第九遊戯
6月28日、梅雨はまだ明けない。こうも雨が続くと運動部は大変だろう。
もっとも、俺は卓球部だし、妹の由香は文学部なのであまり関係ない。
ただ、雨の中の買い物は少し嫌になる。今日は家族4人揃ってお買い物。
由香の携帯を買いに行く。お袋はまだ早いし危ないといったが親父が今は持ってないほうが危ないということで買うことに決定。
中学生に携帯はいらんだろうと思うがこれもご時世だろう。機械音痴の由香に使いこなせるかは疑問だが。
ついでにみんな新機種にする。由香は興味津々で携帯を見ている。
ふと近づいてきて耳打ちする。「お兄ちゃん、どの機種なら爆発しない?」
こいつまだ信じてた。「ここにあるのはみんな新機種だから爆発しないよ」とこっそり教えてやる。
由香は感心した様子。「科学の進歩って凄いね」由香も充分凄い。結局、ベーシックな白の機種。
俺は黒の音楽携帯。お袋は真っ赤な着せ替え携帯、親父は金の重そうな携帯を選んだ。
由香はとても嬉しそう。ずっと携帯をパカパカしている。俺のはスライド式だがそんなの携帯じゃないと怒られる。
「あ、そうだ。お兄ちゃんの登録しないと。一番に登録してあげる」といって赤外線通信をしようとするがなかなか見つからない。
取り上げて俺が直接登録。お兄様にしておく。早速、いたずらメールを送る。開くと全情報消去しますとなるメール。
もちろん消えたりはしない。ついでに妹の携帯から親父にもこのメールを送る。
由香の携帯が鳴る。慌てて由香が携帯を開きもしもしとしゃべりだす。
「メールだ。由香、落ち着け」画面を見る。「あ、ほんとだ。ん、何でお兄様?」
しばらく携帯をいじる。「え、え、これ。え、あぁーお兄ちゃんが消えちゃう」
消えてたまるかよ。にしてもいい反応をしてくれる。これだから、由香をからかうのはやめられない。
家に帰るとこっぴどくお袋に怒られたが。由香は取扱説明書と格闘中。
変に真面目だから初めから最後まで読むつもりらしい。親父が騒いでいるがめんどくさいので放置。
夜の10時頃、期末テストの勉強をしていたが由香からメールが届く。
初の妹からのメール。わくわくしながら見てみると「やつと説明書全部読んだ。これでいつでも鬼ちゃんとメイル出来る!」
まぁ努力は認めよう。でも俺のわくわくを返せ。っが打ててないし、鬼ちゃんて誰だ?
鬼といつでもメールできたら怖いよ。あと絵文字は? !マークだけはやめて。
妹の部屋に殴りこみ、携帯のレッスン。何とかちっちゃいつは打てるようになる。
妹からハートの絵文字つきのメールを貰うという俺の夢はまだまだ遠そうだった。