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ある日、孫が描いた絵を伊達は受け取った。
メガネを掛けてじっと見ると、クレヨンの細かい線や、紙の端に小さく書かれた「じいちゃんへ」の文字まではっきりと見えた。
「じいちゃんのために描いたんだよ」と孫が照れる。
伊達の胸に温かいものが広がる。
これまで気づけなかった小さな思いやりまで、メガネは鮮明に映し出してくれた。
世界が見えることの喜びは、愛情まで鮮明にしてくれるのだと伊達は知った。
メガネを掛ける前に受け取ったものも、見直してみよう。そのうちに。
今はまだ、胸が熱くて、それどころではなかった。