表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/39

~Trick or Treat~



ー昼休みー



「塚本」


海部は、塚本の机の前に手を後ろに回しながら先ほどの笑顔のまま立っている隣で、結城も紙袋を下げていた


「え?何?」

「今日、織枝が言うべき事があると思うから来たんだけど」


結城も楽しそうな笑顔で言う塚本は状況が理解できていないのか、頭に疑問符が浮かんでいるようであった


「ヒント、日付」


海部が少し体を斜めにして、黒板が見えやすいようにする

黒板には10月31日と書かれている


「10月…31日?」

「そう、だから?」


結城が振るが、塚本の方は頭が整理できていないのだろう、未だに混乱しているようだ

海部は、後ろ手に持った物を相手に見せ、結城は紙袋から入っているものを出す

海部の手には飴の入った袋、結城が持っていたのはタッパーに入ったクッキー


塚本は、それを見て理解したのだろう、驚いたように声を出す


「あっ、あ!」

「はい、せ~の!」

「トリック・オア・トリート!!…っていうかくれるの!?」


塚本は嬉しそうな声で言うと、二人は頷く


「ありがと~…でも、私何も用意してないよ?」

「お菓子やるからいたずらさせ…」

「そういう行事じゃないから…まぁ用意してないのはは気にせずに」


塚本が少し不安そうに言うのに、海部の言葉を遮って結城は言う塚本は

なんだか悪いな…といいながら海部の飴を受け取り、結城のクッキーを受け取ると口に入れる


「おいし~!」


塚本が幸せそうに言うのに、結城は安心する


「そか…もういっこ食べる?」

「う、うん」


少し遠慮がちに、塚本はもうひとつクッキーを手に取る


「悪いな、私は手作りできなかった」

「ううん!くれるだけで嬉しいよ!ありがとう!」


海部が少ししょげた声で言うのに、塚本は嬉しそうに言う

二人が話している間に結城は、教室の時計を見るのに振り返って塚本に言う


「それじゃ私たち他の部員のところにも行くけど、来る?」

「やることないし、そうしよっかな…渡すものないけど」


塚本は立ち上がって結城に言う

こういうとき、人が多いとにぎやかでいいと二人は思った


「うん、じゃあ悠斗くんたちに渡しに行こうか」


結城を先頭に後ろに海部と塚本が続く


「海部さん…さっきの涼香ちゃんにも言ったの?」

「あ?あれか、言った言った、まぁ、じょ~だんだし

 っていうか、私本当にあんなことするほど変態じゃない」


塚本がなんとなく先ほどの言葉を思い出して海部に尋ねる

海部は大きく息を吐いてから笑いながら塚本に言う


「ど~だかね~」

「し、しないからな!!」


結城は後ろを振り向いて冷たい目を海部に向ける

海部はその目に強い否定の言葉をぶつけるが、相手は信用していないようにそのまま前に進む



階段を上り、教室に入ると一ノ瀬は鳴滝とクラスの友人とともに話していた

その集まりに、三人は近づいて結城が声をかける


「悠斗くん、京くん」


声に、二人が振り向いて、それから体を向ける


「何だよ?…あぁ、それか?」


一ノ瀬が結城の持っている紙袋を指差して言う


「そう、だけどせめて言うこと言ったほうがいいと思うけど」

「よこせ」

「違う」

「食べてやる」

「違う!」


相変わらずのやりとりに塚本と海部は笑う

海部は、鳴滝のほうに飴の袋を見せて言う


「ほれアンタも」

「トリック、オア、トリート」

「はい」


鳴滝は慎重に区切って言う

海部は袋を差し出して中を取るように薦める

鳴滝もポケットを漁ると袋を出す


「ほら、僕も飴だけど…」

「んじゃ、トリックオアトリート…」

「トリックオアトリート」


塚本と海部が言うと、二人は飴を一つ制服のスカートのポケットに突っ込む

結城も言葉を言って袋から飴を取り出す


「ほら悠斗、しょーもないことやってないでアンタも」

「はい、海部さん!trick or treat」

「発音いいの腹が立つな」


海部の言葉に、一ノ瀬はハッキリ答える

わざとらしい発音のよさに結城は思わず笑ってしまう


「ありがとうございます!」


一ノ瀬は海部の飴を受け取ると、ポケットにしまう

結城にも無駄に良い発言で言葉を言いクッキーを受け取る


「しゃーないから貰ってやる、ありがたく思え」

「…はぁ…はいはい」


相変わらずその態度に、結城は乾いた笑いをしてクッキーを差し出す

一つ選んで取ったあと、鳴滝にもクッキーを差し出すと彼もクッキーを食べる

