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Nightmare

※惨酷なシーンしかありません、苦手な方はご注意を

※とある特定人物が痛い目にあっています




「…う…ん…?」



誰も居ない、教室


そこで一人声を上げて意識を取り戻したのは…宮内

まだハッキリしない意識で記憶をたどる


自分は、なぜかどこかの教室の椅子に座って居眠りをしている体制であった

それ以前のことははっきりと思い出せない


ただ、これがあの厄介な夢の中であるということはわかっていた


「…まぁ、うん、とりあえず動いたほうがいっか…」


宮内はため息を吐いてゆっくりと椅子から立ち上がる


「他の皆は…いないね」


薄く、ライトで照らされたようで、一応教室が見渡せる明るさであった

が決して部屋は明るくは無い


「まぁ、合流すればいっか…」


そう思い、宮内は普段自身の傍に落ちている武器を求めて視線を床に降ろす

が、そこに鎌は無い


「…そういうのは、勘弁かな…」


そう思って、教室を歩きながら鎌を探す、が何処にも無い

無いと思われる場所さえ探すが、そこにすらない



「……そ、そうだ、鞭!」



そう思い懐を探るが、そこに鞭は無い

胸に小さな絶望にも似た感情が込みあがる



「…となったら、合流しかないよね…」



そう思い、扉の方に向かって走り、扉を開けようと手を掛ける


「…アレ?ちょっと、どうして…?」


宮内が何度扉を開こうとしても、それは全く動かない

ただ、ガンガンと何かに引っかかったように扉は動かない


鍵がかかっているのかと思い、内側から解除できる鍵を見る


“…はぁ、ちょっと焦りすぎかな”


自身を落ち着かせるように頭を左右に振って鍵の取っ手に手を掛ける

が、その反応も扉と全く同じで、ただガチャガチャと音を立てるだけで反応がない



「嘘…でしょ?」



そう言うと同時に、背後に気配を感じる

宮内はそれに咄嗟に身を返してその正体を見る




そこには偽者であることを示す、赤い光を放つ目を持った結城がそこに立っていた


「…ヨォ…宮内サン?」

「…いつの間に、ここに…」


笑いながら言う相手に驚きを隠せないままに、宮内は言う


「サァ?どうしてだろうな?」


飄々と、首をかしげて言った相手にほんの少し苛立ちを感じる


「…っていうか、出られないんだけど…これは、どういうことなの?それくらい教えても状況は変わらないでしょ」


宮内も笑顔を作って偽結城に向かって言う


「…ククッ、仕方ないな」


呆れたように、首を左右に振ってため息を吐いて言う


「此処は、普通の手段じゃ出られない…鍵を開けることなんざできないし、中からは壊すこともできない…

 完全に封鎖された部屋にしておいたんだよ…

 まぁ、抵抗されても武器も消しておいたし、どうしようもないだろうがな?」



演技をするように大げさに手を動かして言う


「へぇー獣の癖にちょっとは頭回るんだ。

 でもこんなことしても無駄だよ?私が悲鳴を上げればすぐに助けが来るし?」


「そうか…なら、試してみるか?」



宮内は相手の自信に満ちた態度を崩そうと、笑いながら言う


だが、偽結城は動揺することもなく、むしろ相手は挑発するような声を発してニヤリと笑う

宮内はほんの少しその態度に戸惑いながらも、深く息を吸った


「誰か!誰か助けて!」


どうにか自分の居場所を知らせようと何度か声を上げながらバン、バンと扉を叩く

はぁ、と息を吐いて相手の様子を伺うが余裕をまったく失っていない


「さぁ、何分待ってやろうか?」

「何分も待ってて大丈夫?案外早く駆けつけてきて焦るのそっちかもしれないけど?」



自分の優位を示す宮内に、偽結城は愉快そうに笑った


当然だ、この世界に、実は宮内の仲間は誰一人としていない

そして仮に居たとしても、この部屋の声は外には一切漏れていない


…助けなど来るはずが無いのだ


しかし、偽結城の前の前の相手は、それを知るわけもなく

ただ、ほんの少し追い詰めらた心をごまかすように冷たく言う


「…何?」

「…いやぁ、なんでもないさ」


だが、偽結城は笑顔でそう返しただけだった


偽結城は突然考え込むように腕を組んで大げさに喋りだす


「だが、校内に居るならそろそろ反応があってもいいころなんじゃないか?

