第35節 《躾の皆無な理性無き魔物 現れたのは破壊の獣ビスタル》 4/5
水辺での戦闘の始まりと言うべきでしょうか。今回は水辺の管理者らしき兵士達に絡まれて、そこから話が始まります。しかし皆特殊能力を持ってるので何とか切り抜けてくれると信じるしか無いと思います。
水を操る目玉の生命体
しかし、途中で水の柱を発生させ、姿を消してしまう
だが、それで終わりにしなかったのがリディア達だ
サティアという探知スキルを使える竜人の少女の力を借りるが……
ふと気付いたのだ
銃口を向けられていたという事実を
「うぅっ!!」
ツーサイドアップの青い髪を持つ少女は、岩の上で探知をしていた所、突然銃弾に襲われたのである。
探知によって銃弾自体もすぐに察知する事が出来た為、存在を察知するのと同時に無理矢理に身体を岩の上から投げ出す事で直撃だけは免れた。
地面にそのまま落ちそうになった身体を守る為に、落下場所に自分で緩衝手段を作る目的で水の球体を生成させ、そこに落ちると同時に体勢を真っ直ぐにさせ、地面に足から降りた。降りるとほぼ同時に球体は消滅した。
「おいっと! さてと……誰よ!? 今アタシに発砲なんかした奴!!」
バランスを乱す事も無く綺麗に着地を決めたサティアは、自分に銃弾を飛ばした犯人を見つける為に、飛んできた方向に向かって怒りさえ見せた水色の瞳を向けた。白い仮面を装着させたままであったが、目元から見えるその瞳の感情は本物だ。
「お前達! そこで何をやってる! 無関係者は立ち入り禁止だぞ!」
水の装甲を思わせるような全身を青い装備で固めた兵士2人が、長い銃身の武器を装備しながら近寄ってきたのだ。その内の1人だけが銃口を下ろすような動きを見せながら喋っていたが、この兵士が先程発砲したのだろうか。
「サティア! 今誰かに撃たれたよな!? お前大丈夫だったのか!?」
すぐに、離れた場所にいた赤い髪の少女であるルージュが駆けつけてくる。サティアの近くを何かが高速で過ぎ去ったのを見逃さなかったのか、それによって何か負傷とかをしていなかったかどうかを聞こうとしていた。今は平然と立っているサティアであったが、事実を聞かなければ何も分からない。
「いや、アタシはそもそも命中自体されてないんだけど、なんか危なさそうな奴が来たわよ! あそこ!」
サティアの言葉は事実で間違いは無いはずだ。腰が見える程の丈の緑のブラウスや、胸部を保護している黄色の胸当てにも何かが命中したり掠ったような痕も残っておらず、回避自体には成功していたようだ。
自分の心配をしてくれていたルージュに対し、今は自分を狙ってきた2人の兵士を確認してもらうのが先だと思い、兵士達の居場所に向かって指を差す。
「……あれって、もしかしてこの場所管理してる奴ら、ですかね?」
ルージュに続いて共に駆けつけてきたリディアも、兵士2人の姿を確認するが、自分達を敵として認識している以上はこの地域を管理や支配の対象としている者達なのかと、警戒心を抱き始める。
「どっちにしてもわたしらの敵だって事には変わり無いね」
上半身しか存在しない赤黒い影の肉体のマルーザもやってきたが、現れた兵士2人に対しては、自分達にとって害悪の存在であるという認識しか飛ばしていないようだ。
兵士達が持っている銃身の長いライフル銃も、害悪という要素をとことん強めていると言えるだろう。
「だとしたら、また発砲してくるんでしょうか?」
リディアとしては、本当に発砲をされたとしてもその場から逃げ出す自信くらいは存在したのかもしれない。しかし、それは争いを呼ぶ始まりにも繋がる為、とても穏やかではいられないはずだ。
それを聞く相手として決めたのは、マルーザであった。
「だと思った方がいいね」
一言ではあったが、警戒心を解く事は自分の命を諦めるのと同じだと、マルーザの言葉にはそれが込められていたはずだ。
「ここは立ち入り禁止だ。遊びに来たならさっさと帰れ!」
銃口こそは下げたままの状態ではあるが、兵士の1人がこの場所から立ち去るように声を荒げる。
「いや待て。こいつらはマチルダ様の基地を襲った連中だったはずだ。帰すよりここで始末した方がビスタル様もお喜びになられるぞ」
もう1人の兵士が突然思い出したのだろうか、4人の姿を見て、自分達の仲間の基地を襲った者達がこの4人である事に気付いたようだ。尤も、既に他の仲間達に情報は伝えられていた可能性もあるから、それでリディア達の情報を予め持っていたと思われるが。
