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第二十四話「篠崎、終わる。そして次の一手」

翌週の木曜日。


帝都の経済メディアに記事が出た。


**「信用金庫担当者による融資操作疑惑 萩ノ宮周辺で6件の不自然な物件転売」**


財前さんの知り合いの記者が、証拠を丁寧に整理して記事にしてくれた。篠崎の名前は出ていなかったが、帝都中央信用金庫・萩ノ宮支店の「融資担当者」という記述で、業界内ではすぐにわかる内容だった。


宮下さんの証言も匿名で盛り込まれていた。


記事が出た当日の夕方、信用金庫から来栖さんに連絡があった。


「担当者を変更します。前倒し要求は取り消します」


来栖さんからメッセージが来た。


「颯くん、解決しました、と言っていいですか」


「はい、言っていいです」


「……本当に、ありがとうございます」


「来栖さんと池田さんが証言してくれたからです」


「颯くんが設計してくれたからです」


「どちらもです」


その翌日、田村社長から財前さんに連絡があった。


「萩ノ宮の再開発計画を正式に白紙撤回します」


財前さんから俺にその内容が転送されてきた。


「終わったな」


「はい」


「颯、よくやった」


「財前さんと、来栖さんと、池田さんと、宮下さんのおかげです」


「お前が設計した」


「……ありがとうございます」



その週末、帝都商工会議所に向かった。


財前さんのコネで、地域活性化担当の西田部長にプレゼンする機会をもらっていた。


五十代、温和そうな見た目だが目が鋭い人だった。


俺はA4一枚の資料を持って、向かいに座った。


「西田さん、今日は三つだけお話しします」


「どうぞ」


「一つ目、日ノ本の商店街の現状です。全国に約一万三千の商店街があります。そのうち六割以上が『衰退している』と回答しています」


「知っています」


「二つ目、問題の本質です。衰退しているのは、商店街の質が悪いからじゃない。本物の技術と歴史を持ちながら、伝わっていないだけです。それを証明したのが来栖堂です」


俺はスマホで来栖堂の数字を見せた。


「三ヶ月で来店数が四倍。値上げをしても客足が落ちなかった。SNSのフォロワーは一万二千人。伝わればちゃんと来る、という証拠です」


「なるほど」


「三つ目、提案です。このモデルを全国展開するために、商工会議所のネットワークを使わせてください。私どもが『再生できる商店街の目利き』をして、商工会議所が地域との接点を持つ。双方の強みを合わせます」


「費用は」


「初年度のライセンス料として五百万円です。二年目以降は成功報酬型にします。再生した商店街の売上増加分の五パーセントをいただきます」


「目利きというのは、具体的にどうやるんですか」


「私が現地に行って、店主と会って、データを集めます。そこから再生できるかどうかを判断します」


「判断の根拠は」


「今はお伝えできません。でも来栖堂の結果を見てください。判断の精度は、結果が証明します」


西田部長が俺をしばらく見た。


「……あなた、本当に中学生ですか」


「本当に中学生です。でも来年から高校生です」


「財前さんから聞いてはいましたが、実際に会うと驚きますね」


「よく言われます」


西田部長が少し笑った。


「わかりました。五百万、出します。ただし条件があります」


「なんですか」


「半年以内に、二件目の実績を作ってください。来栖堂だけでは偶然かもしれない。二件目が出れば、本物と判断します」


「わかりました」


「もう一つ」


「はい」


「あなたが高校生になっても、この件は続けてくれますか」


「続けます。これが俺の本業なので」


西田部長が笑った。


「財前さんが本物だと言った意味が、わかりました」


握手をして、オフィスを出た。


財前さんがエレベーター前で待っていた。


「どうだった」


「五百万、取れました」


「ほう」


「条件があります。半年以内に二件目の実績です」


「来栖堂の次、どこにするつもりだ」


「すでに目星をつけています。帝都の南側、桜木商店街に三代続く染物屋があります。来栖堂と同じ構造です。本物の技術があって、伝わっていないだけ」


「未来視で見たか」


「Lv2で確認済みです。来週、直接会いに行きます」


財前さんが口の端を上げた。


「……動き始めているな」


「木村会長と話した日から、DBを積んでいました」


「いつから」


「木村会長と話した日から」


財前さんが少し黙った。


「颯、一つだけ言っておく」


「なんですか」


「来栖堂を助けることと、事業にすることは、矛盾しないか」


俺は少し間を置いた。


「矛盾しません。来栖堂を助けたのは本物だからです。事業にするのも、本物を助けるためです。来栖堂以外にも本物はたくさんある。俺一人では届かない。仕組みにしなければ、届かない」


財前さんが頷いた。


「……そうだな」


「財前さんが俺に言ったことと、同じです」


「何を言った」


「俺が投資家をやっている理由と大差ない、と」


財前さんが少し笑った。


「覚えているか」


「覚えています」


エレベーターが来た。二人で乗り込んだ。


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