 夢の中だ、本人の望む身体能力にはなってるだろう?

 駆けつけているなら、お前の名前を呼んでる声もするんじゃないか?」


そう言われ改めて当たりに耳を済ませる

が、相手の動作をするときの少しの服の擦れる音とほんの少し乱れた自分の呼吸音以外、何も聞こえなかった



「…どうして」

「どうした?助けが来るんじゃないのか?」


相手の言葉に咄嗟に言い返せない

その態度を見て、偽結城は思いついたというように人差し指を立てた


「あぁ、お前は好かれていないんだな?

 そうだよな、普段のお前の態度に好かれる要素が一体何処にあるんだか…」


その言葉が、ほんの少し突き刺さるが、少しでも状況を変えようと宮内は口を開く



「っ!・・・それで、私に何の用なの?わざわざこんな歓迎までしてくれちゃって?」

「ちょっとしたお楽しみだ、“主人”がお前を邪魔だと思ってるらしくてなぁ…」


偽結城はククッと笑いながら再び腕を組んで、宮内の周りを歩きながら言った

宮内は相手にあくまで冷静に返す


「ふーん、でも私そんなやつ知らないよ。私に用があるなら直接来ればいいじゃない」


宮内が言うと、偽結城は足を止めて相手を見ないまま言う


「知らない?そんなこと言えるのか?」


目を細めて目を赤く光らせてニヤリと笑って言う


「まずは…鳴滝だ

 まぁ言うまでも無いなぁ?お前のことも散々邪魔だと言ってたし

 事実、邪魔は散々やってきていたしな?

 お前が居るから目的が達成できなかったことも多かった」

「…」


偽結城は、小手調べのようにまず候補に挙がりそうな人間の名前を挙げる

宮内はまずそれを黙って聞くが、偽結城は話し続ける


「そうだなぁ…次は一ノ瀬と私の本物様はどうだ?

 あいつら、お前の趣味には散々呆れてたしな…嫌悪もしてるようだよな?

 思い当たる節ならあるだろう?

 お前のことを普段から悪く言ってるのも、案外冗談じゃなかったりしてなぁ?」

「…あの二人がこんな手段…」

「助けに来ないこの状況で言い切れるか?」


その言葉に、宮内は口を閉じる

いつもなら根拠もなく「違う」と言い切っただろう

ただ、未だに助けは来ないのは真実だ


否定の言葉を言えなかった


「…塚本は?」

「お前は…散々アイツにちょっかいをかけていたっけなぁ?

 それと同時にわかってるだろ?あいつが反撃をしないってことも

 言い換えれば…そう、弱いもの虐めになるな?」

「そんな、なんでそんな今更…」

「…さあな?いくらでも考えられるがな?耐えられなくなっただとか…なぁ?」


普段なら馬鹿馬鹿しいと思っていただろう、聞き流していただろう

だが、少しずつ自分の不利を刻み付けられていくその心に、その力は失われかけていた


「…か、海部さん…は?

 だって、私は…海部さんなら…助けてきた…力になった…」




「全部お前の押し付けだろ?偽善だろ?」




最後に残された、自分が確かに助けただろう人の名前を上げる

が、その言葉もあっさりと崩される


「勝手にかばって、勝手に助けて、『相手のためだ』って

 お前がいつそんなこと頼まれた?全部自分の思い込みかもしれないだろう?」


偽結城はあぁ、と付け加えて笑って言う


「言わないだけで、本当はほっといて欲しかったのかもしれないなぁ?

