第36節 《破壊と異常な亀裂 宝玉を賭けたビスタルとの戦い》 2/5
今回は駆けつけたエンドラルも加わる形で戦闘が始まります。ビスタルはパワータイプですが、エンドラルも同じような属性を持ってるので力のぶつかり合いになりますが、結果はどうなるか、ですね。
ビスタルの本気を出したのが今であった
風のブレスで周囲に風を存在させ、地面を抉る
地面の欠片を持ち上げ、リディア目掛けてぶつけようとした時であった
ビスタルの持ち上げた欠片を、雷撃で粉砕した者が現れた
その者の名前は……
「ん? 誰だそこにいるのは。ふん、貴様か?」
茶色の体毛を持ち、偶蹄目のような前に出た口と後方へと反り返った一対の角が特徴的な獣人であるビスタルは、自分が持ち上げていた地面の欠片を破壊した者の正体を目視する為に空を見上げたが、そこにいたのは、恐らくは面識のある相手であったようだ。
「我輩以外ありえないだろうなぁビスタルよ。随分楽しそうだなぁ?」
能力を駆使して空から降りてきたその男は、薄紅色の薄手の開襟シャツと、そして青のズボンを着用したとても戦闘の服装とは思えない格好の男であった。
しかし男とは言っても、皮膚は灰色で、そして髪のような役割をさせていたのは、赤い鱗であり、そして目は黄色一色で染まっており、そして眉間を中心に赤の罰印の模様が頭部を一周させるかのように敷かれており、決して人間の男では無く、人間とは異なる種族の男である。
わざわざビスタルの目の前を選んだ上で、そこにゆっくりと着地をする。
「エンドラルさんですよね! やっと来てくれたんですね!」
無線機でここにやってくる事を聞かされていたリディアだが、ビスタルの本気の実力が発揮される時に来てくれたと思われるエンドラルには感激せずにはいられなかった。これで自分達の勝機がまた上昇したと言えるはずだ。
「エンドラルさんナイスタイミングだぞ!」
ルージュにとっても面識がある相手なのは確かなようだが、言葉の使い方はルージュだからこそのものだったのだろうか。しかし、それでも敬意が見えるのは彼女の真っ直ぐな精神故のものなのだろうか。
「来たからにはもっとナイスな事を見せてやろうか。音には注意しろよ!」
降りてきたエンドラルは早速と言わんばかりに、まるで空からの何かを受け止めるかのように両腕を持ち上げた。それはこれからの技の為の準備だったと、数秒後に皆が思い知る事になるはずだ。
――両腕に電撃を溜め、それを空に向かって放出させた――
エンドラルを中心に、四方八方に向かって帯のように伸びた雷撃が、上昇しようとしていた地面の欠片に突き刺さり、瞬時に粉砕してしまう。それは目の前で落雷が発生するのと同じようなものであり、轟音はかなりのものだった事だ。
命中した際の威力も、轟音自体が教えてくれたはずである。
「確かに……音量には注意だった……わね」
サティアは雷が轟く音そのものに細身な肩を竦めていた。白の仮面で目元以外は隠していたが、表情も僅かに怯えたものになっていたのかもしれないが、音が止んだ途端にそんな表情は仮面の中ですぐに崩した。水色の瞳は確かに雷撃を捉えており、エンドラルの実力には改めて驚かされた事だ。
「エンドラルは煩い奴だからこれぐらい普通なんだよ」
マルーザは砕けた地面の一部が自分に降りかかってくるのを防ぐ目的で右手で顔面を覆っていたが、雷が轟く音に対して身体を震わせるような事はしなかったようだ。
そして、エンドラルの事は知っていたようで、今の音こそがエンドラルを象徴する存在であったらしい。
「さてとエンドラル。派手な挨拶はいいが、何しに来たんだ? 観光旅行、じゃあ無さそうだな?」
持ち上げていた地面の欠片は粉砕されたが、それでも戦う術を奪われた訳では無かった為、指を自分の筋肉が目立つ胸部の前で鳴らしながらここに来た目的を言わせようとする。
「分かってるようで何よりだ。それよりビスタルよ、また怪しい魔物を生み出したようだな? それが地域にどう影響を与えるか、自覚してるか?」
一方でエンドラルは真正面にいる状態で腕を組みながら、魔物の話を聞いた上で首を僅かに倒す。
今であれば周辺の地域が魔物によって侵略されてしまうが、時間の経過で遠方にある場所にも悪影響を与えるとしか思う事が出来なかったようだ。
「それはオレ達の目的の為だ。多少の犠牲は付き物だと分かっては欲しいつもりだがなぁ」
