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~ずっと繋ぎとめたくて~

※私の連載小説「誰か」の理想郷の外伝みたいな話です

※以前投稿した短編とまったく同じです

※本編よりちょっと過激な性格になってる方がいます

※自殺、自傷表現あります

※友情メインですがおそらくGLっぽいかもしれません

※ヤンデレ要素あります

※救いがあるオチ


″…もういい、さようなら…″


″…頼む…待って…待って…″


「待ってくれ!!」




病院のベットの上涙を流しながら、天井に手を伸ばした姿勢で目を覚まし

少女は茫然しばらく茫然としてここが夢なのか、現実なのかを確かめた


「また…夢…」


そう言って、上半身を起こしたのは…海部要

母親に持ってきてもらった携帯電話で時間を確認すると、既に夕方4時であった


かつて、彼女が自らの行動に絶望し自殺を図ってから既に長い日数が経過していた

そのため、本来なら自宅に戻ってもいい日付のはずであったが

自宅には鋏など、刃物が多く目がつく…

情緒不安定な彼女が再び自殺を図るやもしれない今、未だに戻れずに居るのだ


もちろん、彼女も自身で解決方法を考えていないわけではない…その一つが睡眠であった

本を読んでいても、穴埋めのための勉強をしていても、結局余計なことを考えるならば

眠っていた方がマシだ、と昼寝の時間をとっていた


…が、彼女の自虐は部活の友人という形を借りて彼女に襲い掛かっていた…



「…今日は…宮内…か…」


はぁ、と息を吐いて天井をじっと見つめて夢のことを思い出す

ここ最近の夢は、部員が彼女を責めた上で、絶交を告げるものであった


互いに意識を共有する夢とは感覚は違うため、おそらく結城たちが言っているわけでは無いだろう

だが、それでも彼女の精神には重く来るものがあった


(…まぁ…本当だとしても…仕方ないか、私はあいつらに酷いことをしたんだ…

 おそろしく…酷く…)


自身の行動を思い出すと、自分の傷つけた左腕を掻き毟りたくなるような衝動が湧き上がるが

右手を左腕に当てた状態でそれを堪える


(…宮内…)


心の中で、名前と呟くと、一連の騒動のことを思い返していた


(私は…アイツを脅してまで…味方にした…本当のことを知りたいとか…訳わかんない…

 そのくせアイツは…まだ…まだ…私に…)


かつて、宮内は結城と一ノ瀬が海部のことをどう思っているのか

…といっても、本当に些細なグチであったが…を告げてしまった

それ以来、海部は宮内を執拗に追い、味方に引き入れ、協力させた


「…アイツは…なんで…適当に…ごまかせば…よかっただろ…?」


髪の毛をギュッと握り、涙声になってただ、誰にともわからずに問いかける

…自分が、どれだけ人として最低なことをしたのか…理解していた

そして、宮内もまた理解していた筈だった…


(何故、何故宮内は、私の味方をし続けた?)


