第二十三話「反撃の設計と、宮下の本音」
翌週の月曜日、財前さんのオフィスで反撃の設計をした。
ホワイトボードにステークホルダーマップを書いた。
動かすべき人間は三人だ。
田村社長——すでに動いている。再開発白紙撤回を正式に発表させる。
信金本部長——篠崎の件を組織的な問題として処理させる。
帝都経済メディアの記者——六件の不正を報道させる。
「順番はどうする」と財前さんが言った。
「まず記者です。報道が出れば信金本部も動かざるを得ない。組織として動けば、田村さんも正式な声明を出せる。全部が連鎖します」
「篠崎の虚偽通報、証拠があるか」
「一つ取れました。篠崎が声をかけた不動産業者が断っています。断った理由が『今回はやり過ぎだ』というものでした。追い詰められていることの証拠にもなります」
財前さんが頷いた。
「記者、今日アポを取る」
「ありがとうございます」
そこに、七海からメッセージが来た。
「颯、来栖堂に来てほしい。宮下さんが謝りに来た」
財前さんを見た。
「行け」
◆
来栖堂に着くと、来栖さんと七海と宮下さんが向き合って座っていた。
宮下さんが俺を見た。
「颯くん、ね。七海ちゃんから聞いてた」
「宮下さん」
「来栖さん、七海ちゃん、謝りに来ました。あの投稿、来栖堂のブランドを勝手に使って、私の店を大きく見せようとした。間違いでした」
七海が「なんで急に」と聞いた。
「保健所の通報のこと、私も聞かされた。篠崎さんから」
俺は少し身を乗り出した。
「どういう形で聞かされましたか」
「一週間前に、篠崎さんが私のところに来て。『来栖堂のSNSはステルスマーケティングの疑いがある。保健所にも通報した。あなたはうまく距離を置いた方がいい』と言われた」
「それで」
「断りました。そういうことに加担したくなかった。帝都の店を出る時にも、似たようなことで嫌な思いをしたから」
宮下さんが来栖さんを見た。
「来栖さん、私が便乗投稿をしていたのは事実です。競争相手が元気になるのが怖かった。でも篠崎さんに声をかけられて、自分がどういう人間になろうとしていたか、はっきりわかった」
来栖さんが静かに言った。
「宮下さん、謝りに来てくれてありがとうございます」
「来栖さん、あなたの店は本物です。並んで、この商店街を一緒に盛り上げたい」
七海が少し驚いた顔をしていた。
「宮下さん、証言してもらえますか」
俺が言った。
「篠崎さんに声をかけられたこと、断ったこと。記録として残させてほしい」
宮下さんがしばらく考えた。
「……します」
「ありがとうございます」
宮下さんが帰った後、七海が俺を見た。
「宮下さん、意外だった」
「最初から敵じゃなかったと思います。怖かっただけです」
「何が?」
「新しい場所で、また失敗することが。帝都で嫌な経験をして、萩ノ宮で一からやり直そうとしていた」
「……颯、そんなことまでわかるの?」
「観察していれば、だいたいわかります」
「観察って言えば全部済ませるのやめてほしいんだけど」
「すみません」
七海が小さく笑った。
「でも、宮下さんが味方になった。なんか、少し楽になった」
「来週には終わります。あとは待つだけです」
七海が少し俺を見た。
「颯が『待つだけ』って言う時、だいたいもう全部決まってるよね」
「だいたい」
「……頼んだよ」
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