ビスタルは赤1つだけで支配された眼でエンドラルの黄色の眼と合わせるが、説明を聞かせている間もエンドラルの表情は変わらなかった。特に明るいと思える方向に進む事は無かった。
「それが通じないのがこの世界の掟だぞ? きっと4人も驚いただろうなぁ、あんな珍妙な魔物を見る事になって」
エンドラルはあっさりと答えてみせた。分かるつもりは無いのだろう。そしてビスタルの今の言葉や、自分よりもそれなりに長い時間接触をしていたリディア達4人を考えると、ここの存在したであろう球体状の魔物に対して良くない意味で心が動いたはずであると、周囲にいた4人を意識したつもりだったのか、視線を左右に渡していた。
「通じなかったら、どうするつもりだ? まあ大体は想像がつくけどなぁ?」
ビスタルは指を鳴らすのをやめる。そして聞かなくても分かるような質問を敢えて渡していたが、結果が事実となって自分に襲ってきたとしても、それを弾き飛ばすだけの自信が肉体に備わっていると意識していたのだろうか。エンドラル相手に下がる様子を一切見せていない。
「戦う、だろうなぁ? お前もどうせ我輩もそうだろうけど、4人とも帰す気は無いんだろ?」
元々エンドラルは戦闘が開始される事を前提にこの河原にやってきたはずである。先程ビスタルが持ち上げていた地面の一部を雷撃で粉砕した時点でもう戦う事は確定されたようなものだが、自分がここで引き下がった所で、今度は残りの4人が心配になるようだ。
「分かってる奴だ。放置したら後に邪魔になるからな。それに、リディアっていたな、そいつはうちでもマークしてるような前科もんだ。仲間達も事実上同罪だ」
ビスタルはどの部分を理解していたと察知したのだろうか。戦闘は確実だという事なのか、それともエンドラル以外の者達をあっさりとこの場から帰らせる事は無いという事だったのだろうか、それでも自分達にとっては障害となる事には変わりは無いようであり、そしてリディアに関してはビスタルが属している組織の中でも特別な扱いを受けていたようだ。
当然喜ばしい話では無いのは言うまでも無い。
「マークは兎も角前科って……。まあいいけど」
リディアは今はエンドラルよりはビスタルの近くにいた訳では無いが、話している声くらいは聞こえていたようだ。まるで犯罪者のような扱いを受けていた為、一瞬だけ気分が悪くなるのを感じたが、元々相手は敵であるのだから、どのような扱いを受けていても気にしたら負けかと感じ、気持ちをその場で整えたようでもあった。
「リディア、あの連中の事だからこっちの事滅茶苦茶低い評価下してやろうって企んでるだけだぞ? 気にすんな」
言われ方を気にしていたように見えたのだろうか、それを見ていたルージュはリディアの隣に歩み寄りながら、敵対している者達が自分達をどのような形で見ていようが過剰に意識する必要は無いとリディアの細い肩に右手を置いた。
「それは分かってますよ。その通りですよね」
リディアの方も本当に意識をするつもりなんか無かったようであり、頷きながら、ルージュの言葉の何1つとして否定する様子を見せなかった。
「リディア程度で前科……か。じゃあ我輩なんか国際指名手配クラスだろうなぁ? 我輩ならいつでもいいぞ?」
エンドラルはリディアの貢献度を密かに評価していたようであり、組織の者達が名前も顔も記録するという事は、それだけ多数の野望や計画を阻止されてきたという事にもなるはずだ。しかしエンドラルもリディアを更に超えるような阻止や妨害を組織に対して働いてきたのだろうか。
そして、もう戦闘が始まる事が確定されている事を覚悟しているようであり、周囲から見れば電撃を溜め込んでいるようには見えないが、見えない場所でいつでも放電を出来るように準備をしている可能性もあるだろう。
「やっぱり分かってる奴だ。じゃあ始めようか? 本当の遊びと殺し合いを……」
ビスタルは物分かりが良い奴であると実感したのか、ゆっくりと両方の手を握り締めた。元々太さのある指と同じ太さの爪が突き出たそれらが握り締められるが、それはもう始まる事が確定している次の行動の合図とも見て取れるかもしれない。
身を屈める様子をエンドラルは見逃さなかった。
――ビスタルは突然エンドラルに跳びながら殴り掛かる!!――
「やろうぜぇえ!!」
