表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/52

第九話「父という名の、最初の仲間」

萩ノ宮から帰った夜、父さんに話した。


夕飯の後、テレビを消した。父さんが「何か大事な話か」という顔をした。


「会社を作りたい」


「会社?」


「はい。来栖堂みたいな、本物があるのに機会がない場所を支援する会社です。父さんに代表をお願いしたい」


「……俺が代表になるのか」


「はい。実務は俺がやります。父さんには名義と、現場での窓口をお願いしたい。俺一人が表に出ると、相手が話を聞かない場面が出てくる」


「それは正直だな」


父さんが少し笑った。母さんがお茶を三つ持ってきて座った。


「颯、お前が来栖堂に関わりたい理由は、なんだ」


「花びらが全部揃っていたので」


父さんが首をかしげた。


「……どういう意味だ」


「来栖さんの練り切り、毎回全部の花びらの枚数が揃っています。誰に見せるためでもなく、そういうものだからそうしている。毎朝ずっとそうしてきた人です。そういうものが、なくなってほしくない」


父さんが少し黙った。


「……来栖堂についても、何か見えているのか」


「来栖さんの手が、五年後も動いています。でも今のままじゃ来ない」


「何かが変われば来る、ということか」


「そうです」


父さんがしばらく俺を見た。疑わない。ただ受け取ろうとしている目だ。


「わかった。一緒にやろう」


「ありがとうございます」


「ただし。全部話せとは言わない。でも隠すな。俺がわかるように説明してくれ」


「……それ、俺が父さんに言う台詞じゃないですか」


「お互いにってことだ」


母さんが「この二人、真剣な話の時の顔が同じ」と言った。


父さんが「そうか?」と照れた。


「……悪くないですね、それ」


父さんが俺の頭をぐしゃっと撫でた。


何発目かわからない、いつものフレーズが来た。


今日のは、少し違う感じがした。



翌週、来栖さんから電話があった。


「颯くんですか」


「はい」


「一度、話を聞いてもらえますか。少し、困ったことがありまして」


声が沈んでいた。


未来視で確認した。来栖堂の周りに良くない気配がある。急ぎだということだけわかった。


「来週の土曜日、父と一緒に伺います。それと父の知り合いで財前という者も一緒に来ます」


「わかりました」


電話を切ってから父さんに伝えた。


「来週、来栖堂に行く。一緒に来てほしい」


「わかった。深刻か」


「深刻です」


「よし、行こう」


父さんが静かに言った。


全部は話せない。でも「行こう」と言える人間が一人いる。それだけで、全然違う。


---

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