 自分の気持ちを押さえ込む…海部サンのその性格ぐらい、わかっていただろう?」

「嘘…だ…そんなの…違う」

「そっか…けど、おかしいなぁ?助けに来ないなぁ?」


宮内はただ頭を横に振って否定するが、偽結城はその様子を楽しそうに見る


「そうだ、最初から、私だけしか、ここに居ないなら、それなら!!」

「これまで夢で味方が一人だったことなんてあったか?」


「…さっきのだって…さっきのだって、全部、全部でたらめ…」

「思い当たるフシがあるんだろう?だったら事実だ

 私もお前と同じ、事実からわかること以外言ってないはずだがなぁ?」



頭の中は、暗闇に、絶望に支配されかけるような感覚が

一瞬、心を覆った


ただただ立って何も答えない宮内を満足そうに見た偽結城は剣を抜いて近づいていく

そして、剣を首に当てて顔を覗き込む


「あぁ、可哀想だなぁ?

 信じてた奴らが皆お前のこと嫌いだなんてな…」


別に、信じてなんか

そう言い返そうとしたが、なぜか言葉は声となって出てこない


「…信じてない?だからこんなことになってるんだろ?

 少しはお前の考えを改めたらどうだ?…マァ、今更の話だがな」


ヒヒッと不快な感覚を呼び起こすような笑い声を出す


今まで、部員の中ではこうした言い合いの中では負けることはまずなかった

真剣勝負だとしても、自信はあった


それをただ、一方的に崩された状況


屈辱、恐怖


心の中をそれが這い上がってくる



「…さて、これからどうしようか?」



相手はしばらく、剣を当てたまま考える

その姿は、完全に無防備



混乱する思考の中で、必死で相手の体めがけて、蹴りを入れる




逃げろ、殺せ、相手を殺せ




助かるための最低限の思考だけが頭を支配している


腹を押さえてグゥと呻く相手をチラリと見て、素早く相手から離れると

宮内は椅子の背もたれを持ち自分の前に引っ張り出す、肩で息をして相手を見る


「…ほ、ほら、調子に乗ってるからいけないんだよ?