殴り潰すつもりだったのか、ビスタルはエンドラルを上から叩き付けるように右腕を振り上げたが、それは上から下に向かっての方向であった。
「その気合待ってたぞ!!」
エンドラルは寧ろ自分の為に殴り掛かって来てくれる事を歓迎するかのように同じく声を張り上げ、そしてやや上方から飛んでくるビスタルの拳を狙い、エンドラルも自分の拳に秘められた雷撃の力を試すかのように渾身のパンチを見せつけるかのようにビスタルへと向かって右腕を力強く伸ばした。
――互いの拳が激突し、周囲に激しい風圧が発生する――
周囲の者達は無関係者として認識されてしまったかのように、強い風圧が発生し、周囲にいた4人達を無理矢理に距離を取らせてしまう。
しかし、4人が強風を浴びて踏ん張る事で精いっぱいだったのにも関わらず、エンドラルとビスタルのぶつかり合いはまだ終わらなかった。両者共に拳がまだ互いに接触している状態でまだ前へ前へと力を注ぎ続けていたのだ。
「まだオレに歯向かう気か? 諦めるのも手だぞ?」
ビスタルは体格だけはエンドラルよりも太いと言えるが、それでもエンドラルの拳に接触しているビスタル自身の拳も、少しでも力を抜けばエンドラルに負けてしまう可能性を思わせるかのように何だか小刻みに震えていた。勿論恐怖から来るものでは無く、力む為に神経が集中していた為だ。
「お前こそ我輩相手にむきになってないか? そしてオマケだ!!」
エンドラルもビスタルの拳に自分の拳を接触させている真っ最中だが、ビスタルの腕の震えは力みによるものだとは思わなかったらしい。無理に力で張り合おうとした結果が腕に出ていると認識したのか、ここで言葉の通りの行為を実行し始める。
――エンドラルは拳の先端に電撃の力を集中させる――
「それで優勢になれると思う気か……? オレも同じ事してやるぜ?」
ビスタルはエンドラルの拳に電撃の力が蓄積されるのを目視で確認し、それを黙って見ている訳も無く、対抗する為に伸ばしていた右腕の筋肉に力を入れ始める。
――右腕を振動で激しく震わせてしまい……――
ビスタルの右腕が元々震えていたのは、筋肉が暴れようとしていたからであったのは間違いが無かったようだ。しかしエンドラルに対抗するには、自身の筋肉を更に暴れさせる必要があったからか、振動だけで腕そのものが肥大化したかのように見えてしまう程に更に激しく震わせ、それによってビスタルの腕から激しい風圧が激しく放たれた。
しかしエンドラルもそれは想定内だったのか、確かに身体はビスタルから離される形で激しく押し出されたが、それをエンドラルは風圧で吹き飛ばされたのでは無く、別の戦法を考える為に自分から敢えて距離を取る方向で決めたという形に持って行ったようであり、後方へと上手に着地をする。
「おっと、吹き飛ばされてやったが、次はどうする気だ?」
エンドラルはビスタルに対し、敢えて相手の攻撃によって自分が距離を取る事になったかのように伝えてやったが、この後に何をされるのか、それをある種の期待の意思で待つ事にしていたようだ。
威嚇のつもりなのか、攻撃そのものをするつもりだったのか、手と手の間に稲妻を走らせる事をしたが、ビスタルの動きを逃さなかった。
「なっ! やっぱり来るか!」
ビスタルは左手を自分の横に見えている地面へ突き刺し、塊1つを引き抜く形で強引に引っ張った。しかし、ビスタルから見れば小さく、一般人達からすれば成人した人間の胴体とほぼ同じサイズの巨大な地面の欠片を持ったままで左腕を振動させる。
「オレの本気だ! 受け取れ!!」
欠片も振動を受けるが、それが周囲の小さな石を寄せ集める事になったのか、付近の石達がどんどん引き寄せられていく。
――周囲の小石を集中させ、巨大な塊を作り出す――
巨大化した塊であっても平然と持ち続けていたビスタルであったが、当然それをエンドラルに向かって投擲をしてこないはずが無かった。
一瞬口元がにやついたビスタルであったが、塊を持ち上げる事に対して一切の苦痛を感じていないのか、まるでただの呼吸でもするかのようにあっさりとエンドラル目掛けて投げつける。
「誰が受け取……不味いな」
言葉の通り、直接受け取る気は全く無かった事だろう。しかし、直撃してしまえばただでは済まない事も分かっていた為、エンドラルは足元に電撃を放ち、そして引っ張り出すように右手を動かした。
