私たちの理想郷~心配~
―リビング―
「先に食べてて良いのかな?」
「う~ん…悠斗は出て行くときに言ってたけど…」
時計はもうすぐ12時、二人の空腹も訪れている時間
目の前のお弁当の入った二つの袋をじーっと見つめていた
「…二人がどこでご飯食べるかだよね?」
「一緒に食べる気がする、なんとなくだけど」
「そうだよね~」
鳴滝が考えながらゆっくり返すと、塚本は机に頭を付けながら言う
「……爆発すれば良いのに」
「つ、塚本?」
ボソリ、とつぶやいた言葉に鳴滝が驚いたように尋ねるが、塚本は相手の驚きにはあえて触れずに
「なんでもないよ」と体を起こした
「でも、とりあえず…先に温めちゃおうか」
「そうだね」
鳴滝は塚本の言葉を聴いて、立ち上がると袋から弁当を取り出す
「えっと、僕と塚本のを先にして食べといたほうがいいのかな」
「あ、ちょっと待て」
鳴滝が自分の弁当を取って言うと、扉のほうから声が聞こえてそちらを見ると一ノ瀬が居た
一ノ瀬はテーブルの方へ数歩進んで二人に言う
「悪い、俺向こうで食べるから…さっきも言ったけど先に食べてて良いからな!遠慮とかするなよ!」
「うん、じゃあ悠斗くんの先に軽く温めよっか」
一ノ瀬の強い言い方に、鳴滝は頷いて弁当の入った袋をさぐる
「そうだね…えっと、悠斗は塚本と一緒でから揚げ弁当だっけ?」
「あぁ」
鳴滝は弁当を取り出して電子レンジに入れる、30秒程度で良いだろうと時間を調節してボタンを押す
「涼香ちゃんどうだった?」
「熱はなかったから多分大丈夫だろうけど、二人の様子によっては晩は作らないとかもな」
一ノ瀬は腕を組んで考えるようにいう
「ならそうなったら私がやる!」
「僕も手伝う…なにもできなかったし」
「お…おう…」
二人の力強い返事に押されて、一ノ瀬は戸惑うように返事をした
と同時に、電子レンジから音がして一ノ瀬はそちらに向かう
「…あっつ……京くん、ビニール借りて良いか?」
買い物先から持ってきているビニールをまとめて置いてある場所から
それを一つとって、鳴滝は一ノ瀬に渡す
一ノ瀬はビニールの表裏を返して手をつっこみ、
それで弁当を掴むとビニールを再び返して中に入れて手に提げる
「さんきゅ、それじゃ俺は戻る」
「こっちはこっちで食べてるね」
「おう!宮内も多分俺と同じにするだろ」
一ノ瀬はそれだけ言うと扉を閉めてリビングから出て行った
それを見届けると、鳴滝と塚本は自身の弁当を電子レンジで温め始めた
「から揚げのり弁おいしいね…結構おっきいしこれ…味もしっかりしてる」
塚本はから揚げを一つほおばって満足そうに言う
先ほど温めたばかりの弁当からは湯気が立ち、食欲をそそる
「南蛮もおいしいよ、鳥っておいしいよね…こういう弁当屋さんの」
「あ、ちょっとわかるかも」
鳴滝も口にあった鳥南蛮を飲み込んで返す
タルタルソースがぬくもるのが彼は少し気になったが、それも口に含めば関係ないことだった
「…海部さんと涼香ちゃん、大変だよね…たまには交代したほうが良いよね」
「そうだね、僕もなにかそういうことできるようになりたいし…」
次に何を口に運ぶか少し迷いながら言う塚本に、頷いて鳴滝は言う
「っていうか、なんで海部さんはチャットだったんだろう…」
「…う~ん、よっぽど恥ずかしい話題をしてたとか」
「あ~…うん、京くんの思ってる意味じゃないかもしれないけど、そうだと思う」
塚本の言い回しに、鳴滝は意味がわからない様子であったが、
彼女は「わからないならそのままでいいよ」とその話題をかわした
「あ、二人とも食べてるんだ」
宮内が扉を開きながら言うのに、二人はそちらを見る
「舞ちゃん、海部さんの様子は?」
「いや~…うん、今ちょっと事故がおきて…飲み物のついでに自分の弁当も…と思って」
「温める?」
「ん~…30秒くらいでいいや」
塚本が一旦箸をおいて、弁当を電子レンジに入れ時間を設定する
その間に、宮内は冷蔵庫からお茶を取り出してコップに注ぎ、新しいトレイに乗せる
「宮内…事故って…」
「あ~、うん、ちょっと異物混入って言うか…なんていうか…」
言葉を濁す宮内に鳴滝は首をかしげる
「ベタに砂糖と塩を間違えたというか…」
「え…じゃあ…お粥…」
「私は作り直すって言ってるのに『人の作ったもんは死んでも食べきる!』って言って聞かないし…」
宮内がため息をついて言うのに、塚本は彼女らしいと笑う
レンジの音が鳴ったので、宮内はそれを服の袖を引っ張って掴み、トレイに乗せる
「あ、扉」
「ありがと」
鳴滝が立ち上がって扉を開くのに、宮内はお礼を言ってリビングを出ていった
それを見送って、鳴滝が席に座ると塚本は口を開く
「悠斗くんもさっきお弁当持っていってたね~」
「やっぱり結城と食べるのが楽しいのかな…僕、悠斗のノリよくわからないし…」
少しだけ落ち込んだ様子の鳴滝に、塚本は軽い調子で返す
「まぁ、うん、そのあたりはあんまり気にしなくて良いと思うよ
それに、今回の主な原因は多分舞ちゃんだろうし」
「…だね、あれは流石に…うん
宮内、言葉結構刺さるときあるから…」
二人で苦笑いして、落ち込んでいた一ノ瀬を思い出す
「それにしても…事故って…」
「海部さん…余計体調崩さないよね?」
「大丈夫だと思うけど…どうだろう?」
鳴滝の心配そうな声に、塚本は確証をもてないままに返す
「…二人とも、治るといいね」
「多分寝不足だから、今日一日で治ると思うよ?」
「うん…そうだね、あ…二人が戻ったら僕たちももっと手伝いできるか聞こう?」
「そうだね!もっと私は女子力上げたいし!」
塚本が意気込むように言うのに、鳴滝は微笑んだ




