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妹遊戯  作者: haru
5/10

第五遊戯

 5月4日、今日は記念すべき日だ。まぁ生きている限りは毎日記念すべき日だが今日は一味違う。



 妹が遂に小説を書き終わったらしい。楽しみで仕方ない。だから、由香が俺の部屋に来るまでの記憶があまりない。



 決して手抜きではない。「お兄ちゃん、持って来たよ」大事そうに原稿用紙を抱えている。



 って原稿用紙?何と手書き。どれだけパソコン苦手なんだ。早速読もうとするが原稿用紙から手を離さない。



 恥ずかしそうにイヤイヤと首を振る。「絶対お兄ちゃん笑うもん」「笑わんから早く見せろ」



 「ほんとに?」このタイミングで指差して笑う。あ、すっごい冷めた目した。



 先手をうって謝り読んでみる。ちゃんと小説になっていた。



 俺は由香の書くものなんて「朝起きたら怪獣になっていた。どうしよう? 鏡を見たら自分だった。あぁー良かった」



 みたいな意味不明なものを想像していたのに。「お兄ちゃん、声に出てる。当たり前でしょ、文学部なんだから」


 

 真面目に読むことにする。はっきり言って面白かった。女の子と男の子がいてお互いを好きになる。



 でも好きすぎてお互い相手みたいになりたいと思うようになる。そして女の子は男装を、男の子は女装をするようになる。



 だんだんはまっていくうちに本当に私、僕は彼、彼女のことが好きなのかと考えるようになる。



 というストーリー。「どう?お兄ちゃん」「いや、普通に面白い」



 「嘘だぁ。ちゃんと駄目なところも言って」初めてにしたら上手いと思うがなぁ。



 「駄目なところをあげればキリが無い。心理描写が多すぎて状況が掴み辛いし、語尾が統一されてない」



 「女の子視点と男の子視点の切り替わりがうまく出来ていないし、人物設定が甘い」



 と真面目に駄目だし。あ、由香がへこんだ。由香の顔を見ながらじゃ俺は本音を話すことは出来ない。



 由香を膝の上に座らせ俺の顔を見れなくする。これなら頭しか見れないから大丈夫。



 「由香、初めてだったんだろ? 下手でも大丈夫さ。お兄ちゃんは大満足さ。とても良かったよ」



 なんかこの会話と状況だけをみるとそうとう危ないな。でも真意は伝わったみたい。



 「ありがと、お兄ちゃん。私、次も頑張る」そうだ、それでこそ由香だ。



 「次書けたらまたお兄ちゃんに一番に見せてくれよ」「うん」



 とびっきりの笑顔。



 この笑顔を見るためなら死んだってかまわない。



 次もいい小説が書けるといいな。




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