表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妹遊戯  作者: haru
8/10

第八遊戯

 6月17日、今日は学校対抗の定期戦。我が白涼学園と江東学園が部活動で争う。まぁ運動会みたいなもの。



 去年は気楽に楽しめたが今年はそうもいかない。俺が所属する卓球部がメイン種目に選ばれてしまった。



 メイン種目は全校生徒による応援がある。そう妹も見に来る。負ける訳にはいかない。



 とはいえ我が卓球部は7人。あっちは20人。しかも何故か全員でのシングルのトーナメント戦。



 かなり不利だ。しかし、俺の気合いはハンパではない。負けたら兄としての威厳が・・・妹遊戯の危機である。



 兄とは偉大でなければならない。毎日特訓に励んだ。そして大会当日。



 第一体育館に全校生徒が集まっている。右が白涼、左に江東の生徒が集っている。



 普段、卓球部なんてまったく注目されていないのでみんな緊張してしまう。その上、点差は90点。メイン種目は勝つと100点貰える。



 つまり、これで勝ったほうの学校が勝つ。周りの応援も凄いことになっている。緊張をほぐす為、俺はラケットの裏を見る。



 お兄ちゃんが勝てますようにと書かれている。その下には由香の写真。ものすっごく恥ずかしい。



 緊張するどころではない。由香はなんで恥ずかしいのって感じだった。とにかく緊張はほぐれた。



 1回戦、シードで不戦勝。妹が馬鹿みたいに喜んでいる。まだ戦っていないぞ。



 2回戦、後輩と当たる。何でただでさえ人数少ないのに身内と当たるんだ。



 まぁ後輩には負けられない。順当に勝つ。3回戦、部で一番強い先輩とあたる。



 どこまでもついていない。本来なら先輩に譲るべきだろうがそうはいかない。



 普段の俺はカットマン。台から離れ、とにかく球を拾うスタイル。しかし、今日は違う。



 台から離れずことごとくスマッシュで返す。ジュースまでもつれ込んだが気合で勝つ。



 「ゆう、強くなったな。やる気のなかったおまえがやる気を出して嬉しいよ。安心して引退できる。次も勝てよ」



 別に先輩達が引退するからがんばった訳ではない。でも、まぁそういうことにしよう。



 準決勝、白涼卓球部は俺だけ。相手は顔見知り、何度か対戦したことがある。



 成績は五分。今回も前陣速攻型で攻める。だがこいつはサーブが上手い。一進一退。



 だが特訓の成果はこれだけではない。必殺のバックハンドサーブを決める。



 この打ち方だと打つときに裏の妹の写真が見える。ただそれだけ。しかし、せっているゲームで精神的に落ち着けるのは大きい。



 気合も入る。勢いのままなんとか競り勝った。周りの応援が凄いことになっている。



 うるさい、ブスども。お前らに褒められても嬉しくない。由香を探す。由香が飛び上がるようにして喜んでいる。



 思わず、ガッツポーズ。決勝は休憩のあと。由香の所に行く。「お兄ちゃん凄かったよ。」



 由香も凄いテンション。ピョンピョン飛び跳ねている。よし、次も勝つ。



 だが決勝の相手はものすごく強い。上から見下した様な態度で胸糞悪いやつだが近畿大会3位の実力者。



 ルックスもよく嫌味な出木杉くんといった感じ。俺の中でのあだ名は嫌杉に決定。



 うちの部長に勝ったときも聞こえるように「部長なのにこんなに弱いの?」



 とか言ってやがった。嫌杉には負けられない。試合が始まる前、ラケットを交換しチェックする。



 「お兄ちゃんがんばってだって、ダサイね。君、妹の写真なんてはってるの?」



 みんな今までスルーしてくれてたのに嫌杉め。「兄も兄だが妹も妹だね。あほそうな顔してるよ。可哀想に」



「見てごらん」といって一人の女性を指差す。「君の妹なよりずっと美人。僕の彼女だよ」



 「応援の質でも僕の勝ちみたいだね」と周りに聞こえないように呟き、ニッコリ笑う。



 あ、コイツ死んだ。驚くほど冷静に思う。俺をバカにするのはいい、由香を侮辱した奴は許さない。



 それに由香のほうが何倍も何百倍も美人で可愛い。



 サーブ権を相手に譲り、極端に左に寄る。当然、右端を狙って打ってくる。一撃で決めてやる。



 俺の渾身のスマッシュ。右足の踏み込み、そして踏み込みからの体重移動、ラケットの振りぬきすべてが完璧だった。



 俺の踏み込みの音が体育館に響き、みな一斉に息を呑む。ラケットは空を切り、ピンポン球は俺の後方へ転がる。



 空を切ったラケットは嫌杉のお腹に見事に突き刺さった。うずくまる嫌杉、立ち上がれない。



 ブーイングの嵐。白涼の皆も驚いて声が出ない。由香を見ると口を大きく開けてそのまま立ち尽くしている。



 隣にいた美咲ちゃんは大爆笑している。歩はこいつはいつかやると思ってたって顔。



 結局、ノーポイントとなり江東の勝ち。俺は一躍、有名人になった。悪い意味で。



 後悔はしていない。男にはやらなければならないときがある。たとえ、間違いだとわかっていても。



 明日からイジメられなければいいが。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