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第三十二話「Lv3、来た」

五月の第二週。


朝五時五十分。


目を閉じて、いつもの確認を始めた。


「川上染工の後継者候補、来週の面談の前に状況を——」


その瞬間、何かが変わった。


ぐわっ、ではなかった。


静かに、扉が開くような感覚だった。


今まで「方向性」と「気配」しか見えなかったものが——場面として見えた。


川上染工の工房。若い職人が三人、作業をしている。川上さんが横で見ている。その顔が、穏やかだ。


日付まで見えた。三年後の春。


それだけじゃない。


財前さんの顔が見えた。五年後。都内のどこか、大きな会議室。財前さんが発言している。その場にいる人間の数が多い。


来栖堂の暖簾。七海が店の前に立っている。四年後。背が少し伸びている。


次々と見えた。


そして——止まらなかった。


頭が痛くなってきた。一回目で超えた。


目を開けた。


ベッドの天井を見た。


頭が重い。でも今の感覚は正確に覚えている。


Lv3だ。


間違いない。


ノートを開いた。震える手で書いた。


「Lv3解禁。使用上限:二回/日。翌日持ち越し注意。川上染工——三年後春、若い職人三人確認。財前さん——五年後大型案件。七海——四年後も店にいる」


書き終えて、少し息を吐いた。


七海が四年後も店にいる。


それを見た時、俺は少し——止まった。


なんで七海の未来が最初に飛び込んでくるんだろう、とは思わなかった。


思わなかったことが、少し気になった。


まあいい。今は考えない。


三億の運用を、動かせる。


財前さんに連絡した。


「Lv3になりました」


三分で返信が来た。


「今週中にオフィスに来い。葛饅頭を持ってこい」


「調査目的ですか」


「そうだ」


俺は少し笑った。


学校へ行く準備をしながら、頭の中では既に銘柄を選んでいた。


半導体セクター。Lv3で確認した。精密機器、医療機器、半導体製造装置——この三つが、三ヶ月以内に動く。


財前さんは反対するかもしれない。


でも、押し切る。


見えているから。


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