6/10
6
ある日、風呂上がりに伊達はふと鏡を見た。
メガネを掛けた自分の姿に愕然とする。
見慣れない顔。
まだメガネを掛けた顔に慣れていない為、自分だとすぐには気づかない。
でも、ショックを受けたのはそれだけではなかった。
「あれ、俺の腹、こんなに出てたか?」
風呂場の曇りガラス越しでは気づかなかった現実が、今は鮮明に迫ってくる。
思わず妻に相談すると「ずっとそうよ」と即答された。
伊達はガックリとうなだれる。
メガネは視界をクリアにしたが、同時に体重計以上に正直な現実を突きつける存在でもあった。