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森の中の理想郷~出会い3~

祠の近くの茂みの中


キョウとオリエとカナメは、そこから祠のあたりの様子を見ていた

祠の側からみる形になったので、それ自体の様子は伺えないが

広場でオオカミとタカがじゃれあっているのか喧嘩しているのかは分からないがとにかく

爪を牙を向いている


「…なぁ」

「どうしたの?」


様子を見ていたカナメは小さな声でオリエに尋ねる

オリエは相手の顔を見上げる


「私は、タカとオオカミの喧嘩の仲介を頼まれた覚えはない」

「あの状態だから話しかけられないんだけどね」


その言葉に、カナメはむぅと唸る

確かに、あんな鋭い爪と牙を持った肉食動物の中にリスが飛び込むのは明らかに自殺行為だ


「それに…カナメが一番近いよね?ああいうのに」

(お前も雑食だろう…)


心の中でそう突っ込むが、カナメはそれを飲みこんで二匹と向き合うように座る


「そうだな…まず私があのオオカミたちに事情を、

 エサ場だからここに来るけど襲わないでくれって頼む

 それから、お前らからも言うんだぞ?本人の言葉がないとな」

「わかってる」


オリエがうんうんと頷いて返す


「あ、喧嘩、ひと段落着いたかな?」


茂みの外を見ていたキョウがそういうのに、カナメは体を開けた場の方向に向ける


「行ってくる、待ってろ」


それだけ言い残すと、カナメは茂みから飛び出していった









「ハァ…今回は…本気か…」

「俺は手は抜かない主義だからな」


オオカミ…スズカが木の下でぐったりと伏せているのに、

タカは…ユウトは木の上から誇らしげに羽を広げて言う


「毎日飽きないよね~狼不利でしょ?」


祠の石の上で、イタチのマイは楽しそうに笑って言う


「…なんか負けたくないんだって!勝てるわけなくてもどうにか勝ちたいって思うし」

「俺はそれを仕方な~く相手してやってるんだけどな」

「吹っかけてくるのそっちだろ!?」


ユウトが相変わらずえらそうに羽を大きく広げるのに

スズカは顔だけ上げてユウトに抗議する



すると、祠の近くの茂みからガサガサッと音がして何かが祠の近くに飛び出てきた

一匹のヤマネコが出てきた場に座りあたりをぐるりと見渡す


スズカは念のため立ち上がり、牙を向く


「誰、何の用事?」


ユウトも羽をたたんで相手を睨むように見るめる

ヤマネコは、その二匹の態度に怯えたのかビクッと体を震わせ俯く


「あ~あ、怖がっちゃった、かわいそ~に」

「アンタは一回黙ってろ」


マイが横から茶化すのに、スズカは牙を向いたまま相手に言う

ヤマネコは一瞬驚いて祠のほうを見る、マイの存在に気づいていなかったのだ


「おい、アンタ気づかれてなかった見たいだぞ?」

「まぁあそこから出てきたら見えないだろ~し」

「アンタの気配がなかっただけなんじゃないか?」


ヤマネコはしばらく俯いたままであったが、そのやりとりをしばらく聞くとほんの少し気が緩んだのか口を開く


「いや、そんな、その、危害を加えようとか、そんなつもりはない、です」


ヤマネコの後から無理やり付け足したらしい“です”に、スズカは少しだけ警戒を解く

おそらく相手は本気で自分に怯えている…ネコの時点であまり信用はできないとは思っているが

ユウトもそう思ったのだろう、バサバサと少し低い木の枝の方に降りて様子を見る


「じゃあ、どうしたの?わざわざこの中に飛び込むくらいだし…何かあったんじゃない?」


あたりを見ると、イタチ以外は…といっても獣でない彼女も含めて…

おおよそ、敵ばかりだと見えるこの空間にわざわざ飛び込んできたのだ

事情があるだろうと話を聞く姿勢を見せると、ヤマネコは安心したのだろう、息を吐いてその場に座る


「…えっと、その…訳あって、知り合った、リスが、いまし、て

 で、そいつの、エサが、食えるのが、このあたりらしい…んです」

「そんな緊張しなくても…牙向いたのは謝るからさ」


詰まりながら言うヤマネコに、スズカはできるだけキツくならないように相手に言う

どういう訳かはわからないが、自分の声は自分には普通のつもりでも他人にはキツく聞こえるらしい


「ちゃんと働いて俺の飯取ってもらうしな」

「ちょ、そういうこと言ったらまたビビられる!!」

「まぁ食べ物探そうとしてたのは事実だよね?」

「まだするつもりなかったから!!お前は黙れ!」


ユウトとマイが、何かしらのエサを取らせるあの賭けの話を出すが、スズカはそれを止める

しかし、しっかり聞いていたヤマネコの方は後ろに数歩下がっていた


「あぁ話は聞いてるから!…そっちの知り合いのリスの餌場がここに近いってこと?」

「そういう…こと、です…」


緊張か、恐怖か、明らかに口調が彼女の素でないこと

そして、緊張そのものは本物であることから、スズカは笑って言う


「そっか、で知り合いのリスってどこにいる?」

