表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/52

第二十八話「投資研究部、ただし幽霊部だった」

投資研究部の部室は、第三棟の三階の端にあった。


ドアを開けた瞬間、埃の匂いがした。


机が四つ。椅子が六つ。黒板に「本日の活動:特になし」と書いてある。


日付が、二年前だった。


「……これ、幽霊部じゃん」


大地が部屋を見回しながら言った。


「財前さんに『投資研究部に入れ』と言われました」


「財前さん、ここ知ってて言ったの?」


「たぶん知っていて言いました」


「なんで」


「幽霊部の方が、自由に動けるからだと思います」


大地が少し考えた。


「……それ、颯が好き勝手できるってこと?」


「そういうことです」


「天才じゃん財前さん」


俺たちは机の埃を払い始めた。雑巾がなかったので、大地がカバンの中からなぜかタオルを出してきた。


「なんでタオルを持ち歩いているんですか」


「コーラ飲んだ後に手を拭くため」


「……なるほど」


しばらく黙って掃除をしていた。


扉がノックされた。


「……入ってもいいですか」


凛だった。入部届を手に持っている。


「もちろんです」


凛が部屋を見渡した。埃の匂いが漂っている。


「……ここ、幽霊部ですよね」


「さっきまでそうでした」


「さっきまで」


「今から違います」


凛が少し考えて、入ってきた。


大地が凛を見た。凛が大地を見た。


「橘大地。プログラマー」


「綾瀬凛。……一応、普通の高校生」


「一応、ね」


「橘くんこそ、プログラマーって普通じゃないじゃないですか」


「それもそうだ」


大地が凛に予備の雑巾を渡した。


三人で部室を掃除した。


大地が黒板の「本日の活動:特になし」を消して、新しく書いた。


「本日の活動:始動」


「大地、日付も書いてください」


「あ、そうか。四月八日でいいの?」


「はい」


凛が黒板を見て、小さく笑った。


初めて笑った顔を見た。


「颯くん、これ、本当に投資研究するんですか」


「します。あと、それ以外も」


「それ以外って何ですか」


「大地のプログラムと、俺のDBと」


俺は少し間を置いた。


「凛さんの能力を、うまく使えるようになる方法も考えたいです」


凛が少し驚いた顔をした。


「……私の能力を、使うんですか」


「凛さんのために使う、ということです。俺のためじゃなくて」


凛がしばらく俺を見た。


「……どういう意味ですか」


「人混みで頭痛がするのは、コントロールができていないからですよね。それを改善する方法を、一緒に考えたいということです」


大地が「え、なにそれ、どういう能力の話してんの」と言った。


「後で話します」


「それ何回言うつもり」


「準備ができたら話します」


大地がため息をついた。


でも、怒った顔じゃなかった。


むしろ少し嬉しそうだった。


なんでかはわからないが、この人間はそういう人間だ、ということはわかった。


---

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