その理由がまったくつかめないまま、海部は感情のまま言葉をもらす


「…そんなこと…するから…するから…私は…私はお前を…」


言いかけて、海部は口を閉じた…どうしたいのか…それは口にするにはあまりに醜く、おぞましかった



そもそも、以前から宮内には相談を持ちかけたり、自分のネガティブな部分を吐き出していた

そこに、この騒動で脅したながらも自身に味方をし続けていた宮内に対して



海部は…かつて感じたことの無い執着心を生んでいた



それは、もはや彼女の支えがなければ前に進めないと、もう立ち直れないと錯覚するほどに



「…馬鹿か…私は…わかってるんだ、これがどんだけおかしい感情か…

 こんなの間違ってる…間違ってる…単に、甘えてるだけなんだ…わかってる…」


それでも…海部の中で、その執着心はますますおかしな方向に進んでいた

その声を、優しさを、全て手に収めたいと


「…いっそ…いっそ本当に…切りつけてしまおうか…」


言いながら、海部は自嘲的に笑って、続ける


「切りつけて、逃げられないようにしてしまえばいい…

 そうすれば、きっとずっと…全て自分のものになる」


一度あふれた感情は、制御を失っていく…次第に、優しさをものにしたいというよりも

宮内個人をつなぎ止めたいと願うようになる


「喉、いや、どこでもいい、最低限の傷だけつけて…

 何もかも…縛って…繋ぎとめて…もう二度と、私が一人に…ならないように…」


その考えが一瞬でも自分に浮かんだことが、彼女に罪悪感をいっそう強くさせた

それに、そんなことをしてしまえば、おそらく本当に宮内の心は海部から離れるだろう


そんなことになってしまえば…きっと海部は耐えられない…


「宮内…」


そのときのことを考えて、海部は急に寂しくなってその名前を呟く


「…宮内…宮内…」

「呼んだ?」


急に、名前を呟いていると聞き覚えのある声が聞こえてそちらを見ると

いつの間にか病室に入っていた宮内の姿があった、相手は何故か妙にニコニコとしながら立っていた






数秒の思考、沈黙





「うわぁぁぁあぁぁぁぁぁあ!?ど、ど、どこから…聞いてた…?」


海部は、顔を青くして宮内に尋ねる、相手は何事も無いように思い返して言う


「何かうなされてたから起こそうかな~とか思ったけど、考え事してたみたいだし

 邪魔しないようにしようと思って、落ち着いたみたいだし声かけてみた」

「…ハ、ハハ…ハハハ…」


″あぁ、終わったな″と思いながら海部は引きつった笑いをする


「…いや~嬉しいな~そこまで私を思ってくれてるなんて」

「…うるさい、少しは危機感を持て、聞いてたなら距離置け」


そっけなくそっぽを向いて海部は返す、本人の前では流石に理性はある

ただ、聞かれていた内容が内容だけに、どう接すればいいのか掴みかねていた


「…私は別に…切られてもいいけどな~」

「は?」


宮内がそう呟くのに、海部は思わず声を上げてしまう

相手は海部のベットの隣の椅子に座って


「だ~か~ら、切られて良いって言ってるの、むしろ本も…」

「…そんなこと出来るわけ無いだろ?思ってても、お前を傷つけられない…傷つけちゃ…いけない」


そう言って掌を辛そうに見つめる海部に宮内はため息を吐く


「そんな風に考えるから、辛いんじゃないの?」

「…?」

「傷つけちゃいけないとか、迷惑かけちゃだめだとか…そんな風に考えててもしんどいでしょ」


そういう宮内に、今度は海部は大きく息を吐く

そして、海部は相手に警告するように睨み付ける


「…さっきの、聞いてただろ?そういう風に優しくしてると、何されても知らないから

 本気で…独占するかもしれない」

「まぁ、私はそこまで愛してくれることが嬉しいし

 殺せるものなら殺せってことで」


そう笑って言う宮内に、海部もつられて笑う


「…言ってろ、いつか優しくしたこと後悔するからな

 今この瞬間も、私はお前に対しての執着心を増やしている」

「大丈夫、海部さんは何もしない優しい人だって知ってるから」


その言葉に、海部は普通にどう対処すればいいのか分からずに顔をそらす


「…何?照れてる?」

「うるさい照れてない」


宮内が嬉しそうに笑うのに、顔を背けたままそっけなく言う

その態度に、「相変わらずだな~」と呆れながら椅子から立ち上がる


「もう…行くのか?」

「今日はそもそもそんなに長くいれなかったし、ちょっと様子見にきただけ」

「…あいつらの差し金だろ?」

「酷いなぁ…」


海部がふざけて笑いながら冷たく言う様子に、宮内はどこか安心を覚えて返す


「…じゃあな、今度会うときは…もうちょっと私がまともだったらいいな」

「挑戦はいつでも受けるから、むしろ愛なら」

「一回黙れ、そして冷静に考えろ」


海部が急に突き放すのに「いつも本気なのにな~」と言いながら出口に向かう

そして、部屋を出る直前、二人は互いに手を振る


(…あの馬鹿…警戒心なしか…)


はぁ、と息を吐いて再び天井を見上げる

聞かれたことが逆に良かったのかもしれない、なんだか心がスッキリしていた


(…また、助けられた…)


ふと、思いかけたが、それでは着てもらった意味が無いと頭を振って思考を止める

そして再び布団にもぐりこんで目を閉じる


…次の夢は、もう少しうなされないものになりそうだと思いながら

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