第三遊戯
4月14日、普通の平日だが我が吉田家ではただの平日ではない。今日は由香の13歳の誕生日。
誕生日は盛大に祝うのが吉田家のルール。部活を早退し、家に飛んで帰って誕生日の準備。
お袋はご馳走を作り、親父は馬鹿でかいホールケーキを買いに行く。俺は飾りつけ。
高校生にもなると馬鹿馬鹿しいとと思うが由香のため、急いで準備する。
「ただいまー」「おかえり」でクラッカーがはじける。「誕生日おめでとう」
家族そろってこれをするのが決まりになっている。由香も照れているが嬉しそう。
由香の屈託のない笑顔を見るとこちらまで嬉しくなる。
お袋は靴をプレゼント、親父は時計。俺は背が高くなる本をあげる。
日ごろ、背が低いことを気にしているからな。喜んでくれるだろう。
「あ、ありがとう」あれ? あんまり嬉しくなさそうだ。二千円もしたのに。
すごいご馳走とケーキをなんとか平らげ、今日も由香の部屋に。
由香は小説を書いている。見ようとするが出来てからといって見せてくれない。
今日は誕生日だしな、無理やり見るのはやめておこう。「誕生日おめでとう」
そういって本命の小説の書き方の本を渡す。由香は飛び上がるほど喜んでくれた。
両親の前でこれを渡すのはいい兄すぎて俺には出来なかった。
「ありがとう、お兄ちゃん。私頑張って書くからね」そういってプレゼントした本を抱きしめる。
あぁ、可愛いなこん畜生。「あんまり頑張るなよ。お前の頭で頑張りすぎると爆発する」
俺の言ったことなど聞いちゃいないのか本を抱いたまま嬉しそうに踊っている。
「世界では今この瞬間にも死ぬ人がいるし、今日だけで15万人もの人がしんだ」
「誰にも祝われず死んでいく子供もいるし自分の誕生日を知らない子供はいっぱいいる」
「誕生日おめでとう」そういって部屋に戻る。俺が素直になれる日はやってくるのだろうか?
あんなことを言ったが由香の小説を世界で一番楽しみにしているのは俺だ。
まぁなんにせよ由香、誕生日おめでとう。