「ふぅん? お前らマチルダって奴の仲間だったのか? いや、部下か。それより、始末するって事はわたしらと戦うって事か?」
ルージュは腰に両手を当てながら、敵の兵士達が所属している場所を予測した。濃い紫のジャケットは腰よりも短い丈であり、手は直接素肌が出た腰に当てられていたが、そのポージングはいつでもかかってこいと挑発をしているようにも見えるだろう。相手の言葉から、自分達に何をしようとしているのかというのも予測する。
「ちょっとルージュ……。あいつら拳銃で武装してるわよ? 油断したら殺されるわよ?」
好戦的な態度を見せ始めるルージュに対し、サティアは一旦相手の武器を改めて確認するように、潜めたような声で呼びかけた。銃身が長い武器を構えている為、発砲されれば無事では済まない事も実際に射撃されなくても分かるはずだ。
「拳銃っていうかスナイパーライフルだけど、その前にさっきのあの変な生き物って何なんだい?」
兵士達の所有している武器の正式な名称と言うべきか、もっと具体的にしたものに勝手に訂正したマルーザであったが、わざわざ自分達に威嚇射撃までしてまで、先程の球体の生命体との接触を拒むかのような態度がどうしても引っかかり、兵士達にそれを説明させようとする。
「おいおい人の基地を襲撃しといて、今度は他人の戦闘兵器にまで手を出す魂胆か? 随分なものだなぁ」
兵士は一応はマルーザの問いに答えたというべきなのだろうか。
しかし、ここは兵士達が所有する空間であるのは確かであり、そこを襲う行為をした4人をただで帰すつもりは無い様子でもあった。持っているスナイパーライフルの威圧感は全く消え失せてはいない。
「悪いけど、私達あういう危ない実験とか研究してる場所を放置する訳にいかないんだよね。さっきのあの変な生き物だって、関係無い人達まで襲ったりするんでしょ?」
リディアも皆が兵士2人に対して弱気な姿勢を見せていなかった為、リディアも皆に合わせるように兵士達の計画をあっさりと進ませる事をしないと、黒のハットとマスクの間から見えている青い瞳で真っ直ぐ兵士2人に強い視線を向ける。
「目的の為なら多少の犠牲は付き物だ。それとお前らだったら素晴らしい実験体になるのは確かだなぁ。まあマチルダ様に歯向かったらしいが」
まるでリディアの質問に対して当然だとでも言っているかのように、他の生きる者の命が奪われる事に関して、それを平然と喋っていた。そして妙に前後の話が繋がっていないかのように異なる話題を出していたが、生物の飼育だけでは無く、他者を捕らえた上での改造も一緒に行なっているという事なのだろうか。
そして、先日戦った、粗暴な性格が特徴的な竜人の女性の名前がここで再び登場した。
「その言い方だと、あのマチルダって奴まだ生きてるのか? どうでもいいけど」
ルージュは今の話を聞いて、まだマチルダがあの基地で絶命をしていなかったのかと、疑問点として受け止める事を決めたようだ。しかし、言葉ではマチルダの生死が今後の自分達の行動に絡む事が無いかのような言い方を見せていたが、生きている以上は再び自分達に目を付けてくる可能性があると疑っていたのか、橙色の瞳の目の前で、実体としては見えないマチルダの乱暴に笑う様子がうっすらと見えてしまったようだ。
「そんな事お前らに説明してどうなる? そして宝玉を盗んだって話もあったな。大人しく返してもらおうか?」
兵士はルージュの言葉を質問として捉えていたのか、しかしそれでもしっかりとした形で答える事をしなかった。
それよりも、やはりルージュ達の情報もこの兵士2人にはしっかりと届けられていたようであり、ルージュ達からすれば取り返した物として解釈しているであろう宝玉も、やはり兵士達からすれば奪われたと解釈するものであるようであり、ここで言う通りにしなかった場合、何を行なうか、それは兵士達が所持しているスナイパーライフルが答えを出していると言っても良さそうだ。
「いや、あれ元々あんた達の物じゃないでしょ? 悪いけど言う通りにはしないからね?」
純粋にリディアは否定の態度を兵士2人に向けた。口調もやや低めなトーンにしており、兵士の要求には何一つ答える姿勢を持たない態度を見せつけた。
「お前の言い分が通じると思うならそういう態度を取ってればいい。どうせ地獄を見る訳だからな」
