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入れ替わり 最後

―月曜日―


「にしても散々だったな……」

「あぁ、うん、お疲れ様」


昼休み、部室への集合のために二階から降りてきた一ノ瀬と鳴滝は

教室の前で合流した結城たちと顔をあわせて思い出す。


あの後、幸いにも一ノ瀬の家族が全員で払っていたために、彼の家に一晩泊まらせてもらい

土曜日には一応大きなハプニングも無く全員の身体が元に戻ったのだった。

結城は感覚的にはもう何日も昔であったように思えるほどの疲労の感覚で

相手も疲れたのではないかと思いねぎらいの言葉をかける。


「でも結城も大変だったよね?……悠斗、トイレ近いから」

「うん、まぁ、それは……うん」


鳴滝がそのときの相手の様子を思い出したのか大きく息を吐いて視線を進むべき廊下の方向に向けた。

その言葉に苦笑いしながら結城は答えづらそうに言葉を濁す。


一ノ瀬はは普段遊んでいる途中でもかなり頻繁にトイレに向かう。

それは流石にまずい、と結局結城は布団でもんどりうちながらその欲求を我慢していたのだった。

心配そうな声にも答えられなかったことが数回あった。



「ったく!俺が膀胱炎になったらどう責任取ってくれるつもりだったんだ!」

「……そんなすぐにはならないと思うけど、丁度いい機会だから全部診てもらえばよかったんじゃない?

 アンタ、病院嫌いだからって色んなもの放置してきてるんだから

 高校の間に一回くらいちゃんと見てもらいなよ?」


一ノ瀬がけしかけるのに結城はため息を吐きながら忠告する。

以前彼が腹痛を放置して、結局見てもらう頃には原因が殆ど自然治癒寸前だったことを

彼女は思い出した。

相手はどこ吹く風と言った様子で気に留めてはいない様子だ。


「世間のイメージを気にする方では無いけれど、海部さん流石に酷かったよ」

「あれは本当にすまなかった……今度なんか埋め合わせはするから、な?」


塚本が少し暗い声で言うと、海部は咄嗟に思い出して謝る。

あのときの大声の噂は微妙に広がってしまい、

一ノ瀬の家では二階クラスの友人から問い詰めメールの処理に一苦労していたのだった。


「……本当?何でもしてくれる?」

「あぁ……い、いや、何でもは言って無いからな!?できる範囲で埋め合わせするってだけで」


塚本の笑顔が少しだけ怖くなって、海部は頷きかけたが何度か一歩下がりながら慌てて訂正する。


「何してるの?」

「み、宮内!?何でもねぇよ!」


背後からニコニコとした笑顔で声をかけてきた宮内が三人に見えるように海部は移動しつつ

その笑顔に悪寒を感じながら必死さを全面に押し出した声で返す。

これ以上、妙な提案が出される前に話題を切りたかった。


「あ、あんまり苛めるの、だめだよ?」

「いいのいいの、Mだから」

「そっか……」


鳴滝は制止するものの宮内の言葉に納得してそれ以上の追求を止める。

海部はどこか腑に落ちないものの、これ以上否定しても無駄だとわかっていたので

口を閉じ、伸ばしかけた手を止めてだらんと降ろす。



「ここで全員揃っちまったな」

「まぁ部室行かないと何も出来ないし、とりあえず部室行こうか」


結城が促して、ゆっくりと部員の足は部室の方へ向かっていく。


「舞ちゃんの格好でオーバーリアクションも面白かったよね」

「確かにね、アソコまで露骨に驚かれるといじりたくなる気持ちはわかるわ」

「あ、えっと……ごめん」

「別にいいよ、自分でも自分の反応見れるなんて体験ないからね」


相手の反応が新鮮で、何時までもからかってしまったことを思い出して塚本は笑ってしまう。

鳴滝が追い詰められたように弱弱しく謝ると、

宮内はフォローなのかそれとも本音であるのかわからない調子でそう返す。



「まぁ、確かに珍しい体験だったと思えば悪くなかったかもね?交友関係とか改めて知れたし

 自分を見直すきっかけにもなったかもね?」

「俺は最初から完璧だから俺に対しては改めて考えることなんかなかったけどな

 まぁ、お前の苦労をこんっっっっくらいなら認めてやってもいい」

「もうそれ見えないから……」


一ノ瀬が人差し指と親指を、もはや浮かせているかどうかわからないサイズで見せる。


「私と塚本は特に新鮮味も無い風景だったが……まぁ、無愛想なのは治そうかと思えたな

 無表情のとき……結構怖いんだな」

「でしょ?いっつも不機嫌そうだから近づきづらいのよ、私が言えた口でもないけどさ」


海部が腕を組みながら苦笑すると、結城は思わず相手を指差しながら同意する。


「「だからこそデレがおいしいんじゃないですか!」」

「結城助けて」

「いや」


宮内と塚本の揃った声に気おされて助けを求めた海部を一蹴して、結城はすたすたと進んでしまう。

見捨てられて溜まるか、と海部も慌ててその後を小走りで追いかける。


「でも、僕はもう嫌だな……女子怖いよ、なんであんな気軽に触ってくるの?

 なんであんなからかってくるの?僕には理解できないよ、ますます女子がわからなくなったよ」

「まぁ、俺もあくまで貴重な体験で終わらせたいな……

 授業はすっげー楽だったけど、文系ずるいよなぁ」


鳴滝にとっては軽いトラウマになったようで頭をふるふると左右に振るのに

一ノ瀬は同情したような声音で頷くものの、不満そうに続ける。


「それは頭のいい悠斗くんが頭いいからでしょ?

 まぁ私理解できるできないにかかわらず寝ますけどね!」

「おい屑」

「悠斗!思ってても口にしちゃ駄目!」


自慢げに言う宮内に一ノ瀬が冷たく突き放すように言うと鳴滝は咄嗟に制止した。

ようやくたどり着いた部室の扉を開くと、

以前に机は元に戻していたが、よく見ると床には石灰で描いた陣が残っているままだった。


「あー……あれ面倒で放置してたな、掃除しねぇと」


鞄を下ろして真っ先に気づいた海部が雑巾を数枚とバケツを取り出して廊下に出る。


「じゃあ俺達は机どけるか、どうせ下になってるだろ?」

「だね、一人で動かせる?」

「大丈夫じゃない?」


言いながら残った四人が机を動かすと、その下になった妙な図形があらわになる。

改めて見るその図形をじっと魅入ってしまった


「よしお前ら!水汲んできたし、とっとと消すぞー!あ、宮内杖外にどけてくれ」

「りょーかーい」

「私も雑巾手伝う」

「僕も!」


海部が乱暴に陣の上にガンとバケツを乱暴に降ろすと、宮内に指示して雑巾をバケツの上で絞る

それに塚本と鳴滝が駆け寄って二人も雑巾をきつく絞る。



「先に箒で掃いたほうが楽かもだし、やるか……ありがと」

「おう」


結城は隅にあった箒を取って、背後に来ていた一ノ瀬にもう一本を渡す。

と、一ノ瀬が軽く一歩に下がると、ドンと誰かにぶつかる感覚を感じる


「お、悪い、大丈夫か」

「あっ!?まぁ……」


声を上げたのは宮内、と、同時に杖は垂直に陣の上に落下してしまう。

陣は掃き掃除を優先したためにどこも消えていない完全な状態だ。

床から、見たことのある白い光が湧き上がる。


「えっ!?」

「あっ」

「待て!?」

「これって」

「そういう……」

「勘弁、してよ……」

















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