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死神の理想郷1


ジャラ……ジャラ……


あまり慣れた音ではない鎖の揺れる音に、結城涼香(ゆうき すずか)はゆっくりと目を覚ます

あたりは普通の部屋ではあるが窓が無い、古い蛍光灯と簡素なキッチンが見えるだけの部屋


立ち上がろうとするが、足が思うように動かない

手を使ってどうにかしようとしても、腕も言うことを聞かず、ただただジャラジャラと音を立てる


鎖は、壁から手と足に伸びてそこから枷が自分の身動きを封じていた


「…何…これ…!」


結城は何度も動こうとするが、鎖が切れるはずも無い

ただ体を軽くひねらせるだけしかできなかった


「…目、覚めた?」


聞きなれた声に顔を上げると、結城は顔をしかめて相手に言う

そこには楽しそうに笑みを浮かべる宮内舞(みやうち まい)がいつの前にか立っていた


「やっぱりお前か宮内!ってかいつ入った?」

「さっきジャラジャラ聞こえたから入ってきたの…でも、やっぱりって…ひどくない?」

「こんなことするのお前か海部さんぐらいだろうが!!離せ!」


目の前の相手に手を伸ばすようにガチャンとつながった鎖を伸ばす

鎖の音が鳴り響くのに、相手はただそれを見つめる


「嫌だ、離したらこうした意味無いじゃんか」

「っていうかこれどうやってやった!クソッ…いつの間に…」

「秘密に決まってるでしょ?…ま、楽しもうよ」


相手の顔に自身の顔を近づけてわざと鎖を鳴らす

結城は相手の腹を今すぐにでも蹴り飛ばしたい気分であったが鎖がそれを許さない


「クッソッ!後で覚えてろ!!」

「いつまでそんなこと言えるかな?そんな風にしてても私が楽しいだけだよ?」


宮内は数歩離れて楽しそうにフフッと笑う

結城は相手をただ睨み付けて抵抗を一度諦める、ここで抵抗して相手を調子に乗らせても自分が不利なだけだ


「…っ!」

「…ふ~ん、あっさり諦めるんだ

 まぁ、結城さん以外も皆こんな状態だし安心してよ」

「お前とうとうリアルでこういうことするまで堕ちたのかよ」

「いや~機会があったらやりたかったし、元からだって」


相手のいつも通りの相手の反応に結城はため息をつく、この状況を心から楽しんでいるのがまた腹が立つ


宮内が監禁したいだのなんだのと言っていたのは覚えている

ただ、本気で手を出すとまでは考えていなかった


「で、これからどうしたいの?私と他の奴捕まえて」


相手をまっすぐ見詰めて結城は問う、相手の目的が分かればそれなりに対処ができるかもしれないと希望を持って

宮内はしばらく悩むと一言だけ答える


「実験」

「は?」


結城は意味が分からず思わず声を出す


「だ~か~ら~、実験」

「いや、意味が分からないから、もう少し説明お願いします」


結城がそう言って冷たいトーンで言うのに、宮内は再び少し考えるが結局口を開く


「…はぁ…まぁいっか、言ったら言ったで楽しそうだし

 情報を一切与えないで他の部屋の様子だけ淡々と伝えたらどうなるかな~って

 もちろん全部知ってるのは私だけ…かもね」

「かもって…あぁもう怪しいなぁ!」


相手のはっきりしない言い方に、うんざりだとばかりに結城は頭を振る

こういうとき、宮内は一番信用なら無い相手であると結城は勘付いていた


「…つまり、アンタは人をもてあそびたいってだけ?」

「弄びたいねぇ…どうだろうね…?」

「ハハハハ…」


相手の言葉に引きつった笑いで結城は返す

だんだん自分の状況にも慣れてきたのか、普段どおりにしゃべっている自分が少し悲しい


「…まぁ、楽しみにしててよ、一体なにが起きるのかさ」

「コッチも楽しみにしてる、私のメンタル崩すなんてできないことだと思っていいから」


結城がニッと笑うのに、宮内は口の端を上げる


(…そう自信がある方が崩れるのをみるのが楽しいんだけどね…)


結城は何かを察して背筋に虫が這うような感覚を覚えて途端に自信を打ち砕かれたような気がした


「って言うか、殺さないよね?」

「まぁまぁ、詳しい話は皆が気が付いてからってことで」

「意味わかんないし!っていうかいつまでこんな…」



そう相手をなだめるように言う宮内に結城は相手にまだ聴きたいことがあると叫ぶ

が、相手はその声を無視して結城に背中を向けて部屋を出て行った

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