まるで今のままでいる事が結果的に自分を滅ぼす事になると脅すような言い方を聞かせてくる兵士であったが、どうやら目の前の4人が凄惨な目に遭う事は確定していたようであり、4人が気持ちを改めなければ、本当にこれから計画している光景が現実になるぞとやや遠回しに脅迫をしていたのだ。
「一応皆には言っとくけど、アタシ達囲まれてるからね? こいつらと似たような外見の奴らに」
サティアは探知の能力を密かに使っていたのか、周囲の気配から兵士達の仲間が隠れている事を自分以外の者達に伝えた。
青い装備の兵士達は2人だけでは無く、自分達を囲うように他の兵士達を配置していたようである。考え方によっては、もう逃げる事は不可能に近いという事だろうか。
「マジで?」
ルージュはそれしか言わなかったが、囲まれているという事実を聞いて、適当に戦う事は許されないという事だけは把握した。言葉は軽いが、気持ちは非常に強く引き締めていたはずだ。
「ホントよ。それと同じような武器持ってるから、油断出来ないわよ?」
サティアは意外と冷静な様子でルージュへとそれが事実であると返答し、そして兵士が所持しているスナイパーライフルを指で差しながら、周囲に隠れている兵士達も同様の物を所有していると説明をした。探知で相手が所有している物の正体も知る事が出来たのだろうか。
「じゃあどうするんですか? それにしてもサティアさん随分冷静そうですけど……」
リディアはそれを聞いた事によって、全方向から銃口を向けられている事実を受け止めたが、この状況でどのような処理をするのか、リディアは分からなかったのかもしれない。リディア自身ならその場で逃げる手段を持ち合わせていたのかもしれないが、皆が心配であったようだ。
「銃で狙われてるのに冷静とはねぇ。わたしは平気だけど、皆はどうかな」
マルーザもサティアの落ち着いた今の様子に関心はしていたが、あらゆる方向から銃で狙われている状況でどのように皆が回避手段を見せてくるのか、心の中で期待をしていたようだ。皆を信じていたからこそ、過剰に焦る様子を見せなかったのだろうか。
「サティアもしかしてお前あれしてくれんのか?」
ルージュは周囲を囲まれている時にサティアがどのような対処をしてくれるのかを分かっていたのだろうか。或いは、期待をしていたからこそルージュの表情に囲まれている事による怯えの様子が見えなかったのだろうか。
何だかルージュの笑みのある表情は、サティアに対して早く行動に移せと要求をしているようにも感じられる。尤も、サティアは今はルージュの表情を直接目視はしていないのだが。
「勿論よ。あれよ」
ここでようやくサティアはルージュの表情を目視した。横にいた為、少し顔を横に向け、後は水色の瞳を向けるという形ではあったが、それでもサティアの仮面の奥に見える瞳には絶対と断言しても良さそうな強い信念が感じられたはずだ。
普段から行なっている特技であるからか、それが確実に自分達の状況を優勢へ変えられると尚更強い自信があったのだろうか。
「ゴチャゴチャ言いやがって。まあいいや、ハチの巣にしてやる。お前らやっちまえ!!」
兵士達からすると、ただ死にたくないからお喋りでもして気を紛らわそうとしているとしか思えなかったのだろうか。
スナイパーライフルを構え始め、そして同時にこの一帯に響くような大声を張り上げた。
――突然川の中から複数の人間の姿が現れる――
川を突き破るような派手な音を響かせ、青い装備の兵士達が川の内部から出現する。兵士達は全員がスナイパーライフルを装備しており、いつでも発砲が出来るよう構えてもいたのだ。
そんな絶体絶命とも言える囲まれた状況の中、サティアはまるでこれが分かっていたかのように、水色の瞳に自信を抱いたような雰囲気を込め始めた。
「やっぱりね! 皆! 後は散らばって個々に撃破頼むわよ!!」
予想が的中したと確信したサティアは、皆が知らない間に両手に小さな水の球体を作っていたが、それを左右に放つかのように両腕を外に向かって伸ばし、両手に付着させていた球体を破裂させる。
破裂自体は球体自体のサイズに相応しい非常に小さい規模のそれで終わりを告げたが、同時にサティア以外の3人が突如水の膜で出来た球体に包まれた。
そして、3人が何かサティアに対して言葉をかける余裕も一切与えずに再び力を込め、サティア以外の3人をその場から水の膜と共に姿を消滅させてしまう。
