと、リディアだが、ローブの少女はリディアを見るなり、謝罪もすっかり忘れたかのように眩しい笑顔を見せ始める。


「リディア……リディアじゃあん!! 奇遇過ぎぃ!!」


 栗色の短めに整えられた髪のその少女は、リディアの名前を呼びながら勢い良く水色のワイシャツに包み込まれた身体に飛び込み、抱き着いた。周囲の視線も意識せずに、顔を知っている少女の温もりを顔面から受けながら、再開を心の底から喜んだ。





最近は今まで投稿した物語の粗筋を纏めてる関係で少しだけ投稿のテンポが遅れてしまいました。過去の話の設定を忘れてしまったり、これから描く物語の過程で最初に決めてた設定との食い違いとか矛盾とかが出てしまうと不味い事になりますから、最近はそちらの方に時間を使っておりました。まだ粗筋自体もまだ完全ではありませんが、また小説執筆の合間を縫って纏めていきたいと思っております。

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