すると、電撃を浴びた地面の部分が壁のように盛り上がり、ビスタルの投げた欠片の塊は壁に直撃し、呆気無く砕け散る。壁自体は過剰に分厚くは無かったが、欠片を受け止めるぐらい容易いような強度を持っていたのだろうか。
「けっ、お前も小細工が器用なんだなぁ?」
引っ張り出した地面を壁のように使ったエンドラルに一瞬ではあったが、苛立ちを感じたビスタルであった。しかし、壁とは言っても自分が直接破壊に向かえば良いだけの話だと考えたのか、壁に近寄ろうとしたが、その時、突然背後から声が聞こえたのであった。
「評価なんかしてる場合か?」
ビスタルの背後にいたのはエンドラルであった。身体を点滅させるかのように光らせ、瞬間移動を行なったのだろうか。瞬時にビスタルの後ろに付き、力が非常に強く乗ったであろう右脚による蹴りをビスタルの背中へと飛ばす。
「ん?」
背後から聞き覚えがある、というよりはさっきまでずっと聞いていた声が届いた為、警戒心の感じられないような見方で背後を振り向くが、エンドラルの攻撃は開始されていた。向かい合う前に、エンドラルの蹴撃の餌食となったのだ。
――背中を狙われ、確かに壁に向かって飛ばされるが……――
「!!」
人間では無い相手とはいえ、エンドラルはビスタルと比較すれば身体は細い方ではあったが、それでも蹴撃に耐え切る事が出来なかったのか、ビスタルは前へと押し出され、エンドラルが先程作り上げた地面の盾に接触させられてしまう。
ビスタル自身からすれば大した痛手では無かったのだろうか、壁に激突した後でも身体をよろけさせる事もせず、背後に敵対者がいる事が分かっていた為、身体の向きを変えようとする。
「こりゃ失礼、だな!」
蹴りの為に持ち上げていた右脚を下ろしながら、エンドラルは直接相手の身体に力を加えた事を詫びるが、心の底からの謝罪では無いのは確かだ。
「そんな程度で怯む――」
「もういっちょだ!!」
ビスタルはエンドラルの先程の蹴りが弱いと批評したつもりだったのだろうか。
しかし、言い切る前にエンドラルの追撃が飛んでくる事となる。
――振りかぶった拳でビスタルに殴り掛かる!!――
「……ふっ、なかなか暇潰しにはなりそうな力だ。関心させてもらうぞ」
真正面から殴り掛かるように飛んできたエンドラルの右の拳をビスタルは受け止めた。片手での防御であったが、背後には地面を抉って作られた盾があり、挟まれる形になっていたが、まだビスタルは崩れる気配を全く見せていない。
「さっきから妙な評価しか……なっ!!」
エンドラルは自分の攻撃を評価しないビスタルを更に追い詰めてやろうかと、左腕の周囲を電撃で包もうとしたが、ビスタルの足元が不自然に、それでもその場にいる事が危険なのが誰の目から見ても分かる程に砂埃が立ち上がり始め、そしてビスタルも右腕に更に力を込め、エンドラルの右腕を押し飛ばす。
身体も一緒に突き飛ばされたエンドラルだったが、ビスタルはその場で両腕を、腋を締めるように力を込めながらその場で雄叫びを放ったのである。同時にビスタルの足元の床がまるでビスタル自身を巻き込むかのように欠片となって持ち上がったが、目的は自分自身が地面の餌食になる事では無い。自分の周囲から舞い上がった欠片をエンドラルへと放つ事であった。
雄叫びの時とはまた違う形で風圧を発生させ、それはエンドラルに対する実質的な攻撃そのものとなったのだ。
――地面をひっくり返すかのようにエンドラルを巻き込んだ――
「馬鹿力で来た……か!!」
エンドラルに向かって飛んできたのは、地面を砕いた事で現れた欠片による津波のようなものであり、それが一気にエンドラルに目掛けて押し寄せてきたのである。
無数の地面の欠片に対処する事が叶わなかったのか、エンドラルは砕けた地面の欠片によって覆われてしまったのである。
「お前はそこで生き埋めにでもなってろ。さて、鑑賞グループはこれからどうする? あいつみたいに生き埋めにされに来るか?」
山のように積まれた地面の欠片の中に埋まっているであろうエンドラルに向かって、ビスタルは相手が聞いているのかどうかも分からない状況で勝ち誇ったような口調で言い放った。
そして戦う相手を1人減らした後であった為、今まではただ自分とエンドラルのぶつかり合いを観戦しているだけであった最初からここにいた4人に目を向け直した。