 結局、そっちが勝つことなんて…勝つことなんて…」


偽結城はそれでもクククッと笑って相手を見る


「…それで逃げたつもりか?」

「そうだけど?…何だっていい、そっちさえ殺せればそれで…それで…!!」


声を荒げながら相手に叫ぶ


「…で、武器はその椅子なのか?」

「何でもいい…何だっていい…コレだって…頭を…頭を…」


その問いかけすら聞こえないように宮内は呟いて言う

目は完全に相手に怯えたように見開いて、口元では狂ったような笑みを浮かべていた


手には、椅子の背もたれ、もはや、武器も手段も選んでいる場合ではない


それを持ち上げて、偽結城めがけてあてるつもりなのだ

相手に、動く様子はない


普段なら警戒したであろうが、何も考えずに振り上げようとした、瞬間

腕に伝わる痺れるような痛み、そして、椅子から離れる手


何が起きたのかわからなくて、偽結城を見ると

…そこには、普段夢で自分の使っている鞭


「何…何で…どうして!!」


相手が叫ぶのに満足そうな笑みを浮かべると偽結城は相手に近づいていく


「…そりゃあ…なぁ?相手を痛めつけるのにはいい武器だからなぁ?」


もう、身近な武器を触ることすら許されない

ただ、ただ一歩一歩近づいてくる相手に合わせて、自身も後ろに下がることしかできない


「…何で…持ってる…?」


はっきりとした文章を言うことができないまま尋ねるのに、手元のものを持ってニヤリと笑う


「…なんだ?私の持っているコレが欲しいのか?」


と相手の方へ見せるように出して、その武器を示す

宮内はゆっくり一度頷く


「そうか…そうだな…なら…」


相手に近づいて髪の毛をグッと掴み顔を無理やり自分の方に向けさせる


「…態度ということによっては考えてやってもいいがなぁ?」



相手の言わんとしていることはわかる

何を言わせたいのか…そんなこと、この状況でありがちな



一方的な服従、望まれているのは、それだけ



「…そ、れ…は…」

「そうか…じゃあ、残念だが、コレは…」


名残惜しそうな声を作って悲しそうな表情でそれをじっと見つめながらしまおうとする



「まっ…て…」



弱弱しく言うその声に、表情は一瞬で笑顔に変わり相手を見る



自分に従うつもりなど、無い

ただ、ただ言えば、どうにかなるなら


言い聞かせながら口を開く


「…言えば…いいんでしょ…大体、察してる…から」

「ほぉ、物分りがいいなぁ?…ホラ、じゃあさっさと言え」


乱暴に掴んでいた髪をバッと離すと、宮内はその場に崩れるように座り込む

ニヤニヤと見つめるその視線の放つ不快さは、思考するため俯いていてもよくわかった


「ホラ…どうした?」


急かすようなその声に苛立ちを覚えながらも、ぐっと歯を噛んでどうにか耐えて、そしてそのまま言う



「…お願いします…その武器を、鞭を…返してください、お願いします」


相手は、動かないで、その嫌な笑顔のまま宮内を見つめていた


楽しんでいる、完全に


腹の奥から、悔しさが湧き上がってくるが、必死でこらえる


「…お願いします…」

「もっと…自分の立場を言うべきだと思うんだけどな?」



黙り込む


…こんな奴、普段なら倒せるのに、こんな奴、簡単に…


「…抵抗する手段をなくした私に、どうかその武器を返してください、お願いします」



そう言うと、偽結城はゆっくりと近づいていく

宮内は頭を下げたまま動かない

彼女の視界に、丁度その足が見えてしばらく立ち止まり、そして



…腹に、蹴りを入れた



「…っ…ククッ…クハハハハハハハ」


「っ…うっ…うぅ…うっ…」



痛みに悶絶する姿に、これまでで一番愉快そうに笑う



「本気で…本気で武器を返すって、思ってたのかよ…クハハハ

 最高だな?普段の利口なお前ならわかってただろうになぁ…ハハハハ」


しゃがんで、痛みに俯いたままの相手を見て言う


「…お前の言うこと何ざ信用できねぇからなぁ?

 その場しのぎなのは最初からわかってるんだよ」



遊ばれている


痛みと、先ほどの精神的苦痛とで一気にダメージを受けた彼女に

止めを刺すかのような、剣を抜く音が聞こえる




「さて…十分満足した…

 それじゃ…剣で痛めつけていくほうにするか?…ハハッ」


相手の言葉に、顔を上げて、先ほどよりも強くせがむように言う


「嫌…それは…それは…」


「安心しろって…血が見えるだけだろ?まぁ、死なない分

 自分がやられるところはきっちり見えちまうけどなぁ…ヒャハハハ」


「それは…許して…」


その言葉に、偽結城は一瞬笑うのをやめて相手を見る

その声は消え入りそうな、泣き出してしまいそうな…彼女がほぼ聞かせない声であった


「許して…嫌…それは…」

「っ…ハハハハハハ、自分に危害が及ぶとこれか!

 弱いな…本当に弱い…ハハハハハ」

「何でもいいから!お願いだから…」


相手が笑い続けるのに、宮内は構わず言い続ける

偽結城は相手を少しの間見て、そして


「…あぁ、いいものを見せてもらった礼だ…一瞬で終わらせてやるよ…」


「嫌…嫌…」


願いは虚しく、再び髪をつかまれ無理やり立ち上がらされる

剣の先は自分の方を捕らえて逃さない

そして、見えるのは、赤い赤い、二筋の光



剣が、自分の喉に、深く、突き刺さる



―――――――――――――――――――――


「―――っ!!」



ガバッと彼女が布団から身を起こしたのは、7時

呼吸は荒く、肩が上下しており、体も汗でぬれている


“……何…アレ…一体…京くんが…?”


異常だ、彼がやったにしても、あそこまでやられたことは、無い


“はぁ…なんで…朝からこんな…疲れなきゃ…”


そう思いながら、しばらく彼女は布団の中でぼんやりと考えていた







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