――それは消滅と言うよりは、転移と言うべきだったかもしれない――
「サティアの奴やってくれたな!」
「わたしまで助けてくれるなんて、親切だね」
「これがサティアさんの作戦なの? ってかこの水何?」
ルージュと、マルーザと、そしてリディアはサティアの念じる力によってそれぞれ離れた場所へとワープのように転移させられたのである。
それぞれが思っていた事を口には出していたが、ルージュはいつもそれで助けてもらっていたのだろうか。マルーザは自分の為にその場から回避をさせてくれた事と、そして水の膜をバリアのように使わせてくれる事に感謝の気持ちを抱いていた。
そしてリディアはサティアとは面識こそあったものの、恐らくはこの回避手段を取ってもらったのは初めてだったのだろう。先程いた場所から離れた場所に飛ばされたのは勿論、自分の周囲を守るように貼られた水のバリアも気になる所であった。しかし、自分の動きを阻害する様子は無かった事と、そして視界を遮られる様子も無かった為、戦闘の面では視力の妨害になる事は無かったようだ。
――取り残されたサティアも決して諦めた訳では無く……――
「なんだ? お前自分を犠牲にするつもりか? じゃあ死ね!!」
兵士は1人だけその場に残ったサティアに対し、自分で命を捨てる選択を選んだものとして認識したようだ。この後の選択の余地や、生命そのものの維持さえも認めないかのように、相手の命の終わりを簡単に予知させる事が出来る言葉を乱暴に放つと同時にサティアへの発砲を開始してしまう。
生命の終了を強要するような罵声を合図だと感じたのか、サティアを狙っていた他の兵士達も一斉に射撃を開始する。
(馬鹿ねこいつら……)
サティアは発砲が開始される前に、自分の身体に魔力を込めていたのである。撃たれる前にサティアは自分自身の身体を衣服含めて水そのものへと変化させたのである。
形だけは元のサティアそのものであったが、身体の構造自体を水だけにさせた、と表現すべきだろうか。そして水だけで構成された身体に命中した弾丸は、あっさりと突き抜けてそのまま遠方へと消えていく。
水の形状へ身体の構造を変えている間は肉体に損傷が入らないのか、複数の弾が身体を貫いていたのにも関わらず、平然とその場から走り出し、狙ったのは自分達に最初に絡んできた兵士2人であった。しかし、真正面から攻撃に向かったのでは無く、そのまま兵士の目の前に向かって飛び込むが、すると地面に対して、水面そのものに飛び込んだかのように地面の中へと姿を消してしまう。
――姿が消えた様子を見ていた兵士は……――
「なっ! どこ行ったあいつ!」
兵士2人はスナイパーライフルを持ち上げたまま、目の前で地面に沈むように姿を消したサティアの事で動揺していたが、姿を消したサティアは兵士達の視界から外れた場所に現れたのだ。
「ここよ?」
兵士達に聞こえていたのかどうか分からないような小さい声であったが、サティアは一度身体を水の形状からいつもの姿へと実体化させ、装備していた水の双剣で背後から斬りつける。
兵士の装備は双剣を充分に防ぐだけの強度が無かったからか、そのまま力無く崩れ落ちてしまう。
しかし他の兵士がまだ残っており、サティアを狙い、一斉射撃が再び開始された。当然、すぐにサティアは再び身体を水の形状へと変化させ、そして銃弾が飛び交う中を駆け抜けた。
飛び交う銃弾のいくつかがサティアに命中したが、水の形状となっている今は、サティアに対しては一切の致命傷にはならなかった。
(とりあえずこいつら片付けるか……。皆は大丈夫……よね?)
サティアは自身を水にする上で身体を守りながら戦うが、他の3人には水のバリアを張る事で銃弾による被害を防いでいた為、後は皆がそれを頼った上で最低限自分の状況を切り抜ける事が出来るか、それを信用するしか無かった。
そして、願いながらも、容赦の無い射撃を行う他の兵士へ向かい、そして水の双剣による一撃を与えて見せた。
その最中、サティア達が寝泊まりした宿で待機をしていた、ルージュの後輩であるジーナにとある影が近寄っていた。
水辺での戦いになりましたが、サティアは水使いでもあるので水辺での戦いは得意そうに見えますが、実際はどうなんでしょうか。でも水でガードをしたり、武器にしたりも出来るので、水辺に限定しなくても戦えそうな雰囲気はありますが。