「逃げる気は無いよ? そして、生き埋めになるつもりも無いからね!」
ビスタルと目が合った訳では無かったが、リディアは何となく自分が答えるべきなのかと考えたのか、逃亡するような意思は存在しないと言い返した。エンドラルを心配している様子が見えないのは、それはただ瓦礫の下敷きになっただけで命を終わらせる程弱い存在では無いという事を分かっていたからなのだろうか。
絶命したとは思っていないにしても、エンドラルにとっては不利な状況に追い込まれている最中であった為、リディアも今度こそは相手を追い詰める為にもっと戦法を練る必要があると、右手から氷の刃を生成させる。
「ってか鑑賞グループって言い方は流石だな……」
ルージュは決して眺めていたつもりでは無かったのだろう。あまりにも危険過ぎた為に援護すら出来なかっただけなのかもしれないが、それを鑑賞という言葉で纏めてしまうビスタルは流石は敵対者ならではの捉え方だと密かに関心をしていたのかもしれない。
しかし、ルージュのこれからの行動は勿論、ビスタルへの反撃だ。エンドラルの為にも、彼は死んだ訳では無いと思われるが、ここまでの戦いを無駄にしてはいけないはずだ。
「逃げないのは褒めてやる。だがな、気持ちじゃあ長生き出来ないぞ? 事実、見せてやろうか?」
まだ諦めないのかと、ビスタルはまだ瓦礫の餌食になっていない4人を見渡すが、これから自分が行なう攻撃はエンドラル以外の者であれば耐え切る事は無理だと思っていたのだろうか。
相手からの返事を一切待たず、ビスタルは両手をそれぞれ左右に存在する地面に強引に突き刺したのである。しゃがむ動作も入れながら地面に両手を接触させたが、そこで再び力任せな行為を4人に見せつける事を決めた。
――地面に突き刺した両手でそのまま地面を引き剥がす!!――
剥がされた地面は棒のような形状となり、それが両腕に突き刺さった形となった為、事実上両腕のリーチが更に倍加したようなものとなり、外見だけを見れば棒状に引き剥がした地面の一部を両腕に装着させたやや妙な姿ではあるが、この状態で襲い掛かってきた場合、それはただの間の抜けた姿と批評している暇はまるで無くなるだろう。
「それが事実ってやつ、なのね? リーチ凄い事になってるわね……」
サティアはビスタルの腕によって引き抜かれた地面のせいで確かに攻撃の範囲が非常に広くなったという事を思い知るが、確かにその状態で今までと同じ戦い方をされれば、回避が困難になるのは言うまでも無く、しかしそれだけで事実を本物の形にされてしまう事だけは避けたいはずだ。
「悪いけどそれだけで長生きをさせてもらえなくなるなんてごめんだよ?」
マルーザとしても、ただ両腕に地面を装着させただけの相手に負ける気は無いようであり、勿論相手が言う長生きというのは存命するか、絶命してしまうかのどちらかを選ばせるという事であるのは分かっていた為、ある種の武装を施した相手に勝利をしなければ本当に自分達の未来が無くなるのは確かだと、実感をしたのかもしれない。
「じゃあ遊んでやるか? 宝玉は兎も角、お前らにはまずあの世に逝かせる必要があるからなぁ?」
もうビスタルとしては宝玉はついでに回収という計画でしか無いようであり、一番の目標は4人と、そして瓦礫の中でまだ生きているであろう1人の男こと、エンドラルの始末である。しかしただ適当に絶命をさせてやる事を面白いと思わなかったのか、両腕に地面の一部を装着させたまま、身体を捩じるような体勢を作り始めた。
「おらぁあああ!!!」
ビスタル自身の地面をも粉砕する異常な肉体的な力に加えて、純粋な質量や重量も備えたであろう地面の一部も加わり、その場で高速回転を始めたビスタルの周囲には激しい風が舞い、やがてはもうビスタル自身の姿が元の姿を保っているのかも分からない程に激しい回転数となり、そして両腕に纏っている地面の欠片の関係もあり、視覚的にはビスタルの生身と地面の欠片が複合されたようにも見えてしまっていた。
そしてやがて螺旋を描く形で風そのものが形となっていく。
――その場で回転し、自分を中心にそのまま竜巻と化し……――
ビスタルは地形の岩をも武器にする強敵です。エンドラルはちょっとピンチになってしまいましたが、どうなるのでしょうか。生き埋めになってしまったけど助かってる事を祈りましょうかw




