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伊達は新しいメガネを掛けて喫茶店に入った。
久しぶりに会う友人の田中が彼を見るなりニヤリと笑い、「おい、それ伊達メガネか?」とからかってきた。名前が名前だけに、昔から何度も言われてきた冗談だ。
だが今回は違う。伊達は胸を張って「いや、本当に度入りだ」と答える。
田中は「まさか伊達が伊達じゃなくなる日が来るとはな」と笑い、二人で声をあげた。
カップを傾けながら伊達は思う。
くっきり見える景色も悪くないが、名前をネタにされたこういう時間もまた、メガネがくれた楽しい副産物かもしれない。