第四十三話「大地のDB、進化する」
十月。
大地が部室に新しいシステムを持ってきた。
「颯、見て。これ」
パソコンの画面に、地図が表示されていた。帝都全域の商店街が点で示されている。各点に、財務状況・店主の年齢・後継者の有無・異能者DBとのマッチング状況が連動していた。
「……大地、これを一人で作ったんですか」
「凛が少し手伝ってくれた」
「私は何もしてないよ。ただ横にいただけ」と凛が言った。
「凛がいると集中できるから、いつもより速く書けた」
凛が「そういうこと言わないでよ、照れるから」と言った。
「なんで照れるんだよ」
「事実を言われると照れるんだよ」
俺は画面を見ていた。
「大地、このシステム、Lv3の未来視と連動させられますか」
「どういう意味?」
「俺が未来視で確認した案件を、システムに入力すると、関連する店主や職人のDBを自動で引き当てるような仕組みを作りたいです」
大地が少し考えた。
「できる。でも、未来視の結果ってどうやって入力するの。数値化できないじゃん」
「タグで管理します。『五年後に後継者あり』『三年以内に資金繰り問題』『伝わっていないだけ案件』みたいな形で」
「あー、なるほど。そのタグをトリガーにして、DBを絞り込む」
「そうです。それができると、俺が未来視で見た案件に対して、大地のDBが瞬時に候補を出せる」
「颯と俺のシステムが、繋がるってことか」
「はい」
大地がにやりとした。
「やろう。二週間くれ」
奏が「颯くん、一つ聞いていいですか」と言った。
「なんですか」
「このシステム、崩壊感知の結果も入力できますか。私が『危ない』と感じた案件を、タグとして入れておけば」
「できます。奏さんのフラグが立っている案件は、颯の未来視より前に確認できる。事前警報になります」
「つまり——」
奏が少し考えた。
「颯くんが未来を見て、私が現在の危険を見て、大地くんが過去のデータを全部記憶している。三つが同時に動く」
「そうです」
大地が「じゃあ俺は過去担当か」と言った。
「過去のデータがなければ、未来視も崩壊感知も精度が出ません。一番重要な土台です」
「……そっか」
大地が少し嬉しそうな顔をした。
「颯さ、もっと早くそういうこと言えばいいのに」
「言うタイミングがあると思って」
「だから早く言えって」
凛が「私は?」と言った。
「凛さんは、みんなが本来の力を出せる状態を作っています。感情安定化がなければ、俺も大地も奏さんも、ここまで集中できていなかった」
凛が少し黙った。
「……そっか」
「凛さんがいるから、この部室が機能しています」
凛が「そんな大げさな」と言った。でも、耳が少し赤かった。
四人で、システムの設計を始めた。
窓の外に、秋の帝都が広がっていた。
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