クラスで話していた、彼らの友人にも海部と結城はお菓子を差し出しながら一ノ瀬と鳴滝の声を聞く


「ありがとう、やっぱおいしいな」

「ありがと」


鳴滝が言うのに、結城は礼を言う


「そういえば…塚本は、何も無いの?」

「うん、私はつきそい、ごめんね?」


塚本が言うのに、鳴滝はどこか残念そうに「そうか…」という

塚本はもう一度ゴメンね?と謝るのに、彼は「ううん、気にしないで」と返した


一ノ瀬はその隣で結城のクッキーを一口食べると口を開く


「まぁまずくはないかな」

「うるせぇ、あげないからな」


相変わらずの悪態に、結城は少し対抗してタッパーの蓋を閉めて紙袋にしまう動作をする


「お前からのなんて期待してね~から」

「流石にそろそろ傷つくからね?」


結城がはぁ、とため息混じりに言うと時計を見る

もうそろそろ宮内のところに行かないと間に合わないだろう


「それじゃ、私たちは宮内のところ行くから」

「ありがとう」


鳴滝は礼を言いながら手を振る、一ノ瀬も軽く手を上げて言う


「おう、じゃあな」



結城は手を振り替えして進みだす、海部と塚本も軽く手を振って結城の後ろについていく


「…おもしろいよね、二人とも…何でくっつかないんだろうね?」

「こいつらにそれ望むほうが間違ってるっての」


塚本が結城と一ノ瀬のことを言っているのに、海部は呆れたように言う

海部が言うのに、結城は振り向いて海部のほうをじっと見て黙る


「海部さん…」

「な、なんだよ」

「大正解!」

「なんなんだよ!」


結城が親指を立てて言うのに、海部はどう反応すればいいのかわからずに強く返す


「でもさ~わかってても少し位なにかあったら嬉しいよね」

「気持ちはわかったから私に求めないでくださいお願いします」


塚本が言うのに、結城は心から願うように言う

ちぇと塚本が言うと、宮内のクラスの前に来ていた

彼女もまたクラスの友人と話をしているようだった


「こんちわ」


今度は海部が塚本と一緒に先に声をかける

海部が右手を上げると、宮内もそれに答えるように右手を上げてそれにこたえる


「ちゃっす」

「まぁ、今日の日付から察せ、言うべきことがあるだろ」


海部は少し低めのテンションでめんどくささを演じながら言う

宮内は少し考えて、口を開く


「トリックアンドトリート!」

「タチわるすぎるだろ、違うから」


海部は予想していながらもそう答えた相手に笑う

宮内は今度は塚本に向かって言う


「え~っと…トリックオアトリック?」

「え…え?そ、それって一択…」

「その辺にしとけ、ほら、言わなきゃあげないから」


戸惑う塚本の後ろから、結城は宮内にタッパーを差し出して言う


「はいはい、とりっくおあとりーと!」

「どうぞ」


結城はタッパーの蓋を開けて、相手にクッキーを取らせると宮内の周りのクラスの女子にも渡す

結城が渡している間、彼女たちに配っていた海部が入れ替わりで飴の袋を差し出す


「ほれ、コレ」

「ありがと」

「というわけだ、おかしやったんだイタズラさせろ」

「え?何するの?」


海部が笑いながら飴の袋をひっこめて宮内に言うが、相手は楽しそうに返す

それに海部は拍子抜けして考える


「あ?えっと…そりゃ、その…」

「何するのかな~?」

「えっと」

「…」

「ごめんなさい」


宮内になんとなく雰囲気で負けてしまい海部は謝ってしまう

今度は宮内は塚本がお菓子を差し出さないのを見ると言う


「ねぇ、塚本は何も持ってきてないの?」

「え、あぁ、うん」

「それはやっぱりイタズラOKということですか」

「え!?」


宮内の言葉に塚本は再び戸惑い、半歩下がる


「やめろ変態、変態は変態同士いちゃついてろ」

「そうだよ、私は見る専門なんだから」


結城が塚本のフォローに回ろうとするが、塚本のほうの返事にも言いようがなくて何もいえなくなってしまう


「…あぁ、うん、もう私、帰る」


結城が自分とは異質の空間に耐えられなくなって教室を出て行こうとする


「あ、やべ、逃げられる、じゃあな!」


海部が、出て行く相手をおいかけるように慌てて出て行く

塚本も手を振ってその後に続いて出て行った




――――――――――――――――――――――――――――


その日の夜


『今日のクッキー美味かった、来年はもっとちゃんとしたことできたらいいな

 まぁ、来年の今頃かなり忙しいけど』


「…そういうの、ずるいと思います」


結局、こういうことをメールで伝えてきた一ノ瀬に、結城はやっぱり卑怯だと思ったのだった



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