第五十話「奏の解放と、凛の変化」
三月。
東明高校の一年が終わろうとしていた。
奏が部室に来た。
「颯くん、一つ報告があります」
「なんですか」
「父と話しました。ちゃんと話しました。私の能力のこと、これからどう使いたいかということ、全部」
「どうでしたか」
「父は——最初は戸惑っていましたが、最終的に『奏が決めたことを支持する』と言ってくれました」
「良かったです」
「颯くんが教えてくれたことが、役に立ちました」
「何を教えましたか」
「自分の能力は自分のものだ、ということ」
俺は少し間を置いた。
「俺は言っただけです。奏さんが動きました」
「だから颯くんは変な人なんですよ」
「よく言われます」
奏が少し笑った。
「来年も、このメンバーで動きますよね」
「もちろんです」
「颯くん、私——崩壊感知の精度が、少し上がった気がしています」
「どういうことですか」
「今まで、崩れそうなものを感じる時に、なんとなくわかるだけでした。でも最近は、どこがどう崩れるかまで、少し見えてきた気がして」
俺は少し驚いた。
奏の能力が、上がっている。
「使えば使うほど、精度が上がるということですか」
「たぶん。颯くんの未来視と同じかもしれません」
「Lv、という感じがありますか」
奏が少し考えた。
「……ありますね。今まで霞がかかっていた部分が、少しずつ晴れてきている感じ」
「奏さんのLv2、かもしれません」
奏が「面白い」と言った。
「こんな言い方をするのは颯くんだけですよ」
「実態を表しているので」
凛が「私も少し変わった気がする」と言った。
「どう変わりましたか」
「人混みの頭痛が、少し減った。来た時より全然マシです。必要な時に、少し絞れるようになってきた感じ」
「コントロールができてきた」
「まだ完全じゃないけど、最初と全然違う。この部室にいる時間が長かったから、かな」
大地が「俺も変わった?」と言った。
「大地は?」
「なんか俺、入学当時より記憶の整理が速くなってる。前は全部ベタ一面に入ってきてたんだけど、最近は自分で分類しながら入ってくる感じがある」
「記憶強化のLv2かもしれないです」
「マジか。颯のせい?」
「使えば上がるものだと思います」
大地が「じゃあ颯がいなかったら上がらなかったじゃん」と言った。
「大地が動いていたから上がりました」
「颯がいたから動いた」
「……鶏と卵ですね」
「そういう言い方するなよ」
四人で少し、笑った。
一年間で、全員の能力が上がっていた。
使えば上がる。場所があれば使える。
この部室が、その場所だった。
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