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散歩中、伊達はマスクをしたまま息を大きく吐いた。
するとメガネが一気に曇り、前が見えなくなる。
一瞬何事かと思い、立ち止まってキョロキョロした。
ちょうど知り合いが声をかけてきたが、誰か分からない。
とりあえず「ど、どうも!」と曖昧に返事をするしかなかった。
相手が去った後にやっと視界が晴れ、振り返る。
「あ、あれ山本さんだったのか!」と遅すぎる気づき。
なんか、挙動不審の変な奴だと思われたかもしれないな。
メガネのある新しい生活は便利さと不便さが紙一重だと、伊達は苦笑いした。