【(39+mouse)×{1000(B-mouse)}】
【自動的にセーブされます】
目を、覚ましました。
頭上を見て、目を疑いました。
【39】。
さっきは【77】だったのに、【39】。
【77】―【39】=【38】
ハートがドキドキしはじめました。
【39】―【38】=【1】
ということは、もしかしたらあと二回やられたら死ぬ?
いや、一度死んだ数字の減り具合が前よりも増加していることを考えれば、次で【0】になる可能性もある。むしろそっちの可能性の方が高いぐらいだ。
「おはよう」
【大目玉】の上から【i】が言いました。
「次で終わりかな」
そう言って彼女は中指をたてました。
クイッ。
数百の中指が曲がると、その瞬間、曲がった中指と同じ数だけの小さな白い点が上空に生まれました。まるで星空のようだと思いました。
「どうする?」
彼女が尋ねました。
「どうするって何を?」
ボクが尋ね返すと、彼女が言いました。
「このまま終わっちゃっていいの?」
「……分からない」
「でも何もしなければこのまま終わっちゃうよ」
「終わったら、どうなるの?」
「大したことじゃないよ。一番最初に戻るだけ」
「一番最初?」
「そう、一番最初。そしてまた同じことが起こる。その繰り返し」
彼女はそう言って小指と薬指を曲げました。【目玉】が消え、彼女は地面に着地しました。【唇】も消えています。
「【人】はみんなあたしを勝手に【B】だと思ってあたしを追いかける。でもあたしは【B】じゃないあたしだけが【B】じゃない。あたしだけじゃなくて【目玉】も【唇】も【骨】も【マウス】も【B】の一部で【B】そのもの。だからあたしだけじゃなくて【目玉】も【唇】も【骨】も【マウス】もつまり目の前に存在するもの全てを受け入れないといけない」
「……ボクはまだ全てを受け入れられてないってことだよね」
「【人】の中ではよく頑張った方よ。【骨】とあんな風になってしまうまではあたしも希望を持っていたから」
「どうやったら全てを受け入れられる? もう遅いのかな」
「方法なんて誰も教えてくれない。だって自分で見つけ出すものだから。遅いかどうかも誰も言えない。それも自分で判断することだから」
「じゃあ今からでも間に合うかもしれないってことだよね?」
「さあね」
ボクは目線を上げました。
周囲が明るくなってきていました。
やがて恐ろしい轟音がしました。




