最後の一服
掲載日:2026/01/11
ほぼカートンであったタバコも最後の一本。
名残惜しいな。
すっかり慣れてしまった手つきで火をつける。
「久しぶりじゃん。」
彼女が声をかける。
僕は味わうように肺に溜め込み、吐き出す。
「これ、最後だったから勿体なくて。」
「どうせ、また吸うでしょ?」
いたずらっぽく笑う。
「んー。それはないかな。あんまり美味しくないし。」
「それにしては旨そうだったぞ。」
私にも寄越せ、と言わんばかりに手を差し出す。
「もう、ないんだってば。」
必死に笑顔を取り繕おうとしたがダメだった。
「なに、泣いてんの?」
「……目に煙が入った。」
「そっか。」
ボロボロと泣き崩れる僕を見て彼女は続けた。
「タバコはモテないから、これでやめなよ。」
「……うるせぇよ、ヤニカス。」
あはは、と笑った彼女は小さく手を挙げる。
「ごめんね。でも、この3分間はいい土産になったよ。」
持つ指に熱が伝わってくる。
もう、終わりか。
「……気が向いたら、そっち行くよ。」
「まだ、はえーよ。」
灰皿に押し付けた火が消え、彼女も煙と共に消える。
墓参りは、タバコでいいか。