「えっと…お、おい!出てきていい!」


ヤマネコが自分の出てきた茂みに声をかけると、そこからリスと、アライグマが飛び出してきた


「ね、ねぇ、さっきまでと口調が違う気がするんだけど…」

「う、うるさいな!私だって流石に怖いし!こういうのは丁寧に言って損することはない!」

「そ、そんなものなの?」


ヤマネコが二匹に強い口調で言い返す、相手はよっぽど焦っていたのだ


「ま、まぁ落ちついて…」

「わかってるわ~、俺の偉大さがわかってるとか」

「いや、普通にオオカミも怖いと思うけど」

「そうだ、お前らの名前聞かないとな」

「無視すんな!!」


ユウトが羽を広げて自分を恐れていると主張するのに、スズカが反論する

が、ユウトの方は聞こえなかったかのように茂みから出てきた三匹に声をかける


「え、えっと!私オリエっていいます!」

「ぼ、僕は…キョウ」


リスは…オリエは数歩前に出ると、大きく声を張る

それにつられてか、アライグマのキョウもボソボソとであるが聞こえる声で言う


「私は…カナメ」


ヤマネコは…カナメは少し迷ったような間をおいてから言う


「カナメさんとオリエとキョウか、よろしくな」

「なんで“さん”つけた」

「いや、なんとなく?」


スズカはユウトに向けていた顔を前の三匹に向ける


「…まぁいいや、私はスズカ、そっちのエラソ~なタカはユウト、そっちのいい加減なイタチはマイ

 あんたらが思ってるほど怖い奴らじゃないから大丈夫、よろしく」

「よろしく!」


オリエは先ほどまでの恐怖心が嘘のようにスズカの前に立って言う


「いい加減って…ひどいなぁ、私だって凄いんだけどな~」

「何が…すごいんですか?」


カナメは未だに丁寧語で、マイに声をかける

キョウも横で耳をマイに向けている

が、オリエだけは知っているのか、あえてスズカと話をしている


マイは得意そうに後ろ足で立つと言う


「私、妖怪だもん」


カナメは顔を青くして、マイから数歩離れる

キョウは聞かなかったことにしたいのか顔を背けている


「…よ…よ?」

「妖怪、凄いでしょ?」

「ハイ」


相手が明らかに恐れているのに、マイは調子を変えないまま言う


「いや、そんな怯える程の存在でもないよ?」

「…いや、その、妖怪…」


スズカが平然と言うが、カナメは首を振って途切れ途切れに言う


「わ、私もびっくりしたけど…うん、人になってたの…見た」

「あ~、あれ見られてたんだ~」


オリエが横から言うのに、キョウとカナメがビクッと反応する


「…ひ、人」

「そんなビビんなって、取って食われるわけじゃないだろ?」


怯えるキョウにユウトが横から声をかけるが、彼もまたブンブンと首を横に振る


(…どうしよう、ここまで反応してくれると楽しい)


マイは、ガクガクと震える彼女たちを見ながら思う


「…いいけど、そんなに怯えてたら遊ばれるし、本当にたいしたこと無い奴だから」

「あ、あぁ…ど、努力は…する…」


完全に気を抜いていたのだろう、カナメは先ほどまでの丁寧語がなくなっていた

が、スズカからしても少々窮屈だったのでコッチのほうがいいと特に口を出さなかった


「スズカさ~ん、さっきから酷いと思いま~す」

「まぁ、確かにこの反応が普通正しいんだろうけどさ、私はアンタに何も感じないし」


スズカはマイに冷たくそう言い放つ

マイは少し詰まらなさそうにむぅ、と言う


「そ、そんなことよりだ!!オリエ、これでいいんだな!?」

「う、うん、ありがとう」


カナメが本題に戻そうとしたのか、少し声を荒くして言うのに、オリエは普通に礼を返す


「役に立てたならいい、私は帰る」

「まってよ!お礼に寝床教えてあげるって話…」

「それならもういい」


キョウは引きとめようと言うが

カナメは冷たく突き放すように言うと後ろを向いて走り出してしまう


「ど、どうしよう…」

「ん~…私がなんとかしよっか?」

「こ、怖いことはしないでよ!?」

「そんなことしないって」


マイが言うのに、キョウは心の底から頼むように言う



「…ねぇ、流石にかわいそうになってきたんだけど…」

「まぁいいんじゃねぇか?楽しそうだし」

「…明らかに疲れてたけど…」


スズカが、カナメが何をされるのかほんの少し心配になりながら言う

ユウトの方は相手の反応が面白いのか、楽しんでいた


「そ、それじゃ、私早速ご飯食べてくる!」


オリエは思い出したかのように言うと、木の上にすばやく上って餌を探す

キョウは下から心配そうにそれを眺めている


「それじゃ、私はあの子探しに行こうかな~」

「あんまり怯えさせるなよ?」

「私は何もしてないも~ん」


スズカが言うのに、マイは軽くそう返すと茂みの向こうに消えていった




その後、ある意味予想していたとおり、カナメの悲鳴をスズカたちは耳にしたのだった

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